2026年03月09日

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償却資産税とは?中小企業・個人事業主が知っておくべき申告のポイント

償却資産税とは?中小企業・個人事業主が知っておくべき申告のポイント

毎年1月は「償却資産税」の申告時期です。償却資産税は、事業で使う設備や備品を対象とした自己申告が必要な税金で、毎年決まった流れで対応することが必要です。この記事では、申告の基本的な考え方と、押さえておきたいポイントを分かりやすく整理します。

💡この記事のポイント
 ☑償却資産税は土地・建物以外の事業用設備に課税される自己申告税
 ☑毎年1月1日時点の保有資産を基準に、1月末までの申告が必要
 ☑日ごろから資産の取得や廃棄を適切に管理しておくことが重要

1.償却資産税とは?

償却資産税は、企業や個人事業主が事業のために保有している設備や備品(償却資産)に課される税金で、法律上は固定資産税の一部として扱われ、市区町村が課税します。
 固定資産と聞くと土地や建物をイメージしがちですが、パソコン、製造機械、看板など実際の事業ではそれ以外にも多くの資産が使われています。
 これらの資産は時間の経過とともに価値が低下するため、税務上は「減価償却資産」として扱われます。償却資産税は、土地・建物を除く、事業用の減価償却資産(機械、器具備品、構築物など)に課税される税金の通称です。

(1) 大きな特徴は自己申告が必要であること

 固定資産税の中で、償却資産は土地・建物とは扱いが異なります。土地や建物は登記情報によって所有者が分かりますが、事業用の設備や備品は企業内部に置かれているため、自治体はその存在を確認できません。
 そのため、自治体は「どの資産を、いつ・いくらで取得し、どこで使用しているのか」という情報を事業者自身に申告してもらい、その内容をもとに税額を計算します。このように、事業者の自己申告に依存して課税が行われる点が、償却資産税の大きな特徴です。

固定資産税の課税対象

(2) 誰が納税するのか

償却資産を事業のために保有しているすべての事業者に納税義務があります。株式会社や合同会社、医療法人、社会福祉法人のほか、商店や飲食店、サービス業などの個人事業主も含まれます。事業規模や資産の数量に関係なく、対象となる資産を保有していれば申告が必要になります。

2.課税対象となる資産・ならない資産

資産のイメージ

 償却資産税は、事業に使われている設備や備品なら何でも課税されるわけではありません。課税対象となるものと、ならないものがはっきり分かれています。この違いを理解することが、申告漏れや過大申告を防ぐうえでの第一歩になります。

(1) 課税対象となる資産

 償却資産税の対象となるのは、事業のために用いることができる資産で、減価償却の対象となる土地・建物以外の固定資産です。製造ラインや食品加工機、冷蔵設備といった機械装置のほか、パソコン、事務机、レジ、冷蔵庫、エアコン、フォークリフトなどの器具備品、さらには看板や駐車場の舗装路面、屋外照明、フェンス、内装の造作・間仕切りなどの構築物も含まれます。

(2) 課税対象とならない資産

 土地・建物は償却資産税の対象外で、固定資産税の中でも別区分です。
 また、次のような資産も、課税対象外です。

・自動車や原付バイクなどの車両(自動車税・軽自動車税の対象となるもの)
・無形固定資産(ソフトウェアや商標権、のれん等)
 ※ただし、ソフトウェアを動かすためのサーバー本体など、有形の部分は課税対象。
・繰延資産(開業費、開発費など)

(3) 実務で特に誤りやすい資産

 申告を行う際に特に迷いやすいのが、少額資産や附属設備、附帯設備の扱いです。

①少額資産の扱い

 少額の設備や備品については、税務上の処理と償却資産税の扱いが一致しない点に注意が必要です。税務では経費処理できる場合でも、償却資産税では金額ではなく、事業用の設備・備品として一定期間使用する性質があるかを基準に判断します。そのため、税務上は費用処理している資産であっても、固定資産性があれば償却資産税の申告対象となることがあります。

②建物附属設備・附帯設備

 典型的なのは、照明や配線、空調、看板などの設備です。建物と一体化して見える設備であっても、業務用として設置されているものは償却資産に該当するケースが多くあります。とくに店舗・工場の内外装工事で増設された照明・配線などは申告漏れしやすい項目です。

③中古で購入した設備

 新品であるか中古であるかにかかわらず、取得価額を基準に評価されるため、中古品も原則として申告が必要です。
 実務上は、特に看板、内装工事(照明・配線・造作)、エアコンなどの空調設備が申告から漏れやすい傾向があります。いずれも「事業には必要だが固定資産として意識しづらいもの」が多いため、注意して確認する必要があります。

