2026年04月13日

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経営力向上計画とは?メリット・申請の流れ・注意点をわかりやすく解説

経営力向上計画とは?メリット・申請の流れ・注意点をわかりやすく解説

経営力向上計画の全体像を、計画の概要からメリット(税制・金融・法的支援)、申請準備~認定後の運用まで一気に整理。対象となる事業者の範囲、設備投資の取得前手続、変更申請の要否など、失敗しやすい注意点とチェックポイント、認定支援機関の活用を解説します。

💡この記事のポイント
 ☑経営力向上計画は、取組を計画化して主務大臣の認定を受け、要件を満たす場合に支援措置の活用を検討できる計画
 ☑支援措置は税制・金融・法的支援の3本柱で、内容により必要書類や手続のタイミングが異なる
 ☑支援措置の活用を見据えた準備(必要書類・提出先・スケジュール)は、認定支援機関に相談しながら進めると段取りがスムーズになる

1.経営力向上計画とは?

(1) 計画の概要

 経営力向上計画は、中小企業等経営強化法に基づいて設けられており、会社が「経営を良くするために何をするか」を計画として整理し、国(主務大臣)の認定を受けるしくみです。
 人材育成、管理体制の整備、業務の効率化、設備投資など、経営力を高める取組を計画にまとめて申請し、認定されると、計画の実行に役立つ税制・金融等の支援措置の活用を検討できるようになります。(※支援措置の利用には、計画の認定とは別に、措置ごとの申請・手続が必要です)

経営力向上計画の概要

(2) 計画のポイント

 実務上のポイントは、次の3点です。

①申請書は、企業概要や現状、目標、取組内容を簡潔に整理する様式が中心
  企業の概要、現状、目標および指標、取組内容を一通り整理し、「現状→目標→取組」がつながる形で計画に落とし込みます。

②認定支援機関に相談しながら計画を作れる
  認定経営革新等支援機関(税理士・商工会議所・商工会、金融機関など)に相談し、記載項目の整理や計画の整合性を確認しながら進められます。

③支援措置が用意されている
  認定後に活用できる支援措置が用意されており、計画の実行に役立てることができます。どの支援措置を受けようとするかで準備物や進め方が変わるため、最初に方向性を決めておくとスムーズです。

(3) 対象となる事業者

 対象は一般的な中小企業に限らず、個人事業主、医療法人等、社会福祉法人、NPO法人、各種組合、一般社団法人など幅広く含まれます。
 目安として、個人事業主・会社・医療法人等・社会福祉法人・NPO法人は「常時使用する従業員数」等で判定し、組合や一般社団法人は構成員の要件で判定します。

 また、個人事業主は開業届の提出、法人は設立登記が前提です。
 なお、計画の認定と、各支援措置の利用可否は別です。とくに税制は、資本金や出資関係などで対象が絞られることがあるため、支援措置活用の手引きで追加要件まで確認するのが前提です。

2.経営力向上計画のメリットとは?

(1) メリットの全体像:認定で「支援措置」につながる

 経営力向上計画の大きなメリットは、取組を計画として認定を受けることで、要件を満たす場合に、用意された支援措置(税制・金融・法的支援)を受けられる点です。支援策の概要は以下の通りです。

・税制:認定計画に基づく一定の設備投資について、即時償却や税額控除などにより税負担の軽減を図れる場合があります。加えて、事業承継等に関連して不動産取得税の特例や、M&A等に伴う準備金(損金算入)といった措置が用意されている点も特徴です。

・金融:計画の実行に必要な資金について、政策金融機関の融資、民間融資に対する信用保証(別枠)や債務保証など、資金調達を後押しする支援措置の利用を検討できます。投資や取組の内容を計画として示せるため、必要資金や時期を整理しながら、関係機関へ相談しやすくなる点も実務上のポイントです。

・法的支援:事業承継・組織再編等を計画に含める場合に、手続面での特例が用意されています。許認可の承継や事業譲渡に伴う手続など、実行段階で論点になりやすい部分を制度上の特例で進められる可能性があるため、承継・再編を進める場面では確認しておきたい支援です。

 なお、支援措置はそれぞれ追加要件や必要書類、手続のタイミングが異なります。計画の作成段階で、設備投資・資金調達・承継/再編のうち、どの項目が計画に該当するのかを整理しておくと、準備物やスケジュールの手戻りを減らせます。
※各支援措置の具体的な内容・要件は4章でまとめて説明します。

