管理会計とは、経営者の意思決定や業績管理に役立てることを目的とした会計です。自社の売上や利益といった業績をタイムリーに把握し、「どこに課題があるのか」「今後どのような対策を取るべきか」を検討するためには、何よりも月次決算体制の構築が重要です。
💡この記事のポイント
☑管理会計とは、経営者の意思決定や業績管理に活用するための会計。
☑管理会計は、会計資料に基づき経営課題の発見と打ち手の検討に役立てるもの。
☑タイムリーな意思決定に役立てるためには、月次決算体制の構築がカギとなる。
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- 1.管理会計とは?
- (1) 管理会計の概要
- (2) 財務会計との違いは?
- (3) 管理会計の資料
- 2.中小企業にこそ管理会計が必要な理由
- (1) 経営者の判断に再現性を持たせるため
- (2) 将来に向けた備えをしやすくするため
- 3.管理会計を導入するためのステップ
- (1) 「月次決算」を導入する
- (2) 管理したい項目を決める
- (3) 定期的に振り返る
- 4.まとめ
1.管理会計とは?
(1) 管理会計の概要
企業経営においては自社の経営状態を知ることが不可欠です。自社の現状がわからなければ、経営において正しい判断を行うことはできません。
適切な意思決定を行うために必要となるのが管理会計です。管理会計とは外部に公表するための会計ではなく、あくまでも「自社において活用することを前提とした会計」ということができます。
なお、会計には、管理会計のほかに、「制度会計」と呼ばれているものもあります。さらに制度会計は、「税務会計」と「財務会計」の2つに分けられます(下図参照)。
(2) 財務会計との違いは?
管理会計とよく比較されるのが財務会計です。財務会計は、株主・債権者・金融機関・取引先などの外部利害関係者に対して、企業の財務状況や経営成績を報告するための会計です。一方、管理会計は、経営者や現場の管理者が社内で意思決定や業績管理を行うために活用されます。主な違いは次の通りです。
■管理会計と財務会計の違い
| 管理会計 | 財務会計 | |
| 対象 | 社内 | 社外の利害関係者 |
| 目的 | 意思決定 業績管理 |
財務状況の報告 |
| 主な利用者 | 経営者、役員等 | 株主、取引銀行等 |
| 作成頻度 | 必要に応じて | 報告に応じて 定期的に作成 |
| 作成書類 | ・変動損益計算書 ・資金繰り管理表 ・部門別損益計算書 |
・貸借対照表 ・損益計算書 ・株主資本等変更計算書 ・個別注記表 等 |
(3) 管理会計の資料
前述の通り、管理会計は社内での意思決定のために使われるため、必ず作成しなければならないわけではありません。その会社が意思決定などのために必要だと思えば作成することができますし、作成しなくても罰則はありません。
裏を返せば、経営者の意思決定のために役立たなければ、管理会計の資料をつくる意味がありません。管理会計に役立つ資料としては、例えば次のようなものがあります。
①月次の変動損益計算書
通常の損益計算書(PL)は、「結局いくら儲かったのか」を表すのに対して、変動損益計算書は「どうすればもっと儲かるか」を見るためのものです。
■損益計算書(PL)
売上高
− 売上原価
= 売上総利益(粗利)
− 販売費及び一般管理費
= 営業利益
■変動損益計算書
売上高
− 変動費
= 限界利益
− 固定費
= 営業利益
違いは「費用」の分け方です。変動損益計算書は、費用を売上高の増減に比例して発生する変動費(仕入、外注費、材料費等)と、売上高の増減とは関係なく発生する固定費(人件費、家賃等)に分けることで、限界利益(粗利益)の管理をしやすくしているのです。
例えば、前月に比べて売上が増えたのに営業利益が思ったより少ないと感じた場合、月次の変動損益計算書があれば、値引きや外注費増加などによって限界利益が減ったのか、あるいは固定費が増えたのかといったことがすぐにわかるので、打ち手が明確になります。
限界利益の低下が一時的なものか、継続的なものかを確認することができれば、価格設定の見直しや外注費の抑制、固定費の削減など、改善策の優先順位もつけやすくなります。また、商品別や取引先別に限界利益を見ていけば、どの商品群等に力を入れるべきかも判断することが可能になり、売上拡大だけに頼らない利益重視の経営につなげることができます。
変動損益計算書については、下記記事も参考にしてください。
②部門別業績管理表
部門別業績管理表とは、複数の部門ごとの業績がわかる資料です。例えば食品スーパーなら、A店、B店、C店などの店舗別、さらに店舗別に鮮魚、精肉、青果など部門別管理をすることで、どの店舗のどの部門の商品が売れているのか、さらにどの店舗のどの部門がどのくらい利益に貢献しているのかがわかります。
