2025年09月08日

2025年10月にWindows10のサポートが終了。企業への影響は?

2025年10月にWindows10のサポートが終了。企業への影響は?

💡この記事のポイント
 ☑Windows10のサポートが終了、Windows11へのアップデートが必要に。
 ☑アップグレードしないとサイバーセキュリティ上のリスクが高まる
 ☑アップデートに合わせてPCを買い替える際は、IT導入補助金を活用できる。

1.Windows11へのアップグレードを進めよう

 職場で使用しているPCに、Windows10が搭載されているものはありませんか?
 Windowsの開発元であるMicrosoft社は、Windows10のサポートを2025年(令和7年)10月14日をもって終了すると発表しています。
 使用しているPCがWindows10かどうかの確認をするには、スタートボタンから「設定」→「システム」→「バージョン情報(または詳細情報)」の順にクリックしてください。「Windowsの仕様」欄に「Windows10」とあれば、Windows10搭載のPCです。

Windows10からWindows11へのアップグレードを促す「UPGRADE」の文字が並ぶ写真

2.放置するとどうなる? 考えられるリスク

 Windows10サポートが終了する背景として、次のような理由があります。

①新技術の導入の必要性
 最新のセキュリティ技術やパフォーマンス向上のための新機能を取り入れるため、
 古いOS※から新しいOSへの移行が必要になったため。
②市場の変化への対応
 ユーザーのニーズが変化し、より高いセキュリティや新機能が求められるようにな ったことから、古いOSでは対応しきれなくなったため。
※OS…オペレーティングシステムの略称。操作・運用・運転などのオペレーションを司るシステムソフトウェアのこと。

 Windows10のサポート終了後、Windows11にアップグレードせずそのまま継続して使用していると、様々なリスクあるいは業務上の不都合に直面します。Microsoft社は、下記の通り具体的な問題点を挙げています。

■セキュリティ(深刻で潜在的に有害なセキュリティリスク)
①個人や企業の情報漏洩リスク(マルウェアやフィッシング詐欺)
②有害なウイルス、スパイウェアへの感染
③その他の悪意のあるソフトウェアに対する脆弱性
④情報漏洩の危険性

■生産性(業務での継続利用が困難)
①アップデートで提供される様々な新機能が利用できない
②更新プログラムの提供停止
③テクニカルサポートの対象外
④オンラインヘルプ
⑤コンテンツの廃止

■ビジネスの停滞(イノベーション機会の喪失)
①DX推進機会の遅延
②コストの最適化が困難
③働き方改革に乗り遅れる

【出典】Microsoft「Windows11へシフト! Windows10サポート終了

 上記の中でも、特に中小企業が注意したい3つのリスクをピックアップします。

(1) 有害なウイルス、スパイウェアへの感染

 新たなセキュリティに対する脆弱性やバグなどの修正が提供されなくなり、ウイルスやマルウェア、サイバー攻撃に対する防御機能が低下する可能性が高まります。その結果、企業が保有する個人情報の漏えいや業務システムの阻害などにつながりかねません。

(2) アップデートによって提供される様々な新機能が利用できない

 古いOSを利用し続けると、機能が制限されることがあります。また、サポート終了後に新しくリリースされるアプリケーションやソフトウェアにWindows10が対応できないという事態も起こりえます。
 新機能の追加を行う「機能更新プログラム」だけでなく、セキュリティの強化やシステム上のバグ等の不具合の修正を行う「品質更新プログラム」などもアップデートできなくなります。こういった、これまでWindowsとして備わっていたプログラムも利用できなくなり、業務に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) テクニカルサポートの対象外

サポート終了後の業務影響を示唆する、オフィスでPCを使う人物の写真

 テクニカルサポートとは、Windows商品について困ったときに相談ができ、専門的で技術的なサポートを受けられるサービスです。
 テクニカルサポートを受けるメリットは「Windows10について、技術的に困難な状況であってもリアルタイムで教えてもらえる」という点です。電話やチャットなどで状況を伝えながら、直接的なサポートを受けることができます。
 Windows10サポート終了後は、技術的な問題が発生した場合でも、このテクニカルサポートを受けることができなくなります。例えば、Windows10搭載のPC上でアプリケーションが起動できない、フリーズして動かない等の不具合が発生した場合も、リアルタイムでサポートを受けることができなくなります。

3.アップグレード方法は3種類!

