💡この記事のポイント
☑企業の成長・発展には自計化が最適な方法
☑人手不足・人材不足の中でも、進化したデジタル技術を活用すれば、自社で会計帳簿を作成することが可能
☑FXクラウドシリーズ(会計ソフト)のさまざまな機能を活用すれば多くの仕訳を自動計上することができる
☑自計化の体制が軌道に乗れば、経営者の戦略的な意思決定に役立つ情報がタイムリーに手に入る
☑会計事務所による適切なサポートを受けることで、会社の成長を加速できる
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- 1.企業の成長・発展には自計化が不可欠
- 2.自計化のための人材はどうすればよいか
- 3.デジタル技術で仕訳を自動化する
- (1) 銀行信販データ受信機能
- (2) 証憑保存機能
- (3) タブレットPOSレジからのデータ受信
- (4) 給与計算機能・販売管理機能との連携
- 4.仕訳の自動化の先にあるメリット
- (1) 365日変動損益計算書
- (2) 部門別業績管理
- (3) 取引先データベース
- (4) 業績評価マトリックス
- (5) 当期決算の先行き管理
- (6) 月次決算速報サービス
- (7) スマート業績確認機能
- 5.会計事務所によるサポート
- (1) 自計化体制の構築支援
- (2) 月次決算体制の構築支援
- (3) 経営計画の策定支援
- (4) 金融機関との信頼関係の構築支援
- 6.まとめ
1.企業の成長・発展には自計化が不可欠
自社の会計帳簿はどのように作成されていますか? 企業の成長・発展には自計化が最適な方法です。自計化とは、企業が自らの会計帳簿の作成を中心とした経理業務や財務管理を自社内で行うことを指します。
もちろん外部の会計事務所のチェックを受けて、正確性や適法性を担保することも必要です。しかし、帳簿の作成自体は専門家に依存せず、自社内で行うことにより、経営者は最新の財務状況や業績を把握しやすくなり、迅速な意思決定ができるようになります。
市場の変化に即応するためには、タイムリーな情報が不可欠です。近年、デジタル技術の進展により、自計化はますます重要な経営戦略となっています。
2.自計化のための人材はどうすればよいか
簿記の知識を持った社員に経理を担当してもらえれば問題ありませんが、社内に適した人材がいない、募集しても採用ができないという企業も多いでしょう。人手不足が顕著になっている昨今の環境では、もともといた経理担当者が定年などで退職し、その後の人材が見つからないというのもよくあるケースです。また、中小企業においては、そもそも経理専門の担当者を置くほどの人数的な余裕がないというのが、経営者の本音かもしれません。
経理未経験の従業員に対して、必要なスキルや知識を身に付けさせるための教育・研修を実施することも一つの手ですが、進化したデジタル技術を活用すれば、専門的な知識がなくても、ある程度の会計帳簿を作成することが可能です。自計化支援を得意とする会計事務所の支援を受けることにより、専門的知識を持った人員がいなくても、経理専門の担当者を置かなくても十分な自計化体制を構築できるでしょう。
3.デジタル技術で仕訳を自動化する
ここでは株式会社TKCが提供する会計ソフト「FXクラウドシリーズ」※1の機能を例に、デジタル技術で仕訳を自動化する方法を紹介します。
※1 TKC会員会計事務所の関与先企業専用のソフトです。
(1) 銀行信販データ受信機能
銀行・信用金庫のインターネットバンキング※2から取引データを自動受信し、自動的に仕訳として計上します。預金取引は一般的に仕訳全体の40%程度を占めており、この部分が自動化されるだけでも大きな省力化になります。
通帳記入のためにATMや金融機関の窓口に並ぶ必要もなくなり、手入力による金額の打ち間違いや入力漏れなども起きなくなります。
金融機関だけでなく、クレジットカード会社や電子マネーの支払明細を自動受信して、仕訳計上することもできます。
※2 99%超の金融機関(都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫)の法人口座に対応しています。
詳細はこちら
(2) 証憑保存機能
証憑(しょうひょう)とは、請求書や納品書、領収書など、取引や契約の内容を証明するための文書や記録のことを指します。
証憑保存機能は、請求書等の保存から仕訳までをデジタル化する機能です。2022年1月施行の改正電子帳簿保存法※3の電子取引保存要件にも対応しています。
取引先から請求書等を電子取引データ(PDF等)で受け取った場合は、電子のまま保管します。紙で受け取った証憑は、スキャンするか、スマートフォンで写真を撮って電子化して保管します。
