2026年06月22日

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中小企業の海外取引で知っておきたい税務の基本

中小企業の海外取引で知っておきたい税務の基本

 海外に商品を売る、海外から仕入れる、海外企業にお金を払う――そんな時に中小企業が迷いやすい税務について、輸出入の消費税、源泉徴収、租税条約と届出の3つに絞って整理し、契約前・通関前・送金前に何に気をつければよいかを、初めて海外取引に取り組む人にも分かりやすく解説します。

💡この記事のポイント
 ☑輸出は、必要書類が揃っているかに注意
 ☑輸入は、通関時に税金の負担が出ることと、誰の名義で輸入申告するかに注意が必要
 ☑海外企業への支払いは、何の代金かによって源泉徴収や租税条約の届出が変わる

1.海外取引で気をつけたい税務の確認

 海外取引というと、以前は一部の大きな会社の話という印象があったかもしれません。
 今では中小企業でも、海外に商品を売る、海外から仕入れる、海外企業と仕事をするといったことが、以前より現実的な選択肢になっています。
 ただ、海外取引は売り先や仕入先を見つけたら終わりではありません。つまずきやすいのが、契約、通関(貨物を日本に入れるために税関で行う手続)、送金の前後で出てくる税務の確認です。

 国内取引の感覚で進めると、あとで次のようなことが起こりがちです。

・輸出だから消費税は気にしなくてよいと思っていたが、書類が足りず処理に迷った
・海外から仕入れた商品は、売れてから税金を考えればよいと思っていたが、通関の時に資金が必要になった
・海外企業への支払いをそのまま送金しようとしたが、源泉徴収が必要かどうか分からなかった
・租税条約が使えると思っていたが、届出が間に合わなかった

 つまり、海外取引で大事なのは、「取引が始まってから税務を考える」のではなく、契約前・通関前・送金前に、どこで確認が必要になるのかを知っておくことです。
 この記事では、その入口として、次の3点に絞って取り上げます。

ポイント 最初に確認したいこと
輸出入と消費税 輸出と輸入で、消費税の扱いがどう違うか
海外企業への支払いと源泉徴収 どんな支払いで、日本での税金を差し引く必要があるか
租税条約と届出 条約が使えるか、使うには何をいつまでに出すか

 海外取引では、税務以外にも、関税(輸入する貨物にかかる税金)、通関手続、代金回収、契約条件など気をつけたいことがあります。なかでも本記事では、中小企業が最初につまずきやすい税務に絞って、輸出入の消費税、海外企業への支払いと源泉徴収、租税条約と届出を取り上げます。
 大事なのは、取引の場面ごとに確認することが違うと知っておくことです。たとえば、海外に商品を売る時(輸出)と、海外から商品を仕入れる時(輸入)とでは、消費税の扱いが変わります。海外企業にお金を払う時は、その支払いが商品代金なのか、使用料なのか、業務の対価なのかを確かめる必要があります。さらに、租税条約が関係する場合は、必要な届出が支払いまでに間に合うかも確認が必要です。
 こうした違いが分かっていれば、契約や送金の直前に慌てずにすみます。
 次章では、まずいちばん基本になる輸出入と消費税から取り上げます。

2.輸出入と消費税の基本を知る

 海外取引でまず気をつけたいのが、消費税です。輸出と輸入では扱いが違うため、分けて考えます。

(1)輸出では、必要書類に注意する

 輸出では、一定の要件を満たした取引について、売上に消費税はかかりません。こうした扱いを「輸出免税」といいます。通常、国内から商品(モノ)を海外に送る取引は、この輸出免税の対象になります。
 このコラムでは、主に商品(モノ)の輸出を前提に話を進めます。

国税庁タックスアンサーNo.6551より
「販売が輸出取引に当たる場合には、消費税が免除されます。」

 輸出でまず気をつけたいのは、その取引が輸出取引等に当たることを示す書類が必要になることです。取引の内容によって違いはありますが、輸出許可書、税関長の証明書、帳簿、契約書などを原則7年間保存しなければなりません。書類が足りないと、後から免税が認められず、消費税の納付が必要になることがあります。

 また、輸出売上に消費税がかからなくても、輸出するために国内で仕入れた商品や経費に含まれる消費税までなくなるわけではありません。こうした消費税は、申告の際に差し引くことができ、これを「仕入税額控除」といいます。輸出の割合が高い会社では、還付になることもあります(輸出還付金)。国内での仕入れについてはインボイス(適格請求書)の保存もあわせて確認が必要です。

 輸出では、次の点に気をつけると分かりやすくなります。

輸出で確認したいこと 内容
必要書類 輸出許可書、税関長の証明書、帳簿、契約書など
保存期間 原則7年間
申告で気をつけたい点 仕入税額控除や還付の可能性があるか

