貸借対照表は月末や期末などの一定時点における会社の財政状態を表しており、その大局から会社の健康状態がわかります。貸借対照表を読みこむ際には、金額の多寡だけでなく、構成割合のバランスに注目することが大切です。また、前期や同業他社と比べてどのように変化したかという視点も欠かせません。この記事では、貸借対照表から財政状態をつかむために押さえておくべき4つの視点「構成割合」「資金の調達源泉」「前期との比較」「同業他社比較」を紹介します。
💡この記事のポイント
☑会社の財政が健全である例として、①固定資産が<固定負債+自己資本>よりも抑えられている、②売上債権に大幅な増加が生じていない、③たな卸資産が必要な範囲内に抑えられている、④内容の不明瞭な資金調達や運用がない、という特徴がある。
☑他人資本に頼りすぎていないか、前期と比較・同業他社と比較してどうかという視点も欠かせない。
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- 1.貸借対照表のきほん
- 2.貸借対照表を見る4つの視点
- (1) 構成割合を見てみよう
- (2) 資金の調達源泉を見てみよう
- (3) 前期と比較してみよう
- (4) 同業他社と比較してみよう
- 3.外部環境の変化に強い骨太な経営を目指せ
1.貸借対照表のきほん
貸借対照表は、月末や期末などの一定時点における会社が有するすべての資産と負債・純資産を表しており、会社の財政状態がわかります。
貸借対照表を構成する資産、負債・純資産
・資産は「流動資産(1年以内に現金化できるもの)」「固定資産(1年を超えて現金化できるもの)」「繰延資産」に区分されている。
・負債は「流動負債(1年以内に返済すべきもの)」「固定負債(1年を超えて返済すべきもの)」に区分されている。
・純資産は、株主が投下した「株主資本」と、過去から今までの利益の蓄積である「株主資本以外(利益剰余金)」に区分されている。
資産、負債・純資産が示すもの
・資産を見れば、会社の資金の運用形態(どこにお金が使われているか)がわかる。
・負債・純資産を見れば、会社の資金の調達源泉(どこからお金が入ってきたか)がわかる。
2.貸借対照表を見る4つの視点
次の4つの視点で貸借対照表から会社の財政状態を把握しましょう。
視点1:構成割合(バランス)
資産、負債及び純資産の構成割合(バランス)はどうか?
視点2:資金の調達源泉
自己資本中心か、他人資本に頼りすぎていないか?
視点3:前期との比較
前期の数値・構成比と比較して、大きく変化したものがあるか?
視点4:同業他社比較
同業他社の数値・構成比と比較して大きく違うところがあるか?
(1) 構成割合を見てみよう
金額の多寡ではなく、構成割合から、次のようなことに注目します。
① 固定資産が<固定負債+自己資本>を超えてふくらんでいないか?
② 売上債権がふくらみすぎていないか?
③ たな卸資産を必要な範囲内に抑えられているか?
④ 仮払金・立替金・役員貸付金・仮受金・役員借入金を抑えられているか?
①固定資産が<固定負債+自己資本>を超えてふくらんでいないか?
固定資産の割合と、<固定負債+自己資本>の割合を比較し、固定資産が大きくなっていないかどうかを確認しましょう。
下のケース1のように固定資産の割合のほうが大きい場合、短期借入金で設備投資を行っている可能性があります。
1年以内に支払いまたは返済しなければならない流動負債の支払いまたは返済には、まず1年以内に現金化される流動資産から充てるのが原則となります。
②売上債権がふくらみすぎていないか?
売掛金などの売上債権が大幅に増加していないかどうかを確認しましょう。
下のケース2のように売上債権が大幅に増加している場合には、キャッシュが手元に確保できておらず、流動負債の返済が安定して行われていないことがあります。
現状ある売上債権について、本当に1年以内に現金化できるものなのか、1年以内に回収できても流動負債の支払いができない可能性はないかを把握できている状態がベストです。
③たな卸資産を必要な範囲内に抑えられているか?
