💡この記事のポイント
☑領収書は会社独自のものを作成し、記載事項にも注意する。
☑与信限度設定は売掛金の基本。回収は厳格に、営業マンの考課基準にすることも。
☑仕入先とは相互の信頼関係を構築し、支払は約定を遵守すること。
☑棚卸は最低でも四半期に1度は行い、在庫量、在庫年齢を常に把握しておく。
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- 1.領収書
- (1) 会社独自の領収書を作成すべし
- (2) 領収書の発行はここに注意せよ
- (3) 収入印紙の貼付を忘れるべからず
- 2.売掛金
- (1) 与信限度設定は売掛管理の基本と知るべし
- (2) 売掛金の回収は営業部門の役割なり
- (3) 売掛金滞留額を営業マンの賞与等の考課基準に加えよ
- (4) 売掛金回収活動は履歴を残す
- (5) 取引先から「残高確認書」を取得せよ
- 3.買掛金
- (1) 仕入先との信頼関係を構築すべし
- (2) 請求書は購入担当者が責任をもってチェックする
- (3) 業者への支払いは約定を遵守すべし
- 4.棚卸資産
- (1) 在庫品は現金と同じであると銘記せよ
- (2) 実地棚卸は最低四半期に1度行うこと
- (3) 在庫品の荷動きに常に注意せよ
- (4) 保管方法と保管場所に配慮すべし
- (5) 切手や印紙、レターパックも棚卸しせよ
1.領収書
(1) 会社独自の領収書を作成すべし
領収書は会社が金銭等を受領した証しであり、金券同様に重要なものですから厳格に管理すべきです。市販の領収書などは使用せず、自社専用のものを作成するようにしましょう。
押さえておきたい基本的ルール
①領収書用紙には「一連番号」を印刷すべし
a.2枚複写で1枚目を控、2枚目を発行用とし、50部程度を1冊にして作成します。
b.領収書には、あらかじめ一連の通し番号を印刷しておきます。
②「領収書管理簿」に受渡しを記録すること
a.「領収書管理簿」を備え置き、領収書の印刷が上がり納品された際には、管理簿に納品日と領収書の一連番号を記録しておくようにします。
b.新しい領収書を使い始める際には、何番の領収書がいつ誰に渡されたのかを管理簿に記録しておきましょう。
③領収書控は番号順に整理・保管すべし
a.使い切った領収書の控は、出納担当者が番号順に整理して保管します。
b.事業年度が終了した際には、使用中の領収書は未使用ページを抹消処理した上で番号順に保管し、事業年度ごとに新しい領収書に替えましょう。なお、領収書控の保存期間は、会社法上は10年間、税法上は7年間です。
(2) 領収書の発行はここに注意せよ
領収書を発行する際には、記載内容に不備がないように注意し、押印のルール等をしっかり決めておきましょう。
押さえておきたい基本的ルール
①社印は経理部長が押印すること
a.領収書の記載と社印の押印は別々の人が行います。領収書の記載は出納担当者が行いますが、社印は経理部長が押すようにしましょう。
b.社印は発行の都度押印し、事前に押印しておくのはやめましょう。
②必要記載事項を明記すべし
a.領収書の発行に当たっては、「適格請求書発行事業者(当社)の氏名または名称および登録番号」「取引年月日」「取引内容(軽減税率の対象である場合はその旨)」「税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)および適用税率」「消費税額等」「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称(相手先名)」に誤りのないことを必ずチェックします。
これらの事項は、領収書を受領する相手先が消費税法上の仕入税額控除の適用を受けるための必須記載事項でもあります。
b.領収書の金額欄の記載は、できればチェックライターを使用するようにしましょう。手書きの場合、金額を改ざんされる恐れもあり、またチェックライターを使うことは会社のイメージアップにもつながります。
c.金額を記入しない領収書を発行してはいけません。悪用される危険性があります。
③書き損じた領収書は破棄すべからず
a.領収書の金額や相手先名などを誤って記入したときは、訂正せずに新たに書き直すようにしましょう。なお、書き損じた領収書はそのまま破棄したりせずに、領収書番号を切り取って領収書の控に貼り付けて保存します。
(3) 収入印紙の貼付を忘れるべからず
記載金額が5万円以上の領収書を発行するときは、収入印紙の貼付を忘れないようにしましょう。また貼付した収入印紙は、担当者印などで消印しておきます。
