電子契約なら印紙税は不要?経営者が知っておきたい印紙税の基本
印紙税とは印紙税法で定められた契約書や受取書などの課税文書に課税されるもので、収入印紙を貼付して納税します。本記事では、中小企業の経営者が押さえておきたい印紙税の基本と、昨今広がっている電子契約書における印紙税の取り扱いについて解説します。 💡この記事のポイント ☑印紙税は契約書や受取書などの文書が課税対象であり、電子契約書は原則非課税。 ☑紙の契約書を別途作成する場合や紙と電子が混在する社内運用には注意が必要。 ☑契約書名で印紙税の有無を判断せず、文書の内容に応じて課税有無を確認する。 目次 閉じる開く 1.印紙税とは? (1) 基本的な仕組み (2) 未払いや過払いが生じた場合 2.中小企業が取り扱うことの多い印紙税の課税文書とは? (1) 印紙税がかかる主な文書 (2) 税額の決まり方 3.電子契約なら印紙税はかからない?基本ルールを解説 (1) 電子契約書には、原則印紙税はかからない (2) 電子契約を印刷したら印紙税はかかるのか? 4.中小企業が気をつけたい印紙税のチェックポイント (1) 契約書の名称だけで課税有無を判断しない (2) 紙の契約書と電子契約書で運用を分ける (3) 取引の過程で作成される文書を確認する (4) 判断に迷う場合は税理士に相談する 5.まとめ 1. 印紙税とは?  契約書等を作成するときに「この書類には収入印紙が必要なのだろうか?」と迷った経験がある経営者もいるのではないでしょうか。印紙税は、法人税や消費税のように毎月意識する税目ではない一方で、契約締結や代金受領の場面では関係してくる税目です。  特に近年では、オンライン環境下におけるクラウド上で締結する電子契約も広がっています。そこで中小企業の経営者にとって重要なのが、「紙の契約書と電子契約書では印紙税の扱いがどう違うのか?」を押さえることです。印紙税の基本を理解していないと、不要な印紙代を払ってしまったり、逆に必要な文書に貼り忘れてしまう恐れもあります。本項ではその仕組みから解説します。 (1)基本的な仕組み  印紙税は、一定の文書を作成したときに課される国税です。印紙税の対象となるのは、印紙税法で定められた課税文書です。課税文書に当たるかどうかは、印紙税法別表第1に掲げられた20種類の文書により証されるべき事項が記載されているか、当事者間でそれを証明する目的で作成された文書か、非課税文書に当たらないか、といった点で判断されます。 e-Gov法令検索「印紙税法別表第1 | e-Gov 法令検索」  そのため、会社で作るすべての契約書や書類に印紙税がかかるわけではない点に注意しておきましょう。以下に印紙税の課税有無についての判別表を掲載します。 ■印紙税の課否判定 【出典】国税庁「印紙税の手引|国税庁」  また、印紙税の納付は、原則として必要額の収入印紙を文書に貼り付ける方法で行います。なお、貼る際は印紙と文書にまたがる形で消印をする必要があり、消印は作成者本人に限らず、代理人や従業者の印章や署名でも差し支えありません。 (2)未払いや過払いが生じた場合  課税文書の作成時までに印紙税を納付しなかった場合、原則として本来の印紙税額の3倍の過怠税が課されます。もっとも、税務調査前に自主的に申し出た場合などは、一定の要件のもとで1.1倍に軽減されます。  誤って印紙税を多く貼付し過払いになった場合は、税務署に所定の書類を提出することで還付を受けることができます。ただし、文書を作成してから5年を過ぎたものについては還付の対象外となります。 2. 中小企業が取り扱うことの多い印紙税の課税文書とは? (1)印紙税がかかる主な文書  印紙税の対象になる文書は20種類ありますが、中小企業でよく使われる課税文書は、例えば以下の文書が挙げられます。 主な文書 典型例 ポイント 第1号文書 不動産売買契約書、土地賃貸借契約書、金銭消費貸借契約書 契約金額に応じて税額が変わる(契約金額の記載のないものは一律200円) 第2号文書 工事請負契約書、物品加工注文請書、広告契約書 請負に当たるかどうか確認が必要 第7号文書 売買取引基本契約書、代理店契約書、業務委託契約書 継続的取引の基本契約は1通4,000円 第17号文書 商品販売代金の受取書、請負代金の受取書、広告料の受取書 受取金額5万円未満は非課税、5万円以上は課税(5万円以上100万円以下は200円、以後は受取金額に応じて増額)。受取金額の記載のないものは200円 【出典】国税庁「印紙税の手引|国税庁」  この中で重要なのが、継続的取引の基本契約書です。個別案件ごとに金額が書かれていない基本契約書でも、第7号文書に該当すれば1通4,000円の印紙税がかかります。売買取引基本契約書や業務委託契約書などを締結する会社では、この基本契約書の印紙税を確認しておく必要があります。ただし、代理店契約書や業務委託契約書という名称であっても、常に第7号文書に当たるわけではなく、継続的取引の基本条件を定める内容かどうかで判断され、継続的取引の基本契約書であっても、契約期間が3か月以内で、かつ更新の定めがないものは第7号文書から除かれます。  また、受取書については日頃から注意が必要です。第17号文書に該当する受取書は、商品販売代金、請負代金、不動産の賃貸料、広告料など、売上代金に関する受取書が対象です。