定款は会社の事業内容や運営方法を内外に示すものであり、「会社の憲法」とも呼ばれます。そのため実態に即している定款か確認し、変更したい内容があれば法的な手続きを経て速やかに変更することが大切です。また、事業承継時も定款を見直す機会の一つであり、実態に即しているかだけでなく、後継者が今後どのように事業を展開していきたいかを踏まえて定款の変更を検討する必要があるでしょう。本記事では、定款を変更すべき場合と手続きのほか、定款を見直す際に特に確認するべきポイントを解説します。
💡この記事のポイント
☑定款を変更するには、株主総会において決議を受けなければならない。
☑変更内容によって、決議だけでなく登記変更も求められる。2週間以内に完了しなければ100万円以下の過料の支払いを求められる場合もある。
☑会社の実態や今後の経営方針に沿った内容なのか、定期的に定款を確認する必要がある。登記事項証明書での確認も怠らないことが大切。
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- 1.定款とは何か
- 2.定款を変更するのはどんなとき?
- 3.定款を変更するための手続きと留意点
- (1) 株主総会の決議が必要
- (2) 変更登記の申請には株主総会の議事録が必要
- (3) 定款を変更しなかった場合の罰則はあるか
- 4.定款で特に確認しておくべきポイント
- (1) 株式の譲渡制限(譲渡制限株式)の有無
- (2) 相続人等に対する自己株式の売渡請求
- (3) 種類株式
- (4) 株券不発行会社かどうか
- (5) 登記事項証明書での確認を怠らない
- 6.おわりに
1.定款とは何か
(1) 定款とその目的
定款とは、会社の目的・組織・活動など、会社のあり方に関する根本ルールを明記したもので、その会社の基本的業務や運営ルールなどを会社の内外に示すものです。会社の設立時だけでなく、内容の変更があればその都度変更しなければなりません。
■定款(一例)
一般的にいわれる定款の目的は次のとおりです。
① 会社を運営し、会社の財産を確保するためには、根本ルールが必要なため
② 利害関係者(株主や債権者等)が、その会社が決められたルールに従って活動しているかどうかをチェックするため
定款に関する法律上の規定のうち、最も基本的なものには以下のものがあります。
・会社の設立登記の際には、公証人の認証を受けた定款(原始定款)を添付しなければならない。
・定款の形態は、書面でも電磁的記録(電子データ)でもよい。
・定款の記載事項には、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3つがある。
・定款は、会社の本店と支店に備置され、株主・会社債権者は、営業時間内であれば、その閲覧・謄写を求められる。
・定款の変更には、原則として株主総会の特別決議が必要。
この記事では、定款の記載事項と変更の検討・実行について説明します。
(2) 定款の記載事項
定款の記載事項には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」と、記載を欠いてもよい「相対的記載事項」・「任意的記載事項」があります。
① 絶対的記載事項
「絶対的記載事項」は、必須の記載事項です。これらを欠くと定款自体が無効になります。本店の所在地や発起人の氏名など、変更に株主が異を唱えるケースがないと思われるものでも、株主総会での一定の決議を経た変更が必須です。
<絶対的記載事項>
1) 目的
2) 商号
3) 本店の所在地
4) 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
5) 発起人の氏名または名称および住所
上記の事項のほかに、定款作成時に記載するものに、発行可能株式総数(会社が発行する株式の総数)があります。発行可能株式総数は絶対的記載事項ではなく、会社法上で設立登記申請までに定款に定めればよいとされているものですが、あとから追加することが手間となるため原始定款に含まれていることが一般的です。
② 相対的記載事項
「相対的記載事項」は、記載を欠いても定款は有効になりますが、記載しなければ効力が生じない事項です。経営を行ううちに、議決権制限株式の発行や廃止、株主総会の運営の見直しをする際などには内容の変更だけでなく記載事項を削除することも可能です。
<相対的記載事項>
1) 変態設立事項
2) 全部の株式についての譲渡制限、取得請求権付又は取得条項付の定め
3) 種類株式の発行
4) 株主名簿管理人
5) 相続人等に対する売渡請求
6) 単元株式数
7) 株券発行
8) 株主総会、取締役会及び監査役会招集通知期間短縮
9) 取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人及び委員会の設置
10) 取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人の責任免除
11) 社外取締役、会計参与、社外監査人及び会計監査人の責任限定契約
12) 取締役設置会社における中間配当の定め など
③ 任意的記載事項
「任意的記載事項」は、絶対的記載事項と相対的記載事項以外の事項です。一度定款に定めたら、実行しないと定款違反になります。この任意的記載事項についても相対的記載事項と同様に、内容の変更だけでなく削除が可能です。
<任意的記載事項>
1) 株式について
a.株主名簿の基準日
b.株券の再発行手続等
2) 株主総会について
a.定時株主総会の開催時期
b.株主総会の議長
c.議決権の代理行使
3) 株主総会以外の機関について
a.取締役、監査役の員数
b.代表取締役、役付役員
c.取締役会の招集権者
4) 年度について
a.事業年度
5) 公告について
a.公告の方法(別段の定めがなければ官報に掲載する方法)
2.定款を変更するのはどんなとき?