領収書に貼付する収入印紙の額は、次のとおりです。
記載金額(税抜き) | 収入印紙 |
---|---|
5万円未満 100万円以下 200万円以下 300万円以下 500万円以下 (以降省略) | 非課税 200円 400円 600円 1,000円 |
記載金額が500万円を超える場合は、記載金額に応じて最高20万円までの収入印紙の貼付が必要になります。
売掛金と買掛金を相殺する場合は、収入印紙の貼付は不要です。また「仮領収書」でも収入印紙は必要です。
なお、収入印紙の貼付漏れに対しては、印紙税法違反により表示金額の3倍を徴収されることになりますから注意しましょう。
2.売掛金
(1) 与信限度設定は売掛管理の基本と知るべし
資金繰りを考えれば現金取引が良いことは言うまでもありません。しかし、現在の商取引では、売り手と買い手双方の信用に基づく掛取引が一般的です。新規に取引を開始する場合、また大口の商談に際しては、特に取引先の信用度を確認する必要があります。
インターネットで、帝国データバンクなどの調査会社から、資本金や年商、所得、従業員数、設立経過年数等の企業情報を入手できます。
また、取引の都度与信調査を行うわけにはいきませんので、一定の与信限度額をあらかじめ設定しておくことも必要です。会社の規模にもよりますが、例えば月100万円までの取引ならば営業所長の決裁で、それを超える場合には本社の決裁を得た上で行うなどの基準を設けておきます。
売掛金が回収不能になった場合のダメージは予想以上に大きいものです。売上原価に販売促進費や人件費などの固定費も配賦して、仮に1商品当たりの営業利益率が5%としたならば、100万円の焦げ付きを挽回するためには2,000万円の売上げが必要となる計算になります。しかも、その2,000万円の売上代金が全額回収されてはじめて穴埋めができるのです。
(2) 売掛金の回収は営業部門の役割なり
売掛金の回収管理は、企業の資金繰りを左右する重要な業務であり、営業部門と経理部門が一体となって厳格に遂行しなければなりません。
売掛金の回収は、取引を行った営業部門が責任を持って行うべきでしょう。経理部門の役割は、売掛金の入金消し込みを迅速かつ正確に行い、売掛金の滞留状況の詳細を営業部門へタイムリーに通知し、早期回収を促すことです。
また、資金繰りを担当する経理部門では、債権回収期間の長期化による資金ショートを未然に防ぐために、取引先ごとの売掛金の年齢調べを行うとともに、月次で綿密に財務分析をする必要があります。そして、異常値を発見した場合は、早急にその原因を解明し、対策を講じます。ちなみに、「売上債権回転期間(注)」が長期化する原因としては、次のようなことが考えられます。
①季節商品の販売等、その月特有の要因
例えば季節商品の売上げは、ある特定の月に片寄って計上されることになり、その場合、約定により代金支払いが1カ月後となっていれば、その月の売掛金残高が通常月の倍になるなどの異常値が出てきます。
この場合は、他の月との比較ではなく、前年同月と対比することで異常値か否かを判断することができるでしょう。前期実績よりもさらに長くなっていれば、季節的要因以外の原因がないかどうか分析しなければなりません。
②新規取引の発生または約定変更
新規の取引を始めた際に、通常よりも長い支払サイトを取り決めたことが影響している場合があります。また、従来の取引先との間の約定の見直しの際に支払サイトを変更したことに起因する場合や、売上高に占める掛売上高の割合の増加なども考えられます。
③取引約定違反
これが問題です。取引先がうっかり支払いを忘れて遅延することもあるでしょうが、資金繰りの悪化が原因で支払いが滞っているとすれば、焦げ付きとなる危険性があります。
(注) 売上債権回転期間・・・・・商品等を売り上げてから、現金で回収するまでに要する期間。
押さえておきたい基本的ルール
①売掛金の回収基準を明確にし、営業部門に徹底遵守させよ
a.代金受取りに関する約定の取決めに際しては、仕入先への支払サイトや販売先の支払手段(現金・手形の別)の違いによる入金のタイミングなどを十分考慮して、自社の資金繰りに無理のない条件にしておくべきです。あらかじめ取引先ごとあるいは商品ごとの一定の支払期限を、例えば販売後1週間以内あるいは販売月の月末締め1カ月以内などと回収基準を定めておきましょう。経理部門は約定による債権回収期限を明確にし、営業部門に徹底して遵守させることが重要です。
