信用保証制度は、中小企業の資金調達を支える代表的なしくみの一つです。本記事では、信用保証の基本構造に加え、他の調達手段との違い、申込時に整理しておきたい事項、融資後の運用や信用保証協会の支援内容を整理し、経営判断に役立つ実務上の視点を解説します。
💡この記事のポイント
☑信用保証制度は、信用保証協会の保証によって中小企業の資金調達を支えるしくみである
☑資金調達では、信用保証付き融資だけでなく、他の融資制度との違いも踏まえて考えることが重要
☑信用保証協会は保証の提供に加え、経営相談や専門家支援などを通じて企業の経営を支える役割も担う
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- 1.はじめに
- 2.信用保証制度のしくみと基本事項
- (1) 信用保証制度のしくみ
- (2) 返済できない場合の扱い
- (3) 審査で確認されること
- (4) 保証の条件
- (5) 信用保証制度を利用できる基本条件
- 3.信用保証付き融資と他の融資の違い
- (1) 主な融資の違い
- (2) どういうときに信用保証付き融資を使うのがよいか
- (3) 保証メニューの種類
- 4.申込から実行までの流れと費用
- 5.信用保証協会のサービス
- (1) 信用保証協会の主な支援
- (2) 相談前に整理しておくこと
- 6.まとめ
1.はじめに
信用保証制度は、中小企業が金融機関から資金調達を行う際に、信用保証協会が保証を付与することで、融資の成立可能性を高めるしくみです。全国信用保証協会連合会が公表している数字によると、信用保証制度は中小企業・小規模事業者のうち148万先(44%)に利用されています。
本記事では、中小企業の経営者および財務・経理担当者の方に向けて、信用保証制度の活用を検討する場面で必要となる基本知識と、申込から実行、融資後の運用までの実務上の要点を整理します。
なお、信用保証協会は保証の提供に加えて事業の改善に向けた支援も行っていますので、こちらも合わせてご紹介します。
※制度の名称、要件、手続き、補助内容は、地域・金融機関・時点によって差があります。実際の申込にあたっては、所在地域の信用保証協会、取引金融機関、自治体の案内で最新情報を確認してください。
2.信用保証制度のしくみと基本事項
(1) 信用保証制度のしくみ
信用保証制度は、中小企業が金融機関から借入を行う際に、信用保証協会が保証を付けることで、資金を借りやすくするしくみです。さらに、信用保証協会が安定して保証を続けられるように、そのリスクを支えるしくみ(信用保険)も用意されています。この信用保証制度と信用保険制度を合わせた枠組みは「信用補完制度」と呼ばれています。
制度の規模感として、中小企業庁の資料によると令和6年度の保証承諾は約57.5万件、8.62兆円(全国計)となっています(件数は企業者数ではなく承諾件数)。
実務では、企業(借り手)、金融機関(貸し手)、信用保証協会(保証の付与)、信用保険(保証協会を支える制度)の4者関係を押さえることで、全体像を整理しやすくなります。
信用保証協会は全国に設置されており、保証メニューや経営支援の内容は協会ごとに公表されています。保証の利用を検討する場合は、まず自社の所在地域の信用保証協会が提供する制度と手続きを確認し、利用可能なものを整理してみましょう。
(2) 返済できない場合の扱い
信用保証付き融資では、借り手である会社からの返済が難しくなった場合に、信用保証協会が金融機関へ代わりに支払いを行うことがあります(代位弁済)。その際には、日本政策金融公庫が信用保証協会に対して、代位弁済額の一定割合を保険金として支払うしくみになっています。
ただし、代わりに支払いが行われたからといって、その会社の返済義務がなくなるわけではありません。返済先が金融機関から信用保証協会に変わり、以後は信用保証協会に返済していくことになります。
そのため、信用保証付き融資を利用する場合でも、返済が難しくなる前に資金繰りの状況を確認し、早めに金融機関などに相談することが重要です。
(3) 審査で確認されること
信用保証が付与される場合でも、借入の際に金融機関による審査が不要になるわけではありません。実務上、主に次のような事項が確認されます。