(2)輸入では、引取りの時の税負担と輸入名義に注意

 輸入では、消費税がかかるのは販売した時ではなく、貨物を日本で引き取る時です。海外から届いた貨物は、すぐに自由に使えるわけではありません。いったん保税地域という税関の管理下に置かれる場所に入り、輸入申告の手続きをして、関税や消費税を納めたうえで引き取る流れになります。つまり、商品がまだ売れていない段階でも、通関の時にお金が出ていきます。そのため、輸入では商品代金だけで採算を見ないことが大切です。

 なお、輸入では、消費税だけでなく、関税の負担が出ることもあります。また、費用負担や通関手続の分担は、インコタームズという貿易条件によって変わります。今回は税務に絞って説明していますが、実際の採算を見る時は、関税や契約条件もあわせて考える必要があります。

 消費税は、商品代金そのものだけではなく、商品代金に運賃や保険料を含めた価格(CIF価格と呼ばれます)をもとに、関税などを加えた額で計算されます。初めて輸入する場合は、仕入価格だけでなく、引取りの時にいくら必要になるかまで考えておきたいところです。

 もう一つ大事なのが、誰の名義で輸入申告をするかです。輸入では、貨物を保税地域から引き取る者が消費税の納税者になり、原則としてその人が輸入申告をします。そして、輸入時に払った消費税を自社の消費税申告で処理できるのも、その輸入申告をした者です。輸入代行業者の名義で申告していると、自社が代金を負担していても、自社側では処理できないことがあります。輸入代行を使う場合は、契約書上の買主だけでなく、通関上の名義まで気をつける必要があります。

 輸入では、次の点に気をつけたいところです。

輸入で確認したいこと 内容
いつ消費税がかかるか 保税地域からの引取り時
誰が消費税を納めるか 貨物を引き取る者
税額計算のもとになる額 CIF価格に関税などを加えた額
通関上、誰の名義で輸入申告をするか 貨物を引き取る者(通常は輸入申告をした者)が消費税の納税者になる

3.海外企業への支払いと源泉徴収、契約条件

 海外企業にお金を払う時は、相手が海外だからといって、日本の税金が関係ないとは限りません。
 支払いの内容によっては、日本の税法上、支払う側が税金を差し引いて納める源泉徴収が必要になります。大事なのは、海外に送金すること自体ではなく、何に対して払うお金なのかです

(1)まず気をつけたいのは、何の代金なのか

単純な商品代金だけの支払いであれば、通常は源泉徴収が問題になる場面は多くありません。気をつけたいのは、商品代金とは別に、使用料や日本での作業代などが含まれる場合です。日本の税法では、日本で生じた所得とされるものが源泉徴収の対象になります。
 特に気をつけたいのは、たとえば次のような支払いです。

・海外企業のソフトウエアを日本で使うために、利用料を払う場合
・海外企業の特許やノウハウを使うために、ロイヤリティを払う場合
・海外企業の技術者に日本で機械の設置や調整、技術指導をしてもらい、その作業代を払う場合
・海外企業から機械設備を借りて日本で使い、その使用料を払う場合
・海外企業からの借入れに対して利息を払う場合、または海外株主に配当を払う場合

 請求書に fee や royalty と書かれていても、それだけで判断できるとは限りません。
 業務委託費のように見えても、実際にはライセンス料が含まれていたり、日本で行った作業の対価が含まれていたりすることがあります。そのため、請求書だけで決めず、契約書、発注内容、作業を行う場所まで確認し、何に対する支払いかをはっきりさせることが大切です。

(2)契約金額の決め方によっては、負担が増える

 源泉徴収が必要な支払いでは、契約書の金額の決め方にも気をつけたいところです。
 海外企業との契約では、相手が自分たちの手取り額を前提に話してくることがあります。この条件をそのまま受けると、日本側が税金分を負担する形になり、見積もりよりコストが増えることがあります。
 たとえば、ロイヤリティなどで源泉徴収が必要な契約を、相手の手取り額(Net)で結んでしまうと、日本側が税金分を上乗せしないと、相手に約束どおりの金額を渡せません。
 その結果、契約後に想定外の持ち出しが増え、採算が崩れることがあります。

 そのため、契約では、金額が総額(Gross)なのか、相手の手取り額(Net)なのかを曖昧にしないことが大切です。
 あわせて、税金を誰が負担する前提なのかも、契約前にはっきりさせておきたいところです。ここが曖昧なまま進むと、あとで行き違いが起こりやすくなります。