3.申告・納付の流れと実務で気をつけたいこと

 償却資産税の手続きは毎年同じ流れで進みます。流れ自体はシンプルですが、準備や判断を誤ると余計な負担やリスクにつながります。
 なお、償却資産税の具体的な取扱いや判断基準の細部は自治体ごとに異なるため、実際の申告にあたっては、申告先の自治体が公表している手引きや案内資料を必ず確認するようにしましょう

(1) 年間スケジュールの全体像

 償却資産税には「賦課期日(ふかきじつ)」があり、毎年1月1日時点でその資産を保有しているかどうかで課税の対象が決まります。
 そのうえで、その年の1月31日までに市区町村(東京23区は都税事務所)へ申告書を提出し、5月~6月ごろ(自治体により異なる)に納税通知書が届く、というのが毎年の流れです。納付は自治体ごとに定められた回数に分けて行うのが一般的です。(例:東京都は年4回に分けて納付)

償却資産税の年間スケジュール例

(2) 賦課期日(1月1日)に注意

 課税対象かどうかは、1月1日時点でその資産を保有しているかどうかで判断されます。
 設備入れ替えや処分のタイミングが翌年の申告内容や税額に影響するため、注意が必要です。

(3) 申告書の提出

 申告書には、資産の種類、取得年月日、取得価額、設置場所などを記入します。提出方法は、紙での提出と電子申告(eLTAX)のいずれかで、最近は電子申告に対応する自治体が増えています。
 また自治体によっては、案内が届いた事業者について、償却資産がない場合でも「無し」の申告を求められることがあります。

(4) 評価と納税通知

 市区町村は、申告された資産の取得価額などをもとに、固定資産評価基準に従って評価額を算定します。税率は標準で1.4%ですが、詳細は各自治体で確認が必要です。
この評価額は、税務上の帳簿価額(減価償却後の金額)とは異なる考え方で計算されます。
 そのため、税務上はすでに償却が進んでいる設備であっても、事業に使用されている限り、一定の評価額が残り、償却資産税が課税されることがあります。
 こうして算定された税額は、5〜6月頃に固定資産税の納税通知書として届きます。通知書は総額のみが記載されることが多いため、申告書の控えを保管し、翌年以降の確認に備えましょう。

(5) 免税点のしくみ

 償却資産税には、評価額の合計が150万円未満であれば課税されない「免税点」があります。ただし、税額がゼロになる場合でも申告は必要です。評価額を決定するのは自治体なので、申告は忘れずに行いましょう。

(6) 実務で迷いやすいポイント

 償却資産税の実務で特に迷いやすいのは、「誰が申告するのか」と「使っていない資産をどう扱うか」です。税務上の処理や感覚とズレやすいため、次の点を意識して確認しましょう。

① リース資産の扱い

 リースで使用している設備については、見た目の所有関係だけで判断すると誤りやすくなります。
 ・所有権移転外リースは、原則として所有者(リース会社)が申告
 ・所有権移転リースは、原則として利用者が申告
 リース資産は契約形態や契約書の内容を確認し、どちらが償却資産税の申告を行う前提になっているかを整理しておく必要があります。

② 使っていない資産は「除却しないと課税が続く」

 償却資産税は、申告内容をもとに課税されるため、申告上資産が残っている限り課税が続きます。
 そのため、資産を廃棄・売却した場合は、実物の処分だけでなく、固定資産台帳での除却処理と、申告内容への反映まで行うことが重要です。
 これらができていないと、使っていない資産に対して税金を払い続けることになりかねません。

(7) 申告漏れが発覚した場合のリスクと申告漏れを防ぐポイント

 償却資産税は自己申告制であるため、漏れが発覚した場合は複数年分をさかのぼって課税されたり、延滞税が加算されたりすることがあります。看板や内装工事、空調設備など、自治体が重点的にチェックする分野での指摘も少なくありません。
 こうしたリスクを避けるためには、固定資産台帳を最新の状態に保つこと、前年に取得した資産に見落としがないか確認すること、年末に処分した資産をきちんと除却していること、リース契約や改装工事の内容を見直すことなど、毎年の申告前に最低限の点検を行う習慣が大切です。

