2026年04月13日

  • Xでシェア
  • facebookでシェア

決算書の信頼性を高める「会計参与」とは

決算書の信頼性を高める「会計参与」とは

「金融機関からスムーズな資金調達を図りたい」――このような経営者の方々の思いを実現させるには、決算書等の信頼性を確保することが重要なこととなります。その手段の1つとして会計参与制度があります。

💡この記事のポイント
 ☑会計参与制度導入によるメリットを考慮して自社における導入判断を検討する
 ☑会計参与のメリットは計算書類の信頼性向上だけにとどまらない
 ☑決算書等の計算書類の信頼性を確保する手段は限られている

1.会計参与とは

 「会計参与制度」は、2005年の会社法の成立の際に、新しく導入されたものです。それまでの株式会社においては、監査役が業務監査とともに、会計監査を行うこととなっていましたが、監査役に資格要件があったわけではなかったこともあり、名目的な監査役が多数いるといわれ、会計面の質を担保するという状況にはありませんでした。非公開の中小企業にとっては、会計監査人の監査が義務づけられているわけでもありません。また、会計監査人を設置するといっても、経済的側面等からみても現実的ではないなかで、いかに、計算書類の信頼性を向上させるかが課題としてありました。
 そのようななか、会社法上に規定されたのが「会計参与制度」です。税理士・公認会計士等の会計の専門家が計算書類の作成段階からかかわり、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行にしたがい、適時に、正確な会計帳簿の作成により、適正な計算書類に導く推進役といえます。その結果、計算書類の信頼性を向上させ、これによって対外的な信用・信頼を得られることとなります。

〈会計参与の設置・資格・選任・権限等〉
・会計参与の設置
 株式会社は、定款の定めにおいて、任意に会計参与を置くことができます(会社法326条2項)
・会計参与と監査役
 会計参与は上記のようにいずれの機関設計においても設置できます。取締役会設置会社は原則として監査役を置かなければなりませんが、公開会社でない場合、会計参与を設置すれば監査役を置かなくてもよいこととなっています(同法327条2項但し書き)。
・会計参与の権限
 主として中小企業の計算書類の正確性に対する信頼を確保するため会計専門家を会計参与として設置し、会計参与は取締役と共同して計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)及び附属明細書を作成します(同法374条1項)。
・会計参与の報告義務
 会計参与は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを株主(監査役設置会社にあっては、監査役)に報告しなければなりません(同法375条1項)。
・会計参与の選任・解任
 会計参与は株主総会の決議で選任・解任されます(同法329条1項、同法309条2項7号、同法341条)。
・会計参与の資格等
 税理士もしくは税理士法人、または公認会計士もしくは監査法人です(同法333条1項)。
・会計参与となることができないもの
 当該株式会社またはその子会社の取締役、執行役、監査役、会計監査人または支配人その他の使用人を兼ねることはできません(同法333条3 項1 号)。
・会計参与の登記
 会計参与設置会社であるときは、その旨ならびに会計参与の氏名または名称および会計参与が定めた計算書類の備置きの場所について登記しなければなりません(同法911条3項16号)。
・会計参与の任期
 会計参与の任期は原則として2年(同法332条1項準用)、公開会社でない株式会社にあっては定款で10年まで伸張することができます(同法332条2項準用)。

2.会計参与制度導入のメリット

メリット

 それでは会計参与を設置するメリットについて、具体的に見ていきましょう。
 前述したように、正確な計算書類の作成による決算書等の計算書類の信頼度向上は、金融機関からの融資・金利面での優遇とともに、取引先との関係においても経営意識が高い(会計参与を設置している)と評価されるなど、対外的な信用力の増大につながります。中小企業においては、財務透明性を高め、経営基盤の強化につながる重要な機関となります。
 また、会計参与は会社の役員であることから、信頼する会計の外部専門家(税理士・公認会計士)を、会社役員として位置付けますので、これまで以上の協調体制を構築することができます。また、税金や会計という経営者にとって苦手な人が多い側面を任せられ、経営者の負担軽減にもなります。それとともに、経営者のパートナーとしての会計参与の設置で、会社の実態把握や専門的な知識に基づくアドバイスを経営に役立てることができます。