絶対的記載事項と相対的記載事項、任意的記載事項は法的な扱いが異なるものの、いずれの事項であってもすでに記載しているものが変わる場合には必ず変更の手続きが必要です。具体的な例としては以下の場合です。
・役員が辞任もしくは就任したとき
・役員の氏名や住所が変わったとき
・商号を変えるとき
・事業の目的を変えるとき
・本社の住所が変わるとき
・公告方法を変えるとき
・監査役を変えるとき
・株式譲渡制限の定めを変更するとき
・募集株式を発行するとき
・株式会社から持分会社へ組織変更するとき
・吸収合併を行うとき
・解散するとき
・資本金の額が減少するとき など
なお、定款の変更によって登記内容にも変更が生じた場合は、記載事項の変更が発生してから2週間以内に行うことが会社法に定められています。登記申請をせずに2週間の期限を過ぎても登記が行われないと「登記懈怠(とうきけたい)」として扱われ、この期限を過ぎて登記を申請した場合には代表者個人に対して100万円以下の過料が処せられるとされています。
変更内容によっては必要な手続きが多く、管理が難しい場合もあるため、顧問税理士等に相談して一緒に進めていきましょう。原始定款に含まれていることが一般的です。
3.定款を変更するための手続きと留意点
(1) 株主総会の決議が必要
定款の変更には、変更後の案を作成したあとに、株主総会(定時または臨時)において決議を受けなければなりません。決議を受けなければ、法律的に定款を変更したことにはなりません。なお、株主総会の決議には、「普通決議」「特別決議」「特殊決議」等がありますが、定款の変更の場合には、原則として特別決議が必要です。以下のとおり、過半数の株主が出席し、かつ、出席する株主の議決権の3分の2以上の同意が必要であると会社法で定められています。
特別決議(会社法第309条2項)
株式会社の場合、定款で別段の定めを置かない限り、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が株主総会に出席し、その株主の議決権の3 分の2 以上の同意が必要
(2) 変更登記の申請には株主総会の議事録が必要
変更するもののうち、会社の目的や商号、本店や支店の所在地、資本金の額、取締役の交代などは法務局での変更登記が必要です。定款変更の登記を法務局に届けなければならない記載事項は把握が難しいため、税理士や司法書士などの専門家へ事前に相談しておくことが必須です。
変更登記が必要なものを把握できたら、手続きに必要な書類を揃えましょう。申請書のほか、決議がなされた株主総会の議事録や株主名簿、あれば株主総会と整合した取締役会の議事録も提出が求められます。なお、公証人による認証は必要ありません。
(3) 定款を変更しなかった場合の罰則はあるか
実態に即していない定款のまま、変更を行わない場合でも、罰則はありません。
ただし、実際には、金融機関や信用保証協会に融資を申請する際に定款(登記事項証明書、履歴事項全部証明書)が求められ、確認されることがあります。事業計画書と内容が大きく異なっていれば説明を求められる場合もあるでしょう。
また、中古品の売買や宿泊業、建設業、介護事業など許認可が必要な事業を新たに始める際には、国や都道府県などから許認可を取得するために定款を提出しなければなりません。許認可なしの営業は、業種によってはその会社だけでなく取引先も含めた罰則があるものもあるため取引を拒否される可能性は大いにあり、定款を変更しないままでいることはあり得ないでしょう。
4.定款で特に確認しておくべきポイント
ここでは、定款で確認すべき記載事項を紹介します。会社の実態や今後の経営方針に沿った内容なのか、特に以下の5つの記載事項について定款を確認してみましょう。
(1) 株式の譲渡制限(譲渡制限株式)の有無
譲渡制限株式は、株式を譲渡する際に、株式の発行元の会社の承認が必要となることを定款で定めた株式です。株式がむやみに分散しないように、また会社にとって不利益になる第三者に株式が渡らないようにすることができます。事項がある場合、この譲渡制限株式の株主をしっかり把握できているかどうか関連資料を確認しましょう。