・資金使途…運転資金であれば支払内容と時期、設備資金であれば見積、導入時期、効果等
・返済原資…利益見込みに加え、資金繰り見通しや改善策との整合性
・計画の実現可能性…実施内容、担当、期限が現実的であるか
(4) 保証の条件
信用保証を利用する場合、金融機関に支払う利息とは別に信用保証料が発生します。保証料率は制度区分や企業の状況に応じて異なります。たとえば東京信用保証協会では、一般の保証よりも東京都制度融資のほうが保証料率を抑えた設定になっており、一般料率は年0.45%~1.90%、東京都制度融資は年0.45%~1.49%と案内されています。(責任共有制度・融資合計額1,000万円超・無担保の場合、2026年1月時点)
また、保証付き融資は原則として責任共有制度の対象で、金融機関も一定のリスクを負担しますが、一部に例外的な制度もあります。したがって、保証が付くことだけで融資条件が自動的に決まるわけではありません。既存の保証付き借入がある場合は、保証残高や利用可能枠、別枠の可否も確認しておくことが実務上重要です。
(5) 信用保証制度を利用できる基本条件
信用保証制度は、中小企業・小規模事業者向けの制度であり、利用にあたっては主に次の条件を満たす必要があります。
・規模…業種ごとに定められた資本金または従業員数の基準を満たしていること
・業種…対象となる業種で事業を行っていること。農業、林業(一部を除く)、漁業、金融・保険業(一部を除く)などは原則として対象外
・区域・業歴…申込先の信用保証協会の管轄区域で事業を行っていること。また、制度によっては一定の業歴が求められる
具体的な要件は制度や地域によって異なるため、利用条件は申込先ごとに確認が必要です。
3.信用保証付き融資と他の融資の違い
(1) 主な融資の違い
資金調達を検討する際は、まず「信用保証を付けないプロパー融資」と「信用保証を付ける融資」に分けて考えると分かりやすくなります。そのうえで、保証付き融資の中には、自治体が制度として用意し、金融機関と信用保証協会が連携して実行する「制度融資」があります。
制度融資は保証付き融資と別の種類というより、保証付き融資の活用形態の一つとして捉えるほうが実務には合っています。制度融資を利用できる場合は、金利や信用保証料の補助が受けられることがある一方、所定の認定や手続きが必要になることもあります。
| 区分 | 特徴 | 向いている場面 |
| プロパー融資(保証なし) | 信用保証協会の保証を付けない融資。金融機関が自ら判断して貸し出す。 | 業績や取引実績などから金融機関が返済の見通しを立てやすい場合。 |
| 信用保証付き融資 | 信用保証協会の保証により、融資を受けやすくする仕組み。 | 実績が少ない場合や、一時的に業績が悪化している場合。 |
| 制度融資(自治体) | 金利や信用保証料の補助が受けられることがある。 | 条件に当てはまり、費用負担を抑えたい場合。 |
比較の際は、借りやすさだけでなく、金利、信用保証料、手数料を含めた総コスト、手続きにかかる時間、今後の資金調達への影響もあわせて確認します。
(2) どういうときに信用保証付き融資を使うのがよいか
信用保証付き融資は、金融機関だけでは融資を進めにくいが、資金の使い道や返済の見通しは説明できる場合に検討しやすい方法です。たとえば、創業直後で実績がまだ少ない場合、担保にできる資産が少ない場合、一時的に業績が悪化している場合などは、信用保証付き融資が候補になりやすいと考えられます。
また、通常の運転資金や設備資金だけでなく、売上減少や災害などで資金繰りに影響が出ている場面でも、保証制度が用意されていることがあります。
一方で、毎月の数字を把握できており、利益や資金繰りが安定している場合は、プロパー融資も含めて考える余地があります。まずは、自社の状況が「保証を付けることで資金調達を進めやすい段階かどうか」を確認してみましょう。
(3) 保証メニューの種類
前節では、信用保証付き融資をプロパー融資や制度融資と比べて整理しました。その比較を踏まえて信用保証付き融資を利用する場合は、次にどの保証メニューを使うかを確認することになります。
