「Smile Box」「123HOME」などのブランドで、一戸建て住宅や不動産の販売事業を展開しているStandardは、経営計画の策定と発表等を通じて社内の士気を高めている。有田晃一社長は「経営計画の策定と実行は社長の重要な仕事です」と語る。
(写真)有田晃一社長を中央に、右が岩瀨貴之税理士、左が齋藤亮介税理士
2023年12月某日、Standardの有田晃一社長は、沼津市内にあるホテルの宴会場で、壇上から客席を見渡しながらこう呼びかけた。
「私は当社を『ステークホルダー全員の人生を最後まで守り切れる会社にしたい』と考えています。そのためには会社の規模を拡大し、景気や社会情勢の変化に柔軟に対応できる体制を整える必要があります。そこで『30年5月期に年商100億円を達成する』という目標を新たに掲げました。この数字には私の覚悟と当社の未来、そして何より皆さんのより良い人生が詰まっているのです」
これは同社が毎年開催している「Standard Award」での、社長スピーチの一幕である。有田社長の言葉に、同社の社員はもちろん、翌年入社予定の内定者、地元の工務店や建築資材の供給業者、顧問税理士事務所、取引金融機関など、総勢280人が耳を傾けた。「ステークホルダーの人生を守り切る」という有田社長の熱い思いは、またたく間に客席に伝わり、会場全体が熱気に包まれた。
「Standard Award」では有田社長による方針発表(左)と優秀社員の表彰(右)等が行われる
実際に社内の士気は高まっているようで、ある若手社員は年間受注件数3棟という目標に対して「10棟受注します」とコメントするなど、前向きな姿勢を見せているという。
「年商100億円という目標を掲げたことで、社員が自らの役割を超えて組織に貢献しようという“気配”を感じるようになりました。普段の業務でも『この投資は目標達成に向けて適切か』『業務が属人化していないか』など、組織を活性化させる意見が日々飛び交っています」と、有田社長は意欲的な数値目標を掲げたことの効果を実感しているようだ。
1.「年商100億円」への道筋
冒頭のスピーチから1年半後の25年5月、中小企業庁は地域経済を牽引する中堅・中小企業を育成することを目的に、「100億宣言」の申請受付を開始した。同社はすぐさま、30年5月期に年商100億円を達成するための戦略を盛り込んだ「宣言」を作成・提出した。
「年商100億円を突破するべく、『地域シェア10%』『成約率25%』の達成という目標を掲げるとともに、これらを実現するための道筋として『設備投資』『集客』『人材育成』の3つの観点から、具体的な行動計画を立案しました」(有田社長)
設備投資の面では、主に住宅展示場やモデルハウスなど売り上げに直結する設備に資金を投じる。集客面では、顧客を住宅購入時期に応じて「顕在層」「準顕在層」「潜在層」の3段階に区分し、顕在層には住宅展示場やモデルハウスの紹介、準顕在層には土地選びや住宅ローンに関するセミナーの開催、潜在層にはSNS等での情報発信など、区分ごとに集客手段を使い分ける方針を打ち出した。
また、社員の計数管理能力の向上に向けた学習機会の提供、売上高だけでなく紹介率・顧客満足度・チームへの貢献など、多様な指標によって社員を評価するなどの施策を通じて、社員の成長を後押ししていくという。
2.計画策定は社長の重要な仕事
有田社長が計画策定の重要性を実感したのは、ある本との出会いがきっかけだった。その本とは『社長の仕事』(TKC出版)。有田社長は同書を紐解きながら当時を振り返る。
「当時、家業の工務店で副社長を務めていた私は、会社経営について何も分かっていないという危機感を持っていました。そんな時に東京のある書店で手に取ったのがこの本です。特に『経営計画の策定・実行が最も重要な社長の仕事』とのメッセージには感銘を受けました。この本の著者の1人が、実家の近くに会計事務所を構えていることも運命に感じましたね」
その著者とは税理士法人トップの齋藤保幸税理士のことである。同書を読み込み、齋藤税理士から「経営について教わりたい」と思い至った有田社長は、すぐさま事務所に電話をかけた。
