2026年04月20日

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シリーズ優良企業の流儀「株式会社イワタニ 様」 限界利益重視へシフトし盤石の財務体質を築く

シリーズ優良企業の流儀「株式会社イワタニ 様」 限界利益重視へシフトし盤石の財務体質を築く

工場新築にともなう「経営革新計画(※1)」の承認を機に、事業を成長軌道にのせたイワタニ。岩谷一社長は会計参与である向山秀男顧問税理士の支援のもと、直販型のビジネスモデルへ転換。精緻な計数管理に根差した経営判断で、もう一段の飛躍を図ろうとしている。

(写真)中央が岩谷一社長。右へ向山秀男顧問税理士、西海尚樹監査担当。
左へ山梨中央銀行本店営業部横森晃太課長代理、和田賢治課長

 JR甲府駅から車で約30分。田園地帯を抜けると広大な工場が見えてくる。敷地面積6,000平方メートルにおよぶイワタニの本社工場だ。断熱パネルの製造を主力とする同社。“感動を与えるものづくり”をモットーに、多様な機能性パネルを開発してきた。

本社工場でパネルの設計、製造、検査を一貫して行う

本社工場でパネルの設計、製造、検査を一貫して行う

 例えば、金属板の間にウレタンを注入してつくるウレタンパネルは、おもに冷凍冷蔵庫で使用されている。顧客ニーズに応える設計力と商品性能の高さが売りで、南極・昭和基地の車庫やハワイ島すばる望遠鏡のクリーンルームに採用された実績を持つ。

 岩谷一社長が説明する。

 「当社のパネルは、食品工場のクリーンルームや研究機関の環境試験室で採用されるケースが近年相次いでおり、さまざまな現場を裏方として支える役割を果たしています。大半の製品は受注生産ですから、材料の在庫を保有していても製品在庫はほとんどありません」

 技術力を生かしたオリジナル製品の開発にも余念がない。改修パネル「ハレルヤン」はそのひとつ。一般的にパネルは、長年使用すると表面の汚れや傷により、本来の衛生機能を保てなくなる。従来、パネルの改修工事時には既設のパネルを撤去しなければならず、施工が長期間にわたり、コストが高くなるという課題があった。この製品の特長は、既存のパネルをそのまま生かしてリニューアルできるところ。短期間の改修工事で設置時の機能を復旧できる。石こうボードやコンクリートなど既設パネルの素材を問わず設置できるのも利点だ。

※1 経営革新計画…中小企業が策定する新事業活動の中長期的な計画。目的は「経営の相当程度の向上」を図ることにある。都道府県知事によって計画が承認されると、資金調達や販路開拓などの面で支援を受けられる場合がある。

1.直販体制にかじを切る

 岩谷社長が同社に入社したのは1996年にさかのぼる。父親である昌次前社長から、信頼できる人間を身近に置きたいと請われたのがきっかけだった。

 「営業、設計に加え、繁忙期には製品の組み立ても担当しました。ただ、一生懸命働いている割には、利益を十分に確保できていなかった。従来の延長線上でこなしている業務が多く、新たな仕事や、他社と違う分野にチャレンジしたいという思いがだんだん増していきました」(岩谷社長)

 受注ルートは、販売代理店にもっぱら頼っていた。いきおい価格交渉では代理店側が主導権を握ることになる。そんななか、経営の根幹を揺るがす出来事が起こる。売り上げの7割を占めていた販売代理店が倒産したのだ。倒産にともない3,000万円の不良債権が発生。数名の従業員を解雇せざるを得なかった。

 この一件をきっかけに、同社は販路の開拓に迫られた。需要の見込める首都圏の拠点として東京営業所を開設(現在は閉鎖)し、ホームページを立ち上げ顧客へのアプローチを強化。こうして直販体制を徐々に整えていった。2004年5月期には売上高が初めて5億円をこえ、一層の成長を図るべく、本社工場の新築、移転を計画する。とはいえ、手元資金が潤沢にあったわけではない。

 「悩んだのは新工場のライン構成と資金調達をどうするか。予算がかぎられていたため、既存の機械設備を新工場へ移設し、金融機関から建設資金を借り入れる必要がありました」

 こう述懐する岩谷社長は、税務顧問契約を結ぶ向山会計事務所に相談する。向山秀男顧問税理士が提案したのは、新工場建設と製造ラインの革新をテーマとする経営革新計画の策定だった。経営計画を立てるのは初めての試み。向山税理士と監査担当の西海尚樹氏が計画づくりを親身にサポートした。

 「イワタニさまはTKCの会計システムを利用して、月次巡回監査を経た正確な業績数値をタイムリーに把握されています。月次決算をベースにした業績予測や、機械設備の稼働率見込みをはじめ、詳細な数字を計画に盛り込みました」(向山税理士)

 経営革新計画のお墨付きが得られた後、融資を申し込んだ政府系金融機関での審査はスムーズに進み、資金を低利率で借り入れることができた。 

成長のポイント

2.計画を不断に見直す

 月次決算に基づく業績予測、経営革新計画の策定・承認、そして迅速な資金調達──。一連のプロセスは、新本社工場の竣工後まもなく代表に就任した、岩谷社長のマインドに変化をもたらす。

