2025年11月20日

目指せ!100億企業【CASE2】「株式会社残間金属工業 様」 技術力強みに道央圏進出し地元釧路の活性化目指す

目指せ!100億企業【CASE2】「株式会社残間金属工業 様」 技術力強みに道央圏進出し地元釧路の活性化目指す

残間巌社長(左)と甲賀伸彦税理士

「技術力・誠実・自主性」をモットーに高品質な構造用鉄骨を製造している残間金属工業。100億宣言を行った背景には、需要増が予想される道央圏への進出を足掛かりにした「地元釧路の活性化」という残間巌社長の強い思いがあった。

 建築物を支える柱や梁などの骨組みとなる鉄骨、いわゆる「鋼構造物」の製造販売、施工を手掛ける残間金属工業。工場の製造能力や設備の水準、技術者の人数に応じて国土交通大臣が認定する5グレードのうち、最上位から二つ目のH(High)グレードの鉄骨を供給できる技術力が強みだ。2019年に事業承継した3代目の残間巌社長はいう。

 「溶接技術などの有資格者数の比率が他社と比べて高く、ゼネコン担当者などが当社を訪問し行う製品検査では、多くの方から『製品の品質が高い』と評価をいただいています。釧路管内でHグレードを取得しているのは当社のみで、スポーツ施設『湿原の風アリーナ釧路』や観光客も多く訪れる『釧之助本店』など、ここ10年ぐらいの地域の鉄骨造りの建築物ではほとんど当社の鉄骨を使用しています」

「Hグレード」の鉄骨を製造する高い技術力が強み

「Hグレード」の鉄骨を製造する高い技術力が強み

 そんな同社が、「100億宣言」企業として名乗りを上げた理由は、「このままではじり貧を免れない」という残間社長の強い危機感である。

 「地方都市である釧路は全国平均に比べ人口減のペースが速いと予測されているのに加え、水産業をはじめとした基幹産業も軒並み低迷しています。人口減と経済規模の縮小が続くこの地だけで営業を続けていても将来はなく、域外に出ていくしかないと感じていました。とくに道央圏(北海道経済の中心である札幌市をはじめ、小樽市や苫小牧市、千歳市などが占めるエリア)は中心市街地の再開発やビルの建て替え、新幹線や駅の工事など、鉄骨の需要が多く見込まれます。そこに行かない手はありません」

1.生産能力を1.4倍に拡大

 売上高100億円に向けた事業計画では、営業エリアの拡大をにらんだ生産能力の増強を盛り込んでいる。昨年に実施した本社敷地内での第5工場新設、今年に計画している溶接ロボットの増設や組み立て用治具の導入など約1.5億円の設備投資で、生産能力を1.4倍に引き上げる見込みだ。

 また同社では2年前から、中小企業基盤整備機構のハンズオン支援(専門家派遣)事業を活用、中小企業診断士と協力しながら工程管理の「見える化」を進めており、「多能工化の継続」や「正確度・精度の高い積算・納期予測の実現」も目標に掲げている。

 「各社員が、設計、機械による1次加工、溶接、組み立てなどの一連の工程をこなせるようになることを目指しています。仕事の内容や進み具合によって、各工程で必要な人数はその都度変動しますが、多能工化が進めばこのバラつきに柔軟に対応することができ、人員の効率的な配置が可能になります。また工事ごとの原価の詳細については、私や父(残間順雄会長)だけが把握している『ブラックボックス』の部分をすべて見える化し、最終的には案件ごとの工事原価の適時正確な把握と、その情報共有を実現していきたいと考えています」

 税理士法人トップマネジメント釧路事務所の甲賀伸彦税理士と顧問契約を結んだのは、残間社長が事業承継した19年のこと。それまでは他社システムを使用していたが、金融機関などからTKCシステムの評判を聞き、切り替えを決断した。

 「金融機関などから、TKCシステムで作成する決算書の対外的な信頼度の高さについて話を聞く機会が多くありました。甲賀先生が講師を務められたセミナーに父が出席するなど面識があったこともあり、甲賀先生に税務顧問を依頼することにしました。TKCシステムの活用を通じた月次決算の実施で、毎月数字がピタッと確定するのが何より安心感につながっています」

 実は残間社長は社長就任前の12年、道央圏で鉄骨階段の製造に強みを持つ共和鉄工を金融機関の紹介で子会社化した後、同社の資金繰りに四苦八苦し、「1円単位まで各工事の原価管理を行い、何とか正常に戻した」苦い思い出を持つ。甲賀税理士は、そうした苦境を乗り越えてきた残間社長の計数感覚に太鼓判を押す。

 「19年にはじめてお会いしたときにすでに、自己資本比率の重要性を認識されており、財務に強い経営者という印象でした。TKCシステム導入後は確実に月次決算を実施し、業績の行方を常に注視されています」

2.来春に事務棟新設で人員増も

 税理士法人トップマネジメントの万全のサポートのもと、野心的な100億宣言をした残間金属工業。決断の裏には、「域外に打って出て稼ぐことが、雇用の創出や経済活性化につながり、釧路を元気にすることができる」という残間社長の地域貢献への強い思いがある。例えば創業者の祖父が起業当初に製作していた石炭ストーブもいまだに製造を継続しているほか、近年ではふるさと納税の返礼品としてソロキャンプなどに最適なバーベキュー用鉄板の製造をスタート。厚さが6ミリあり料理が冷めにくく、肉がおいしく焼けると評判で、年間300枚以上売れるヒット商品になっている。

2024年に建設した第5工場(中央)、石炭ストーブやバーベキュー用鉄板の製造も手掛ける(右)

2024年に建設した第5工場(中央)、石炭ストーブやバーベキュー用鉄板の製造も手掛ける(右)

 また同社は、賃上げ一色となる社会の潮流に先んじてベースアップに取り組んできた。給与は同業他社より高水準で、週休2日、年間休日125日とワーク・ライフ・バランスに配慮した働き方も整備するなど「待遇面では自信がある」(残間社長)。オフィススペースが手狭になったため来年4月着工で事務棟の新設を計画しており、設計や営業でさらなる人員増を図る。新棟の延床面積は現在の約3倍に増加、全面バリアフリーで女性のための設備を充実させるなど、働きやすい職場環境の整備を進める考えだ。

(協力・税理士法人トップマネジメント/本誌・植松啓介)

会社概要
名称 株式会社残間金属工業
業種 構造物用鉄骨製造業
設立 1979年4月
所在地 北海道釧路郡釧路町国誉5-12-1
売上高 約29億円(グループ全体)
従業員数 約80名(グループ全体)
使用システム FX4クラウド
URL https://www.zanma.co.jp
顧問税理士 税理士法人トップマネジメント
代表 甲賀伸彦
北海道釧路市城山1-10-15(釧路事務所)
URL: https://www.mytaxpro.jp/1wun025c9oih/

掲載:『戦略経営者』2025年11月号

年商50億円を目指す企業の情報誌 戦略経営者

記事提供

戦略経営者

 『戦略経営者』は、中堅・中小企業の経営者の皆さまの戦略思考と経営マインドを鼓舞し、応援する経営情報誌です。
 「TKC全国会」に加盟する税理士・公認会計士の関与先企業の経営者を読者対象に、1986年9月に創刊されました。
 発行部数13万超(2025年9月現在)。TKC会計人が現場で行う経営助言のノウハウをベースに、独自の切り口と徹底した取材で、真に有用な情報だけを厳選して提供しています。