💡この記事のポイント
☑延滞税は「遅延利息」、利息税は「約定利息」、加算税は「罰則」という性質がある。
☑申告忘れや間違いに気づいたらすぐに修正申告を。
☑申告・納税は自分だけの判断で行わず、必ず税理士に相談を。
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- 1.附帯税とは
- 2.延滞税の仕組み
- 3.利子税の仕組み
- 4.過少申告加算税の仕組み
- (1) 過少申告加算税の課税要件
- (2) 過少申告加算税の税率
- 5.無申告加算税の仕組み
- (1) 無申告加算税の課税要件
- (2) 無申告加算税の税率
- 6.重加算税の仕組み
- 7.不納付加算税の仕組み
- (1) 不納付加算税の課税要件
- (2) 不納付加算税の税率
- 8.まとめ
1.附帯税とは
納税額に誤りがあったり、納税期日を守らない等、正しく税金が納められていない場合に賦課されるのが附帯税です。もし賦課されると、資金的に苦しくなるだけでなく、取引先や金融機関に知られると、その信頼の低下にもつながりかねません。
附帯税の種類と対応策を解説します。
(1) 附帯税には「延滞税」「利子税」「加算税」がある

附帯税は大きく分けて「延滞税」「利子税」「加算税」の3種があります。また、加算税は「過少申告加算税」「無申告加算税」「重加算税」「不納付加算税」に分類できます(下記表)。
■附帯税の種類
附帯税 |
延滞税 | |
利子税 | ||
加算税 | 過少申告加算税 | |
無申告加算税 | ||
重加算税 | ||
不納付加算税 |
それぞれの特徴は次の通りです。
①延滞税は「遅延利息」的な税
延滞税は、国税における納税において、期日までに納付がされなかった場合に賦課される税で、「納税義務不履行による損害賠償としての遅延利息」としての意味合いがあります。履行の遅滞に対する損害賠償という性質は、期限内に適正に国税の納付を履行した者との均衡を図るために設けられていると考えられます。
言い換えれば、「法律上の義務の不履行に対する、一種の行政上の制裁」という性質を有しています。
②利子税は「約定利息」的な税
利子税は、国税における納税において、延納などが認められた場合に賦課させられる税で、「延納や法人税の申告期限の延長等が認められた場合に、その延長が認められた期間の約定利息」という性質を持ちます。
延納などによって申告が遅くなった場合は、国税の履行遅滞には当たりません。それが延滞税との違いです。
③加算税は「罰則」的な税
加算税は、申告納税方式の国税において、法定申告の期限までに正しい申告がなかった場合、または源泉徴収等の国税において、法定納期限までに正しい納付がなかった場合に賦課される税です。そのため、延滞税や利子税とは違い、「申告・納付の義務違反による行政制裁」の意味合いを有しています。
言い換えると、適正に申告・納付した納税者との客観的不公平の是正を図る意図、あるいは、過少申告による納税義務違反を防止し、適正な申告納税の実現を図る意図があります。
なお、申告納税方式とは「税納付時に自らで納める金額を計算し納税する方法」で、源泉徴収とは「給与等の支払者が支払いの際に各税を天引きし、納税者の代わりに納付する方法」を指します。
2.延滞税の仕組み
(1) 延滞税の課税要件
延滞税は、国税について法定納期限までに未納付の場合、その不納付税額及び不納付期間に応じて賦課される税です。
具体的な課税要件は次の通りです。
①申告などで確定した税額を法定納期限までに完納しないとき
②期限後申告書または修正申告書を提出した場合で、納付しなければならない税額があるとき
③更正または決定の処分を受けた場合で、納付しなければならない税額があるとき
いずれの場合も、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じた延滞税を納付しなければなりません。なお、延滞税は本税だけを対象として課されるものであり、加算税などに対しては課されません。
(2) 延滞税の税率

延滞税の計算方法は、原則として「納期限の翌日から2か月を経過する日までは年7.3%」、「納期限の翌日から2か月を経過した日以後は年14.6%」とされています。
ただし、延滞税には特例(軽減措置)があります。納期限後2か月以内に納付する場合、延滞税特例基準割合※に1%を加えた金額か、年7.3%のいずれか低い方とされています。例えば令和7年分(令和7年1月1日から令和7年12月31日)の延滞税特例基準割合は1.4%なので、税率は年2.4%となります。年2.4%と年7.3%のいずれか低い方なので、令和7年分は年2.4%が適用されることとなります。
一方、納期限から2か月以上経過した場合は、延滞税特例基準割合に7.3%を加えた割合か年14.6%のいずれか低い方が適用されます。令和7年分だと、上記の通り延滞税特例基準割合が1.4%となるので、これに7.3%を加えると年8.7%となります。年8.7%と年14.6%のいずれか低い方なので、令和7年分は年8.7%が適用されます。
※特例基準割合とは