(3)送金の直前ではなく、契約前に気をつける

 源泉徴収は、実際に支払う時に行います。ただ、送金の直前に考えればよいわけではありません。直前になってから確認を始めると、請求書の記載だけでは判断できない、契約書に作業場所が書かれていない、商品代金とサービスの対価が分かれていない、といったことが見つかりやすくなります。そうなると、社内確認も相手先との調整も間に合いにくくなります。源泉徴収をする時期は、原則として実際に支払う時だと国税庁も案内しています。
 海外企業との契約では、少なくとも次の点は早めに気をつけたいところです。

・何に対する支払いか
・源泉徴収が必要か
・契約金額は総額か、手取り額か
・税金を誰が負担する前提か

 こうした点は、契約条件を固める前なら見直しやすい一方で、送金の直前になると修正しにくくなります。まずは支払いの内容をはっきりさせ、そのうえで契約条件まで確認しておくことが大切です。

4.租税条約と届出

 海外企業への支払いで源泉徴収が関係しそうな時は、次に租税条約を確認します。
 租税条約は、同じ所得に日本と相手国の両方で税金がかかりすぎないように調整するためのルールです。支払いの内容や相手国との条約によっては、日本での税率が軽くなったり、免除されたりすることがあります。ただし、条約があるだけで自動的に使えるわけではありません

財務省「我が国の租税条約等の一覧」

(1)条約が使えるかは、支払いの内容で変わる

 租税条約でも大事なのは、何に対する支払いかです。
 3章で整理したとおり、商品代金なのか、使用料なのか、利子なのか、配当なのかによってその支払いの扱いは変わります。租税条約による軽減や免除も、国ごと、支払いの種類ごとに内容が違うため、まずは支払いの中身をはっきりさせる必要があります。条約がある国との取引だからといって、すべての支払いで税率が下がるとは限らないからです。
 源泉徴収に関係するライセンス料やロイヤリティ、利子、配当などは、租税条約の対象になるかどうかを特に気をつけたい支払いです。支払いの内容が曖昧なままだと、条約が使えるかどうかも判断しにくくなります。

(2)条約を使うには、届出が必要になる

 租税条約による軽減や免除を受けるには、原則として「租税条約に関する届出書」を提出します。
 届出書は支払いの内容によって様式が分かれていて、支払者ごとに作成し、最初にその所得の支払を受ける日の前日までに、支払者を通じて税務署へ提出します。

国税庁タックスアンサーNo.2888より
「最初にその所得の支払を受ける日の前日までに、支払者を経由して支払者の納税地の所轄税務署長に提出します。」

 条約によっては、届出書だけで足りないこともあります。
 たとえば、特典条項がある条約では、特典条項に関する付表や居住者証明書が必要になります。特典条項とは、条約による軽減や免除を受けられる相手かどうかを確認するためのルールです。相手先に書類を用意してもらうこともあるため、送金の直前に動き始めると間に合わないことがあります。

 なお、一定の場合は、届出書等に記載すべき事項を電磁的方法で提供したり、支払者から税務署へe-Taxで送信したりすることもできます。
 また、届出が前日までに間に合わない場合は、条約の税率ではなく、いったん国内法の税率で源泉徴収を行うことになります。
 その後、「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を提出して、差額の還付を求めることはできますが、手続が増え、相手先とのやり取りも必要になります。

(3)最終確認は、契約書にサインする前に行う

 海外取引では、税務の問題が見つかってから契約条件を直そうとしても、相手先との調整が難しいことがあります。
 特に、支払条件、源泉徴収が必要かどうか、租税条約の届出、輸入名義は、後から直しにくい項目です。費用負担や引渡しの条件、支払条件を固める前に、税務上の扱いもあわせて整理しておくことが大切です。
 契約書にサインする前に、少なくとも次の点は確認しておきたいところです。

・何に対する支払いか
・源泉徴収が必要か
・租税条約が使えるか
・届出や必要書類が初回の支払いまでに間に合うか
・輸入がある場合は、通関上の名義が誰になるか

 海外取引では、販路や仕入先を考えるのと同じくらい、税務も早めに考えておくことが大切です。
 「売る時」「仕入れる時」「支払う時」で気をつけることが違うと分かっていれば、海外取引を必要以上に難しく考えずに進めやすくなります。

参考

国税庁「輸出取引の免税」
国税庁「輸入取引」
国税庁「非居住者等に対する源泉徴収のしくみ」
国税庁「租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)」

ジェトロ「輸出時の消費税:日本」
ジェトロ「源泉所得税(Withholding Tax):日本」
ジェトロ「租税条約」
ジェトロ「インコタームズ2020」

株式会社TKC出版

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 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
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