4.優遇税制と償却資産税の関係

 設備投資を行う際、「税金が安くなる制度を使ったのだから、償却資産税も軽くなるはず」と考えてしまう方は少なくありません。しかし、償却資産税は法人税や所得税とはまったく別のルールで動いているため、この考え方は当てはまらないことが多いのが実情です。

(1) 税務で経費にしても、償却資産税は別にかかる

 税務上の優遇制度を使うと、設備の購入費用を早く経費にできます。ただし、これは法人税や所得税の計算を軽くするための仕組みです。
 一方、償却資産税は「帳簿上いくら残っているか」ではなく、「事業のために使うことができる状態の設備を保有しているかどうか」を基準に課税されます。そのため、帳簿上の金額がゼロになっていても、設備を事業のために使うことができる状態で保有している限り、償却資産税はかかり続けます。

(2) 固定資産税の特例は、償却資産税にも影響する

 一方で、すべての優遇制度が償却資産税と無関係というわけではありません。固定資産税そのものを軽減する制度については、償却資産税にも影響します。
 代表的なものが、「先端設備等導入計画」に基づく固定資産税の特例です。
 設備投資を検討する際は、税務上の優遇措置だけでなく、このような固定資産税の特例の対象になるかどうかもあわせて確認しておくことで、投資後の税負担をより正確に把握することができます。

参考 ▶ 東京都主税局「中小企業等経営強化法に係る課税標準の特例について」

5.中小企業が知っておきたいポイントと税理士の活用

 償却資産税は、毎年の決まりごととして淡々と処理されがちですが、償却資産税は自己申告制のため、評価額の算定や資産の漏れによって課税標準額が変わり、結果として税負担に影響します。裏を返せば、日頃の整備さえしておけば、余計な税金を払わずに済む、管理しがいのある税目でもあります。

(1) 資産台帳を整える

 申告のベースとなるのは固定資産台帳です。資産の名称や種類、取得日、取得価額、設置場所、廃棄や売却の有無など、最低限の情報を整理しておくだけでも、申告漏れや二重計上のリスクは大きく減ります。中小企業では、担当者の頭の中だけに情報があるケースも少なくないため、書面やデータとして残しておくことが重要です。

(2) 工事費の中身に気を配る

 店舗改装やオフィスの内装、設備更新の工事費には、償却資産税の対象となる部分が多く含まれます。照明や配線、空調、看板、外構といった項目は、器具備品や構築物、建物附属設備などに分かれ、判断を誤ると申告漏れにつながります。工事の見積書と請求書をよく確認し、どの部分が償却資産に当たるのかを検討することが大切です。

(3) 使っていない資産は「除却」までセットで

 古い機械や壊れた備品、移転前の店舗に残っていた設備など、現場ではもう使っていない資産が、そのまま台帳上だけ残っていることがあります。こうした資産は、実物の廃棄に加えて、台帳の除却と償却資産申告での反映まで行わないと、いつまでも税金がかかり続けてしまいます。

(4) 一度整えると、翌年以降は楽になる

 最初の年に資産台帳を整備してしまえば、次の年からは「新しく増えたもの」と「減ったもの」だけを確認すればよくなります。毎年ゼロから一覧を作るよりも、更新作業に近い感覚で進められるため、事務負担は大きく軽減されます。

(5) 税理士をどう活用するか

 償却資産税は自己申告制であるぶん、専門家の目が入ることで効果が出やすい分野です。構築物と器具備品の線引きや工事費の読み解き、不要資産の整理、特例の適用可能性の検討、自治体からの照会への対応など、税理士が関わることで、数年分のリスクをまとめて低減できる場合も多くあります。

6.まとめ

 償却資産税は、事業で使う設備や備品を持っていれば、規模の大小にかかわらず関係してくる税金です。土地や建物と違い、事業用の設備や備品は自治体が把握できないため、事業者自身が内容を申告する仕組みになっています。申告にあたっては、申告先の自治体が公開している手引き等をよく確認することが重要です。
土地・建物以外の事業用資産が対象であること、毎年1月1日時点で保有しているかどうかが基準になること、税務上の減価償却とは別の考え方で評価されること、といった基本を押さえておけば、大きな誤りは防げます。また、固定資産税の特例がある場合には、償却資産税にも影響することがある点も知っておくと安心です。
 日頃から資産台帳を整え、工事や設備導入の内容を把握しておくことは、償却資産税のためだけでなく、会社の設備状況を整理することにもつながります。必要に応じて専門家の力を借りながら対応すれば、償却資産税は過度に心配するものではなく、落ち着いて向き合える税金といえるでしょう。

株式会社TKC出版

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 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
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