2026年07月21日

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シリーズ経営計画のチカラ「株式会社大東 様」 存亡の危機を乗り越える!会社再生に見る経営改革の実際

シリーズ経営計画のチカラ「株式会社大東 様」 存亡の危機を乗り越える!会社再生に見る経営改革の実際

兵庫県姫路市の郊外で、金属切削加工を手掛ける株式会社大東。1965年の創業以来、近代的な設備と加工技術を武器に存在感を示しているが、半面、先代からの継承時の深刻な危機を乗り越えてきたタフな会社でもある。髙橋廉也社長と髙橋彌依専務、そして税務顧問の犬賀善治税理士に話を聞いた。

(写真)最新型5面加工機をバックに

 姫路市郊外の株式会社大東の会議室。犬賀顧問税理士の先導で打ち合わせが始まった。出席者は3代目の髙橋廉也社長と夫人の髙橋彌依専務。テーマは経営計画の策定である。

 大東は機械部品の切削・精密加工を手掛ける。運搬機器や半導体設備など、とくに大型部品を得意とし、早くから設備のNC(コンピューター制御)化を進め、IHIなど大手メーカーからの受注を主力とするなど、その技術力には定評がある。

(左)左から、横中グリ加工、五面加工、マシニング加工、旋盤加工・(右)犬賀善治税理士

(左)左から、横中グリ加工、五面加工、マシニング加工、旋盤加工・(右)犬賀善治税理士

 「前期は、売上高が計画比109.3%と目標を上回り、利益も大きく上振れしました」と、犬賀税理士が切り出す。

 経常利益も目標を大きく上回る水準を達成。限界利益率も86.7%と、目標の85%を上回る成果を出した。さらに注目すべきは財務体質だ。

 「自己資本比率は、47.3%。TKCの指標では30%を超えると優良企業と言われるので、かなり筋肉質になっています」と犬賀税理士が続ける。

 大東では数字に基づいた経営計画を最重要テーマとして位置づけている。具体的には、まず必要資金から計画を逆算する。

 「今期も借入金の返済や納税を見据えると、画面に示された計画水準を上回る経常利益を確保する必要があります。これを下回ると手元資金が減っていきます。だから"必要利益"から考えるのです」と犬賀税理士。

 この理解は、売上高目標の設定や投資判断にも直結する。

 「売上高を伸ばすのか、利益率を上げるのか、利益を抑えて設備投資に回すのか……。経営の選択肢が明確になります」

 こうして一つ一つの目標数値が確定され、『継続MASシステム(※1)』によって策定された2026年度の単年度経営計画が会計システム『FX2クラウド』に落とし込まれた。

※1 継続MASシステム…経営者のビジョンに基づいた「中期経営計画」と、次年度の業績管理のための「単年度予算」、「短期経営計画」の策定を支援するシステム

1.危機を乗り越え数字で未来を描く

髙橋廉也社長(右)と髙橋彌依専務

髙橋廉也社長(右)と髙橋彌依専務

 大東が現在の姿に至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。髙橋廉也社長が家業に戻ったのは07年32歳の時。夢を追い続けていたが、得意先から「後継ぎがいないと仕事を出さない」と言われ、帰郷を懇願されたことで、やむなく従うことになる。

 とはいえ、それまで髙橋社長の人生のなかで、「家業を継ぐ」ということを真剣に考えることなどなかった。会社の内実も分からないし、経営も素人。「父に借金はどれくらいあるのかを聞くと『1億円』と返ってきました。それが感覚的に多いのか少ないのか分かるようで分からない。そんな感じでした」。

 さらに大きな試練が訪れる。

 「1年も経たないうちに、父が病気で倒れて、まもなく亡くなりました」(髙橋社長)