信用保証協会では、事業者の状況や資金の使い道に応じて、さまざまな保証メニューが用意されています。全国で統一の保証と協会ごとに各地域に合わせた保証とがありますが、ここでは、主な保証メニューを大きく分類して整理します。
| 分類 | 主な場面 | ポイント |
| 一般保証 | 通常の運転資金や設備資金を調達する場合 | 日常的な資金調達で基本となる保証です。 |
| セーフティネット保証 | 災害や売上減少など、経営環境が急に悪化した場合 | 類型によっては自治体の認定が必要です。 |
| 危機関連保証 | 全国的な信用収縮など、特別な状況に対応する場合 | 利用できるかどうかは、その時点の状況によります。 |
| 再生・改善に関する保証 | 借換や条件変更を含めて資金繰りを見直す場合 | 計画を前提に、金融機関や保証協会と相談しながら進めます。 |
まずは自社がどの場面に当てはまるかを整理し、そのうえで必要な保証メニューを絞り込む流れが分かりやすいでしょう。
4.申込から実行までの流れと費用
(1) 申込の流れ
信用保証付き融資は、一般に、以下のような流れで進みます。
金融機関への事前相談→申込→信用保証協会の審査→保証承諾→融資実行→返済
実際には、金融機関と信用保証協会がそれぞれ内容を確認しながら進めることが多いため、申込の前に「何のために借りるのか」「どう返していくのか」を整理しておくことが大切です。
| 段階 | その段階で行われること | 提出資料の例 |
| 1.事前相談 | 申込企業:借入の目的、希望額、必要時期を整理して相談する。 金融機関:資金使途や申込の方向性を確認する。 |
資金使途の概要、直近の状況 |
| 2.申込 | 申込企業:必要書類をそろえて申込む。 金融機関:申込内容や書類を確認する。 信用保証協会:保証審査に向けた確認を進める。 |
申込書類、決算書、試算表等 |
| 3.審査 | 申込企業:必要に応じて追加資料を出す。 金融機関・信用保証協会:返済可能性や事業内容を確認する。 |
追加資料(必要に応じて) |
| 4.承諾・実行 | 申込企業:契約手続や保証料の支払いを行う。 金融機関・信用保証協会:保証承諾と融資実行を進める。 |
契約書類、保証料支払手続き |
| 5.返済 | 申込企業:返済条件に従って、金融機関へ借入金を返済、必要に応じて状況を共有する。 金融機関:融資後の状況を確認する。 |
試算表、資金繰り表、主要指標 |
(2) 事前に準備すること
手続きが長引きやすいのは、借入の目的がはっきりしないとき、返済の見通しが伝わりにくいとき、直近の業績資料がそろっていないときです。少なくとも、「何に使うお金か」「どう返すか」「今の業績がどうなっているか」を説明できるようにしておくと、手続きを進めやすくなります。あわせて、希望金額、返済期間、必要な時期、今ある借入の状況も整理しておくと安心です。
| 項目 | 準備内容(例) | 目的 |
| 資金使途 | 運転:支払一覧/設備:見積・導入時期・効果の整理 | 必要額と時期を明確化します。 |
| 返済の見通し | 資金繰り表、改善策の内容、今後の売上や利益の見通し | 返済可能性の根拠を示します。 |
| 最新数値 | 直近の試算表、直近推移の整理 | 決算後の状況を説明できるようにします。 |
| 報告体制 | 担当者と提出頻度の設定 | 融資後の情報共有を継続します。 |
(3) 主な提出資料
必要な資料は制度や金融機関によって異なりますが、一般には、決算書・申告書、直近の試算表、資金繰り表、借入金の使い道が分かる資料などが求められます。設備資金であれば、見積書や導入予定が分かる資料が必要になることもあります。申込の前に必要書類を確認し、そろえやすいものから準備していくと進めやすくなります。
(4) 認定が必要な制度の注意点
セーフティネット保証などのように、自治体の認定が必要な制度もあります。この場合は、通常の申込に加えて認定の手続きが必要になります。ただし、認定を受けたからといって、それだけで融資が決まるわけではありません。認定とは別に、金融機関や信用保証協会の審査も行われます。そのため、認定の準備とあわせて、借入の目的や返済計画も整理しておく必要があります。
