2026年08月20日

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月次決算の“すごい効果”「有限会社ボールパークドットコム 様」 宮崎発スポーツブランドが業界に新風を吹き込む

月次決算の“すごい効果”「有限会社ボールパークドットコム 様」 宮崎発スポーツブランドが業界に新風を吹き込む

宮崎県に本拠を構える野球用品メーカーが、全国の野球ファンや野球関係者の間で注目を集めている。ブランド名は「JB(ジャパン・ボールパーク)」。「和牛JBグラブ」を武器に、業界へ新風を吹き込みながら、国内有力ブランドの一角を目指して成長を続けている。

(写真)左から税理士法人アイビーパートナーズの河野雄太氏、山内恵美専務、山内康信社長、久野浩史税理士

 創業者である山内康信社長は宮崎出身。少年時代から野球に打ち込み、明治大学野球部でもプレーした。卒業後は損害保険会社へ就職。15年間会社員として働くも、心中には「いつか野球にかかわる仕事がしたい」との思いがあった。

 その夢を追いかけ、2002年に独立。メーカーを目指して地元で野球用品事業をスタートさせる。しかし、その船出は決して順風満帆ではなかった。

 山内社長は言う。

 「周囲からは"無理だろう"と言われたりもしました。知名度も資金もありませんでしたから」

 しばらくは雌伏の時代が続いた。結婚を機に09年に入社した山内恵美専務はこう言う。

 「いばらの道に飛び込んだ形です。スポーツ用品の販売やスポーツ施設の管理業務などを手掛けながら、必死に経営基盤を築いている頃でした。手取りは10年ほど雀の涙状態でした(笑)が、やりがいのある仕事だと感じていました」

 転機となったのは、宮崎県産和牛との出会いだった。

 「宮崎で17年に開催された東京六大学野球オールスターゲームin宮崎に合わせ、宮崎らしい製品を作れないかと思い、目をつけたのがブランド牛である宮崎県産牛の皮でした」

 食用として育てられた和牛の皮には独特の特徴がある。脂分が豊富でしなやか、軽量でフィット感が高い、繊維が緻密で型崩れしにくい。試作品としてつくられたグラブやミットには、従来品にない魅力があった。

 「これは世界に通用する素材になる」と直感した山内社長。

 原皮の調達やなめし工場との連携など、ゼロから仕組みを構築。長い準備期間を経て「和牛JBグラブ」が誕生した。18年には本格的なブランド展開を開始。ここからJBブランドの快進撃が始まる。

左から本社(写真下)と工場(写真上)、さまざまな色の牛革、「和牛JBグラブ」

左から本社(写真下)と工場(写真上)、さまざまな色の牛革、「和牛JBグラブ」

1.金融機関との関係が良好に

 ちょうどその頃(18年4月)、新たに税務顧問として迎えたのが久野税理士事務所(現・税理士法人アイビーパートナーズ)の久野浩史税理士である。

 「山内社長とはじめて面談したとき、カラー印刷した5カ年の経営計画書を携えてこられて驚きました。将来をちゃんと考えておられる方だなという印象とともに、事業にかける熱意を感じました」(久野税理士)

 もちろん現在も、『継続MASシステム(※)』による単年度と中期(5年)の経営計画を策定しており、山内社長は「設備投資や突発的な環境変化があると、久野先生や河野(雄太)さんの支援を受けながら、中期計画を作り直しています」という。

 実は、以前は、年1回の決算でようやく業績が分かるような状況だった。そのため、17年の税務調査の際には「何をどう説明すればよいのかオロオロしてしまいました」(山内社長)という。

 また、金融機関との取引も容易ではなく、運転資金や設備資金の調達に苦心した。売り上げが伸びても資金不足に悩まされることが少なくなかった。

 そんな状況を変えたのが税理士法人アイビーパートナーズの実践する月次決算だった。

 山内社長は言う。

 「予算と実績の比較によって毎月の進捗状況が把握でき、また、損益や資金繰りの明確化で営業担当者などへの的確な指示が可能になりました。それと、なにより金融機関との関係がよくなったのが大きいですね」

 自社工場の新設や木製バットの大量仕入れなどで、まとまった資金が必要となる場面が増えていた。しかし、月次決算により在庫や業績状況が明確になったことで、金融機関との対話がスムーズになった。

 また、同社では「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」を利用して、毎月の試算表と年次決算書を取引金融機関に送っている。巡回監査、月次決算実施後の財務データが適時に送られるのだから、金融機関側も融資の検討に入りやすくなるのは当然である。