(2) 計画を作ることで得られる実務的なメリット

 計画を作る過程で、会社の現状、目標(指標)、取組内容が整理され、「何を・いつまでに・どう進めるか」を社内で共有しやすくなります。申請様式に沿って必要事項を埋めることで、設備投資や資金調達の検討も具体化しやすくなります。また、認定支援機関(税理士・商工会議所・商工会、金融機関など)の助言を得ながら計画を作成できるので、実現可能性の高い計画策定につながります。

3.導入と申請の具体的な流れ

計画を検討するイメージ

(1) まず決めること──何のために使うか(税制/金融/法的支援)

 経営力向上計画は、認定を取って終わりではなく、支援措置を活用して取組を実行しやすくするための制度です。最初にどの支援措置を活用するかを整理しておくと、必要書類やスケジュールを準備しやすくなります。

(2) 事前準備──計画策定前にやること

 設備投資を計画に入れて税制措置の利用を検討している場合は、申請前に工業会等(※)の証明書または経済産業大臣の確認書が必要になることがあり、いずれも設備の取得前に手続が必要です。 これらは設備の類型等によって必要書類や手続が異なるため、最新の案内は中小企業庁「経営力向上計画の申請について」を参照してください。
 ※「工業会等」=設備分野ごとの工業会・協会等(業界団体)。該当する団体は設備の種類によって異なります。

 また原則として、計画に位置づける設備は取得前に計画認定を受ける必要があります。支援措置活用の手引きには計画申請前に設備を取得する例外的な取扱いも示されていますが、適用条件が細かいため、設備の発注・取得を進める前に手引きで要件を確認するのが安全です。
 また、事業承継等・法的支援・金融支援を利用する場合も、制度ごとに要件や手続が異なるため、事前に手引き等で確認し、必要に応じて関係機関へ相談して進めましょう。

参考:中小企業庁「経営力向上計画の申請について」

(3) 計画づくり──業種(事業分野)を確認して、指針に沿って整理する

経営力向上計画の様式(一部)

 申請の前提として、業種(事業分野)ごとの方針に沿った計画策定が必要です。
 まずは自社の事業分野を確認し、該当する事業分野別指針(ない場合は基本方針)を踏まえて計画を作成します。
 申請にあたっては、中小企業庁で公開されている様式をダウンロードして必要事項を記入していきます。様式には、「現状認識」「経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標」「経営力向上の内容」といった項目がありますので、認定支援機関と相談しながら情報を整理しましょう。
 また、認定後に活用する支援措置によっては追加書類が必要になるため、計画策定の段階でも支援措置活用の手引きを確認しておくことが重要です。

参考:中小企業庁「事業分野別指針及び基本方針」

(4) 申請──提出先(主務大臣)を間違えないように

 申請は、中小企業庁ではなく各事業分野の主務大臣に対して行います。提出先は事業分野で異なるため、「事業分野と提出先」を確認して、申請書と必要書類を郵送等で提出します。
 ※不動産取得税の軽減措置を受ける場合は、都道府県経由になる場合があるため事前の相談が推奨されています。

(5) 電子申請──プラットフォームを使う(GビズIDが必要)

 所管省庁によっては「経営力向上計画申請プラットフォーム」から電子申請が可能で、利用にはGビズIDプライムが必要です。電子申請は入力サポートや進捗確認ができ、郵送費もかかりません。処理期間の目安は提出先や時期で変動するため、プラットフォームや手引きの案内で確認しておくと安心です。

(6) 認定後──実行・必要なら「変更申請」を

 認定後は、実際に計画に沿って取組を実行します。途中で設備の追加取得などにより計画を変える場合は、認定を受けた主務大臣に変更申請が必要です。追加する設備も原則として取得前に変更認定が必要、とされています。

4.計画認定後に受けられる支援措置

設備投資を計画するイメージ

(1) 支援措置は大きく「税制・金融・法的支援」の3本柱

 経営力向上計画の認定を受けた事業者は、計画の実行にあたり、税制措置、金融支援、法的支援を活用できます。ただし重要なのは、認定を受けたからといって自動的にすべての支援が使えるわけではないことです。支援ごとに追加要件があり、特に税制は対象事業者の条件や設備要件が絡みます。
 税制・金融・法的支援は、窓口、必要書類、タイミングがそれぞれ異なります。制度名だけで判断せず、各措置の手引き・窓口案内に沿って進めましょう。手引きは更新されることがあるため、実務では中小企業庁サイト等で最新版を確認するのが基本です。

(2) 税制措置:投資・承継にかかる税負担を軽くする

 税制措置には、以下の①~③の支援策があります。

①中小企業経営強化税制(設備投資)
 即時償却または税額控除を選択できる仕組みです(控除率や適用条件は企業規模等で異なるため、手引きで確認が必要です)。税制の対象事業者(中小企業者等)には資本金・従業員数等の条件があり、出資関係や所得規模で対象外になる場合もあります。また、制度には適用期限があるため、申請・取得のタイミングについても最新の手引きで確認してください。