b.営業部門は、見積時あるいは受注時までに取引先に対して、当社の支払期限をしっかりと通知し、了承を得ておくことが必要です。また現金決済や手形払いなど相手先の支払手段も確認しておきます。
c.取引先の都合によりやむを得ず支払期限を超える場合には、相手先から支払いの確約書(念書)を取り付けて支払期日を明確にしておきましょう。
②値引きの基準と決裁権者を定める
a.また値引きについては、原因や金額の多寡によって営業所長決裁によるもの、あるいは社長決裁を要するものなどとあらかじめ基準を定めておきましょう。
b.値引きあるいは返品などの情報は、迅速に経理部へ通知されるような仕組みにしておかなければなりません。実際の債権額が売掛金台帳の金額と違っており、経理部門が誤った金額で請求や督促を行ってしまうと信用問題にもなりかねません。
③取引約定違反には厳格に対処すべし
a.経理部門は、債権回収基準を明確にし営業部門に周知徹底した上で、月々の売掛金の回収遅延状況を吟味し、その結果を経営者と債権回収責任者に報告するようにします。
b.支払いの滞っている相手先には定期的に督促状を送付し、特に取引約定違反に起因する遅延に対しては、営業部門との協議の上で「約定どおりに支払いが実行されるまでは取引を停止する」などの対応策をあらかじめルール化しておき、断固として遵守することが重要です。営業部門担当者としては、日頃の取引上の付き合いから温情をかけたくなることもあるでしょう。しかし経理部門は、こと債権回収に関しては非情に徹するべきでしょう。これも健全な企業活動を維持するための打ち手です。
(3) 売掛金滞留額を営業マンの賞与等の考課基準に加えよ
売掛金の回収が約定どおりに行われていれば、運転資金も順調に回転するはずです。しかし、回収が滞って運転資金がショートすれば、借入れなどの外部調達も検討しなければならなくなります。借入れには手続費用や支払利息がかかり経常利益を圧迫する結果になるわけですが、営業担当者にはその「痛み」がなかなか実感できないのが実状でしょう。
営業担当者に売掛金回収の重要性を認識してもらうためには、売掛金の滞留金額を賞与などの考課基準に加えることも一案です。例えば、部門(あるいは個人)目標売上高の達成度合に応じて賞与考課を行っている場合、考課期間末時点の回収期限を超えている滞留売掛金総額を売上実績から控除して査定するといった基準をつくりましょう。「営業は売るだけ、売掛回収は経理の仕事」などという意識を変えてもらうためには、かなり効き目があるはずです。
また、該当部門に社内金利を月々配賦し、部門達成経常利益に反映させるというのも、営業部門に売掛金回収遅延による影響の大きさを実感してもらう方法の一つです。部門別業績責任体制に基づいて業績管理を行う場合、部門長は売上目標の達成や経費の削減のための努力は惜しみませんが、営業外費用となる「金利」に対しては案外鈍感です。例えば、1億円の資金を借入れにより調達した場合、年利3%とすれば年間で300万円、月額にすると25万円の金利負担になり、また収入印紙などの付帯費用もかかります。仮に月末時点で約定どおりに回収できない売掛金の残高が1,000万円あったならば、担当営業部門の翌月の財務上に社内金利5万円を配賦(計上)します。月利0.5%と少々高利ですが、回収責任の所在を明らかにするとともに会社のダメージを実感してもらうためです。金利の管理部門が経理部門であるならば、営業部門に配賦した金利と同額を経理部門の金利からマイナスすれば、全社の財務に変わりはありません。部門達成経常利益が各部門の業績評価基準となり、賞与や昇給時における査定の対象にでもなれば、当事者意識も自ずと変わってくることでしょう。
(4) 売掛金回収活動は履歴を残す
運転資金を順調に循環させるためには、売掛金を約定どおりに回収することが重要です。売掛金の回収管理を徹底するためには、「売掛金年齢調べ」によって長期滞留売掛金を発生月ごとに把握するとともに、回収責任者に取引先ごとの滞留状況を通知し迅速に対応しなければなりません。
押さえておきたい基本的ルール
①売掛金回収のための訪問、電話等の記録を確実に残すべし
a.滞留売掛金が発生した場合には、その回収活動の履歴を必ず記録しておきましょう。人の記憶は時間の経過とともに曖昧になりますから、担当者が売掛金回収のために相手先を訪問したとき、あるいは電話で支払要請をしたときには、〇月〇日〇時〇分に相手先のどなたが、どのように回答されたのかを詳細に記録しておきましょう。法的手段に訴えて債権回収を行わざるを得ない場合には、これらの活動記録を残しておくことは有効です。