 「少しずつ勉強していけばいい」と考えていた髙橋社長だが、突然、夫婦2人がぽつんと放り出される。経営も経理も未経験の状態で、突如として会社を背負うことになった。

 「営業も現場も経理も全部父がやっていたので、何もわからない状態でスタートしました」

 しかも巷はリーマンショックによる大不況。受注は極限まで減少し「売り上げは月600万円まで落ち込んだ」という。さらに財務状況を確認すると、何と借金は2億円あることが判明。

 「3年間は記憶がないです」。

 この髙橋社長の一言が、当時の苛烈さを物語る。

 再建の第一歩は、徹底した現状把握だった。ここで重要な役割を果たしたのが、社長夫人の髙橋彌依専務だ。「借入金や費用のデータを全部書き出し、いらないコストは徹底的にカットしました」と髙橋専務。それはまるで家庭の家計簿のような手法だった。リース返済後も、同じ額をずっとため続けた。借金体質からの脱出のためである。

 「主人以上の素人ですから、経理はもちろんですが、会社というものがどんなものか分からなかった」という髙橋専務。

 髙橋社長が付け加える。

 「父が家内を気に入ってね。明るくてコミュニケーション能力が高いから、随分助けられました。僕が社員との関係で悩んでいても、『そういう苦労も、会社を良くするための投資やと思ったらええやん』などと元気づけてくれるんです」

 髙橋専務の実践力は、会社の立て直しへとつながっていく。節約と貯蓄の仕組みが資金の積み上げを生んだのだ。さらに銀行との関係も変わっていく。

 「当時銀行とのお付き合いは先代の考えで1行だけでした。なかなか先の見えない状況の中、取引のない銀行の営業マンが私との世間話が好きでね。1年ほどよく訪ねて来ていました。そんな折、初めて仕事の話になり、相談すると親身に経営内容を見てくれて、そこから流れが変わりましたね。縁とは不思議なものです。まさに縁尋機妙、多逢聖因です。感謝しかありません」(髙橋社長)。

 財務状況改善へのプロの支援は、リスケ状態からの脱却へとつながっていく。

2.「経営に使う会計」へと進化

 髙橋社長自身、先代が亡くなって1年ほど経った折に、後に恩師になる人との運命的な出会いにより、人間学、そして帝王学を学ぶ。そして、犬賀税理士の存在が大きかった。

 「人間学的な話は今の時代、なかなか通じる方はいません。犬賀さんもまた人間学を学ばれている方だったので、お互いに学びあい心の支えになっています」

 数字だけでなく、経営者は人との関係や考え方も変えなければ会社は続かない。その気づきが、次の成長の礎となる。そして、段階を踏みながらあつれきのあった職人たちとの関係性にも変化が生まれた。

 「税理士さんでこんなにしゃべる人は初めて」と髙橋社長。

 犬賀税理士との出会いは、会社の意思決定のプロセスを大きく変えた。『FX2クラウド』を導入して自計化(※2)し、従来の「数字を報告するだけの会計」から「経営に使う会計」へと進化したのである。以前は、税務顧問にただただうなずくことの繰り返し。専門家に意見するだけの知識も経験もなかった。

 しかし、犬賀税理士は経営者との「会話」を重視する。毎月の巡回監査では、雑談をしながら経営の機微な部分を話し合うことで問題点を抽出し、解決へと動き出す。そうして、計数管理の内容に血が通いはじめる。

 月次決算、経営計画との数値比較、そして異常値のチェック。これらを繰り返していく。経営は感覚から論理へと変わっていき、当然ながら犬賀税理士は、大東の経営の「伴走者」となった。

 さらに経営計画の策定。

 「毎月、業績検討会をやります。数字を経営計画と比較しながら、"今どういう状態か"を確認するのです」と犬賀税理士。

 「数字はうそをつかないですからね。一目で現状が分かります」

 つまり「経営計画→ 月次管理→ 半期修正→ 年次決算」というサイクルが確立されていったのである。髙橋社長は言う。

 「最初は、どうせ計画通りにはならないと軽視していました。でもしばらくして犬賀先生の話を聞くうちに、"ちゃんと計画を作ってみよう"と気持ちが変わりました。するとどうでしょう。次は2億円、その次は2億5,000万円と言い続けたら、本当に達成できたんです」