(2) 相続人等に対する自己株式の売渡請求
譲渡制限株式であっても、株主に相続等が生じた場合、譲渡承認の対象にはならず、会社にとって不都合な相続人等が取得することが起こり得ます。この事項がない場合は、定款に新たに「相続等により株式を取得した者に対し、会社がその株式の売渡しを請求することができる」旨を定める検討も必要です。
(3) 種類株式
株式会社では、定款で定めることで普通株式以外のさまざまな種類の株式を発行することができます。例えば、安定的な会社運営のためには議決権の確保(3分の2以上の議決権を確保)が最優先ですが、後継者が仮に3分の2以上確保できない場合は、後継者が取得する株式を「会社の議決権を有するもの(普通株式)」、後継者以外の者が取得する株式を「会社の議決権を有しないもの(無議決権株式)」とすることで、議決権の問題を解決することができます。ただし、活用にあたっての注意点も存在するため、新たに定款に定めることを検討する場合は必ず専門家に相談しましょう。
(4) 株券不発行会社かどうか
非公開会社の場合、定款に株券を発行する旨を定めない限り、株券不発行会社となっていますが、2006年の会社法施行以前はすべての株式会社に株券発行が義務付けられていました。これらの株式会社は、設立以来一度も株券を発行したことがない場合もある場合も、株券を発行する旨の定めを廃止する定款変更を株主総会で決議し、登記申請を行わなければ株券発行会社のままとなっています。このような会社は株券不発行に定款を変更しておくことをおすすめします。
株券発行会社は、株券の交付がないままでは株式譲渡をしようとしても無効となります。
また、株式を担保として借入れ等を行う場合、株券不発行会社であれば税務署への一定の書類の提出で足りるものが、株券発行会社では法務局へ株券の供託等が必要になります。事業承継税制(一般措置もしくは特例措置)を適用して納税猶予を受ける場合にも、猶予税額等に相当する担保提供が必要です。
会社法の改正等に伴ってこうした定款変更が必要なケースはよくあります。実態に即したものにするためにはやはり専門家による確認が必要です。
(5) 登記事項証明書での確認を怠らない
定款が変更されていても登記をしていないケースもよくあります。上記2.にて述べたように、変更登記は「記載事項の変更が発生してから2週間以内に行うこと」が会社法に定められているため、忘れていた場合はできるだけ速やかに変更登記を行わなければなりません。しばらく定款の内容を確認していないような場合は、定款自体の内容を確認するとともに、登記されている内容も確認するとよいでしょう。
6.おわりに
本記事では、定款の記載事項と変更における注意点について説明しました。
定款の変更は手続きが複雑であることから、設立以来、一度も定款を変更したことがない会社も珍しくないほか、定款を紛失してしまう、変更した内容を紙の定款に反映できていなかったなど、管理が不十分になるケースも少なくありません。しかしながら、本文で述べたとおり、罰則がなくとも金融機関や信用保証協会に提出を求められ、内容を確認されることがあります。株主総会での決議や登記費用の確保など、定款変更自体、手間がかかるものであるため、腰を据えて取り組むようにしましょう。
また、会社は定款の変更がある度に株主総会の決議を行っており、今までの定款変更についてもその議事録が残されているはずです。しっかり保管し整理を行うことで、前回の変更からどれだけ経っているかを把握しやすく、会社法の改正等を踏まえた定期的な見直しが可能となります。原始定款から何を変えてきたか、何を変えていないかを把握し、今後の会社運営の参考としましょう。
参考文献
・「事業承継ニュース」vol.26、vol.38(TKC出版)
記事提供
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