各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合である「貸出約定平均金利」(銀行や信用金庫等が個人・企業に資金を貸し出す際の平均金利)に年1%の割合を加算した割合。特例基準割合は基本的に毎年変動します。
また、事業廃止等により納税の猶予等があった場合は、本則では「2分の1免除」(14.6%の2分の1である7.3%)とされていますが、これも特例があり、令和7年分に関しては0.9%となっています。
延滞税の税率(本則と特例)は下表の通りです。
内容 | 本則 | 特例(令和7年分) | |
延滞税 | 法定納期限を徒過し履行遅延となった納税者に課されるもの | 14.6% | 8.7% |
2か月以内等 | 納期限2ヶ月以内等については、早期納付を促す観点から低い税率 | 7.3% | 2.4% |
納税の猶予等 | 事業廃止等による納税の猶予等の場合には、納税者の納付能力の減退といった状態に配慮し、軽減(災害・病気等の場合には、全額免除) | 2分の1免除(7.3%) | 0.9% |
(3) 修正申告をした場合
修正申告によって本来納めるべき税額が増えた場合、その増加した税額分についても、納期限から納付日までの延滞税が賦課されます。
例えば、下記のようなケースです。
■4月20日が納期限の所得税について、後から修正申告した場合
①修正申告により追加納付額が生じる
②その追加額に対し、納期限日翌日の4月21日から納付日までの日数分延滞税がかかる
③例えば、納期限日の2か月以内である6月20日までに修正申告をした場合、特例による課税割合が適用され、6月21日以降に修正申告した場合は、本則による課税割合が適用される
上記の通り、修正申告を遅らせるほど延滞税は増加し、税負担も大きくなります。
3.利子税の仕組み
(1) 利子税の課税要件
利子税は、納付を猶予・繰延べしてもらった期間の利息という意味合いがある、つまり納税者の責めに帰すべき遅れではなく制度上認められた繰延べに伴うものです。
具体的な課税要件は次の通りです。
〈利子税の課税要件〉
①所得税
・確定申告税額の延納の場合
・延払条件付譲渡に係る延納の場合
・国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等の適用がある場合の納税猶予の場合
②法人税
・確定申告税額の延納の場合
・延払条件付譲渡に係る延納の場合
③消費税
・法人の確定申告書の提出期限の延長の場合
④相続税
・相続税の延納の場合
・相続税の物納の場合
・相続税の物納撤回の場合
・農地等についての相続税の納税猶予の場合
・非上場株式等についての相続税の納税猶予の場合
⑤贈与税
・贈与税の延納の場合
・農地等についての贈与税の納税猶予の場合
・非上場株式等についての贈与税の納税猶予の場合
(2) 利子税の税率
利子税は、税目あるいは納期限日の翌日から延納や延長期間中の未納税額に対する納付期間等に応じて変わります。さらに、特例も設けられています。詳細は国税庁HP等で確認してください。
4.過少申告加算税の仕組み
(1) 過少申告加算税の課税要件

過少申告加算税は、本来納めるべき納税額を過少に申告した場合に賦課される税です。税務署からの指摘を受けて申告内容を修正した場合や、税務署から申告納税額の更正を受けた場合に賦課されます。そのため、自発的な修正申告を行った場合には、過少申告加算税はかかりません。
具体的な課税要件は次の通りです。
〈過少申告加算税の課税要件〉
①期限内申告書(還付請求申告書を含む)が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正があったとき。
②期限後申告書が提出された場合(期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があるとき、又は法定申告期限内に申告する意思があったと認められるときに限る)において、修正申告書の提出又は更正があったとき。
(2) 過少申告加算税の税率
本来納めるべき税額と、過少に申告した金額差額である増差税額に対し、通常10%の税が賦課されます。ただし、税務調査等で指摘される前に自主的に修正申告した場合は、5%に軽減されます。
5.無申告加算税の仕組み
(1) 無申告加算税の課税要件
無申告加算税とは、法人税や所得税などの申告を期間内に適切に行わなかった場合に賦課される税金です。
具体的な課税要件は次の通りです。
〈無申告加算税の課税要件〉
①期限後申告書の提出又は決定があった場合
②期限後申告書の提出又は決定があった後に、修正申告書の提出又は更正があった場合
ただし、②については、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があるとき、又は法定申告期限内に申告する意思があったと認められるときは、過少申告加算税が課される(通則法65①かっこ書)。
(2) 無申告加算税の税率