〈会計参与設置のメリット〉
① 決算書の信頼性、対外信用力の向上
 会計の専門家(税理士、公認会計士等)が取締役と共同で計算書類(貸借対照表や損益計算書など)を作成するため、書類の正確性が担保され、外部からの信頼が向上します。
 また、会計参与の設置は登記事項のため、対外的に「会計のプロが関与している」ことが公表され、取引先や株主からの信用が増します。
② 資金調達の円滑化
 「中小企業の会計に関する指針(中小会計指針)」や「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」などの一定の会計ルールに基づく決算書等の信頼性に対し、金融機関からの評価を得られ、融資の円滑化とともに、金利等の優遇を受けられるケースがあります。
③ 経営の質向上と負担軽減
 専門的サポート: 正確な財務データに基づく高度な戦略設計が可能になります。
 経営の効率化: 会計処理を専門家に任せることで、取締役は本来の経営業務に専念できます。

 とは言うものの、会計参与の設置は、任意となっていますので、会社の方針如何によることとなります。会計参与のメリット等を考慮して判断することになります。
 一方で会計参与に就任する会計専門家側にも一定のリスクが伴います。そのリスク軽減のために、締結する契約書において責任軽減事項を設けたり、会計の健全性を図るために取締役等の遵守すべき事項などを設けたりすることとなります。また、「中小会計指針」や「中小会計要領」など中小企業向けの会計ルールに基づいた会計処理やそれに基づいた経理規程の策定などを行うことで、リスク軽減とともに、決算書等の質と対外的な信用力を向上させることにつながります。
 また、中小企業会計学会会長でTKC全国会最高顧問の河﨑照行甲南大学名誉教授は、その著『会計が分かればビジネスが見える』において、会計参与制度の特徴を4点に要約し、その信頼性を保証する役割について次のように述べています。

 会計参与制度は、2005年6月に、会社法の成立とともに創設された制度であり、その特徴は次の4点に要約できる。
① 会計参与は、株主総会で選任される会社の独立した機関であること
② 会計参与に就任できるのは、税理士・公認会計士といった会計に関する専門的識見を有する一定の資格者であること
③ 会計参与の職務は、取締役・執行役と共同して計算書類を作成し、取締役・執行役とは別に計算書類を保存し、株主・債権者に対して開示すること等であること
④ 会計参与の設置目的は、計算書類の正確性に関する信頼を高め、株主・債権者の保護および利便に資すること

 このように、会計参与は、計算書類の共同作成と計算書類の別保管を通じて、計算書類の質的向上を図り、その信頼性を保証する役割が期待されている。

河﨑照行『会計が分かればビジネスが見える』

 さらに、河﨑照行名誉教授は、「現行制度では、中小企業の計算書類の信頼性を高める手段は、会計参与制度と書面添付制度をおいて他にない」として、両制度の普及・活用を期待しています。

〈参考・書面添付制度〉
 河﨑照行甲南大学名誉教授の前掲書では、書面添付制度について、次のように記しています。
 書面添付は、申告書について、次の二つを明らかにする書類である。
① 税理士が申告書の作成にあたり、どの程度内容に立ち入って検討したか
② その結果、税理士が申告書について、どの程度の責任をもって作成したか

 このように、書面添付は、ある種の証明行為であることから、監査と同類の性格を有している。つまり、わが国の確定決算主義のもとでは、申告書の基礎となる計算書類や会計帳簿の正確性の保証を通して、ある種の税務監査証明としての役割が期待されている。

3.会計参与と他の役員等との違い

会計参与イメージ

(1) 監査役との違い

 監査役は、株式会社を構成する機関の1つで、会計参与と同じく会社法上の役員です。会計参与は、税理士・公認会計士等の会計専門家が取締役と共同で決算書等を「作成」する役員であり、監査役は取締役の業務や決算書等を「監査」する役員です。会計参与は作成責任を負い、監査役は外部の視点で公正性を保つ役割を果たします。つまり、監査役は自ら決算書等を作成するわけではなく、取締役の不正を防ぎガバナンスを強化します。その一環で作成された決算書についても監査します。また、監査役には資格要件もありません。

(2) 会計監査人との違い

 会計参与は取締役と共同して決算書等を「作成」するものですが、会計監査人は、公認会計士等が外部の立場から出来上がった決算書等を「監査」する点に違いがあります。
 会計監査人は、大会社(会計監査人の設置義務付け。中会社においては定款の定めにより会計監査人を設置)の外部機関として会計監査を行いますが、会計参与はすべての株式会社(主として中小会社)において任意に設置可能な内部機関です。