b.また、文書で督促を行った場合には、文書の写しを保管するとともに発信日を記録しておきましょう。督促文書は「配達証明付き内容証明郵便」で送付します。内容証明郵便を利用すれば、「いつ誰にどのような内容の文書を出したか」という売掛金回収活動の履歴を第三者によって立証できるという効力があります。
(5) 取引先から「残高確認書」を取得せよ
信用取引では、債権保全の観点から取引先の債務認識を定期的に確認しておくことは重要です。発行した請求書が、先方の担当者の手許で滞留あるいは紛失したために取引先が債務を認識していない場合もあります。決算期ごとに「残高確認書」を必ず取得し、相手方の債務額と当社の売掛金台帳の残高とが一致していることを確認しておきましょう。また、残高確認には、営業担当者による架空売上げや商品の横流しなどの不正を防止する意味もあるのです。
さらに、残高確認書は相手先の債務認識を書面をもって確認したものであり、売上債権の時効を中断する効果もあります。
なお、2020年4月以降に発生した債権の場合、消滅時効は原則として5年とされています。
3.買掛金
(1) 仕入先との信頼関係を構築すべし
自社の経営に大きく影響する商品や材料の仕入先は、慎重に選ぶ必要があります。品質の良い商品の安定供給が可能であり、かつ経営体質の健全な仕入先を選ぶのは当然のことです。
また仕入れは財務面から見れば限界利益に直接影響するため、どこよりも安価で提供してくれる仕入先が望ましいことは言うまでもありません。そのような仕入先に対しては、仕入代金の決済をはじめとした約定を遵守し、確かな相互信頼関係を構築することが大変重要です。
仕入先を変えずに取引していくことのメリットは少なくありません。時間をかけて築いた信頼関係により、納入期限の前倒しや必要数量の調達などの面で協力も得られます。また、資金繰りの苦しい時期には、代金支払いの繰延べや仕切価格の値下げなどに応じてもらえる期待も持てます。
ただし、同じ仕入先との継続的取引には、例えば担当者間の癒着による不正のために、思わぬ被害を受ける危険性があることを認識しておくべきです。また、仕入先を1社に絞り込んだ結果、仕入先の災害や業績不振あるいは倒産などにより、商品の供給に支障をきたすことも考えられます。
仕入先との信頼関係を維持するためには、仕入担当者ごとの担当企業の定期的な組替え、あるいは担当者の配置転換も必要です。場合によっては、仕入先そのものの見直しをかける必要もあるでしょう。
(2) 請求書は購入担当者が責任をもってチェックする
受け取った請求書は、まずその取引を行った購入担当部門に回付します。商品仕入れに限らず自社用の物品購入についても、納品段階で購入担当部門により検収されていなければなりません。
押さえておきたい基本的ルール
①購入担当部門に請求の内容と金額を必ず確認させよ
a.購入担当者は、請求書と検収済の納品書を突合し、請求内容に誤りがないこと、また請求金額も当初の約束(見積もり)どおりであることを確認します。
b.購入担当部門の責任者は、請求内容に誤りがなければ、支払方法を確認した上で請求書に購入目的(使途)を記入し承認印を押して、購入許可申請書を添えて経理部の支払担当者へ回付します。
②購入責任者の未承認の支払いは行うべからず
a.経理部の支払担当者は、請求書の記載内容に不備な点がないこと、また購入担当部門の責任者による購入目的の記載と承認印の押印があることを必ず確認した上で支払います。経理部独自の判断で、勝手に支払いを行ってはいけません。
(3) 業者への支払いは約定を遵守すべし
継続的に取引を行う仕入先とは、取引開始の当初に請求の締め日や支払日を取り決めておきます。支払約定を遵守することは、仕入先の資金繰りにも影響するため、信用取引においては特に重要です。継続的でない単発の取引についても、あらかじめ会社の定期的な締め日と支払日は決めておきましょう。資金管理は会社の生命線です。
また、仕入先との社内の交渉窓口は一本化しておきましょう。ロットで発注すれば取引量も大きくなり、仕入単価の引下げなどの交渉にも有効です。同じ取引先に社内の各部門からバラバラに発注をしていては、そのような効果は期待できません。同一の取引先から社内各部門宛てに発行された請求額を合計してみると、月額で1,000万円を超えていたなどということに後になって気が付くこともあるものです。
4.棚卸資産
(1) 在庫品は現金と同じであると銘記せよ
「棚卸資産」には、企業が販売目的で仕入れた商品、製品や原材料などがあります。棚卸資産は企業にとって大事な財産の1つであり、5万円の在庫商品と現金5万円は、企業にとって同じ価値を持つことは言うまでもありません。計画的な在庫管理により適正な在庫量を維持するとともに、万全な保管ができる仕組みづくりが必要です。