売上規模の大きい店舗・部門が必ずしも優良店舗・部門とは限りません。人手や時間を多くかけている割に利益が思った以上に残らない部門もあれば、売上はそれほど大きくなくても安定して利益を生み出している部門もあります。こうした店舗・部門ごとの利益率が一目でわかるような資料があれば、例えば商品における値引きの見直し、採算が悪い商品の撤退、人員配置の調整、注力分野への投資など、具体的な経営判断につなげやすくなります。
例えば、TKCのクラウド会計ソフト「FX4クラウド」なら、事業の種類別、地域別等のセグメント別に最大11種類まで業績管理のための部門グループを登録することで、こうした部門階層構造を自由に設定できます。さらに、予算比・前年比での順位表が確認できます。
FX4クラウドについては、下記を参照してください。
③キャッシュ・フロー計算書/資金繰り表
キャッシュ・フロー計算書とは、1会計期間の現金の流入と流出を、営業活動・投資活動・財務活動の3つに区分してまとめた資料のことです。健全な経営であれば、営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスの数字となります。そのため、「メインの事業で資金を生み出せているか?」、「将来に向けた設備投資が無理のない範囲で行われているか?」といった、会社の資金の健全性を把握することができます。
一方、資金繰り表とは、売掛金の回収、買掛金の支払い、借入金の返済、手形の返済などの入出金について、過去から現在までの資金の流れを一度に把握するための資料です。必要に応じて、週単位、月単位などで作成することで、手元の資金が不足しないように管理をすることができます。万一、資金ショートが発生しそうな場合には、取引先への支払いを待ってもらう、あるいは金融機関からの借り入れをするなど、早めに必要な打ち手を検討することができます。また、資金繰り表を継続して確認することで、資金不足が起こりやすい時期や要因も見えやすくなり、売上や利益だけではわからない経営上のリスクも早めに把握できます。
いずれも、自社の資金の流れを把握するための重要なツールです。また、キャッシュ・フロー計算書や資金繰り表があると、利益と資金のズレも把握できます。損益計算書では黒字なのに資金が苦しい場合、「売掛金の回収が遅れているのか」、「在庫が増えすぎているのか」、「借入返済の負担が重くなっているのか」といった原因を考えることができます。つまり、「利益が出ているから安心」とは言えないことが、数字ではっきり見えてきます。
なお、キャッシュ・フロー計算書については、下記記事も参考にしてください。
これらの管理会計の資料を作成・活用することで、経営者は経営状況を正確に把握でき、より適切な意思決定を行うことができます。このように、管理会計の資料は、「何が問題なのか」「どのような点を改善すべきか」「次にどんな対策を打つべきか」を考えるための材料となります。管理会計の資料があることで、経営者の頭の中の不安や違和感を具体化させることができます。つまり管理会計によって、会社の現状を見える化し、将来の経営判断をより確かなものにできます。言い換えると「会計で会社を強く」できるということです。
2.中小企業にこそ管理会計が必要な理由
このように、経営者の意思決定に資する管理会計は重要なものですが、特に中小企業の場合、人材不足等が原因で、本当に経営判断に役立つ資料を準備できないところが多いのではないでしょうか。しかし、大企業等に比べて経営資源が不足しがちな中小企業こそ、管理会計が重要です。その理由を解説します。
(1) 経営者の判断に再現性を持たせるため
中小企業では経営者の判断がそのまま会社の方向性になります。どの取引を優先するか、どの仕事を引き受けるか、新しい設備投資を行うか否かなど、日々の判断の積み重ねが会社の将来を左右します。そのため、経営判断が経営者個人の経験や感覚だけに依存している状態は長期的には不安定になりやすい面があります。
例えば、これまでは経営者の経験で乗り切れていたとしても、事業規模が大きくなったり、従業員が増えたりすると、すべてを経験や感覚だけで把握することは難しくなります。経営判断を明確な言葉や数字で説明できなければ、その判断の根拠は属人的になり、周囲に共有しにくくなります。
管理会計は、こうした経営判断を支える確かな土台になります。数字で現状を確認できれば、一貫性のある意思決定をしやすくなり、経営判断に再現性を持たせることができるのです。
(2) 将来に向けた備えをしやすくするため
中小企業の経営では、目の前の対応に追われやすい一方で、将来に向けた準備も欠かせません。人手不足への対応、設備の更新、事業承継、新しい取引への挑戦、金融機関との対話など、会社を続けていくためには日々の業務とは別に考えておくべきことが多くあります。しかし、日頃はどうしても目先の対応が優先され、将来への備えが後回しになりがちです。
