💡この記事のポイント
☑ふるさと納税で自治体に寄附すると返礼品と寄附金控除を受けられる。
☑ふるさと納税の寄附金控除は所得税からの控除と住民税からの控除がある。
☑ふるさと納税は確定申告かワンストップ特例制度で申請する。
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- 1.ふるさと納税の特徴
- (1) 返礼品をもらえる
- (2) 寄附金控除を受けられる
- 2.ふるさと納税の寄附金控除
- (1) 所得税からの控除方法
- (2) 住民税からの控除方法
- (3) 控除限度額
- 3.ふるさと納税の手続き
- (1) 確定申告
- (2) ワンストップ特例制度
- 4.ふるさと納税のルールの見直し
- (1) 2025年10月の改正
- (2) 過去の改正
- 5.まとめ
1.ふるさと納税の特徴

ふるさと納税は、大都市と財政難に苦しむ地方との税収の格差是正と、地方創生を目的として、2008年に総務省が開始した寄附金制度です。「納税」という言葉がついていますが、実際には全国の都道府県や市区町村への寄附になります。
生まれ故郷やお世話になった地域、被災地など、納税者自らが選んだ自治体に寄附することで、税金の還付・控除が受けられる仕組みです。具体的には、現金やカード決済で寄附を行い、寄附した金額のうち2,000円(自己負担分)を超える部分の全額が、原則として翌年に納める所得税と住民税の減額という形で控除されます(上限額あり)。
(1) 返礼品をもらえる
ふるさと納税の大きな特徴が、自治体から寄附者に贈られる「返礼品」です。
返礼品の中には、人気の地元産の食料品や地元企業による日用品等の製品のほか、ローカル鉄道の1日駅長体験や、お墓掃除の代行といった親孝行なサービスなど、ユニークな返礼品を用意する自治体も多くあります。
2015年に寄附金控除の上限額が引き上げられるなどしたことで、返礼品を目的とする寄附者が急増した影響もあり、各自治体の返礼品競争は年々激化していきました。返礼品頼みの寄附金集めは「自分の意思で応援したい自治体を選んで寄附をする」という制度趣旨と異なるとして問題視され、こうした状況を改善するため、総務省はふるさと納税に関する地方税法の一部を改正。現在では返礼品の調達費を寄附金額の30%以下、返礼品の調達費や送料、仲介サイトに支払う費用のほか事務手数料などの経費総額を寄附金額の50%以下に抑えるようルール化されています。
【返礼品の額の計算(寄附金額の最大還元率30%まで)】
還元率(%) = 返礼品の市場価格 ÷ 寄附金額 × 100
*「返礼品の市場価格」とは、店頭やインターネット通販などで販売されている返礼品の一般的な価格です。
(2) 寄附金控除を受けられる
ふるさと納税は「市区町村または都道府県への寄附」にあたるため、寄附金控除の対象となります。ただし、国や地方公共団体、NPO法人や政党などへの寄附をした際に適用される寄附金控除と異なる点が2つあります。
1点目は、上述のとおり、寄附金の使い道を指定できたり、返礼品を受け取れたりする点です。
そして、2点目は、住民税の特例控除があるという点です。
寄附金控除は通常、所得控除と、さらに寄附対象によっては住民税の基本控除も受けられ、これらにより、寄附金額の一部が控除されます。ふるさと納税の場合は、所得控除と住民税の基本控除に加え、ふるさと納税のみに適用される住民税の特例控除があり、控除上限額までであれば自己負担2,000円を除いた寄附金全額が控除されるようになっています。
2.ふるさと納税の寄附金控除
ふるさと納税の寄附金控除は、所得税からの控除と住民税からの控除の2種類があり、その控除方法は以下のようにそれぞれ異なります。
(1) 所得税からの控除方法
所得税からの控除は「所得控除」で、年間総所得金額の40%を上限に、寄附金額を控除して税額を計算する方法です。
「寄附金額-2,000円」を所得金額から差し引いて所得税額を計算します。軽減される税額は下記の式で求めることができます。
(ふるさと納税における寄附金額-2,000円)× 所得税率
寄附をした翌年の3月15日までに確定申告をすると、1~2カ月後、確定申告時に記載した寄附者の口座に所得税控除の金額が還付されます。
(2) 住民税からの控除方法
住民税からの控除は「税額控除」で、税額から直接一定金額を控除する方法です。
ふるさと納税の住民税控除には「基本控除」のほかに「特例控除」があり、翌年度の住民税から税額が控除されます。それぞれ下記の計算式で成り立っています。
●基本控除
(ふるさと納税における寄附金額-2,000円)× 10%
●特例控除
(ふるさと納税における寄附金額-2,000円)×(100% - 10%(基本分) - 所得税の税率)
上記で求めた基本控除と特例控除の合計が住民税の税額から差し引かれます。寄附をした翌年の3月15日までに確定申告をすると、翌年度の6月以降に1年間にわたって税額が控除されます。控除されているかどうかは「住民税(市民税・県民税)の特別徴収税額の決定通知書」で確認することができます。