 まず、使っているPCがWindows11へのアップグレードに対応しているかどうかを確認しましょう。確認方法は下記の通りです。


■Windows11へのアップグレード可否について確認方法
①「Windowsスタート」アイコンから「設定」を選ぶ
②「更新セキュリティ」から「Windows Update」を開く
③「更新プログラムのチェック」を選択し、アップグレード可能であればオプションが表示される


 使っているPCがWindows11へのアップグレードに対応している場合、次の3つのアップグレード方法があります。

(1) 「Windows Update」からアップグレード

①「Windowsスタート」アイコンから「設定」を選ぶ
②「更新セキュリティ」から「Windows Update」を開く
③「Windows11へのアップグレードの準備ができました」の表示を確認し「ダウンロードとインストール」をクリック
④ライセンス条項を確認したら「同意してインストール」をクリック
※最大2時間程度で終了します。

(2) 「インストールアシスタント」からアップグレード

①Microsoft社ホームページの下記URLから「Windows 11のダウンロード」にアクセス
Windows 11 のダウンロード
②「Windows 11インストールアシスタント」から「今すぐダウンロード」をクリック
③入手したファイルを実行後、「同意してインストール」をクリック
④PCの再起動を促されたら「今すぐ再起動」をクリック

(3) 「インストールアシスタント」からアップグレード

①Microsoft社ホームページの下記URLから「Windows 11のダウンロード」にアクセス
Windows 11 のダウンロード
②「Windows 11のインストールメディアを作成する」から「今すぐダウンロード」をクリック
③入手ファイルを実行後、「同意してインストール」をクリック
④「言語とエディションの選択」から「次へ」をクリック
⑤「使用するメディア」で「USBフラッシュドライブ」、DVDは「ISOファイルメディア」を選択
※通常1時間程度で完了します。

【出典】KMS【企業PC向け】Windows 11へのアップグレード方法!注意点も解説
- 法人PC買取の加賀マイクロソリューションのコラム

■使っているPCではWindows11にアップグレードできない場合
 日本マイクロソフト社の調査によると、2024年(令和6年)8月時点で国内法人市場には約2,100万台のWindows 10搭載PCが存在しており、そのうちWindows11へのアップグレード非対応のPCが約800万台あると判明しています。このように、PCの性能によってはアップグレードができず、PCの新規購入を考える必要があります。PC購入の際は、後述する「IT導入補助金」の活用も検討してみましょう。


■アップグレードなしで使い続けられる裏技がある?
 Microsoft製品には、サポート終了後も有償でセキュリティ更新プログラムの提供を延長できるExtended Security Updates (ESU)というサービスがあります。このサービスを使うことで、すぐにアップグレードや移行が難しい環境にいるユーザー、例えば業務の都合などで対象製品を使うことを強いられているユーザーでも、最長3年間使用し続けることが可能です。
 ただし、Extended Security Updates (ESU)には、セキュリティ以外のアップデートやテクニカルサポートなどは含まれない点に注意しておきましょう。

4.中小企業が活用できるIT導入補助金とは

中小企業向けIT導入補助金の説明に使用される「補助金」の文字と家の模型の写真

 Windows10サポート終了に伴いPCを買い替える中小企業は、IT導入補助金を利用できる可能性があります。
 IT導入補助金とは、「中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金」です。対象のITツールは、事務局の審査を受け、補助金HPに公開されているものとなります(複数社連携IT導入枠を除く)。また、相談対応等のサポート費用やクラウドサービスの利用料等についても補助対象に含まれています。

(1) 補助事業対象者について

 IT導入補助金を申請できる中小企業・小規模事業者の条件は下表のとおりです。

①中小企業

 (飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業のほか、製造業や建設業等も対象)

【業種分類・組織形態】 【資本金(資本金の額または出資の総額)】 【従業員(常時使用する従業員※1)】
資本金・従業員規模の一方が、右記以下の場合対象(個人事業を含む) ①製造業(ゴム製品製造業を除く。)、建設業、運輸業 3億円 300人
②卸売業 1億円 100人
③サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く。) 5,000万円 100人
④小売業 5,000万円 50人
⑤ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く。) 3億円 900人
⑥ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円 300人
⑦旅館業 5,000万円 200人
⑧その他の業種(上記以外) 3億円 300人
従業員規模が右記以下の場合対象※2 ⑨医療法人、社会福祉法人 300人
⑩学校法人 300人
⑪商工会・都道府県商工会連合会および商工会議所 100人
⑫中小企業支援法第2条第1項第4号に規定する中小企業団体 主たる業種に記載の従業員規模
⑬特別の法律によって設立された組合またはその連合会 主たる業種に記載の従業員規模
⑭財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) 主たる業種に記載の従業員規模
⑮特定非営利法人 主たる業種に記載の従業員規模

②小規模事業者

【業種・組織形態】 【従業員(常時使用する従業員※1)】
① 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く。) 5人以下
② サービス業のうち宿泊業・娯楽業 20人以下
③ 製造業その他 20人以下

※1 常時使用する従業員とは、労働基準法第20条に規定する「あらかじめ解雇の予告を必要とする者」を意味します。
※2 業種分類⑨~⑮に規定する組織形態の者について、小規模事業者に該当しないものとします。

