2026年11月04日

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年商10億円の壁を突破せよ 「事業見直し」「分業化」「儲かる組織」が成長の鍵

年商10億円の壁を突破せよ 「事業見直し」「分業化」「儲かる組織」が成長の鍵

成長志向の企業にとって、第一のハードルとなりがちなのが年商10億円の壁である。社長一人の力では、組織を制御することが難しくなるからだ。自律的に事業を改善しつつ利益を創出するための組織づくりとはどのようなものなのか。取材した。

矢田祐二氏

ワイズサービス・コンサルティング 矢田祐二代表
やだ・ゆうじ●「大手企業と中小企業の違いは何か」。大手ゼネコン時代に感じた疑問を追い、組織経営学者に弟子入りし、25年以上で800社以上の実務コンサルティング指導を実施。その原理原則を体系化したのが10億事業構築コンサルティングである。直近5年間で手掛けた企業の80社以上が数年で年商10億円超えを実現。コンサルティングを受けた経営者からは、指導が明確である、行うことが論理的で無駄がないと評価を得ている。

──「年商10億円」はなぜ大きな壁なのでしょうか。

矢田 社長個人の力だけでは成長できなくなるからです。多くの中小企業は、創業者や一部の優秀な社員の能力によって成長していきます。しかし、そのやり方で到達できる売り上げには限界があります。1億円から数億円規模であれば、社長や特定の優秀な社員が営業し、顧客対応を行い、最終判断も下せます。しかし売り上げが伸び、社員数が20人を超えてくると、社長を含めた経営陣だけでは会社全体を管理できなくなります。
 その段階で必要になるのが、「事業の見直し」「分業化」「儲かる組織の構築」という三つの施策です。この三つが揃って初めて、会社は社長依存から脱却し、持続的な成長軌道に乗ることができます。逆に言えば、この三つが欠けていると、売り上げが増えてもトラブルが頻発し、利益が残らず、組織も疲弊してしまうということです。

1.「事業の見直し」で付加価値アップ

──まず一つ目の「事業の見直し」とは何でしょうか。

矢田 利益が出る事業モデルを作り上げることです。中小企業が伸び悩む理由の一つは、受注した仕事をすべて引き受けてしまうこと。確かに仕事は増えます。しかし、そのたびに個別対応が発生し、担当者の経験や能力に依存する状態になります。これでは生産性は向上しません。
 重要なのは、「誰に」「何を」「どう売るか」を明確にすることです。つまり事業を商品化し、再現可能な形にするのです。例えば製造業なら、単なる受託加工ではなく得意技術を商品として打ち出す。建設業なら、下請けから脱却して専門工事業や元請けに近い立場を目指す。サービス業なら、ノウハウをパッケージ化して提供する。小売業や飲食業なら、店舗ごとに異なる運営をするのではなく、成功パターンを標準化するわけです。

──業種を問わず共通するポイントはありますか。

矢田 「良い顧客」に販売することです。強い企業には共通点があります。それは「誰にでも売ろうとしていない」ということです。儲かる企業ほど、自社が価値を提供できる顧客を明確に絞り込んでいます。逆に伸びない会社ほど、「来るもの拒まず」の状態になっています。ターゲットが明確になると、営業方法も提案内容も標準化できます。社員も何を売れば良いのか分かるため、営業力の属人化を防げます。
 つまり事業の見直しとは、「どの市場で戦うか」「誰を顧客にするか」「何を強みにするか」を明確にすることなのです。

──なぜ事業モデルの確立が最優先なのでしょうか。

矢田 事業モデルが曖昧だと仕組み化できないからです。事業そのものに曖昧さが残っている状態で、マニュアルや組織だけ整備しても意味がありません。例えば毎回違う案件を受注し、毎回違う提案をし、毎回違うサービスを提供するのであれば、標準化は不可能です。まずは成功パターンを作り、それを商品化する。そして再現できるようにする。この順番が重要です。
 年商10億円を超えている企業を見ると、何らかの形でビジネスモデルが整理されています。だから社員が増えても品質が安定し、生産性も上がるのです。

2.「分業化」が生産性を上げる

──二つ目の柱である「分業化」について教えてください。

矢田 再現性を高めるために仕事を分けることです。分業化というと組織図の問題と思われがちですが、本質は違います。目的は再現性です。「誰がやっても同じ結果が出る状態」を作ることです。創業期は社長が営業も、受注も、生産も、顧客対応も行います。しかし会社が成長すると、1人で全てを担当することはできません。営業担当、現場担当、管理担当、さらに大きくなると設計、購買、品質管理などへ細分化されます。専門化によってスキルが高まり、業務効率も向上するのです。