■所得控除と税額控除の違い
所得控除と税額控除の違いは、どの部分から控除するのかという点です。
所得控除は所得金額から一定金額を差し引くことによって税額を軽減します。
算出式は、収入金額-必要経費で求められる所得金額をもとに計算されます。この所得金額が少なければ少ないほど所得税額も少なくなります。
税額控除は税額から直接一定金額を差し引くことによって税額を軽減します。このため、同じ控除額であれば、税額を求める前の課税所得金額から控除する所得控除よりも、求められた税額から直接控除できる税額控除の方が、控除額が大きくなります。
(3) 控除限度額
ふるさと納税の控除限度額は、寄附金額から自己負担額の2,000円を除いた金額が対象になりますが、所得金額に応じた上限があります。
控除を最大限活かすためには、自身の控除限度額を確認して、その上限額を超えないようにすることが必要です。
控除限度額は家族構成や所得金額によって異なります。たとえ同じ所得金額だとしても、家族構成において配偶者控除(配偶者特別控除を含む)の対象となる配偶者がいるかどうか、および扶養控除の対象となる扶養親族が多いほど控除限度額は低くなります。
もちろん、控除限度額以上の金額を寄附することもできますが、超過した分については自己負担になります。 自己負担額2,000円のみでふるさと納税による寄附を行うのであれば、所得金額や家族構成から、自身の控除限度額を把握しておきましょう。
控除限度額の目安を知るためには、確定申告書を作成した会計事務所に試算してもらうほか、以下の「ふるさと納税ポータルサイト」の「控除額シミュレーション」が便利です。自身の家族構成や所得金額から、控除限度額を把握することがふるさと納税で寄附を行う第一歩になります。
「総務省ふるさと納税ポータルサイト」「ふるさとチョイス」「さとふる」「ふるぽ」「ふるなび」「ふるさと納税バイブル」等
3.ふるさと納税の手続き
これからふるさと納税を始める方は、ふるさと納税のポータルサイトを利用すると便利です。それぞれのポータルサイトにおいて、自身の控除限度額を把握したうえで返礼品の内容や寄附金の使い道などを確認し、応援したい自治体を選ぶだけです。
ただし、寄附金控除を受けるには確定申告をするか、確定申告が不要なワンストップ特例制度を利用する必要があります。確定申告とワンストップ特例制度のいずれの方法においても、原則として控除限度額は同じですが、下記のとおり、控除の方法が異なります。
(1) 確定申告
ふるさと納税のメリットである寄附金控除を受けるためには確定申告が必要です。
確定申告では昨年1年間(1月1日から12月31日)のすべての所得と納めるべき税額を計算して税務署に申告と納税を行います。
ふるさと納税を利用して自治体に寄附をした寄附者は、翌年の3月15日までに確定申告を行うことで控除される金額が計算され確定します。所得税はその年の分から控除され、住民税は翌年度分から控除されます。
例えば令和7年にふるさと納税をして、令和8年3月に確定申告を行った場合、税額の控除は令和7年分の所得税からの控除と、令和8年度の住民税(道府県民税〈東京都は都民税〉・市町村民税〈東京23区は特別区民税〉)からの控除とに分けて、税額が控除されます。
それぞれの控除額は下記のとおりです。
①所得税からの控除額
(ふるさと納税額-2,000円)×適用所得税率
※適用所得税率は、復興特別所得税の税率を加えた率
(2)住民税からの控除額
例年6月頃に届く住民税の決定通知書の税額欄「税額控除額」を確認してください。ふるさと納税以外に寄附金控除等がなければ、道府県民税と市町村民税の税額の控除額の合計がふるさと納税による控除額になります。
上記(1)と(2)を合計した金額が、控除される税額になります。
(2) ワンストップ特例制度
2015年から開始したワンストップ特例制度は、1年間(1月1日から12月31日)の寄附先が5自治体までであれば、寄附した回数に関係なく利用できる制度です。
ワンストップ特例制度を利用できるのは次の2つの条件に当てはまる人です。
■サラリーマンなどもともと確定申告をする必要のない人
■1年間に行ったふるさと納税の寄附先自治体が5か所以内
自営業者や年収2,000万円超の人、医療費控除を受ける人などは、もともと確定申告が必要な人は特例を利用することができません。
例えば令和7年にワンストップ特例制度を利用してふるさと納税をした場合、令和7年分の所得税からの控除は発生せず、全額が令和8年度の住民税からの減額という形で控除されます。他に税額の控除額がなければ、住民税の決定通知書の税額欄の道府県民税と市町村民税の税額の控除額の合計が、ふるさと納税によって控除される税額になります。
申請方法は、「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」にマイナンバーを記載し、本人確認書類のコピーを添付して、寄附先の自治体に提出する必要があります。申請書は1回の寄附ごとに1通の提出が必要です。
