2026年03月09日

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令和9年から法定調書の電子での提出が義務化!その対象は?

令和9年から法定調書の電子での提出が義務化!その対象は?

法定調書とは、会社などの支払者が、給与・報酬・料金・配当・不動産の使用料などの支払いについて、「誰に、いくら支払ったか」を税務署へ報告するために提出する書類です。令和9年1月1日以後に提出する法定調書からは、前々年(基準年)に提出すべきだった法定調書の枚数が一定数以上となる場合、e-Tax等による電子提出が義務化されます。

💡この記事のポイント
 ☑法定調書は「支払者等が給与や報酬など、誰にいくら払ったか」を税務署に報告する書類。
 ☑電子提出義務の基準枚数が2027年(令和9年)1月1日以後の提出分から法定調書提出枚数が100枚以上から30枚以上に引き下げられるため、対象企業が広がる。
 ☑法定調書を正しく提出できていないとペナルティがあるため、注意が必要。

1.法定調書はどんなときに作成し、誰に提出する必要があるのか?

(1) 法定調書とは?

 法定調書とは、所得税法などの法律に基づき、会社や個人事業主などの支払者が税務署へ提出することを義務付けられている書類の総称です。企業等は、従業員や外部の個人に対して支払った給与・報酬などの金額を法定調書として税務署に報告します。これにより、税務署は支払者から提出された内容と、受給者が行う確定申告等の内容を照合し、所得の申告漏れや不正を防ぎ、適正な課税を行うための基礎資料としています。
 主な提出対象となる支払いには、給与・賞与、退職金、個人事業主への報酬・料金、不動産の使用料(家賃)などがあります。どの支払いが提出対象になるかは支払い内容や金額などの要件ごとに定められているため、年末から年始にかけての支払データの整理は重要な業務となります。
 なお、国税庁が定める法定調書は63種類ありますが、人事・労務担当者が主に取り扱うのは、給与・退職金・報酬に関する法定調書が中心です。
 また、退職者や短期間勤務のアルバイトを含め、一定の要件に該当する給与の支払いは法定調書の提出対象となるため、対象者の漏れがないよう注意しましょう。
 法定調書は、原則として支払いを行った年の翌年1月31日までに税務署へ提出する必要があります。

法定調書のイメージ

 主な法定調書の提出義務者は次の通りです。

■主な法定調書の提出義務者
①「給与所得の源泉徴収票」は、居住者に対して俸給、給料、賃金、歳費、賞与その他これらの性質を有する給与の支払をする方です。

②「退職所得の源泉徴収票」は、法人の役員(令和8年1月1日以後に退職手当を支払う場合には居住者)に対して退職手当、一時恩給その他これらの性質を有する給与の支払をする方です。ただし、死亡退職により退職手当等を支払った場合は、相続税法の規定による「退職手当金等受給者別支払調書」を提出することになりますので、「退職所得の源泉徴収票」は提出する必要はありません。

③「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」は、外交員報酬、税理士報酬など所得税法第204条第1項各号ならびに所得税法第174条第10号および租税特別措置法第41条の20に規定されている報酬、料金、契約金および賞金の支払をする方です。

④「不動産の使用料等の支払調書」は、不動産、不動産の上に存する権利、総トン数20トン以上の船舶、航空機の借受けの対価や不動産の上に存する権利の設定の対価の支払をする法人と不動産業者である個人の方です。

⑤「不動産等の譲受けの対価の支払調書」は、不動産、不動産の上に存する権利、総トン数20トン以上の船舶、航空機の譲受けの対価の支払をする法人と不動産業者である個人の方です。

⑥「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」は、不動産、不動産の上に存する権利、総トン数20トン以上の船舶、航空機の売買または貸付けのあっせん手数料の支払をする法人と不動産業者である個人の方です。

【出典】国税庁「No.7400 法定調書の提出義務者|国税庁

(2) 一般の企業が提出する法定調書は主に6種類

法定調書の提出イメージ

 2025年(令和7年)12月現在、国税庁が定める法定調書は全部で63種類あります。ただし、この63種類すべてを一般の企業が提出するわけではありません。
 法定調書は、金融機関や保険会社、不動産会社、証券会社など、特定の業種・取引に限って提出が必要となるものもあります。このため、一般的な企業や事業者が、日常的な支払いに関連して税務署へ提出する必要がある法定調書は、主に次の6種類となります。

① 給与所得の源泉徴収票
② 退職所得の源泉徴収票
③ 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
④ 不動産の使用料等の支払調書
⑤ 不動産等の譲受けの対価の支払調書
⑥ 不動産の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