特に現金の取引等が発生する会社では、受取書の扱いを誤らないようにすることが重要になります。なお、借入金や保険金などの受取書は売上代金以外の受取書として別区分になります。 (2)税額の決まり方  印紙税額は、基本的に文書の種類と記載金額によって決まります。例えば、第1号文書や第2号文書では、契約金額が高くなるほど印紙税額も段階的に上がっていきます。一方で、第7号文書のように記載金額ではなく、1通ごとに定額で税額が決まる文書もあります。つまり、「印紙税の課税文書に該当する契約書だから一律○円」と単純に考えることはできません。  受取書については、「5万円未満なら非課税、5万円以上なら課税」という基準が原則ですが、すべてのケースがこれに該当するわけではありません。売上代金に係る金額と売上代金以外の金額が同じ受取書に記載されている場合、5万円未満かどうかの判断はその合計額で判断するとしています。そのため、「売上部分だけが少額であるから非課税」とはいえない場合があります。  なお、5万円未満かどうかの非課税の判断は合計額で行いますが、税率適用の前提となる記載金額は、売上代金部分とそれ以外を区分できる場合、売上代金部分のみで判断します。税額を確認する際は、こうした例外のケースも含めて確認しましょう。 3. 電子契約なら印紙税はかからない?基本ルールを解説 (1)電子契約書には、原則印紙税はかからない  電子契約書には原則として印紙税はかかりません。電磁的記録は印紙税の課税文書に含まれないため、印紙税は課税されないということになります。  印紙税はあくまで課税文書の作成に関する税目であり、紙の文書と電磁的記録では制度上の扱いが異なります。そのため、取引内容が同じでも、契約成立を証明する目的の文書を紙で作成するか、電磁的記録でやり取りするかによって、印紙税の有無が変わります。  しかし、これはあくまで電磁的記録としてやり取りするケースを前提にしており、電子契約を利用していても、その過程で紙の課税文書を別途作成している場合、その紙の文書については印紙税の課税対象になる可能性があります。したがって、契約の流れ全体を見直すことが不可欠です。 (2)電子契約を印刷したら印紙税はかかるのか?  電子契約は紙で印刷することが可能であるため、その場合「印刷したら印紙税の課税対象になるのではないか?」という疑問があります。  電子契約のデータを閲覧用・保存用として印刷しただけで、署名押印や相違ない旨の証明がないものは、通常は課税対象になりません。ただし、印刷物であっても、当事者の署名・押印や“正本に相違ない”旨の証明が付され、契約成立を証明する目的で交付される場合は、写しではなく課税文書として扱われる可能性があります。 4. 中小企業が気をつけたい印紙税のチェックポイント  中小企業においても印紙税は契約時などで接する機会があります。日頃の業務のなかで、印紙税について具体的にどのような点に注意すべきなのか、本項で解説します。 (1)契約書の名称だけで課税有無を判断しない  課税有無を判断する際に重要なのが、契約書の名前だけで印紙税の課税有無を決めないことです。国税庁は、課税文書に該当するかどうかは文書の名称や形式ではなく、その文書に記載されている内容の実質に基づいて判断するとしています。「契約書」や「受取書」といった文書の名称ではない「覚書」「確認書」「合意書」といった文書であった場合も、その文書の内容次第で課税対象になります。  国税庁も文書に記載されている文言等の実質的な意味に基づいて判断することを前提としたうえで、具体的に以下の判断基準を示しています。 印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。この課税文書とは、次の3つのすべてに当てはまる文書をいいます。 ①印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。 ②当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。 ③印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。 【出典】国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁」  「何を証明する文書なのか?」を確認する視点で課税有無を確認しましょう。 (2)紙の契約書と電子契約書で運用を分ける  紙の契約書と電子契約書における社内の取り扱いを明確化したうえで運用することも重要です。電子契約書は原則として印紙税の対象外ですが、紙の課税文書を別途作成していれば、その紙の文書には印紙税が課税される可能性があります。つまり、「電子契約を使用している会社かどうか?」という点ではなく、最終的にどの形式の文書を、契約成立を証明する目的で作成・交付しているかが課税有無のポイントになります。  紙の文書による契約と電子契約における社内運用で、改めて見直しておきたいのは、以下の表の通りです。 