(3) 税理士法との関連

 会計参与制度は、会計に関する専門的識見を有するものとして、税理士が有する会計の専門性と独立性を重んじて提案された制度です。会社の内部機関として位置付けられたとしても、職務の遂行に当たっては、専門家としての識見を発揮することが期待されているものであり、税理士法第1条の使命である「独立した公正な立場」が損なわれることはないと、解されています。計算書類の正確性を図る共同作成者として関与する税理士が、確定した決算をもとに適正申告を行うという税理士の本来業務と会計参与の職務とが相反するものではないことから、会社法上においても顧問税理士が会計参与を兼任することを禁止していません。

4.会計参与の設置手順等

 会計参与の設置手順は大きく、次の3つの工程があります。

(1) 株主総会の決議
(2) 会計参与就任の承諾
(3) 登記申請

(1) 株主総会の決議

決議イメージ

 会計参与の選任の前に、会社の定款変更が必要となります。定款変更は特別決議が必要となるので、まず特別決議が必要です。特別決議には次の2つを満たさなければなりません。
 ・議決数の過半数の株主の出席
 ・出席した株主の議決権のうち3分の2以上の賛成

 続いて、会計参与の選任の株主総会の決議です。
 会計参与を含む役員の選任・解任の株主総会の決議は議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款に定めた場合は、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合は、その割合以上)をもって行わなければなりません。定足数について3分の1を下回る割合には設定できません。

(2) 会計参与就任の承諾

 会計参与就任の承諾は、「就任承諾書を提出してもらう」「株主総会議事録において、就任承諾の記述をしてもらう」などにより行います。

(3) 登記申請

 会計参与の就任承諾後、会社の本店所在地を管轄する法務局へ登記申請が必要です(登記申請の期日は、効力発生日(会計参与に就任した日)から2週間以内)。
 登記すべき事項は次の3点です。
 ・就任する会計参与の氏名または名称
 ・就任年月日
 ・会計参与による計算書類等の備置き場所

 添付書類として、定款、株主総会議事録、会計参与の就任承諾書、会計参与となる資格を有することを証明する書類等が必要となります。

5.会計参与の職務

 これまでも記載してきたように、まず、会計参与は「取締役・執行役と共同して、計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)およびその附属明細書、臨時計算書類、ならびに連結計算書類を作成」します。
 また、法務省令で定める(会社法施行規則102条)ところにより、「会計参与報告」を義務付けられています。取締役の職務の執行に関し不正の行為または法令、定款に違反する重大な事実を発見したときは、遅滞なく、これを株主に報告しなければなりません(そのほかの主な職務については下記を参照ください)。
 一方で、会計参与の責任もあります。2つに大別でき、1つは会社に対する任務懈怠責任で、もう1つは、契約関係の存在しない第三者に対する法定の責任です。
 会計参与は、その任務を怠ったときは、その株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法423条1項)。過失責任であるため、過失がなければ責任を負うことはありません。一部免除規定(同法425条、同法426条1項)があり、会計参与は社会性を有することから、社外取締役に認められるものと同様の責任制限制度が認められます(総株主の同意により全部免除についても認められている。同法424条)。また、あらかじめ、一定額を超える部分を免除する責任限定契約を締結しておくこともできます(同法427条1項)。第三者に対する損害賠償責任とは、会計参与の違法な職務行為によって第三者が損害を受けた場合の損害賠償責任です(同法429条)。
 このように会計参与は会社の役員であることから、他の役員と同様の責任を負うこととなります。

〈会計参与の主な職務〉
① 取締役・執行役と共同して計算書類等を作成
② 会計参与報告の作成義務
③ 計算書類等承認の取締役会への出席義務
④ 株主総会における意見陳述の義務等
⑤ 計算書類等の備置き義務(備置き期間は5年間)
⑥ 取締役に不正行為や定款に反する重大な事実があった場合の報告義務

 会社の経営力を高めるために、決算書を含め財務情報を有効活用することは欠かせません。会計参与制度を導入して資金調達を円滑化するという直接的なメリットだけでなく、一定の会計ルールに基づいた会計処理による信頼性の高い決算書をもとに、会社の実態をより正確に把握することで、また、専門的な知識に基づいた会計参与からのアドバイスを経営に役立てることで、会社の継続的な発展・経営力の向上につながるものと思われます。

【参考資料】

・日本税理士会連合会「会計参与の手引き 改訂版」
・日本税理士会連合会リーフレット「経営にちからを~会計参与の活用」
・中小企業庁リーフレット「経営力・資金調達力強化を目指す中小企業のための「中小会計要領」の手引き」
・河﨑照行『会計が分かればビジネスが見える』(TKC出版)

株式会社TKC出版

記事提供

株式会社TKC出版

 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
 税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。

  • Xでシェア
  • facebookでシェア
税理士事務所を探す