無申告加算税の税率は、未申告の税額に応じて決められます。具体的には、50万円以下の場合は10%、50万円超~300万円以下の場合は15%、300万円を超える場合には25%が適用されます。
ただし、期限後申告で、かつ納期限から1か月以内であれば5%に軽減されます。
6.重加算税の仕組み
(1) 重加算税の課税要件
重加算税は、納税者が事実を隠ぺい又は仮装することによって、少ない税額で申告をしたり、あるいはそもそも申告をしなかった場合に賦課される税です。本来の税額に35%以上の税率を加算して賦課されるので非常に重く、ペナルティとしての意味が強くなっています。
具体的な課税要件は次の通りです。
①過少申告加算税等が課される要件に該当すること。
②課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい・仮装していたこと。
③ ②に基づき、1)納税申告書もしくは更正請求書(令和7年以降に法定申告期限等が到来する国税について適用)を提出し、2)法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は3)法定納期限までに納付しなかったこと。
また、「隠ぺい・仮装」に該当する行為の例としては、次のような例が挙げられます。
〈隠ぺい・仮装に該当する行為の例〉
①いわゆる二重帳簿の作成
②帳簿書類の破棄・隠匿、虚偽記載等
③本人以外の名義又は架空名義で行う事業の経営又は取引等。ただし、次の1)又は2)の場合を除く。
1)配偶者、その他同居家族の名義により事業の経営又は取引等を行っているが、その名義人が実際の住所地等において申告等をしているなど、税のほ税を目的としていないことが明らかな場合
2)本人以外の名義(配偶者、その他同居親族の名義を除く)で事業の経営又は取引等を行っていることについて正当な事由がある場合
④本人以外の名義又は架空名義による所得の源泉となる資産(株式、不動産等)の所有。ただし、③の1)又は2)の場合を除く。
⑤秘匿した売上代金等による本人以外の名義又は架空名義の預貯金その他の資産の取得
⑥各種の課税の特例の適用を受けるなどのための、虚偽の証明書その他の書類の作成(他人に作成させることを含む)
⑦源泉徴収票等の記載事項の改ざん、架空の源泉徴収票等の作成(他人に虚偽記載又は提出させないことを含む)
⑧調査等の際の質問に対する虚偽答弁等(相手先に虚偽答弁等を行わせることを含む)、その他の事実関係を総合的に判断して、申告時における隠ぺい・仮装が合理的に推認できること。
(2) 重加算税の税率
重加算税は加算税の中でも最も重い税率が設定されており、原則35%、無申告の場合は40%となっています。また、他の加算税のように税率が軽減される特例は基本的にありません。
〈重加算税の通常の割合〉
・過少申告加算税に代えて課す場合:35%
・無申告加算税に代えて課す場合:40%
・不納付加算税に代えて課す場合:35%
7.不納付加算税の仕組み
(1) 不納付加算税の課税要件
不納付加算税とは、源泉所得税の納付が行われなかったときにペナルティとして賦課される税金です。
具体的な課税要件は次の通りです。
〈不納付加算税の課税要件〉
源泉徴収等により納付すべき税額を法定納期限までに納付しなかった場合で、法定納期限後に納税の告知を受けたとき、又は納税の告知を受ける前に納付したとき。
(2) 不納付加算税の税率
不納付加算税の課税割合は10%です。ただし、納期限日から1か月以内の納付遅延である場合は、5%に軽減されるケースがあります。
8.まとめ
附帯税は本則の他に特例が設けられており、また税金の計算方法も複雑です。実際にかかる金額については、顧問税理士等の専門家に問い合わせましょう。
もちろん、附帯税を賦課されないことが最も重要です。たとえ経営不振等で「少しでも税負担を軽減したい」と思っても、税金の隠ぺい等は絶対に行ってはいけません。税務当局が調べれば、そうした隠ぺいは必ず見つかってしまいます。もし税率が高い重加算税が賦課されるようなことがあれば、資金繰りに深刻な影響を与えるだけでなく、取引先や金融機関からの信用も失いかねないからです。
常に法令遵守の意識を持ち、もし納税資金に困るようなことがあれば、まず顧問税理士に相談することをお勧めします。
【参考文献】
・『事務所通信』2017年3月号
・国税庁「No.9205 延滞税について|国税庁」
・国税庁「延滞税の割合|国税庁」
・国税庁「4. 申告納税制度|国税庁」
・国税庁「第1 源泉徴収制度について」
・国税庁「延滞税の計算方法|国税庁」
・国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき|国税庁」
・国税庁「加算税の免除要件-納税者の権利保護との関係から-」
・財務省「加算税制度の概要①(基本情報)」
・財務省「延滞税・利子税・還付加算金について」
・e-Gov 法令検索「国税通則法 | e-Gov 法令検索」第二条の四
・『附帯税の理論と応用 ―実務の処方箋―』(日本法令、2024年)

記事提供
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