 つまり、経営計画は単なる予測ではなく、"未来を引き寄せるツール"として機能したのである。目標を設定することで、知らず知らず会社の全体像を俯瞰し、無意識だったものが意識化され、ところどころにあった綻びや課題も見えてくる。そして、ゴールへいたるための打ち手が分かるようになった。

 「目標は描かなあかん。描かないと絶対に到達せえへん」と、髙橋社長は断言する。

※2 自計化…会計ソフトを導入して経理業務を自社で行うこと

3.組織の変革と人材の力

 かつての現場は「"猛獣"ばかりだった」と髙橋社長。古株の社員との関係性はとても良いとはいえなかった。職人文化が色濃く、「納期を早めてほしい」とお願いしても「それは無理や」で終わる世界。熟練の職人に、素人が指示しても従う動機が生まれにくいのも無理はない。実際、代替わり直後には、幾人かのベテラン社員が辞めていった。「こいつらには無理や」と考えたのかもしれない。

 こうして、3代目社長として「ずいぶん悔しい思いもした」。しかし、世代交代とともに変化が生まれる。

 「10年で環境は変わりました」

 若手リーダーを抜てきし、工場改善や5S活動を進め、コミュニケーションのなかで辛抱強く打開策を講じるようになった。

 こんなこともあった。ある時、退職を希望する若手社員に理由を尋ねると「社長の考えが分からない」と言われ、髙橋社長は、会社の現状や人材育成の方向性を丁寧に説明した。すると、その社員は退職を考え直し、いまではリーダー格として活躍している。それをきっかけに「全体会議で会社の方向性を共有するようにもした」。髙橋社長を中心とした組織としてのまとまりができてきたのである。

 結果として、生産性は飛躍的に向上し、加工時間が大幅に短くなった。最新の機械の導入や働き方の効率化で、設備の稼働率も高まった。3年前には先代からの借金をすべて返済。現在の売上高は約2億6,000万円。 「まずは3億円、将来的には5億円」。目標は明確だ。

 ただし、単なる拡大ではない。5年先、10年先のビジョンを見据え、「内部留保をしっかり積み増しながら、必要な借り入れはしていく」。かつて2億円の負債に苦しんだ経験があるからこそ、財務への意識は高い。

 「数字はうそをつかない」。

 この言葉は、同社の経営哲学を端的に表している。犬賀税理士が指導する計数管理と経営計画策定は、大東の大きな力だ。

 犬賀税理士は、「経営者としてどう動くかが問われる中で、この会社は危機を乗り越え、確実に前進してきた」と感心する。2億円の負債、父の死、売り上げの急落。そこから立ち上がった大東は今、経営計画を基礎とした計数管理とビジョンを武器に、次の成長を描いている。

(取材協力・犬賀税理士事務所/本誌・髙根文隆)

会社概要
名称 株式会社大東
業種 金属切削加工業
設立 1963年4月
所在地 兵庫県姫路市林田町下伊勢22-2
売上高 2億6,000万円
従業員数 20名
URL https://www.daito8.com/
顧問税理士 犬賀税理士事務所
所長犬賀善治
兵庫県姫路市飾磨区上野田4丁目79-1
URL: https://tkc-nf.com/inuga

掲載:『戦略経営者』2026年7月号

年商50億円を目指す企業の情報誌 戦略経営者

記事提供

戦略経営者

 『戦略経営者』は、中堅・中小企業の経営者の皆さまの戦略思考と経営マインドを鼓舞し、応援する経営情報誌です。
 「TKC全国会」に加盟する税理士・公認会計士の関与先企業の経営者を読者対象に、1986年9月に創刊されました。
 発行部数13万超(2025年9月現在)。TKC会計人が現場で行う経営助言のノウハウをベースに、独自の切り口と徹底した取材で、真に有用な情報だけを厳選して提供しています。

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