ふるさと納税では、「ふるさと納税ポータルサイト」を利用する人が多く、この場合には申込みフォーム上の「ワンストップ特例申請書を要望する」などの項目にチェックを入れると、後日寄附先の自治体から返礼品のほか、「寄附金受領証明書」やワンストップ特例制度の「申請書」が送られてきます(チェックを入れるだけでは申請したことになりません)。申請書は必要事項を記入して返送します。
ワンストップ特例制度を申請しても、医療費控除など確定申告をする場合や寄附先が5か所を超えた場合は確定申告において寄附金控除を申告しなければなりません。「寄附金受領証明書」は確定申告に必要なので、大切に保管しておいてください。
※ふるさと納税は、必ず納税者の名義で行う必要があります。納税者本人以外(家族など)の名義で行うと、税金の控除を受けることができません。
4.ふるさと納税のルールの見直し
総務省は2024年6月に「ふるさと納税の指定基準の見直し等」を発表し、さとふるやふるなび、ふるさとチョイスなどの仲介サイトを利用した寄附によるポイント付与を禁止することと、返戻率と返礼品に関するルールの見直しを発表しました。
ルールの見直しについては、過去にも、本来の趣旨に基づく制度を運用することを目的とした改正が行われてきました。
(1) 2025年10月の改正
これまではさとふるやふるなび、ふるさとチョイスなどのふるさと納税サイトを通じて各自治体への寄附を行うことで、寄附金額分に応じた各サイト内でのポイントが付与されていました。しかし、2025年10月からは各サイト内でのポイントの付与が禁止されることになりました。また、ハピタスやモッピーといった、ポイントサイトを経由してポイント還元をする仕組みも全面禁止となりました。しかし、楽天ふるさと納税は本改正に反対を表明しており、サイト内に「ポイント付与を禁止する総務省告示に対する反対署名のお願い」を掲示し、2025年3月に約295万件の反対署名を集め政府に提出しました。
本改正について、総務省は「ポイント付与による競争の抑制と行き過ぎた返礼品目当ての是正を図る目的がある」と説明しています。
(2) 過去の改正
過去には、返戻率と返礼品に関するルールについて複数回見直されてきました。
返戻率とは、ふるさと納税を利用した寄附金額に対する返礼品の金額割合を指しています。少しでも高価で魅力的な返礼品を用意することで多くの寄附金を集めようとする自治体が多数登場する中、寄附金をよりよい市政のために活かす本来の目的に立ち戻るために、2019年6月、総務省は返礼品を地場産品かつ返戻率30%以下に収めるよう基準を設けました。このルールに則った場合、例えば50,000円の寄附に対して、返礼品は15,000円相当の品となります。この改正により、各自治体は還元率の上限内でより魅力的な返礼品を用意するべく工夫を凝らすようになっていきます。
併せて、事務手数料や送料などの経費を寄附金額の5割以内に収めるルールも設けられました。
また、返礼品はあくまでも地場産品を選定することとされていましたが、寄附金額を少しでも増やそうと、他県や外国原産の精肉や米を加工し返礼品にする自治体も現れました。このため、返礼品についてのルールも明確化されることになりました。
これらのルールについては、2023年にさらに厳格化されています。この影響により、返礼品の種類は以前より減少しています。
5.まとめ

自治体に寄附することで、返礼品の受け取りや寄附金控除のメリットがあるふるさと納税。制度開始から15年以上が経過した現在でも年々利用者数が増加し、全国の自治体にとっても寄附金を地域課題の解決などに積極的に活用しています。近年は特に、自治体に寄附する際にその使用用途を選べる自治体も増加しており、自身が行う寄附の意義を確認することができます。
また、寄附金の使い道から寄附先を選ぶクラウドファンディング型のふるさと納税も増えており、これまで「農業高校でのドローン実習の実施(北海道遠別町)」「サンゴ礁の保全」(徳島県海陽町)などが実現しています。総務省ではクラウドファンディング型のふるさと納税を活用して、「ふるさと起業家支援プロジェクト」等が立ち上がっており、ふるさと納税の活用の幅はどんどん広がっています。また、「オリンピック選手育成事業(北海道東川町)」「いつでも保育事業(茨城県利根町)」「姫路城大天守保存修理事業(兵庫県姫路市)」などユニークな寄附金の使い方をしている自治体もあり、その寄附金の使い道はいろいろです。
ふるさと納税ではその特典にばかり意識が向きがちですが、各自治体が寄附金をどのような意図で、どのような用途に使うのかを意識したうえで寄附をし、ふるさと納税のメリットも上手に活用していきましょう。
■参考資料
『事務所通信』2014年12月号
『事務所通信』2015年5月号
『事務所通信』2017年10月号
『事務所通信』2021年9月号
『事務所通信』2023年11月号

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