たな卸資産がいつも以上に増えていないかどうかを確認しましょう。
たな卸資産は、他の資産に比べて流動性が低く、不良在庫や不正等が生じる可能性もあります。下のケース3のように、たな卸資産が必要以上にふくらんでいる場合には、手元のキャッシュが充分に確保できていない可能性があります。
売上代金の入金前に仕入代金の支払いが発生することによる運転資金の圧迫は許容範囲か、借入れに依存して次々発生する支払利息に悩まされていないかなど、在庫管理のきほんに立ち返るようにしましょう。「いつもと違う」という感覚も軽んじないことが大切です。
④仮払金・立替金・役員貸付金・仮受金・役員借入金を抑えられているか?
悪い例を見てみましょう。ケース4のように、内容の不明瞭な多額の資金調達や運用が発生している場合、健全な財政状態とはいえません。資金繰りの悪化から生じている場合もあれば、経営者と会社の線引きがはっきりしないまま頻繁に資金の出し入れなどを行っている場合もあります。
仮払金・立替金・役員貸付金・仮受金・役員借入金が多く生じていないかどうかを確認しましょう。多く生じているときは、なぜ資金が使われたのか、もしくはなぜその資金調達が行われたのかなどを明らかにするとともに、再発防止策を講じる必要があります。
(2) 資金の調達源泉を見てみよう
2つ目の視点は、資金の調達源泉です。貸借対照表の負債(他人資本)と純資産(自己資本)は、どこからお金が入ってきたか(資金の調達源泉)を表しています。自己資本が大きいほど返済を要する他人資本が少なくてすむため、それだけ会社の健全性が高いといえます。
■貸借対照表でわかる自己資本と他人資本
【他人資本】会社の外部から調達した資金で返済・支払いが必要。
(例)・銀行から調達した借入金
・仕入先から調達した商品の買掛金等
【自己資本】会社が自ら調達した資金で、返済が不要。
(例)・資本金
・利益剰余金(利益の蓄積)等
(3) 前期と比較してみよう
3つ目の視点は、前期との比較です。前期の貸借対照表と比較することにより、財政状態の変化が確認できます。月次決算を行っていれば、より直近の数字と比較することも可能でしょう。
その年、その季節だけに生じる数字もあります。増減の大きいところは「具体的に何が増減したのか」「なぜ増減したのか」を確認しましょう。
(4) 同業他社と比較してみよう
4つ目の視点は、同業他社比較です。同業他社のデータは、TKC経営指標(BAST)を活用しましょう。BASTは、全国のTKC会員事務所が月次巡回監査を行った関与先のデータを集約したもので、収録社数26万社超と、世界でも類がない経営分析資料となっています。
対前年売上高比率、限界利益率、労働分配率、自己資本比率などを同業他社平均と比較することにより、自社の強みや弱みが確認できます。
3.外部環境の変化に強い骨太な経営を目指せ
ここまで、貸借対照表からわかる会社の財政状態を解説してきました。
ただし、景気の変化や材料費の高騰の影響を受けやすい中小企業では、2カ月前までは問題なかったが、1カ月前から一気に厳しくなった、ということも少なくありません。
今、健全性が高い中小企業であっても、一時的なものだろうと思っていた資金繰りの悪化からなかなか立ち直れないということも起こりえます。中小企業では、節税のために利益をほとんど出さなかったり、赤字が続いたりするなどの理由により、自己資本が少なくなり、自己資本比率が低下するケースが見受けられます。返済を要しない自己資本の割合が小さくなると、安全性が損なわれて抵抗力が弱くなり、病気にかかりやすい虚弱体質となります。
したがって、外部環境の変化にも対応できる会社であるためには、常日頃から自己資本比率を増加させ骨太の経営を行っていくことが重要となります。具体的な対策の検討にあたっては、税理士などの専門家と一緒に検討しましょう。
参考文献
・『わかる財務分析できる経営助言』(TKC出版)
・『後継者塾テキスト 会社を発展させる経営者になるために』(TKC出版)
記事提供
株式会社TKC出版
1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。