確認ポイント 確認したい内容 契約の締結方法 紙か電子、どちらで成立しているか 相手先への交付方法 紙を渡しているか、電子データのみか 社内保存方法 紙文書の作成・交付の有無 基本契約と個別契約 どこまで電子化し、どこが紙のままか 例外運用 一部だけ紙で対応するルールがないか 【出典】国税庁「印紙税の手引|国税庁」 国税庁「No.7104 継続的取引の基本となる契約書|国税庁」を基に編集部が作成  紙の契約書と電子契約書について、契約の承認、締結、保管、交付までの流れを明確に社内で共有しておくことで、印紙税の判断ミスを減らすことにもつなげられます。 (3)取引の過程で作成される文書を確認する  印紙税の課税有無の判断で見落としやすい点として、1つの取引全体をまとめて考えてしまうことが挙げられます。1つの受注から入金までの間に、基本契約書、個別発注書、変更合意書、納品書、検収書、請求書、受取書など、複数の書類が作成されることがあります。しかし、印紙税は「この取引でいくら動いたか?」「この案件は電子契約を使っているか?」といった取引全体の印象のみで決まるものではありません。どの文書がどの事項を証明する目的で作成されているのかを、文書ごとに確認する必要があります。  この点を押さえていないと、最初に取り交わした契約書だけを確認してしまい、その後に作成した別の文書の確認が漏れることがあります。例えば、契約締結時には印紙税の要否を確認していても、途中で条件変更が生じて別文書を作成したり、取引完了時に受領内容を証明する証明書を発行すると、その時点で別途印紙税の課税有無の確認が必要になります。印紙税は「契約時に一度だけ確認すれば終わり」ではなく、案件の進行に応じて発生する文書まで視野に入れて考えることが重要です。  特に営業担当者が取引開始時の文書を管理し、現場担当者が納品や検収関係の文書を作成し、経理担当者が請求や入金確認の文書を取り扱うなど、部署ごとに関わる文書が分かれている場合は注意しましょう。税務の担当者だけが印紙税の知識を持っていても、実際の運用で確認漏れが起きることがあるためです。  案件ごとに「契約時」「変更時」「請求時」「入金時」でどのような文書を作成していたのかを整理するだけで、判断の抜け漏れを防ぎやすくなります。印紙税は個々の文書を確認する視点と、取引の過程全体を見渡す視点の両方を持つことで、実務上のミスを減らせます。 (4)判断に迷う場合は税理士に相談する  印紙税の課税有無には文書の性質、記載内容、取引の流れ、紙か電子かといった要素が絡みます。そのため、印紙税の原則を確認しても判断に迷う場合は、自社だけで結論を急がず、税理士に相談しましょう。  特に、売買なのか請負なのかの判断が難しい契約、基本契約と個別契約が組み合わさっている取引、紙と電子が混在している運用、受取書や精算書に複数の金額が記載されるケースなどです。こうした場面では、印紙税額そのものよりも、判断を誤ったときの税務リスクのほうが大きくなる可能性があります。  印紙税については日頃の業務から「どのような文書で印紙税が問題になりやすいのか?」「電子契約の場合、原則どのように扱うのか?」「判断が難しいときに誰へ相談すべきか?」を考えておくことが重要です。これらを押さえておくだけでも、課税有無の判断ミスを防ぐことができます。 5. まとめ  印紙税の課税有無について中小企業が意識したい点は、自社でよく使用する文書を整理し、課税有無の判断に迷わない状態をつくっておくことです。たとえ同じ取引であっても担当者や取引場面によっては扱う文書が異なり、例外的な対応が起きることで確認漏れにつながることもあります。印紙税は1件ごとの税額が大きくない場合でも、判断ミスが積み重なると税負担の増加につながります。  そのため、契約書だけを確認するのではなく、自社で使っているひな形、受発注時や変更時の文書、入金時の証憑まで含めて定期的に整理しておくことが効果的です。制度を知るだけで終わるのではなく、誰が見ても同じ判断がしやすいように社内で整理しておくことが、結果として印紙税の課税における正しい判断につながります。 参考 ・国税庁「印紙税の手引|国税庁」 ・国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁」 ・国税庁「No.7120 契約書の写し、副本、謄本等|国税庁」 ・国税庁「No.7130 誤って納付した印紙税の還付|国税庁」 ・国税庁「No.7131 印紙税を納めなかったとき|国税庁」 ・国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁」 ・国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで|国税庁」 ・国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い|国税庁」 ・国税庁「印紙の消印の方法|国税庁」 ・e-Gov法令検索「印紙税法 | e-Gov 法令検索」 記事提供 株式会社TKC出版  1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。  税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。
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