※①給与所得の源泉徴収票および②退職所得の源泉徴収票については、所得税だけでなく住民税の算定にも使用されるため、税務署に加えて、支払先の住所地の市区町村にも提出します。

【出典】・『事務所通信』2014年1月号 ・国税庁「No.7400 法定調書の提出義務者|国税庁

 主な法定調書と提出対象(記載対象者)の要件は次の通りです。

法定調書名 提出対象となる支払先(記載対象者)
給与所得の源泉徴収票・給与支払報告書 ①年末調整をしたもの
 1) 法人の役員及び現に役員をしていなくても令和7年中に役員であった方で、令和7年中の給与等の支払金額が 150 万円を超えるもの
 2)弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、弁理士、海事代理士、建築士等でその年中の給与等の支払金額が 250 万円を超える者
 3)上記1)および2)以外の者でその年中の給与等の支払金額が 500万円を超えるもの

②年末調整をしなかったもの
 1)「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し、その年中に退職した方、災害により被害を受けたため給与所得に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収の猶予を受けた方は、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの(法人の役員の場合は、50万円を超えるもの)
 2)「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し、その年中の主たる給与等の金額が2,000万円を超えるため、年末調整をしなかったもの
 3)「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった者(給与所得の源泉徴収税額表の月額表または日額表の乙欄または丙欄の適用者)、その年中の給与等の支払金額が50万円を超えるもの
退職所得の源泉徴収票・特別徴収票 令和7年中に支払が確定した法人の役員に対して支払う退職手当等
(令和8年1月1日以後に支払うべき退職手当等):すべての受給者(従業員分も含む)についても提出が必要
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 ①外交員、集金人、電力量計の検針人およびプロボクサー等の報酬・料金で、バー、キャバレー等のホステス等の報酬・料金、広告宣伝のための賞金で、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの
②医療情報基盤・診療報酬審査支払機構が支払う診療報酬で、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの
③馬主に支払う競馬の賞金で、同一人に対するその年中の1回の支払賞金額が75万円を超えるものの支払を受けた者に係るその年中のすべての支払金額
④プロ野球の選手などに支払う報酬、契約金で、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50,000円を超えるもの
⑤①~④以外の弁護士や税理士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50,000円を超えるもの
不動産の使用料等の支払調書 同一人に対するその年中の支払金額の合計が15万円を超えるもの。
ただし、法人に支払う不動産の使用料等は、賃借料を除く権利金、更新料等が対象(法人に対して、家賃や賃借料のみを支払っている場合は、支払調書の提出は必要ない)。
なお、不動産の使用料等には、土地、建物の賃借料だけでなく、次のようなものも含まれる。
①地上権、地役権の設定あるいは不動産の賃借に伴って支払われるいわゆる権利金(返還を要しないこととなる敷金等を含む)、礼金
②契約期間の満了に伴い、または借地の上にある建物の増改築に伴って支払われるいわゆる更新料、承諾料
③借地権や借家権を譲り受けた場合に地主や家主に支払われるいわゆる名義書換料
また、催物の会場を賃借する場合のような一時的な賃借料、陳列ケースの賃借料、広告等のための塀や壁面等のように土地、建物の一部を使用する場合の賃借料についても、支払調書を提出する必要がある。
不動産の譲受けの対価の支払調書 同一人に対するその年中の支払金額の合計が100万円を超えるもの。なお、不動産等の譲受けには、売買のほか、交換、競売、公売、収用、現物出資等による取得も含まれる。
不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書 同一人に対するその年中の支払金額の合計が15万円を超えるもの。
【出典】国税庁「令和7年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引

2.電子による提出義務の判定基準が引き下げに

 2027年(令和9年)1月1日以後に提出すべき法定調書から、e-Tax等による電子提出義務の判定基準(提出枚数)が「100枚以上」から「30枚以上」へ引き下げられます。

 法定調書の種類ごとに、前々年に提出すべきだった当該法定調書の枚数が(2027年(令和9年)1月1日以後に提出すべき分は)30枚以上である場合、書面提出ではなく、e-Tax・国税庁長官の認定を受けたクラウド等・光ディスク等のいずれかの方法で提出する必要があります。

【出典】国税庁「No.7400 法定調書の提出義務者|国税庁

(1) 電子による提出義務の判定基準の引き下げで何が変わるのか?