 「会社の将来を議論して、向山先生や西海さんの指導のもと経営計画を策定し、事業の方向性を決めることの重要性を痛感しました。経営計画は一度つくって終わりではなく、目標件数を部門や担当者に落とし込むなどして、内容を毎年ブラッシュアップしています。また決算書の内容を理解して、利益予測を元に投資判断を行えるようになりました」(岩谷社長)

 決算書の信頼性向上を図ろうと、向山税理士に会計参与(※2)への就任を打診したのもこのころ。以降、業績報告会を定期的に開催するなど、向山会計事務所との関係はより緊密なものとなる。

 工場で生産するパネルの受注から納品までに要する期間は、1週間から1年程度までと幅広い。ただ、2週間前後の納品を目指してスケジュールを組む案件が大半を占める。売り上げがたつのは、現場での施工が完了してから。そのため、各案件の進捗への目配りが欠かせない。岩谷社長が経営判断のよりどころとしているのが『FX2クラウド』で把握した数字である。

 「会社の業績は、取引先さまからの支持を表すバロメーター。業績数値では、売上高と限界利益を特に注視しています。営業会議で担当者に売掛金の回収予定日を確認しており、赤字の月があってもあまり一喜一憂しないようにしています」(同)

※2 会計参与…2006年5月に施行された会社法で新設された役員制度で、取締役または執行役とともに貸借対照表や事業報告書などを作成したり、その書類を別に保管し、それを株主や債権者へ開示する職務をもつ機関

3.広がる新たな収益源

 1月下旬の昼下がり。イワタニの本社会議室では、向山税理士と西海監査担当、メインバンクである山梨中央銀行の担当者が出席して業績報告会が開かれていた。「変動損益計算書」画面をスクリーンに投影しながら、西海監査担当が足元の業績推移を説明する。続いて業況を尋ねられた岩谷社長が回答した。

業績報告会で岩谷社長は直近の業績と見通しを説明

業績報告会で岩谷社長は直近の業績と見通しを説明

 「肌感覚として日本企業の設備投資意欲は減退している印象があります。単価を引き下げてでも仕事を獲得しようとする同業者もいますが、私たちは付加価値の高い商品を提案し、価格競争に巻き込まれないよう心がけています」

 その口調はよどみない。付加価値を高める施策として近年注力しているのが、BtoC領域への進出である。防音室やバイクガレージ、ドッグハウスなど、パネル製作で培った技術を一般個人向け商品づくりに注ぐ。

 圧巻はワインセラー「バッカスの寝室」。高断熱・高気密のウレタンパネルがワインボトルを最適な環境に保つ。「機能性だけでなく意匠性を加味した製品づくりを通して、従業員がデザイン力を身につけられれば」と岩谷社長は一般消費者向け商品を手がけるねらいを語る。

防音性を高めたバイクガレージ(左)、ウォークインワインセラー「バッカスの寝室」(右)

防音性を高めたバイクガレージ(左)、ウォークインワインセラー「バッカスの寝室」(右)

 同社では業績報告会に加え、「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)を活用して決算書を取引金融機関に送信し、コンスタントな業績開示に努めてきた。こうした取り組みについて山梨中央銀行の横森晃太氏は、月次巡回監査を経た業績数値の信頼性は高いと評価する。

 「決算データをMISでタイムリーに送信いただけるのは、経営状況を把握し支援を行う上で非常にありがたいと感じています」(横森氏)

 限界利益を重視した業績管理と地道な営業活動が実り、収益構造は変貌しつつある。かつて2社の得意先で売り上げの8割を占めていたが、現在は主要取引先は20社に増え、売り上げ構成のリスク分散が進んだ。自己資本比率は70%を上回る。

 岩谷社長はこう意気込む。

 「本社工場を移転して20年になりますが、業績拡大にともない現工場では生産能力の確保がむずかしくなるため、新工場の建設を視野に入れています。尖った製品をつくって従業員の所得を引き上げ、より良い会社にしていきたいです」

(取材協力・向山会計事務所/本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社イワタニ
業種 断熱パネル製造販売業
設立 1996年6月
所在地 山梨県笛吹市八代町米倉1267-1
売上高 8億1,000万円
従業員数 34名(パート社員、役員含む)
会計システム FX2クラウド
URL https://www.panel-world.com
顧問税理士 向山会計事務所
所長 向山秀男
山梨県笛吹市石和町四日市場1787 IBCビル3F
URL: https://www.tkcnf.com/mukouyama-kaikei/index

BS11特別番組「ドキュメント戦略経営者~未来を切り拓く 経営者と税理士の挑戦~」

2月21日放映のBS11特別番組「ドキュメント戦略経営者」をTKCホームページで公開しています。あわせてご覧ください。

掲載:『戦略経営者』2026年4月号

年商50億円を目指す企業の情報誌 戦略経営者

記事提供

戦略経営者

 『戦略経営者』は、中堅・中小企業の経営者の皆さまの戦略思考と経営マインドを鼓舞し、応援する経営情報誌です。
 「TKC全国会」に加盟する税理士・公認会計士の関与先企業の経営者を読者対象に、1986年9月に創刊されました。
 発行部数13万超(2025年9月現在)。TKC会計人が現場で行う経営助言のノウハウをベースに、独自の切り口と徹底した取材で、真に有用な情報だけを厳選して提供しています。

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