創業時の利益計画では、売上や費用だけでなく、黒字化の時期、借入返済後の資金残高、納税・社会保険料まで確認することが重要です。本記事では、必要資金の洗い出しから売上・費用・収支計画の立て方、返済後資金残高の見方、計画見直しのポイントまで、創業前に押さえたい基本をわかりやすく解説します。
💡この記事のポイント
☑利益計画は、事業の見通しを数字で確認するもの
☑必要資金は、創業後しばらく事業を続ける資金も含める
☑黒字化だけでなく、借入返済後に資金が残るか確認する
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- 1.創業時に利益計画が必要な理由
- 2.利益計画の前提として、創業に必要な資金を洗い出す
- (1) 創業前後に必要な資金を整理する
- (2) 創業後の赤字分も必要資金に含める
- 3.売上と費用を分けて利益の見通しを作る
- (1) 売上計画は「数量×単価」で考える
- (2) 費用は変動費と固定費に分けて考える
- 4.収支計画で黒字化と返済後資金残高、納税資金を確認する
- (1) まずは黒字化の見通しを確認する
- (2) 黒字でも資金が残るとは限らない
- (3) 消費税・インボイス・社会保険料も資金繰りに含める
- 5.利益計画は作って終わりではなく、見直し続ける
- (1) 計画に無理がある場合は、前提を見直す
- (2) 不安がある場合は、専門家に相談する
- 6.まとめ
1. 創業時に利益計画が必要な理由
(1)利益計画は「事業が成り立つか」を確認するためのもの
利益計画とは、創業後にどのくらいの売上を上げ、どの費用を支払い、最終的にどれだけの利益や資金が残るのかを見通すための計画です。創業に必要な資金、売上計画、収支計画、借入返済後の資金残高などを検討し、事業が無理なく続けられるかを確認します。
創業時は、売上も費用もまだ実績がありません。そのため、「これくらい売れるだろう」「この程度の費用で済むだろう」と感覚で考えてしまいがちです。
しかし、創業後には家賃、人件費、仕入代金、広告宣伝費、借入返済など、さまざまな支出が発生します。売上が想定どおりに立ち上がらない場合でも、固定的な費用は先に出ていきます。
利益計画を作る目的は、事業の見通しを数字で確認することです。どのくらいの売上があれば費用を賄えるのか、黒字化までにどの程度の期間がかかるのか、借入返済後に資金が残るのかを事前に把握しておくことで、創業後のリスクを減らしやすくなります。
特に創業時は、売上計画だけで判断しないことが重要です。売上があっても、仕入や人件費、家賃、広告費、借入返済を差し引くと、手元に資金が残らないことがあります。利益計画では、売上、費用、借入返済後の資金まで一体で確認しましょう。
(2)利益計画で確認する主な項目
利益計画を立てる際には、いきなり利益だけを計算するのではなく、順番に数字を整理していきます。
まず、創業に必要な資金を洗い出します。次に、売上を「数量×単価」で見積もります。そのうえで、費用を変動費と固定費に分け、黒字化の見通しを確認します。借入を予定している場合は、返済後に資金が残るかどうかも確認します。
利益計画で確認する主な項目
| 確認する項目 | 内容 |
| 必要資金 | 創業前後に必要なお金を洗い出す |
| 売上計画 | 数量 × 単価で売上を見積もる |
| 費用計画 | 変動費と固定費を分けて考える |
| 収支計画 | 黒字化できる時期を確認する |
| 返済後資金残高 | 借入返済後に資金が残るか確認する |
| 納税・社会保険料 | 消費税、所得税・法人税、社会保険料などの支払いを見込む |
この流れで整理すると、「創業できるか」だけでなく、「創業後に事業を続けられるか」を判断しやすくなります。
2. 利益計画の前提として、創業に必要な資金を洗い出す
(1)創業前後に必要な資金を整理する
利益計画を立てる前提として、まず創業に必要な資金を洗い出します。ここでいう資金は、創業日までに必要なお金だけではありません。創業後しばらく事業を続けるための資金も含めて考えます。
たとえば、店舗や事務所を借りる場合は、家賃、敷金・礼金、仲介手数料、火災保険料、保証料などが必要になります。内装工事や設備、備品にもまとまった資金がかかります。商品や材料を扱う事業では、売上が入金される前に仕入資金を用意しなければならないこともあります。
人を雇う場合は、給与のほか、採用費や研修期間中の人件費も見込む必要があります。また、事業形態や従業員の働き方によっては、健康保険・厚生年金保険などの社会保険料の事業主負担分も必要になります。