保存された電子データから人工知能(AI)による高い読み取り精度※4で「取引先名」「日付」「金額」「消費税」など証憑の内容を読み取り、仕訳の候補を自動生成できます。仕訳候補の内容を確認して、補正の必要がなければそのまま仕訳計上します。補正が必要な場合は補正して仕訳計上します。補正した内容はシステムが学習し、次回同じような取引があった場合は、学習した内容が最初から表示されるようになります。学習を繰り返すことにより、ほぼ自動で仕訳を計上できるようになります。
また、証憑と仕訳を紐付けているため、1つの画面で並べて確認できます。証憑を探す手間がなくなり、チェック業務を効率化できます。

詳細はこちら
※3 電子帳簿保存法についてはこちらを参照
※4 「領収書等AI読取りオプション」の利用が必要です。
(3) タブレットPOSレジからのデータ受信
小売業や飲食店業などで、タブレットPOSレジ※5を利用している場合は、データ受信機能でタブレットPOSレジと連携することにより、タブレットPOSレジで集計した日々の売上データを取り込んで売上仕訳を計上できます。これにより売上仕訳の入力業務を大幅に省力化できます。

タブレットPOSレジは、iPad等のスマートデバイスを利用したPOSレジサービスで、従来のPOSレジと比較して次のような特長があります。
①低コストで利用できる。
②誰でも簡単に操作できる。
③売上データ等の情報をリアルタイムで確認できる。
④売上分析や顧客管理など、さまざまな機能を利用できる。
⑤コンパクトで、かつ、高いデザイン性。
※5 対応しているタブレットPOSレジ:ユビレジ、Airレジ、スマレジ
(4) 給与計算機能・販売管理機能との連携
FXクラウドシリーズには、給与計算機能と販売管理機能も搭載されています。
①給与計算機能
給与計算機能では、給与に関連する各種法令に則り、正確に給与計算業務を行うことができます。法令改正等にも迅速に対応し、法令に完全準拠した給与計算を行えます。勤怠管理システムから勤怠データを連携し、入力作業を省力化できます。
給与計算後は仕訳データを財務会計機能へ連動し、仕訳を簡単に計上できます。
②販売管理機能
販売管理機能では、見積から売上・請求・入金まで、販売に関する一連の業務を管理して、事務負担を軽減できます。
また、会計と販売管理の2つの機能が一体となっているため、売上伝票や入金伝票の作成と同時に売上データや入金データが会計に反映し、正確な業績をリアルタイムに捉えられるようになります。当然、インボイス制度への対応も万全です。
4.仕訳の自動化の先にあるメリット
簿記会計の知識がない担当者でも、仕訳を自動計上する機能を活用し、自社で会計帳簿を作成すること、つまり自計化ができるということをお分かりいただけましたでしょうか。自計化の体制が軌道に乗ったら、経営者がそこから得られる情報を活用して、業績を伸ばしていきましょう。
FXクラウドシリーズには、経営者の戦略的な意思決定を支援する次の機能が搭載されています。
(1) 365日変動損益計算書
変動損益計算書は、一般的な決算書の損益計算書とは違う、経営者の業績管理のための損益計算書です。FXクラウドシリーズの365日変動損益計算書では、365日前年同日比較が可能であり、自社に必要な利益・売上がズバリとわかります。
変動損益計算書が通常の損益計算書と異なる点は、費用が変動費と固定費に区分されることであり、これにより売上高に応じた限界利益(粗利)が明確になります。そして経営者の感覚にフィットする限界利益の管理が可能になります。
変動損益計算書の活用についてはこちらを参照
(2) 部門別業績管理
部門別業績管理 ※6 では、企業の組織体系に合わせて、部門ごとの「売上高」「限界利益」「固定費」「経常利益」等の状況を把握できます。
「どの部門が稼いでいるのか?」「どの地域の収益性が高いのか?」など、さまざまな切り口で自社の業績を「見える化」できます。
※6 FX2クラウド(法人用・個人用)で利用できます。
(3) 取引先データベース
取引先データベース ※7 では、取引先別の業績を管理できます。各取引先の売上順位やランク、取引額が減少傾向にある取引先を瞬時に確認できる業績管理機能です。
売上高が減少傾向にある取引先を注意顧客として自動抽出し、お知らせします。また、取引先を売上高全体に占める割合や金額からランク付け(S~Dランク)し、確認できます。
※7 FX2クラウド(法人用)で利用できます。
(4) 業績評価マトリックス
過去3年分のデータをもとに、「売上高」「限界利益率」から「商品・市場戦略の成果」を検証できます(伸び率によるマトリックス表で業績評価が出ます)。また、「限界利益率」「経常利益」から「業績管理の成果」を確認できます。黒字決算に向けた経営改善のヒントを発見することにつながります。
(5) 当期決算の先行き管理
最新の実績をもとに未経過月の予測を行い、当期決算の目標金額(当期着地点)をシミュレーションできます。黒字決算を実現するためのアクションプラン(打ち手)を早期に検討する材料となります。いわば、黒字決算に向けた先行き管理の“入り口”として活用できる機能です。
(6) 月次決算速報サービス
