2025年09月22日

クラウドファンディング成功の条件【CASE1】「公大株式会社 様」 顧客の声に真摯に向き合い総額1億円超を売り上げる

クラウドファンディング成功の条件【CASE1】「公大株式会社 様」 顧客の声に真摯に向き合い総額1億円超を売り上げる

鈴木公輔社長

1日のおよそ3分の1を占める睡眠。その時間を豊かにする寝装品を、三河地方の繊維素材を使って企画、販売しているのが公大だ。販売手段の一つとしてクラウドファンディング(CF)を採用しており、売上高に占める割合はうなぎ上りである。

 パジャマや布団カバー、シーツ、敷きパッドなど、寝る時に使用したり、寝室の装飾に用いられたりする寝装品。公大はその企画から販売に至るまで一気通貫で手がける。

 本社を置く愛知県蒲郡市(三河地区)は、愛媛県の今治や大阪府の泉州などと並び、日本有数の「繊維産業のまち」として名高い。

 「三河木綿は柔らかいガーゼ素材が特徴で、なかでも何層にも重ねた“多重ガーゼ”が有名です。身近にある最高の素材を使った商品づくりができるのが、われわれの強み。ラインアップは、ガーゼケットからパジャマ、枕カバーまで広がっています」(鈴木公輔社長)

 卸売会社や小売店との卸取引に加えて、消費者に対面販売するフェアなどにも出展していた同社。鈴木社長は、フェアを訪れる顧客と交わした会話から、商品開発のヒントを得ていた。しかし、業者が間に入る取引では、必ずしも顧客の声を商品に反映できていなかったという。そこで注目したのが、クラウドファンディング(CF)だった。

4重ガーゼでは、4枚のガーゼの内側を太い糸で粗く織り、通気性を高めた

4重ガーゼでは、4枚のガーゼの内側を太い糸で粗く織り、通気性を高めた

1.新商品お披露目の場として

 顧客の声に真摯に向き合い、製品づくりに着手。そうして完成した商品をCFで顧客に販売する──。これが公大が基盤に置いているビジネスモデルだ。

 2019年から始めたというCFの何よりの利点は、開発から販売までを社内で完結できるところにある。つまり、顧客の声を元に、売れると判断した商品をいち早く企画し、顧客に届けられるのである。CFを実施する前も顧客の声を取り入れた商品を開発していたが、卸売業者やバイヤーから評価を得られず、市場へ出回る機会のなかった幻の商品もあった。

 「CFでは、取引先が間に入らないため、生地の色や厚さなど、商品の仕様をある程度自由なタイミングで変更できます。CFこそ、われわれが取り組みたいと考えていた、顧客の要望に寄り添う商品開発を行えるプラットフォームです」

 鈴木社長はこれまで48回のプロジェクトを応援購入サイトの「マクアケ」で実施。延べ参加者は1万2,000名を上回り、購入総額は1億2,000万円を超える。リピーターの獲得も順調に進んでおり、現在は購入客の約20%が次回プロジェクトの商品を購入しているという。

2.年間スケジュールの効用

 一般にガーゼというと、冷感素材とのイメージがあり、実際、同社の売り上げの大半は4〜7月に集中していた。

 課題だった冬季の売り上げを確保するために立ち上げたのが、ガーゼ素材を使った毛布のCFプロジェクトだった。4重のガーゼを2枚重ねた商品で、適度な暖かさが評判を呼び、同プロジェクトでは590万円の売り上げを記録した。ガーゼ素材でありながら、保温性を打ち出したこの「8重ガーゼ毛布」は、従来の主要取引先である卸売会社との交渉では、販売にいたらなかったかもしれない。これほどの売り上げを確保できたのも、CFを実施したからこそである。

(左)「マクアケ」で好評を博した「8重ガーゼ毛布」、(右)オフィスの壁にCFの年間スケジュールなどを貼り出す

(左)「マクアケ」で好評を博した「8重ガーゼ毛布」、(右)オフィスの壁にCFの年間スケジュールなどを貼り出す

 いまや年間を通してさまざまなプロジェクトを行っている同社。売り上げの安定化を図るべく始めたのが、「年間スケジュール」の作成である。本社オフィスには、1年間のプロジェクト予定が貼り出されている。鈴木社長自身が作成したもので、各プロジェクトが、準備から実行、商品の発送までどのようなスケジュールで進行するかを見える化している。

 同時に、生地の仕入れ方法も大幅に変えた。従来はプロジェクトを実施するたびに生地を仕入れていたが、年間計画を念頭に必要な量を一括で仕入れるよう改めた。これにより、あるプロジェクトの売り上げが計画と比べて大きく増減しても、後続プロジェクトの販売量に応じて生地の使用量を調整するなど、柔軟な対応が可能になったのである。

3.二次利用で売り上げ倍増

 さらに特筆されるのが、プロジェクトの二次利用である。同社は、「マクアケ」で行ったプロジェクトを他のCF型販売サイトでも実施。商品の説明文や画像を使いまわせるため、追加コストはほとんどかからない。鈴木社長によると、どちらも同程度の売り上げが期待できるという。

 また、24年には海外から飛び込み営業があり、台湾でもガーゼケットのCFプロジェクトを実施。これが予想外の大ヒットとなり、5,000万円ほどを売り上げたというから驚く。複数のプラットフォームを活用し、同一商品のプロジェクトを二次利用するケースが年々増えていると鈴木社長は明かす。

 「CFを効果的に活用できている背景には、リピーターの方の声を大事にしてきたことが挙げられます。購入時や、商品到着時に顧客から寄せられるコメントには、欠かさず返信しています。『欲しかった商品が見つかりました』、『公大さんの商品だから安心して購入できます』といった声を目にすると、うれしくなりますね」

 顧客の声に誠実に向き合いつづける姿勢が、プロジェクトの成功とリピーター獲得の源泉となっているといえよう。

(協力・税理士法人ソラーレ/TKC出版・鈴木貴大)

会社概要
名称 公大株式会社
業種 寝装品企画販売業
設立 1949年8月
所在地 愛知県蒲郡市三谷町上野24・25
売上高 2億5,000万円
従業員数 10名
URL https://kohdai.co.jp
顧問税理士 税理士法人ソラーレ
顧問税理士 中根研一
(本店)愛知県豊橋市下地町字北村71-4
URL: https://www.solare-tax.com

掲載:『戦略経営者』2025年9月号

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