法人は原則として社会保険の適用事業所となり、個人事業では業種や常時使用する従業員数などによって扱いが変わります。パート・アルバイトなどの短時間労働者も、一定の要件に該当すれば加入対象です。短時間労働者への社会保険適用は段階的に拡大されているため、将来の採用計画を立てる際にも確認しておきましょう。
広告宣伝費、ホームページ制作費、ロゴ制作、名刺、許認可申請費用、会計ソフト、予約システムなど、細かな費用も積み重なると大きな支出になります。
創業資金を見積もる際は、費用を大きく分類して考えると整理しやすくなります。
創業に必要な資金の分類
| 分類 | 主な項目 | 考え方 |
| 初期費用 | 敷金・礼金、仲介手数料、内装工事、設備、備品 | 創業前にまとまって必要 |
| 創業準備費 | 仕入、広告宣伝、採用、ホームページ制作 | 売上が立つ前に発生しやすい |
| 運転資金 | 家賃、人件費、水道光熱費、通信費 | 開業後も継続して発生 |
| 赤字補てん資金 | 黒字化までの不足資金 | 収支計画をもとに確認する |
設備や内装に資金をかけすぎると、創業後の運転資金が不足しやすくなります。創業時から理想の状態をすべて整えるのではなく、中古品を活用する、後から追加できるものは後回しにするなど、初期投資を抑える工夫も必要です。
(2)創業後の赤字分も必要資金に含める
特に見落としやすいのが、創業後の赤字分です。創業直後から十分な売上が立つとは限りません。売上が少ない時期でも、家賃、人件費、通信費、水道光熱費、広告宣伝費、借入返済などは発生します。
事業からお金が生まれるようになるまでは、自己資金や借入金で不足分を補う必要があります。そのため、黒字化までの赤字分は、創業に必要な資金として見込んでおきましょう。
ただし、創業後の赤字分は、最初から正確に見積もるのが難しい項目です。まずは必要資金を洗い出し、その後に売上計画と収支計画を作成します。その結果、黒字化までにどれくらい不足するかが見えてきたら、その金額を改めて必要資金に反映させるとよいでしょう。
自己資金と借入金のバランスも重要です。親族から資金支援を受ける場合は、贈与なのか、返済が必要な借入なのかを確認したうえで資金計画に含めます。
借入であれば、返済時期や返済方法を明確にしておくことが大切です。資金の性質があいまいなままだと、後から税務上・家族間のトラブルになることがあります。
借入額が大きくなりすぎる場合は、融資額を増やす前に、物件規模や設備投資、固定費を見直すことが先です。
3. 売上と費用を分けて利益の見通しを作る
(1)売上計画は「数量×単価」で考える
利益計画の出発点は、売上計画です。売上計画がなければ、費用を賄えるか、借入金を返済できるか、いつ黒字化できるかを判断できません。
売上高は、基本的に「数量×単価」で考えます。数量には、客数、販売数、契約件数、請負件数、工数などがあります。どの数字を使うかは、業種によって異なります。
業種別の売上計画の考え方
| 業種 | 売上計画の例 |
| 飲食店 | 客数 × 客単価 |
| 美容室・サロン | 来店客数 × 平均単価 |
| 小売業 | 販売数 × 平均販売単価 |
| 士業・コンサル業 | 契約件数 × 月額報酬 |
| 制作業・請負業 | 案件数 × 案件単価 |
| 製造業 | 受注数量 × 販売単価 |
「月にこれくらい売れたらよい」という希望ではなく、営業日数、営業時間、席数、対応可能件数、従業員数、立地、競合状況などから、現実的な数量を見積もることが大切です。
店舗型ビジネスであれば、平日と土日祝で客数が変わることもあります。観光地や季節商品を扱う事業では、繁忙期と閑散期の差も大きくなります。平均値だけで売上を見積もると、資金繰りが厳しい時期を見落とすことがあります。
売上計画の簡易例
| 区分 | 客数 | 客単価 | 営業日数 | 月商 |
| 平日 | 10人 | 5,000円 | 20日 | 1,000,000円 |
| 土日祝 | 18人 | 5,000円 | 8日 | 720,000円 |
| 合計 | - | - | 28日 | 1,720,000円 |
このように分解すると、売上計画の根拠を説明しやすくなります。この月商をもとに、繁忙期・閑散期を加味して年間売上を見積もります。席数や営業時間から見て実現が難しい客数になっている場合は、計画を見直しましょう。
単価設定も利益に直結します。創業当初は、集客を優先して価格を低く設定したくなることがあります。しかし、安すぎる価格設定は、後から利益を圧迫します。いったん低価格で始めると、後から値上げするのは簡単ではありません。価格を決める際には、競合価格だけでなく、自社の商品・サービスの価値、提供する付加価値、必要な利益率を踏まえて判断しましょう。
