文章のみならず画像や動画も生成するようになったAI。事業内容を視覚的に発信するツールとして活用する企業も現れているが、福島カラー印刷もその1社。複数のAIを使いこなしてサービス品質を高め、営業方針づくりにも生かしはじめている。
渡辺泰子社長
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雄大な山を背に、桜並木を疾走する1台のトラック。福島市に本社を置く福島運送のプロモーション動画のひとコマだ。風景とトラック、登場人物は架空のもの。この動画は、福島県内の雇用促進のため地元新聞社が発案し、東京都内の大学との連携により企画された。
AIを活用して制作したプロモーション動画
福島運送から依頼を受け、福島カラー印刷が生成AIを活用して制作した。渡辺泰子社長によると、動画制作の引き合いは足元で活発になっているという。
「人材採用に課題を抱える企業から、プロモーション動画の相談を受ける機会が増えています。予算がかぎられる場合、生成AIによる動画制作は有力な選択肢といえます」
同社は日常業務に「Google Workspace」を利用しており、動画制作にはソフトに付随するさまざまなツールを駆使した。前述のコラボ企画で考案されたシナリオを元に、ターゲット視聴者やストーリー展開、登場人物像を固めていった。制作に携わった木村氏が制作工程を振りかえる。
「まずGeminiを用いて、詳細なストーリーをつくった後、登場人物の家族構成や服装等のペルソナを設定しました。動画、音声の生成に使用したのは、Google Vids(ビズ)やGoogle Veo(ベオ)といったツールです。テキストデータで指示しても、イメージどおりの映像がなかなか出力されなかったので、トラックの写真等をあらかじめ読み込ませ、生成AIと対話しながら仕上げました」
動画の登場人物設定にもAIを活用した
難航したのは運送会社のロゴづくり。試行錯誤をくり返し、画像編集ソフトでロゴを制作後、AIで生成した社員の制服に貼り付けて完成した。実際に撮影した映像と見まがう精巧なつくりもさることながら、特筆されるのは制作期間である。企業のプロモーション動画を制作する場合、従来は撮影と編集、修正作業などでおよそ1週間を要していた。これが生成AIを活用することで、3日に短縮できたという。
1.営業方針のたたき台として
パソコン同様に社員の誰もが使いこなすツールになっていると、生成AIの社内における位置づけを話す渡辺社長。自身もウェブサイトで公開している「社長ブログ」の原稿執筆やアイデアの「壁打ち相手」として、Geminiをはじめとする生成AIを日々活用している。その範囲はルーティン業務の枠をこえ、経営の根幹も担いはじめた。
ウェブサイトで公開している「社長ブログ」(左)と、職業体験イベントで好評だった「みらいの名刺」。子どもの顔写真と憧れの職業から、成長時の写真をAIが生成する
「今年度の営業方針を策定する際にも生成AIを活用しました。営業報告や打ち手を話し合う月例会を毎月開催しており、議事録をAIに読み込ませているんです。業績数値も登録しておき、経営の方向性について相談しています。ただ、アドバイスされた事柄をうのみにせず検討し、社員の理解できる表現に改めたりしました。生成AIは、営業方針のたたき台をつくるのに役立っています」
そうして導き出したのが「BEYOND(ビヨンド)」というスローガン。目標を達成するだけでなく、現状を突破し、新たなステージに飛躍する意志を込めた。渡辺社長は生成AIを「休まずに働いてくれるコンサルタントのような存在」と言い表す。
多様なAIツールの活用により、業務のスピードと質が向上した一方、課題も浮かび上がってきた。背景にあるのは取引先におけるAIの急速な普及だ。近ごろは画像生成AIでつくったデザイン案を携え、相談にやって来る顧客も見受けられるようになった。
「取引先さまがAIで事前に制作したポスターなどを、当社がブラッシュアップする案件もあります。以前ならAIを用いて制作したと伝えるだけで、先進的な仕事をしているとの評価を得られました。AIの活用が当たり前になったいま、制作物の"AI臭"があまりにも強いと、顧客から敬遠される傾向にあります」
2.コミュニケーションを軸に
渡辺社長の言うAI臭とは、AIによる制作物であると相手に強く感じさせる状態を指す。例えば、顧客への提案資料に外国人の写真やイラストが多用されていれば、違和感を覚えるもの。ただ、一律に線引きするのはむずかしいと付け加える。
「AIによる制作物をどう感じるかについては、個人差があります。社員にはなるべくAI臭をなくそうと伝えているぐらいで、これはダメだとか、明確にルールを設けているわけではありません」
同社が主軸として展開しているのは、印刷を中心としたコミュニケーションビジネス。紙やウェブ、動画、ノベルティーといった媒体を組み合わせ、顧客の課題解決に資する提案に注力してきた。顧客の要望に応えるツールとしてAIは万能ではなく、コミュニケーションを重ね課題を掘り下げることで、解決のヒントを見いだす姿勢は今後も変わらない。渡辺社長は、将来をこう見据える。
「生成AIの進化は目覚ましく、いま標準的に使用しているツールも、明日には変わっているかもしれません。当社もメインで使用するAIをChatGPTからGeminiに切り替えました。AIを使用するようになって多様なアイデアが生まれ、業務が早く回るようになったのは確かですから、ツールのひとつとしてこれからも有効活用していきたいです」
(取材協力・髙橋英樹税理士事務所/本誌・小林淳一)
| 名称 | 福島カラー印刷株式会社 |
|---|---|
| 業種 | 広告業 |
| 設立 | 1982年11月 |
| 所在地 | 福島県福島市さくら3-2-7 |
| 売上高 | 3億1,000万円 |
| 従業員数 | 28名 |
| URL | https://f-color.co.jp |
| 顧問税理士 | 髙橋英樹税理士事務所 顧問税理士 髙橋英樹 福島県福島市松木町12-15 URL: https://minori-kaikei.jp |
掲載:『戦略経営者』2026年9月号
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