 さらに、19年4月には、銀行系のベンチャーキャピタルから融資を受け、和牛JBグラブの自社工場を建設。本店を作った直後だったので、さすがに金融機関からの融資は難しかったのである。これも、久野税理士の推薦だった。

 巡回監査を担当する河野氏は言う。

 「毎月、2時間くらいいただいて山内社長、専務と、その月の振り返りと資金繰りの打ち合わせなどを行います。僕も学生時代は野球部で、久野所長から"指名"を受けて、入所1年目からボールパークドットコムさまを担当したという経緯があり、一緒に成長させていただいている実感があります」

 近年では、月次決算の結果を経営者のスマホに届け、迅速な経営判断を支援する「月次決算速報サービス」の利用を開始。山内社長は、「変動損益計算書をはじめ、売上高や利益、自己資本比率の推移など、一目でだいたいの業績がつかめるのでいいですね。また、文章で今月の業績の特徴が明示されるので、とてもありがたいです」

※継続MASシステム…経営者のビジョンに基づいた「中期経営計画」と、次年度の業績管理のための「単年度予算」、「短期経営計画」の策定を支援するシステム

2.野球総合ブランドメーカーに

 経営のバックヤードが整い、リアルタイムの業績を見える化することで、グラブやバットなどJBブランド関連の投資やマーケティング活動も充実していく。そして、一気に全国区に押し上げたのが、プロ野球選手やメジャーリーガーとの縁だった。

 「23年に横浜DeNAベイスターズに入団したサイ・ヤング賞受賞投手のトレバー・バウアー投手が、日本で使用するグラブを探して、たまたまスポーツ店で和牛JBグラブを選択してくれたのが大きかったですね」

 和牛革特有の軽さと柔らかさ、手に吸い付くようなフィット感が高く評価された。バウアー投手の影響力は大きく、自身のSNSやユーチューブでグラブが紹介されると、世界中の野球ファンに知られることとなった。また、同じくベイスターズの度会隆輝選手と石上泰輝選手、千葉ロッテマリーンズのアンドレ・ジャクソン投手、さらにはメジャーリーグにおいてもシカゴ・カブスのドリュー・ポメランツ投手や、ボストン・レッドソックスのグレッグ・ワイサート投手も和牛JBグラブを使用しているという。

 現在の売り上げ構成を見ると、野球用品の卸売りが56%、和牛JBグラブが24%、施設管理が20%となっている。なかでも期待が大きいのがグラブ。年間約3,000個を国内生産し、地名度は国内外に広がりつつある。

(左)グラブを丁寧に縫い上げる、(右)施設管理事業にも取り組む

(左)グラブを丁寧に縫い上げる、(右)施設管理事業にも取り組む

 販売網も急速に拡大し、全国の野球専門店を中心に約260店と取引し、大手量販店の支店を含めると、さらに数百店舗が上乗せされるという。北海道から沖縄まで、全国の野球選手がJBブランドに触れる環境が整った。

 25年には宮崎県中小企業大賞も受賞した。

 山内社長の掲げる目標は「九州唯一の野球総合メーカーとして国内野球ブランドのトップグループ入り」を果たすことだという。

 当面の売り上げ目標は10億円。グラブやバットと言ったオリジナルブランドの増産に加え、防具、ウエア、手袋といった周辺商品へも展開を広げる計画だ。

 同社が目指すのは単なる野球用品メーカーではない。宮崎から世界へはばたく、新しい日本発スポーツブランドなのである。

(協力・税理士法人アイビーパートナーズ/本誌・髙根文隆)

会社概要
名称 有限会社ボールパークドットコム
業種 スポーツ用品製造・販売
設立 2002年9月
所在地 宮崎県宮崎市吉村町下藪甲4353-5
売上高 5億6,000万円(2026年11月期見込み)
社員数 45名
URL https://japan-ballpark.com
顧問税理士 税理士法人アイビーパートナーズ
代表社員税理士 久野浩史 監査担当 河野雄太
宮崎県宮崎市大工2丁目54-3
URL: https://www.tkcnf.com/kunokaikei

掲載:『戦略経営者』2026年8月号

年商50億円を目指す企業の情報誌 戦略経営者

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戦略経営者

 『戦略経営者』は、中堅・中小企業の経営者の皆さまの戦略思考と経営マインドを鼓舞し、応援する経営情報誌です。
 「TKC全国会」に加盟する税理士・公認会計士の関与先企業の経営者を読者対象に、1986年9月に創刊されました。
 発行部数13万超(2025年9月現在)。TKC会計人が現場で行う経営助言のノウハウをベースに、独自の切り口と徹底した取材で、真に有用な情報だけを厳選して提供しています。

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