──分業化を進める際に重要なものは何でしょうか。

矢田 仕組みとルールです。分業化で最も怖いのは情報の断絶です。担当者同士が連携できなくなると、組織全体の生産性は逆に下がります。
 まずやるべきなのは業務の標準化です。見積書の作成方法、営業活動の進め方、顧客対応の手順、製造工程、品質管理基準などを明文化します。仕事が担当者ごとに異なっている状態では分業化できません。
 次に役割と責任の明確化が必要です。分業化では、誰が営業を担当するのか、現場を管理するのか、利益を管理するのかを明確にする必要があります。役割が曖昧な組織では、「誰かがやるだろう」という状態になりやすく、責任の所在も不明確になります。成長企業ほど職務と責任範囲が整理されています。
 さらに情報共有の仕組みづくりも大切です。既述したように、分業化が失敗する最大の原因は情報の断絶です。営業が聞いた情報が現場へ伝わらない。現場の課題が経営陣へ届かない。この状態では組織が機能しません。そのため、定例会議、日報、業務システム、顧客管理システム、グループウェアなどを活用し、情報が共有される仕組みをつくります。
 分業化とは仕事を分けることではなく、「情報をつなぐこと」と言ってもよいでしょう。
 次に権限委譲です。社長がすべて判断している会社は分業化できません。例えば、営業責任者が値付けを行う、工場長が生産計画を決める、店長が店舗運営を管理するなど、それぞれに権限を与える必要があります。責任だけ与えて権限を与えない組織は機能しません。権限と責任をセットにすることが重要なのです。
 最後に人材育成です。分業化を支えるのは人材です。特に管理職層の育成が欠かせません。10億円を超えるためには、部門長や営業責任者などが経営者の代わりに判断できるようになる必要があります。つまり分業化とは、人を育てる仕組みでもあるのです。

──分業化のメリットは?

矢田 人材育成と生産性向上を同時に実現できることです。属人的な仕事では、ベテランが主導権をとり、新人は言われたことをするだけです。しかし分業と標準化が進むと、新人でも成果を出せるようになります。
 その意味では、できるだけ大きな仕事を手掛けることが、新人の育成につながります。例えば大きな建設プロジェクトでは、ベテラン、中堅、新人がチームを組んで仕事をします。これにより若手が育ちやすくなり、1人当たりの生産性も向上します。サービス業でも製造業でも小売業でも考え方は同じです。優秀な人を増やすのではなく、「普通の人でも成果が出せる仕組み」を作ることが重要なのです。

3.「儲かる組織」を構築せよ

──三つ目の柱である「儲かる組織の構築」とは何ですか。

矢田 自ら改善し続ける組織を作ることです。組織の本当の役割は、社長がいなくても会社が成長し続けることです。社長が全ての問題を解決している会社では、永遠に社長依存から抜け出せません。一方、儲かる組織では社員自身が問題を発見し、改善し、仕組みを進化させていきます。つまり組織とは、「自己修正機能」を持った集団なのです。

──修正できる仕組みとは?

矢田 儲かる組織は問題が起きない組織ではありません。問題が起きた際に、原因を分析し、改善策を考え実行し、検証するというPDCAを回します。社長が毎回指示を出すのではなく、現場が改善する文化が必要で、そのためには部門長がそれぞれ利益責任を持つことが大切です。
 また、儲かる組織には計数管理能力があります。部門別採算、商品別利益、顧客別利益、1人当たり売上高、労働生産性などを定期的に確認し、「なぜ利益が出たのか」「なぜ利益が減ったのか」を分析しています。売り上げだけを追う組織ではなく、利益を生み出す仕組みを持つ組織が強いのです。
 経営計画も必須でしょう。社員が主体的に考えるためには、会社がどこへ向かうのかを明確に示さなければなりません。重要なのは理念だけではありません。どの市場を狙うのか、何を強みにするのか、いつまでに何を達成するのか、誰が何を担当するのかという、理念を実現するための具体的な設計図が必要です。経営計画とは単なる数字の羅列ではありません。会社の未来像を示す設計図なのです。

──儲かる組織には、個々の人材のレベルアップも必要ですね。

矢田 私は社員のレベルアップには「訓練」と「教育」が必要だと考えます。訓練は実際に、行動レベルになるまで繰り返すこと。たとえば、新人を戦力にする作業がそうです。教育は、なぜやるのかを理解させること。つまり、管理者が経営理念、PDCAの考え方、顧客満足の必要性、利益とは何かなどを考え、それを組織の改善にまでつなげる作業です。これができる管理者が数多くいれば、社長1人で動き回る必要がなくなります。

10億円の壁突破のためのポイント

──年商10億円を目指す経営者へメッセージをお願いします。

矢田 多くの経営者は社員教育や採用、DXなどに目を向けますが、その前に考えるべきことがあります。それが、「事業の見直し」「分業化」「儲かる組織の構築」という三つの柱です。
 利益が出る事業モデルを作り、分業化で再現可能な仕組みに落とし込み、社員が自律的に改善を続ける組織へ進化させる。この順番を守れば、会社は強くなります。年商10億円はゴールではありません。目指すべきは、社長が現場から離れても成長し続ける企業をつくることです。

(インタビュー・構成/本誌・髙根文隆)

掲載:『戦略経営者』2026年11月号

年商50億円を目指す企業の情報誌 戦略経営者

記事提供

戦略経営者

 『戦略経営者』は、中堅・中小企業の経営者の皆さまの戦略思考と経営マインドを鼓舞し、応援する経営情報誌です。
 「TKC全国会」に加盟する税理士・公認会計士の関与先企業の経営者を読者対象に、1986年9月に創刊されました。
 発行部数13万超(2025年9月現在)。TKC会計人が現場で行う経営助言のノウハウをベースに、独自の切り口と徹底した取材で、真に有用な情報だけを厳選して提供しています。

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