 設備は目的に応じて類型が分かれます。

・A類型:生産性向上設備(生産性が年平均1%以上向上)
・B類型:収益力強化設備(投資利益率7%以上のパッケージ投資)
・D類型:経営資源集約化に資する設備(修正ROA等の改善が見込まれるパッケージ投資)
・E類型:経営規模拡大設備等(売上高100億円超を目指すロードマップ作成等)

②事業承継等に係る不動産取得税の特例
 認定を受けた経営力向上計画に基づく事業譲渡で土地・建物等を取得する場合、課税標準から不動産価格の1/6相当額を控除する形で軽減されます。
 申請書の提出先が不動産所在地の都道府県になる点も注意ポイントです。

③中小企業事業再編投資損失準備金(M&Aの株式取得)
 認定された経営力向上計画に「事業承継等事前調査」に関する事項が含まれており、計画に沿って株式等を取得した場合、取得価額の一定割合を準備金として積み立て、損金算入できる仕組みです。(適用期間:令和3年8月2日から令和9年3月31日)

(3) 金融支援:資金調達の手段を増やす

 認定事業者は、政策金融機関の融資に加え、民間融資に対する信用保証(別枠)や債務保証など、資金調達を後押しする支援を検討できます。
金融支援は、経営力向上計画の認定とは別に、支援メニューごとに申込み・審査等の手続が必要になるため、活用を考える場合は事前に関係機関へ相談して進めるのが基本です。

 主な金融支援は、次の①~⑦です。
 ①日本政策金融公庫による融資
 ②中小企業信用保険法の特例(民間融資に対する信用保証の特例)
 ③中小企業投資育成株式会社法の特例(投資育成会社からの投資)
 ④日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット
 ⑤日本政策金融公庫によるクロスボーダーローン
 ⑥中小企業基盤整備機構による債務保証
 ⑦食品等流通合理化促進機構による債務保証(※食品製造業者等が対象)

(4) 法的支援:承継・組織再編の手続負担を軽くする

 事業承継等を計画に含めて認定を受けた場合に使える特例として、次の3つが用意されています。
 ①許認可承継の特例
 一定の許認可事業(旅館業、建設業、運送業等)を承継する際、地位を引き継げる扱い
 ②組合発起人数の特例
 通常4人必要な発起人が、一定の場合に3人でも可となる
 ③事業譲渡の際の免責的債務引受けの特例
 債権者に通知し、一定期間内に異議がなければ同意があったものとして扱うことで、債務移転の手続を簡素化できる

5.気を付けたいポイントのおさらい

(1) 設備投資は「取得前」に認定が原則

 税制措置を利用する場合は、設備の取得前に認定(必要なら変更認定)を受けるのが原則です。設備の種類によっては、工業会等の証明書や経済産業大臣の確認書など、取得前に必要な書類が発生することもあります。発注・購入を先に進めると対象外になるリスクがあります。設備投資のスケジュールと同時に、制度利用の段取り(認定の時期・必要書類)を決めておくのが安全です。

(2) 「認定=全部の支援が使える」ではない

 認定を受けても、支援措置は「別途要件・別途手続」です。とくに税制は企業要件や設備要件があるため、認定の前後で手引きの要件確認まで行うのが前提になります。

(3) 申請先を間違えない

 窓口を取り違えると差し戻しや時間ロスにつながります。計画作成に入る前に事業分野と提出先を確定させましょう。

(4) 認定後の「変更」にも注意

 認定後に設備を追加する、取組内容を大きく変える、といった場合は変更申請が必要になることがあります。とくに追加設備も「取得前に変更認定」が原則になる場面があるため、途中で計画が動きそうなら早めに確認しておくのが安心です。

(5) 余裕あるスケジュールが必要

 設備投資や融資の実行時期が決まっている場合は、そこから逆算して「事前書類の取得→計画作成→申請→認定」の順に時間を確保しておくのが現実的です。

 まずは「税制・金融・法的支援」のうち、どれを主目的にするかを決め、設備投資がある場合は取得前の手続が必要かを確認しましょう。提出先(主務省庁)を確定させたうえで、要件や必要書類に不安があれば、認定支援機関に早めに相談すると手戻りを減らせます。

参考文献

中小企業庁「経営力向上支援」
中小企業庁「経営力向上計画の申請について」
中小企業庁「経営力向上計画策定の手引き(PDF)」
中小企業庁「税制措置・金融支援活用の手引き(PDF)」

株式会社TKC出版

記事提供

株式会社TKC出版

 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
 税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。

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