【出典】独立行政法人中小企業基盤整備機構「申請の対象となる方 | IT導入補助金2025

(2) 申請枠の種類

 中小企業・小規模事業者等で補助対象である事業者である場合、下表の中からどの枠で申請するかを決めます。

枠名 特徴
【通常枠】 事業のデジタル化を目的としたソフトウェアやシステムの導入を支援※例:在庫管理システムや決済ソフト等
【インボイス枠(インボイス対応類型※)】 インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、PC・ハードウェア等の導入を支援※例:会計ソフト、受発注ソフト、PC等
【インボイス枠(電子取引類型※)】 インボイス制度に対応した受発注システムを商流単位で導入する企業を支援※例:受発注システム
【セキュリティ対策推進枠】 サイバー攻撃の増加に伴う潜在的なリスクに対処するため、サイバーインシデントに関する様々なリスク低減策を支援※例:ネットワーク監視システム
【複数社連携IT導入枠】 複数の中小企業・小規模事業者等のみなさまが連携して地域DXの実現や、生産性の向上を図る取り組みを支援※例:データ分析システム

※インボイス枠の「インボイス対応類型」と「電子取引類型」の違い
 インボイス対応類型は、中小企業・小規模事業者等が、インボイス制度に対応した「会計」・「受発注」・「決済」の機能を有するソフトウェア、PC・ハードウェア等を導入するための経費の一部を補助することで、インボイス制度への対応を強力に推進することを目的としています。
 一方、電子取引類型は、取引関係における発注者が、インボイス制度対応のITツール(受発注ソフト)を導入し、当該取引関係における受注者である中小企業・小規模事業者等に対して、当該ITツールを供与する場合に、当該ITツールを導入するための経費の一部を補助することで、中小企業・小規模事業者等の生産性向上およびインボイス制度への対応を促進することを目的としています。

【出典】独立行政法人中小企業基盤整備機構「インボイス枠(インボイス対応類型) | IT導入補助金2025 インボイス枠(電子取引類型) | IT導入補助金2025

 どの枠で申請するか決まったら、実際に申請します。申請フローは下記の通りです。

Step1 本事業の理解
Step2 GビズID※1の取得、SECURITY ACTION宣言実施※2※1 交付申請の要件にはGビズIDプライム(ID・パスワード等)が必要です。GビズIDプライムをお持ちでない場合は「GビズID」ホームページより取得できます。※2 中小企業・小規模事業者等のみなさま自らが、情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度で、「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言することを要件としています。
Step3 IT事業者の選定、ITツールの選定
Step4 交付申請
Step5 交付決定(IT導入補助金事務局)
Step6 ITツールの発注・契約・支払い
Step7 事業実績報告
Step8 補助金額の確認・承認(IT導入補助金事務局)
Step9 事業実施効果報告
【出典】独立行政法人中小企業基盤整備機構「IT導入補助金2025

5.まとめ

 Windows10のサポート終了に伴い、Windows11へのアップグレードが推奨されます。特に業務で使っている場合、サイバー攻撃による情報漏洩等が発生すると、多額の損失が発生する事態にもなりかねません。そうしたリスクを抑えるためにも、できるだけ早くアップグレードをしておきましょう。
 なお前述のとおり、IT導入補助金の利用には手続きが必要であり、顧問税理士など外部機関の支援を受ける中小企業も少なくありません。IT導入補助金を利用する場合は、税理士の支援を受けることも検討してはいかがでしょうか。
TKC全国会のご紹介

参考文献

・独立行政法人中小企業基盤整備機構「トップページ | IT導入補助金2025
・経済産業省「中小企業の実態判明 サイバー攻撃の7割は取引先へも影響 (METI/経済産業省)
・事務所通信2025年8月号Dタイプ
・事務所通信デジタル版「まだ間に合う!補助金等の最新情報」2023年1月号
・株式会社ブロードバンドセキュリティ「Windows10のサポート終了-その影響とリスクを考える- | SQAT®.jp
・Statcounter「Desktop Windows Version Market Share Japan | Statcounter Global Stats
・Microsoft「Windows 11 へシフト!Windows 10 サポート終了 - Windows 10 for business
・PC-Webzine「PC-Webzine - Windows 10EOSビジネスの攻略とアフターWindows 10EOSの準備
・ESCO「Windows10サポート終了で何が起こるの?迅速に対応すべき理由と対策方法を解説 | ICT、キッティング、オフィス移転などをトータルサポートするウチダエスコ株式会社
・ctc SolutionLINK「Windows 10サポート終了でどうなる?パソコンの買い替え時期は?Windows 11はいつまでに?乗り換えの期限を徹底解説! | 中部テレコミュニケーション株式会社 ctc 法人サービスサイト
・KMS「【企業PC向け】Windows 11へのアップグレード方法!注意点も解説 - 法人PC買取の加賀マイクロソリューションのコラム

株式会社TKC出版

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