月次決算実施後の限界利益率や自己資本比率、コメント等がメールで届きます。会計事務所による巡回監査に経営者がやむを得ず同席できない場合でも、スマートフォン等で月次決算の報告を受け取り、迅速な経営判断が可能になります。
(7) スマート業績確認機能
最新の全社業績を、経営者が自分のスマートフォン等でいつでも閲覧できます。速報性の高い情報を中心に、経営者の気になる数字がダッシュボード表示されます。
5.会計事務所によるサポート
(1) 自計化体制の構築支援
市販のパソコン会計ソフトやクラウド会計ソフトは多数あり、それらを活用すれば「帳簿づくり」は何とかなると思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、きちんと指導を受けずに作成している会計帳簿は、専門家や税務署が見ると、正確でなかったり、法律に則っていなかったりすることがほとんどです。正しい帳簿ができていなければ、正しい経営判断もできませんし、税務申告でも誤りが出て余計な税負担にもつながりかねません。
TKCのFXクラウドシリーズは、専門家である税理士(TKC会員)の指導を受けることを前提としています。自社の状況を把握してもらった上で、導入から初期設定、使い方までサポートを受けることができ、スムーズに利用できるようになります。
(2) 月次決算体制の構築支援
FXクラウドシリーズを導入し、自計化体制が構築できた後は月次決算体制を構築支援を受けられます。毎月の巡回監査(TKC会員事務所の担当者が訪問して帳簿の内容チェック等を行う)を受けることで、帳簿の適法性、正確性、適時性が確保されます。帳簿に誤りがあればそれを訂正し、減価償却費や賞与引当金なども月次計上して、月次決算を行います。そして経営者は月次決算に基づく正しい財務データによって、会計事務所から経営助言を受けることができます。
(3) 経営計画の策定支援
TKC継続MASシステム(会計事務所用システム)により、TKC会員事務所が経営計画(中期・短期経営計画)の策定を支援します。
策定した経営計画からFXクラウドシリーズに予算を登録できます。これにより、毎月の巡回監査時に予算と実績の進捗状況を確認(予実対比)し、経営助言を受けられます。
経営計画の策定時には、TKC経営指標(BAST)※8を活用することにより、同業種・同規模の事業者の平均値や黒字企業、優良企業の数値との比較で自社の目標数値を検討することも可能となります。
※8 TKC経営指標(BAST)
TKC会員事務所の関与先中小企業25万社超の経営成績と財政状態を分析したものです。収録業種1,190種類、分析項目65項目を収録した、世界でも類例の無い経営指標です。
高い精度と速報性を持つ経営指標として、金融機関や税務当局などからも高く評価されています。
自社の現状分析や経営方針の検討に活用いただけます。
(4) 金融機関との信頼関係の構築支援
中小企業が成長していくためには、円滑な資金調達が欠かせません。そして「資金調達力」を高めるためには、金融機関との信頼関係を構築することが必要です。
「TKCモニタリング情報サービス」を活用することにより、決算書や試算表を金融機関にインターネット経由で送付できます。これまで金融機関に求められて決算書を郵送したり持参したりしていた場合は、そうして手間もなくなり、提供スピードも圧倒的に早くなります。
金融機関に適時に業績を開示することで、経営の透明性が高まり、金融機関と二人三脚で歩んでいける関係を築くことができます。このサービスは日本全国のほとんどの金融機関に採用されており、高く評価されています。
そしてTKC会員事務所の支援を受けている中小企業は金融機関からの評価も上がる傾向にあり、金融機関によっては、TKC会員事務所の関与先専用の金利優遇された融資商品が用意されているケースもあります。
6.まとめ
自計化は、企業の競争力を高めるための重要な手段です。迅速な意思決定、コスト削減、業務の透明性向上、リスク管理の強化、戦略的な経営計画の策定につながるなど、多くのメリットがあります。経営者として、自計化を積極的に推進し、企業の成長を図ることが求められています。
そしてデジタル技術の活用により、専門的な知識がなくても経理業務ができる時代になっています。専門的なスキルを持った社員がいる場合もデジタル技術で合理化すれば、業務時間の短縮につながり、その分の空いた時間を他の業務に充てることができます。
そして専門家である税理士(会計事務所)の指導と支援を受ければ、安心して経営に臨むことができ、自社の成長と発展につながることでしょう。
参考文献
TKC全国会 システム委員会監修『TKCシステムを活用した「経理事務省力化」の虎の巻』TKC出版

記事提供
株式会社TKC出版 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
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