月次決算の“すごい効果”

なぜ月次決算は経営を劇的に変えるのか。その“すごい効果”の秘密は、正確な業績の適時把握と、それを踏まえた素早い経営判断の実現にある。インフレの荒波を乗り越え、持続的な成長を実現するために、数字と常に向き合い自社をコントロールする極意に迫る。 【総論】税理士 高田勝人氏 目次 閉じる開く 融資の相談もスムーズに 異常値に素早く気付ける 新たな信用保証制度が開始 会計事務所が壁打ち相手に 先日、東京に出張した際、ホテル近くの大手牛丼チェーンに入りました。久しぶりの牛丼(498円)をおいしくいただいたのですが、「ずいぶん高くなったな」と感じて調べてみると、13年前の価格は280円。なんと78%もの値上げが行われていたのです。果たして中小企業ではこれほど大胆な値上げができているでしょうか。 現在は原材料費の上昇にとどまらず、最低賃金の引き上げに伴う人件費の高騰、さらには円安や金利上昇など、あらゆるコストが上がり続けるインフレの時代に突入しています。長年デフレに慣れ親しんできた中小企業の中には、値上げに対する心理的ハードルがまだ残っているところもあるかもしれません。しかし、自社のビジネスモデルを再構築し、変動する原価をタイムリーに販売価格やサービス価格に反映できる体制に転換しなければ、今後は事業を継続していくこと自体が難しくなるでしょう。 1.融資の相談もスムーズに 企業が長期間にわたり存続するためには、黒字決算の継続が不可欠です。外部環境の変化が激しい今、これまで以上の適応能力が求められており、タイムリーに業績を把握する「月次決算」の実践はマストといえます。年次決算が会社法等に基づく「義務」であるのに対し、月次決算は「任意」であり法的要請はありません。しかし、任意だからこそ、そこには経営をコントロールするための極めて大きな4つの目的(メリット)があります。 第一に、経営状況をリアルタイムに把握できます。年1回の決算では、赤字や資金不足に気づいたときには、すでに手遅れになってしまっていることがほとんどです。月次決算の実施により、売上高の変化や無駄な経費の発生にすぐ気づくことができます。 第二に、銀行からの融資をスムーズに受けることができます。銀行から借り入れを行う場合、通常最新の経営状況を示す月次試算表の提出が求められますが、月次決算を行っていれば即座に提出することができ、融資交渉が迅速に進みます。 第三に、正確な経営計画の修正や決算予想ができます。「今期はあとどれくらい利益が出そうか」「税金をいくら払うことになりそうか」といったことを早めに予測することができ、設備投資や節税対策を先手で打つことが可能になります。 第四に、年次決算(本決算)の負担が軽減できます。毎月会計データを精緻に整理しているため、1年が終わった時の確定申告の手続きが非常に楽になります。申告期限(2カ月以内)を超過してしまうリスクを大幅に減らせます。 これらさまざまなメリットがある月次決算を、法的義務がないからといって行わないとどうなるでしょうか。以下のようなリスクが考えられます。 経営判断が数カ月~半年程度遅れてしまう 金融機関から「管理体制が不十分」とみなされ、融資の審査で不利になる 期末にまとめて作業をするため、本決算の時期に業務がパンクしてしまう 月次決算を行わないことによる法的な罰則はありませんが、経営判断の遅れや金融機関からの評価低下など、経営における致命的なリスクを背負うことになるのです。かつて稲盛和夫氏は「飛行機の操縦士がコックピットの計器を見ながら操縦するように、経営者も現在の会社の状態を正確に示す会計データを見ながら経営をしなければならない」という言葉を残しました。月次決算の実践こそが、社長が「真の経営者」へと歩む道なのです。

2026.08.03

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