(2) 実地棚卸は最低四半期に1度行うこと
実地棚卸は、定期的に毎月あるいは最低でも四半期に1度は行う必要があり、特に棚卸資産管理責任者は自分の目で倉庫や工場内の在庫を確認すべきでしょう。
押さえておきたい基本的ルール
①不良品等は定期的に処分すべし
a.不良品の在庫処分は四半期ごとに行うようにしましょう。粗利益の管理には不可です。製造業においては、もはや使用できない旧規格の材料がいくら倉庫に眠っていても何の利益も生みません。大量の不良品や不要品を未処分のまま棚卸に計上しておくと、本当の粗利益が分からなくなってしまいます。また、その保管には、倉庫スペースにかかる家賃や外部倉庫の賃借料などもかかることから、固定費削減のためにもしっかりした管理が必要です。
②帳簿上の在庫数量との差異をチェックせよ
a.棚卸の実務では、商品等の受払いの都度「受払台帳」に記録し、その帳簿上の在庫数量と定期的な実地棚卸による数量とを突合します。その結果、差異があれば原因を特定する必要があります。この原因の多くは、受払台帳の記入漏れや記入ミスによるものですが、仮に盗難により在庫品が紛失しているとすれば、いつ起きた事故なのか、部外者によるものなのか、あるいは内部の不正によるものなのかといったことが特定できなければ、対応策も立てられません。
仮に1年間出荷がなく、倉庫の片隅にほこりをかぶったままで、もはや売れる見込みがない商品、あるいは返品を受けて転売不能となった特注品などについては、廃棄や早期の返品あるいは値引販売などの在庫整理が必要です。特に、販売計画の見込み違いによる在庫の山については、早急に経営者の意思決定によって対策を講じなければなりません。

(3) 在庫品の荷動きに常に注意せよ
押さえておきたい基本的ルール
①社長に「在庫年齢報告書」を提出すべし
a.棚卸資産管理責任者は荷動きに注意を払い、一定期間荷動きのない在庫品については個別に在庫量と在庫年齢および滞留要因を的確に把握し、経営者に定期的に報告するようにしなければなりません。
(4) 保管方法と保管場所に配慮すべし
在庫品は整然と保管され、どこに何がいくつあるのかが常に把握できる管理体制をつくり、商品にキズが付いたりすることがないよう、管理方法に配慮する必要があります。
押さえておきたい基本的ルール
①貸倉庫利用の際は契約内容を吟味する
a.外部の貸倉庫を利用する場合には、しっかりした委託契約を書面で締結しておきましょう。保管に関する責任範囲と災害や盗難などによる損失に対する賠償についても取り決めておき、また損害に備えて保険を付保しておくことも必要です。一般に、倉庫業者も火災保険などを付保していますが、いざという時に十分な補償を得られるとは限らないため、先方の付保条件などを確認した上で、不慮の事故による損害を最小限にくい止められるように準備しておきましょう。。
(5) 切手や印紙、レターパックも棚卸しせよ
切手や収入印紙などを、誰でも簡単に持ち出せるような状態にしておいてはいけません。これらについても、しっかりした管理が必要です。
レターパックや回数券(乗車券)などの買置きがある場合も同様です。金券ショップなどに持ち込めば換金も簡単で、社内不正による損失も考えられるため、現金同様の受払管理が必要です。したがって、これらの金券類は経理部長や出納担当者の目の届くところに整然と保管するようにしましょう。また、高額な収入印紙は金庫に保管しておきます。
押さえておきたい基本的ルール
①切手類の使用は「受払簿」に記録させるべし
a.切手や収入印紙など日常使用するものは、出納担当者が管理するようにします。社員が社用で使用する際には、出納担当者に使途を明確に伝えた上で払出しを受けます。簡単な「受払簿」に記録するようにすればより万全です。
b.切手類は、破損したりしないようにクリアファイルなどで表示金額の種類ごとに分けて保管します。
c.切手や収入印紙を大量に使用する業種では、「郵便料金計器」などの導入も検討しましょう。利便性の面ばかりでなく財産保全にも有効です。
参考文献
飯塚真玄監修、TKC東京本社総務本部編著『経理参謀の心得』TKC出版

記事提供
株式会社TKC出版 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
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