(2)費用は変動費と固定費に分けて考える
売上の見通しを作ったら、次に費用を整理します。利益を考えるには、費用を「変動費」と「固定費」に分けることが重要です。
変動費とは、売上に応じて増減する費用です。商品仕入、材料費、外注費、販売手数料などが該当します。固定費とは、売上の大小にかかわらず発生する費用です。家賃、人件費、通信費、リース料、広告宣伝費、支払利息などが該当します。
固定費とは、売上の大小にかかわらず発生する費用です。家賃、人件費、通信費、リース料、広告宣伝費、支払利息などが該当します。売上が少ない月でも発生するため、創業時には特に慎重に見積もる必要があります。
変動費と固定費の例
| 区分 | 主な費用 | 特徴 |
| 変動費 | 仕入、材料費、外注費、販売手数料 | 売上に応じて増減する |
| 固定費 | 家賃、人件費、通信費、リース料、広告費、支払利息 | 売上が少なくても発生する |
創業時に特に注意したいのは固定費です。固定費が大きい事業は、売上が少ない時期に資金繰りが苦しくなりやすくなります。たとえば、家賃の高い物件を選んだ場合、売上が少ない月でも家賃は変わりません。人を雇った場合も、売上に関係なく給与を支払う必要があります。
固定費は事業を運営するために必要ですが、創業時に重くしすぎると黒字化までの負担が大きくなります。物件、採用、リース契約、広告費などは、売上計画と照らし合わせながら慎重に決めましょう。
4. 収支計画で黒字化と返済後資金残高、納税資金を確認する
(1)まずは黒字化の見通しを確認する
売上と費用を整理したら、収支計画を作成します。収支計画では、売上から費用を差し引き、利益がどの程度残るかを確認します。
まず、売上から変動費を差し引いて粗利益(限界利益)を出します。次に、粗利益(限界利益)から固定費を差し引いて利益を出します。創業時の最初の目標は、利益がプラスになる状態、つまり黒字化です。
収支計画の基本構造
| 計算項目 | 内容 |
| 売上高 | 数量 × 単価 |
| 変動費 | 仕入、材料費、外注費、販売手数料など |
| 粗利益(限界利益) | 売上高 − 変動費 |
| 固定費 | 家賃、人件費、通信費、広告費、支払利息、減価償却費など |
| 利益 | 粗利益(限界利益) − 固定費 |
創業当初は、十分な売上が確保できないこともあります。そのため、創業当初、1年後、2年後といった段階ごとに収支を見積もり、いつ黒字化できるかを確認しましょう。
黒字化までの赤字合計額は、創業後に事業を続けるための資金として必要になります。収支計画を作ることで、最初に見積もった創業資金が十分かどうかも確認できます。
(2)黒字でも資金が残るとは限らない
収支計画で特に見落としやすいのが、借入返済後の資金残高です。利益が出ていても、借入金の返済後に手元資金が残るとは限りません。
借入金がある場合、利息は経費になりますが、元本返済は経費になりません。つまり、損益計算上は利益が出ていても、その利益の中から借入金の元本を返済する必要があります。
また、減価償却費は、設備などの取得費を複数年に分けて費用化するもので、計上時に現金の支出を伴わない費用です。そのため、資金残高を確認するときは、利益に減価償却費を加え、そこから借入金の元本返済分を差し引いて考えます。
ただし、減価償却は資産の種類ごとに税務上の扱いが異なり、償却方法や届出が関係する場合もあります。実際の計算では、資産区分ごとに確認しましょう。
黒字でも資金が減る例
| 項目 | 金額 |
| 利益 | 200,000円 |
| 減価償却費 | 50,000円 |
| 借入金元本返済 | △300,000円 |
| 返済後資金残高 | △50,000円 |
この場合、損益計算上は黒字でも、手元資金は毎月5万円ずつ減っていきます。個人事業主の場合は、ここから生活費も必要です。法人であっても、納税資金、次の仕入資金、追加投資の資金などを考えなければなりません。
利益計画では、黒字化だけでなく、借入返済後に資金が残るかどうかまで確認しましょう。
なお、利益が出る見込みであっても、売上の入金時期と仕入・経費の支払時期がずれると、手元資金が不足することがあります。たとえば、売掛金の回収が遅れたり、仕入代金や人件費の支払いが先行したりすると、損益計算上は黒字でも資金繰りが苦しくなることがあります。収支計画とあわせて、月ごとの入金予定と支払予定も確認しておきましょう。
(3)消費税・インボイス・社会保険料も資金繰りに含める
創業時の利益計画では、借入返済だけでなく、納税資金や社会保険料の支払いも見込んでおく必要があります。
