会計の目的を知り、会計で会社を強くしよう
会計は税務申告や融資申し込みのためだけに必要なのではありません。適時・正確な記帳によって積み上げられた正確な会計情報を基に、経営者は自社の業績をタイムリーに把握して的確な経営判断を下すことが可能になります。本記事では、会計の本当の目的と活用方法をわかりやすく解説します。 💡この記事のポイント  ☑会計の本質的な目的は、経営者自身への自己報告にある  ☑企業自らが適時・正確な記帳を行い、正しい会計データを作成することが大切  ☑会計を使いこなすステップは、「書ける」「読める」「使える・見通せる」「話せる」の4つ  ☑会計で会社を強くするための具体的な実践ポイント(25項目)を紹介 目次 閉じる 開く 1.はじめに 2.会計の目的は「経営者への自己報告」 (1) 会計は経営者が会社の現状を知るためにある (2) 「適時・正確な記帳」が会社を守る (3) 会計情報を経営に生かすためには「月次決算」が不可欠 3.強い会社の経営者は会計を「使いこなしている」 (1) ステップ1:書ける (2) ステップ2:読める (3) ステップ3:使える・見通せる (4) ステップ4:話せる 4.会計で会社を強くするためのチェックポイント 5.よくある質問(FAQ) Q1 : 毎月決算をする必要が本当にあるのでしょうか?年に1回ではダメですか? Q2 : 数字が苦手です。経営者はどの程度の会計知識を身に付けるべきですか? Q3 : 今まで税理士には申告書を作ってもらうだけでした。経営相談もできるのですか? Q4 : チェックリストの(2)にある「発生主義会計」とは何ですか? Q5 : チェックリストの(23)にある「中小会計要領」とは何ですか? 6.まとめ 1.はじめに  「会社はなぜ帳簿を作成(記帳)して、決算書を作成しなければならないのでしょうか?」  この質問に対して、あなたはどう答えますか?中小企業経営者の多くは「税務申告のために決算書を作成して税務署に提出しなければいけないから」や「金融機関から融資を受けるためには決算書を求められるから」といった理由を挙げるのではないでしょうか。  日々の業務の中でこうした「会計の目的」を強く意識する機会はあまりないでしょう。実際には、会計は税務申告や融資申し込みのためだけにあるのではありません。日々記帳をすることは、商取引のトラブルから自社を守ることとなり、タイムリーな月次決算を行うことで、倒産を防止し、たくましく勝ち残ることにもつながります。つまり、会計の本質的な目的は経営者自身への自己報告にあり、会計は会社を強くするために欠かせない経営手法なのです。本記事では、会計の目的と経営への活用方法について解説していきます。 2.会計の目的は「経営者への自己報告」 (1) 会計は経営者が会社の現状を知るためにある  「はじめに」で述べたように、中小企業において最も重要な会計の目的は、経営者自身が会社の現状を正しく把握することにあります。  会社では、毎日さまざまな取引が発生しています。仕入を行い、商品やサービスを販売し、従業員へ給与を支払い、必要に応じて設備投資なども行います。会計は、こうした日々の活動を数字で表し、会社の状態を見えるようにするための仕組みです。 ・利益は出ているのか ・資金繰りは安定しているのか ・借入金の返済に無理はないのか ・事業は成長しているのか  このような経営上の重要な問いに答えるために会計があります。  会計によって整理された情報を確認することで、経営者は会社の実態を客観的に把握できるようになります。 (2) 「適時・正確な記帳」が会社を守る  会計の出発点は、日々の「記帳」です。記帳とは、企業が会計のルールに基づいて日々の取引を帳簿に記録することです。売上や仕入、経費の支払いなどを適時にかつ正確に記帳し、会計帳簿として整理することで、会社の経済活動を正確に把握できるようになります。  なお、「適時に」とは、具体的には、現金取引はその日のうちにその「現金残高」を、売掛買掛等の信用取引は取引発生日の翌月末までにその残高を掌握することです。  記帳は、単なる事務作業ではありません。取引の証拠を残し、会社の経営状況を正確に把握するために欠かせないものです。もし記帳が遅れたり、内容が不正確だったりすれば、その後に作成される試算表や決算書も信頼できないものになってしまいます。信頼できない会計情報からは、正しい経営判断は生まれません。  大切なのは、会計事務所のサポートの下で、企業自らが正しい会計データを作成することです。いわゆる記帳代行会社に会計処理を丸投げしていては、自社の経営状況を正確に把握することができず、倒産への道を突き進んでいるようなものです。 (3) 会計情報を経営に生かすためには「月次決算」が不可欠  会計情報を経営に役立てるためには、タイミングも重要です。たとえ正確な数字であっても、半年後や一年後にわかったのでは、経営判断に生かしにくくなります。  そこで重要なのが「月次決算」です。月次決算とは、毎月、業績管理に役立つ決算書を作成して会計情報を整理し、その時点での会社の状況を正確に把握するための仕組みです。  