このようなときに、会社の現状が正確に把握できていないと、「いま動いてよいのか?」「まだ様子を見るべきなのか?」といった判断がしにくくなります。一方、現状をある程度落ち着いて見られる状態であれば、短期的な課題と中長期的な課題を切り分けて考えやすくなります。これは、新しいことに挑戦する場面だけでなく、慎重な判断が必要な場面でも同じです。
また、将来に向けた備えという観点では、経営者以外に会社の状況を伝える必要が生じる場面もあります。例えば、金融機関に会社の現状を説明するとき、幹部社員に今後の経営の方向性を共有するとき、あるいは後継者に事業の実態を引き継ぐときなどです。その際、経営の状態を数字とともに共有することができれば、説得力や納得感が高まります。中小企業に管理会計が必要なのは、今の経営を見直すためだけではなく、これから先の経営を考え、備え、引き継いでいくためでもあるのです。
3.管理会計を導入するためのステップ
(1) 「月次決算」を導入する
管理会計の基本は、毎月正確な業績を把握することです。例えば、経理処理を会計事務所等に丸投げし、業績を把握するのが年に1度の決算だけという中小企業では、期中の業績が良いのか悪いのか、どんな経営課題があるのかが何もわかりません。日々の取引を、自社で適時・正確に会計ソフトに入力すれば、毎月どころか毎日の業績をタイムリーに把握することができます。その結果、数字の変化にすぐに気づくことができ、適切な打ち手を実行することができます。
(2) 管理したい項目を決める
次に、自社にとって何を管理すべきかを決めます。
業種や経営課題によって、確認すべき数字は異なります。たとえば、製造業なら製品別原価、建設業なら案件別採算、小売業なら店舗別、サービス業なら顧客別や担当別の数字が重要になることがあります。
ここで大切なのは、最初から全部を細かく見ようとしないことです。管理項目を増やしすぎると、負担が重くなり、継続しにくくなります。まずは、経営判断に直結する項目から始めるのが現実的です。
(3) 定期的に振り返る
管理会計では毎月数字を確認し、前月との違い、計画との差、改善点を振り返ることが大切です。例えば、「粗利率が下がったならその理由は何か?」「固定費が増えたならそれは将来につながる投資なのか、それとも見直せるコストなのか?」といった点です。
こうした振り返りを続けることで、管理会計は「作るだけの資料」ではなく、「経営に活きる仕組み」になります。
また、振り返りの際に具体的な改善方法がわからなければ、必要に応じて税理士など外部の専門家に相談することも有効です。管理会計で把握した数字を整理したうえで、経営者の視点で一緒に確認できる相手がいると、管理会計はさらに活用しやすくなります。
4.まとめ
前述のとおり、管理会計の前提となるのは、日々の「適時・正確」な会計処理です。会計について、「決算書をつくって、税務署に申告・納税するために仕方なくするもの」ととらえている経営者もいるかもしれませんが、本来会計とは「自己報告」、つまり自社の業績を経営者自身が把握し、適切な意思決定を行うためのものです。
最初から完璧な管理会計の仕組みをつくる必要はありません。まずは日々の会計処理をきちんと行い、売上と限界利益の数字を週次あるいは毎日チェックするところからはじめましょう。
TKC全国会に所属する税理士であれば、日々の適切な会計処理と月次決算の仕組みの構築を支援してもらえます。
【参考資料】
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業の管理会計システム ~キャッシュ・フロー経営の視点から~」
・中小企業活力向上プロジェクトアドバンスプラス「管理会計の第一歩、個別管理を始めてみませんか? | 中小企業活力向上プロジェクトアドバンスプラス」
・J-Net21「損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法を教えてください。 | 経営課題解決メニュー | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]」
・TKC「特長・機能 | 会計ソフト「FX4クラウド」 | TKCグループ」
・TKC「業績をアップする「変動損益計算書」の活用法①――変動損益計算書の構造と考え方 税理士事務所検索 myTaxPro マイタックスプロ」
・TKC「キャッシュ・フロー計算書からわかること 税理士事務所検索 myTaxPro マイタックスプロ」
記事提供
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