2025年12月22日

中小企業のスポーツ支援「晃立工業株式会社 様」 知名度向上に熟練の“デザイン力”で貢献

中小企業のスポーツ支援「晃立工業株式会社 様」 知名度向上に熟練の“デザイン力”で貢献

2024年、サッカー女子「なでしこリーグ」2部を22戦無敗で制し、1部昇格を果たした岡山湯郷ベル。村上夏奈瀬選手はディフェンダーを務めつつ、津山市内のメーカーに籍を置く。持ち前のデザインセンスを生かし、チームと会社の広報活動に欠かせない存在となっている。

 湯郷ベルのホームグラウンド、岡山県美作ラグビー・サッカー場。試合時には、選手ののぼりが30本ほど掲げられる。村上選手自らデザインしたものだ。「もともと絵を描いたり、頭の中でイメージしたものをデザインしたりするのが好きだった」という村上さん。操作方法を独学で身につけたグラフィックデザインソフトを自在に操り、イメージをかたちに落とし込んでいった。

 上司である福廣早代常務は、のぼり制作を請け負うことになったいきさつを話す。

 「当初は、会社の周囲に村上選手ののぼりを立てていました。たまたま近くを通りがかった湯郷ベルの関係者がその光景を目にして、試合時、グラウンドにのぼりを掲げれば、もっと盛り上がるのではとの打診がありました。そこで村上さんに選手全員分ののぼり制作を相談して、担当してもらうことになったんです」

 同社は、天然の小石から人工の砂を製造する製砂機、およびハードディスクを粉砕するメディアシュレッダーの製造という、2本柱の事業を展開している。製砂機はコンクリート需要の高まる新興国で引き合いが強まっていて、2021年にはモンゴルに初めて納品した。メディアシュレッダーは、防衛省や企業のデータセンター等に豊富な納入実績を持つ。

1.ジョブパートナーとして支援

 サッカー選手とメーカー社員という二足のわらじを履く村上さんは、どのような日常を送っているのか。晃立工業の始業は8時半。津山市にある本社に出社し、14時まで広報業務に携わる。販促、広報資料のデザインと制作、来客対応などを担当する。その後、車で美作市内のグラウンドへ移動し、トレーニングに励む。25年シーズン、なでしこリーグ1部には12チームが参加した。チームの本拠地は、関東から九州までと広い。ホーム・アンド・アウェー方式で22試合戦い、優勝を競った。

 「25年のリーグ戦は、3月から10月にかけて行われました。各地への遠征が多くなりますが、サッカー優先で移動時間も含めて勤務時間に参入しています。平日は出勤して練習をこなし、さらに日曜日の試合に出場するとなると働き詰めになるため、毎週月曜日に休暇をとってもらっています」(福廣常務)

岡山湯郷ベルの試合日程などを商談スペースに掲示

岡山湯郷ベルの試合日程などを商談スペースに掲示

 村上さんが同社に入社したのは23年にさかのぼる。岡山県北地域の活性化を目指す湯郷ベルの方針に共鳴した福廣匡倫社長は、チームを「ジョブパートナー」として支援することを決めていた。ジョブパートナーの仕組みを知ったのは、チーム側から打診されたのがきっかけ。「社長をはじめスポーツ好きの社員が多く、ウェブサイトに地元ソフトボールチームを応援している旨を掲載しているので、当社に興味を持ってくれたのでは」と福廣常務は推し量る。

 ただ、スポーツ選手の受け入れには一抹の不安もあった。平日はトレーニングに時間を割かれるし、リーグ戦が開幕すれば遠征試合も増える。フルタイムで働く社員と同等の給与を支給すると、不満の声が上がるかもしれない。午前中に仕事をしてもらい、選手として活動している14時以降は、晃立工業の宣伝を担当していると考えてはどうか──湯郷ベル担当者によるそうした提案を受け、福廣社長はジョブパートナーに挑戦することを決断した。

2.セカンドキャリアも念頭に

 村上さんは入社当初、主に製品の組み立てを担当していたが、まもなく広報、宣伝を担うようになる。背景には、本人のセカンドキャリアに対する会社側の配慮があった。

 「サッカー選手ですから、この先他チームに移籍し、転職することも考えられます。機械の組み立てよりも、広報全般を担当して、デザイン関連の知識を身につけてもらった方が、次の職場でも生かせるのではと思ったのです」(福廣常務)

 期待に応え、村上さんはグラフィックデザインソフト関連の資格をたてつづけに取得。「こんな応援グッズがあるといい」という社員のリクエストをもとに、自身の写真や背番号をあしらったマフラータオルや、うちわなどのグッズをデザインし、8月に発売した。「各種資料や社員の名刺の制作などでも、デザイン力をいかんなく発揮してくれています」と福廣常務は目を細める。

オリジナルグッズをECサイトで発売

オリジナルグッズをECサイトで発売

 「社員そろって村上さんの出場する試合を観戦した際は、家族同士で交流したり、写真を撮ったりして、想像を超える盛り上がりでした。また、採用活動時に、スポーツと仕事を両立できる働き方を紹介すると、求職中の方にとって、新たな気づきになるようです」(同)

 村上さんはトレーニング中のけがにより戦列をしばらく離れていたが、手術やリハビリを経て、実戦に復帰しようとしている。26年シーズン開幕に向け、力強いまなざしで語る。

 「晃立工業の名を広めるためにも、試合に出場して活躍することが第一の目標。グッズ制作やSNSでの発信など、広報の仕事も継続していきたいです」

 25年のリーグ戦では、主力メンバーが大幅に入れ替わったものの、試合を重ねるごとにチームワークが向上。6位まで順位を押し上げた。来季はいっそうの飛躍が期待される。

(取材協力・兵庫太和税理士法人/本誌・小林淳一)

会社概要
名称 晃立工業株式会社
業種 機械製造業
創業 1956年1月
所在地 岡山県津山市草加部1147
代表者 福廣匡倫
従業員数 12名
URL https://koritsu.com
顧問税理士 兵庫太和税理士法人神戸営業所
顧問税理士 道廣和彦
兵庫県神戸市中央区明石町44神戸御幸ビル5F
URL: https://www.michiihro.bsg-next.com

掲載:『戦略経営者』2025年12月号

年商50億円を目指す企業の情報誌 戦略経営者

記事提供

戦略経営者

 『戦略経営者』は、中堅・中小企業の経営者の皆さまの戦略思考と経営マインドを鼓舞し、応援する経営情報誌です。
 「TKC全国会」に加盟する税理士・公認会計士の関与先企業の経営者を読者対象に、1986年9月に創刊されました。
 発行部数13万超(2025年9月現在)。TKC会計人が現場で行う経営助言のノウハウをベースに、独自の切り口と徹底した取材で、真に有用な情報だけを厳選して提供しています。