月次決算によって、以下の点などを継続的に確認することができます。 ・売上は計画どおりか ・利益率は維持できているか ・経費は増え過ぎていないか ・資金繰りに問題はないか  経営環境の変化が激しい時代だからこそ、会計情報をタイムリーに把握し、迅速な意思決定につなげることが重要です。 3.強い会社の経営者は会計を「使いこなしている」  「会計を使いこなす」という言葉を聞いて、どのような状況をイメージするでしょうか?「使いこなす」とは、具体的には「書ける」「読める」「使える・見通せる」「話せる」という4つに分類することができます。この4つを「ステップ」と捉え、会計事務所の支援の下、一つずつ身につけるようにしましょう。 (1) ステップ1:書ける  「書ける」とは、企業が日々の取引を適時に整然とかつ明瞭に、しかも網羅的に記帳することにほかなりません。こうした記帳を行うことで帳簿の証拠力を高めることができます。  「書ける」は、「読める」「使える」「見通せる」「話せる」を実現するために最低限行わなくてはならない必須事項であり、経営者の財務経営力の向上要件といえるでしょう。 (2) ステップ2:読める  「書ける」が定着した結果として、「見える化」(業績検討)が実現します。  みなさんは、一寸先も見えないほどの霧が立ち込めている中を全力で走ることができますか?霧の先に続く道には、大きな穴が開いているかもしれないし、その道の先には崖があるかもしれません。しかしオアシスがある可能性もあるのです。霧の先にある穴や崖(課題)、オアシス(チャンス)を正確に捉えられるように「読める」を実現する必要があります。 (3) ステップ3:使える・見通せる  チャンスや課題が明確になったら、次は「そのチャンスを生かし・課題を克服するにはどうすべきか」を考えなくてはなりません。課題の克服に莫大なコストがかかるのであれば、コストを賄う方法も考えなくてはいけないのです。やりたいことをやるのに自己資金で補えないのであれば、資金をどのように、どこから調達すればいいのか。返済の必要があれば返済期間はどのくらいで、返済原資をどこに求めるのかを明確にしておく必要があります。 (4) ステップ4:話せる  円滑な資金調達には情報(過去・現在・未来)の開示が求められます。これらの情報は、企業と会計事務所がTKCシステム(FXシリーズや継続MASなど)を活用して、「書ける」「読める」「使える」「見通せる」を継続的に行うことで十分に提供できると考えられます。自分の会社のことが手に取るようにわかっていれば、金融機関や保証機関など誰に対しても自信をもって話せるはずです。「業績を誰かに話すことに慣れていない」という方は、会計事務所に相談してみましょう。月次巡回監査の中で「経営者が話し、会計事務所が聴く」という時間を設けることでトレーニングが可能です。 4. 会計で会社を強くするためのチェックポイント  「会計の目的や重要性はわかったが、具体的にどうやって会計で会社を強くすればいいのかわからない」という方のために、TKC全国会第7代会長である坂本孝司博士の書籍『会計で会社を強くする(第3版)』から、具体的な実践ポイント(25項目)を紹介します。 ■会計で会社を強くする —— チェックポイント25 1 .現状を正しくつかむ  (1) 毎月の業績を翌月早々に把握できていますか?  (2) 毎月の決算書は、発生主義(売掛金・買掛金等を月々計上)で処理されていますか?  (3) 月々の在庫は正しく計上されていますか?  (4) 適時の記帳(商法第19条2項、会社法第432条)を実践していますか?  (5) 経理処理に余分な手間をかけ過ぎていませんか?  (6) 貴社および同業種平均の「1人当たり付加価値額」を正確に言えますか?  (7) 公私混同をしていませんか? 2 .将来を見通す  (8) 「正しい会計」に裏付けられた経営計画書を作成していますか?  (9) 経営計画書には付加価値増大の具体策が盛り込まれていますか?  (10) PDCAサイクルが定着していますか?  (11) 経営計画書を数種類作成していますか? 3 .税理士を積極的に活用する  (12) 税理士を有効に活用していますか?  (13) 税理士を「親身の相談相手」としていますか?  (14) 月次巡回監査を受けていますか?  (15) 税務申告書に「書面添付(税務監査証明書)」が添付されていますか?  (16) 税理士を活用して決算書の価値を高めていますか? 4 .金融機関と上手に付き合う  (17) 決算書や経営計画書を自分の言葉で説明できますか?  (18) 粉飾した決算書を作っていませんか?  (19) 金融機関が行っている「自己査定による債務者区分」の仕組みを知っていますか?  (20) 金融機関に出す決算書に「書面添付(税務監査証明書)」を付けていますか? 5 .「新時代の会計」の考え方  (21) 「経営者保証に関するガイドライン」を知っていますか?  (22) 「会計で会社を強くする」という発想の会計システムを使っていますか?  (23) 金融機関に出す決算書に「中小会計要領チェックリスト」を付けていますか?  (24) 会社法にいう「会計参与制度」を知っていますか?  (25) 企業を税務・会計・保証・経営全般にわたってトータルに支援できる存在は税理士だけであることを知っていますか?  この25項目は、経営者が不死身の経営を実践していくために最低限押さえておかなければならないポイントです。税務会計の基礎知識を学びながら、何度もこのポイントを繰り返して確認していきましょう。 5. よくある質問(FAQ) Q1. 毎月決算をする必要が本当にあるのでしょうか?年に1回ではダメですか? A1. 年1回の決算だけでは、経営上の問題に気付くのが遅れてしまう可能性が高いです。例えば、利益率の低下や経費の増加が半年間続いていたとしても、年次決算で初めて気付いたのでは対策が後手に回ってしまいます。一方、月次決算を行っていれば、業績の変化を早い段階で把握できるため、価格改定やコスト削減、販売戦略の見直しなどの対策を迅速に講じることができます。 Q2. 数字が苦手です。経営者はどの程度の会計知識を身に付けるべきですか? A2. 税理士と同じレベルの会計知識は必要ありませんが、自社の数字を理解することは重要です。経営者に求められるのは、会計処理を自分で行うことではなく、会計情報を経営判断に活用することです。例えば、「今月の利益はどのくらいか」「売上は増えているのに利益が減っていないか」「借入金の返済負担は適正か」といった基本的な内容を把握できるだけでも、経営判断の質は大きく向上します。 Q3. 今まで税理士には申告書を作ってもらうだけでした。経営相談もできるのですか? A3. もちろん可能です。むしろ税理士を経営の相談相手として活用してください。税理士は日々の会計データや決算書を通じて、会社の状況を継続的に把握しています。そのため、利益改善のポイント、資金繰り対策、設備投資のタイミング、借入や返済計画、経営計画の策定などで税理士から助言を受けることが可能です。  経営者は1人で悩みを抱え込んでしまうケースも少なくありません。信頼できる税理士をパートナーとして活用することで、より客観的な視点から経営を見直すことができるでしょう。 Q4. チェックリストの(2)にある「発生主義会計」とは何ですか? A4. 現金の出入りではなく、取引が発生した時点で収益や費用を計上する考え方です。例えば、商品を販売して代金の入金が翌月の場合、現金主義会計では翌月の売上になりますが、発生主義会計では販売した月の売上として計上します。発生主義会計によって、売上や費用を実際の取引が行われた時期に対応させることができるため、その月の経営成績をより正確に把握できるといわれています。 Q5. チェックリストの(23)にある「中小会計要領」とは何ですか? A5. 中小企業が信頼性の高い会計情報を作成するための指針です。中小企業の実態を踏まえて作成された会計のルールであり、経理人員が少なく高度な会計処理に対応できる十分な能力や経理体制を持っていない会社でも活用できる内容になっています。中小会計要領は、会計情報の開示を求められる範囲が取引先、金融機関、同族株主、税務当局に限定されており、主に法人税法で定める処理を意識した会計処理が求められています。中小会計要領に沿った会計を実践することで、経営者自身が会社の状況を正しく把握できるだけでなく、金融機関などの利害関係者からの信頼性向上にもつながります。  中小会計要領の基本ルールや活用方法については以下の記事で解説していますので、ご参照ください。 参考 : 「中小企業の経営を支える「中小会計要領」とは」 また、中小会計要領の本編は、以下の中小企業庁ウェブサイトに掲載されています。 参考:中小企業庁ウェブサイト 6. まとめ  会計は、過去を記録するだけのものではありません。会社の未来をつくるためのものです。  「会計は難しい」「数字は苦手」と感じる経営者もいるかもしれません。しかし、最初からすべてを理解する必要はないのです。まずは毎月の数字に目を向け、自社の現状を知ることから始めてみてください。  会計を経営に生かす経営者は、変化に早く気付き、いち早く行動することができます。そうして会社を守り、会社を強くしていきましょう。 参考 ・坂本孝司 著『会計で会社を強くする(第3版)』TKC出版 ・TKC全国会中小企業支援委員会 経営支援企画小委員会 編著『後継者塾テキスト 会社を発展させる経営者になるために』TKC出版 ・TKC全国会中央研修所 編著『TKC基本講座(第5版)』TKC出版 記事提供 株式会社TKC出版  1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。  税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。
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