(5) 費用の見方
信用保証付き融資では、金融機関に支払う利息のほかに、信用保証料がかかります。そのため、金利だけで比べるのではなく、利息と保証料を合わせて考えることが大切です。自治体の制度融資では、金利や保証料の一部について支援がある場合もあります。ほかに事務手数料がかかることもあるため、申込前に全体の負担を見ておくと判断しやすくなります。
(6) 融資後の情報共有
融資を受けた後も、金融機関に対して自社の状況をきちんと伝えていくことが大切です。月次試算表や資金繰り表を使って、売上や資金繰りの変化を定期的に確認し、必要があれば早めに相談できるようにしておくと安心です。また、借入金の使い道が分かる資料や、金融機関に提出した資料は、後で説明しやすいように整理して残しておくと役立ちます。
5.信用保証協会のサービス
(1) 信用保証協会の主な支援
信用保証協会は、融資に保証を付けるだけの機関ではありません。経営上の課題に応じて、相談対応や専門家との連携、創業支援、事業承継支援、情報提供など、幅広い支援を行っています。利用できる内容は協会ごとに異なりますが、主なものは次のとおりです。
経営相談・経営改善支援
経営状況の整理、資金繰りの見直し、経営改善計画の作成支援など、経営課題に応じた相談を受けられることがあります。必要に応じて、税理士や中小企業診断士などの専門家と連携した支援が行われる場合もあります。
創業支援
これから事業を始める人や創業後間もない事業者に対して、創業計画の作成、資金調達の考え方、事業の進め方に関する相談などを行っている協会があります。創業時の不安を整理しながら準備を進めやすくなる点が特徴です。
事業承継支援
後継者への引継ぎや、事業承継に向けた課題整理を支援する取組もあります。自社の現状把握や今後の進め方の整理、必要に応じた専門家との連携などを通じて、承継準備を進めやすくします。
情報提供・販路開拓支援
セミナーや相談会、ビジネスフェアなどを通じて、経営に役立つ情報提供や取引機会の支援が行われることもあります。自社だけでは得にくい情報やネットワークに触れられる点がメリットです。
緊急時の相談対応
自然災害や取引先の倒産、急激な経営環境の悪化などが起きたときには、特別相談窓口が設けられることがあります。こうした場面では、資金繰りや今後の対応について早めに相談できることが重要です。
このように、信用保証協会は「融資の保証を受けるときだけ使う機関」ではなく、創業、経営改善、事業承継、情報収集など、経営のさまざまな局面で活用できる公的機関です。
具体的な支援内容や活用事例は、全国信用保証協会連合会の「支援事例リンク集」で地域別に確認できます。自社の課題に近い事例を見ながら、活用のイメージをつかむとよいでしょう。
(2) 相談前に整理しておくこと
支援を利用する場合は、「資金繰りを立て直したい」「販路を広げたい」「創業計画を固めたい」「事業承継の進め方を整理したい」など、相談テーマをまず明確にしておくことが大切です。そのうえで、直近の試算表、資金繰り表、借入一覧、資金使途の整理、必要に応じて見積書や契約書類を準備しておくと、関係者が同じ前提で話を進めやすくなります。事前に整理ができているほど、相談内容が具体的になり、活用できる支援も選びやすくなります。
6.まとめ
信用保証制度は、中小企業の資金調達を支える有力なしくみですが、保証が付けば自動的に融資が決まるわけではありません。資金使途、返済原資、最新数値を一貫した形で示し、必要に応じて制度融資や認定型制度も含めて比較することが重要です。融資後も月次管理と情報共有を継続することで、状況変化に応じた対応や追加の協議につなげやすくなります。
参考文献
・全国信用保証協会連合会 公式サイト
・日本政策金融公庫「信用保険業務」
・中小企業庁「信用保証制度の利用状況」
・中小企業庁「セーフティネット保証制度」
記事提供
株式会社TKC出版
1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
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