「『土曜でよければ対応します』と言っていただきました。お忙しいなか時間を設けていただいたことを今でも感謝しています」と有田社長は目を細める。
その後、毎週のように事務所に通っては、経営者としての心構えや業績管理のノウハウを学んだ有田社長。のちに家業を廃業し、07年にStandardを設立したのを機に税務顧問契約を締結。引き続き経営に関する助言・指導を受けた。
創業期を支えた岩瀨貴之税理士はこう振り返る。
「創業直後は自計化体制の構築を支援し、経理業務が軌道に乗って以降は経営助言業務に注力しました。経営計画の策定を支援することが当事務所の標準業務で、Standardさんにおいても1期目から計画づくりをサポートしました」
社員や金融機関等を招いての経営計画発表会も1期目から開催している。コロナ禍前までは毎年4月に開催していたが、23年からは「Standard Award」にリニューアル。1年を締めくくるイベントとして、業績優秀者の表彰式や忘年会を兼ねて開催するようになった。
「このほかにも、Standardさんでは金融機関を交えた決算報告会を毎年8月に開催されています。取引金融機関の支店長と担当者を沼津市内のオフィスに招き、前期の決算報告、今期の中間報告と着地予測、商品土地の状況と購入計画等を、有田社長ご自身が説明されています」(齋藤亮介税理士)
決算報告会は信頼関係の醸成と資金繰りの強化につながっているようで、「立地や地盤の良い土地を購入するための購入資金を迅速に確保できています」と有田社長は胸を張る。
3.コストを緻密にコントロール
同社は今や地域を牽引する中小企業として飛躍を遂げているが、これまでの歩みは順風満帆ではなかった。住宅・不動産事業に参入した初年度の受注件数はわずか6軒。しかし、その翌年度は28棟と大幅に数字を伸ばした。その後も右肩上がりで受注件数を伸ばしており、今期は全ブランドで221棟の受注を見込んでいるという。
受注件数を着実に伸ばしている要因に「高品質な一戸建て住宅をリーズナブルな価格で提供している」ことが挙げられる。住宅業界では内装や設備等の過剰な仕様、属人的な設計・施工、広告宣伝費といった“見えないコスト”が積み上がり、結果として住宅価格の上昇を引き起こす傾向にあるという。
一方、同社では「顧客の暮らしに直結しないコストは極力かけない」という方針のもと、コストを緻密にコントロールしている。これにより、住宅の品質を落とすことなく、他社よりも安い価格帯で販売できているのだ。実際に同社の物件を見てみると、27~33坪で平均約2,400万円(税込み)前後と、他社と比べて6~7割の価格で販売している。
静岡県東部を中心に高品質でリーズナブルな住宅を販売
「当社では住宅の設計・仕様を標準化するとともに、資材の調達・施工を信頼の置けるパートナー事業者に委託しています。集客面では広告に依存せず、かつて、当社で自宅を購入したお客さまの紹介や口コミを重視しています。これらの施策により、お客さまのライフスタイルや資金計画に合致した最適な住宅を提案することができています」(有田社長)
前々期は36億円、前期は40億円と、着実に売上高を伸ばしてきたStandard。今期も増収を見込んでおり、戦略目標に掲げる100億円がいよいよ射程圏内に入ってきた。
(取材協力・税理士法人トップ/本誌・中井修平)
| 名称 | 株式会社Standard |
|---|---|
| 業種 | 住宅・不動産販売業 |
| 設立 | 2007年2月 |
| 所在地 | 静岡県沼津市岡宮126-1 |
| 売上高 | 40億円 |
| 社員数 | 124名 |
| 利用システム | DAIC3クラウド |
| URL | https://www.by-standard.jp |
| 顧問税理士 | 税理士法人トップ 会長 齋藤保幸 所長 岩瀨貴之 静岡県沼津市千本緑町2-10-1 URL: https://www.top-zeirishi.net |
掲載:『戦略経営者』2026年2月号
記事提供
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