 2027年(令和9年)1月1日以後に提出すべき分から、前々年に提出すべきだった当該法定調書の枚数が30枚以上の場合に、電子提出(e-Tax等)が必要となります。
 基準枚数の引き下げにより、これまで書面提出だった事業者も電子提出への対応が必要となり、対象となる事業者の裾野が広がります。

(2) 電子による提出義務の判定基準の引き下げによる注意点

 電子による提出義務の判定基準が引き下げられたことで、実務上の注意点もいくつかあります。確認しましょう。

①判定は「前々年に提出すべきだった枚数」で行う

 電子提出義務の有無は、当年ではなく前々年の提出枚数で判定します。例えば、2027年1月に提出する法定調書(2026年分)の判定は、前々年に当たる2025年1月提出分(2024年分)の枚数で行います。

②対象となる企業が増えるため、早めの体制整備が重要

 基準枚数が30枚以上に引き下げられることで、これまで書面提出だった事業者も電子提出への切替えが必要になります。年末~1月の繁忙期に備え、担当者・手順・必要なデータ(マイナンバー等)を早めに確認しましょう。

③提出方法(e-Tax・認定クラウド等・光ディスク等)とデータ作成方法を確認

 提出方法は複数あります。自社の給与・支払システムからCSV出力できるか、e-Taxソフト/e-Taxソフト(WEB版)で作成するか、外部のクラウドサービスを利用するかなど、実務に合った方法を選び、事前にテスト送信等で手順を確認しておくと安心です。

(3) 違反したときのペナルティ

 法定調書(支払調書・源泉徴収票など)を提出期限までに提出しない、または偽りの記載(記録)をして提出した場合、所得税法第242条第5号により、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処される可能性があります。
 電子提出義務があるにもかかわらず書面で提出するなど、提出方法が要件を満たさない場合も「提出義務を果たしていない」と判断され得るため、対象となる場合は必ず所定の方法で提出しましょう。

3.具体的な電子による提出の流れ

電子で提出イメージ

(1) 事前準備

 事前準備として、次の点を確認しておきましょう。
① e-Taxの利用者識別番号の取得(未取得の場合)
② 電子証明書の準備(利用する提出方法・手続きにより必要)
③ 利用環境の確認(PC・ブラウザ・ネット環境)と、e-Taxソフト/WEB版の選定
④ 法定調書データの作成方法の確認(入力/CSV作成/給与システムからの出力など)
⑤ 本番前のテスト送信・事前点検(提出期限に備え、早めに動作確認)

(2) 電子で提出することによるメリット

 主なメリットとして、2点あります。それぞれ見ていきましょう。

①時間や場所に縛られず、提出できる

 税務署に行って提出書類を提出する必要がないため、時間や場所に縛られることなく提出することが可能です。

②入力間違いを未然に防ぐことができる

 e-Taxソフト等には必須項目のチェックや形式チェックなどがあり、提出前に誤りに気付きやすくなります。入力ミスや計算誤りの修正にかかる手戻りを減らせる点がメリットです。

4.まとめ

 法定調書は、「誰が・誰に・いくら払ったか」を明確にするために税務署に報告するための書類です。脱税と所得隠しが行われていないか、確認と防止の意味が含まれています。
 法定調書を提出している会社は、前々年に提出すべきだった法定調書の枚数を確認しておきましょう。対象となる法定調書が前々年に30枚以上(2027年(令和9年)1月1日以後に提出すべき分)であれば、当年分はe-Tax・認定クラウド等・光ディスク等による提出が必要です。少しでも不安があれば、税理士に相談してください。

【参考資料】

・『事務所通信』2012年1月号
・『事務所通信』2014年1月号
・国税庁「法定調書の種類及び提出期限|法定調書関係|税務手続の案内|国税庁
・国税庁「法定調書(源泉徴収票、支払調書)の作成と提出|国税庁
・国税庁「法定調書のe-Tax等による提出義務化の概要について | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
・国税庁「法定調書の光ディスク等による提出のご案内|国税庁
・国税庁「No.7400 法定調書の提出義務者|国税庁
・国税庁「No.7401 法定調書の種類|国税庁
・国税庁「No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁
・国税庁「No.7421 「退職所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁
・国税庁「No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等|国税庁
・国税庁「No.7441 「不動産の使用料等の支払調書」の提出範囲等|国税庁
・国税庁「No.7442 「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の提出範囲等|国税庁
・国税庁「No.7443 「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の提出範囲等|国税庁
・国税庁「No.7455 法定調書の提出枚数が100枚以上の場合のe-Tax、光ディスク等又はクラウド等による提出義務|国税庁

株式会社TKC出版

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 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
 税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。

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