特に注意したいのが消費税です。新規開業や法人設立直後は消費税の納税義務が免除される場合がありますが、資本金、課税売上高、特定期間の判定、インボイス登録などによって扱いが変わります。法人を設立する場合も、設立1期目・2期目だから必ず免税になるとは限りません。
また、免税事業者であっても、適格請求書発行事業者として登録した場合は、登録日以降、消費税の申告・納付が必要になります。インボイス登録を検討する場合は、取引先との関係だけでなく、納税資金や経過措置の有無も含めて確認しておきましょう。
社会保険料についても、加入要件に該当する場合は事業主負担が発生します。従業員を雇う予定がある場合や、法人として役員報酬を設定する場合は、給与だけでなく社会保険料や税金を含めた資金計画にすることが大切です。
なお、法人として役員報酬を設定する場合は、税務上の取扱いにも注意が必要です。金額や改定時期によって扱いが変わることがあるため、専門家に確認しながら決めましょう。
創業時の利益計画では、「黒字になるか」だけでなく、「返済・納税・社会保険料を支払った後も資金が残るか」を確認することが重要です。
5. 利益計画は作って終わりではなく、見直し続ける
(1)計画に無理がある場合は、前提を見直す
利益計画は、一度作れば終わりではありません。最初の計画は、あくまで仮説です。実際に数字を入れてみると、必要資金が想定より多い、固定費が重い、売上計画が楽観的すぎる、借入返済後に資金が残らない、といった問題が見えてくることがあります。
計画に無理がある場合は、前提を見直しましょう。たとえば、物件規模を下げる、設備投資を抑える、中古品を使う、採用時期を遅らせる、広告費を段階的に使う、借入額や返済期間を再検討する、といった方法があります。
利益計画の見直しポイント
| 課題 | 見直しの例 |
| 必要資金が大きすぎる | 物件規模を下げる、設備投資を抑える |
| 固定費が重い | 家賃、人件費、リース料を見直す |
| 借入返済が重い | 借入額、返済期間、資金使途を再検討する |
| 売上計画が楽観的 | 客数、単価、営業日数、稼働率を見直す |
| 赤字期間の資金が足りない | 運転資金を追加で確保する、創業時期を調整する |
見直しを重ねることで、資金不足や過大投資のリスクを創業前に減らせます。利益計画は、より現実的な数字に近づけながら作り込んでいくものです。
(2)不安がある場合は、専門家に相談する
自分だけで計画を作ると、売上を楽観的に見積もったり、費用や税金の見落としが出たりしがちです。
税理士などの専門家に相談すれば、創業資金の見積もり、売上計画の妥当性、固定費の見落とし、借入返済後の資金残高、消費税・所得税・法人税・社会保険料の負担まで確認しやすくなります。
創業融資を検討している場合も、必要資金の使い道や返済可能性を整理しておくことで、計画の説得力を高めやすくなります。特に、借入を予定している場合、店舗・設備投資が大きい事業、法人設立やインボイス登録を検討している場合は、創業前に第三者の目で数字を確認しておくことが重要です。
早い段階で相談しておけば、資金不足や返済負担、納税資金を見落としたまま創業するリスクを抑えやすくなります。
6.まとめ
創業時の利益計画では、売上、費用、資金、借入返済、納税・社会保険料を一体で確認することが大切です。
まずは創業に必要な資金を洗い出し、売上を「数量×単価」で見積もります。次に、費用を変動費と固定費に分け、収支計画で黒字化の見通しを確認します。
ただし、黒字になれば安心というわけではありません。借入を予定している場合は、元本返済後に資金が残るかを確認する必要があります。インボイス登録や法人設立、従業員の採用を予定している場合は、消費税や社会保険料の負担も見込んでおきましょう。
利益計画は、一度作って終わりではありません。数字を入れながら何度も見直し、現実的な計画に整えていくものです。創業資金や収支計画に不安がある場合は、税理士などの専門家に相談しながら、実現可能性の高い計画を作っていきましょう。
参考
・TKC出版『創業塾テキスト』第5章「利益計画の立て方」
・独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21「起業マニュアル」
・日本政策金融公庫「創業計画の書き方」
・国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」
・日本年金機構「適用事業所と被保険者」
記事提供
株式会社TKC出版
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