中東情勢が悪化し一部の資材調達が滞っていますが、賞与を支給したいと考えています。相場はどの程度になるでしょうか。(住宅工事業)
今年の夏季賞与は増加する見通しです。民間企業全体の賞与相場を展望すると、今夏の1人当たり支給額は43万7,000円と、前年を2.2%上回ると予想されます。背景として以下の2点が挙げられます。
第一は、所定内給与(基本給)の増加です。連合の第5回回答集計結果によると、今年の春闘賃上げ率(定期昇給込み)は5.05%と、前年をわずかに下回るものの、高い伸びを維持しました。規模別にみると、例年賃上げ率が低めになりがちな中小企業においても、大企業に匹敵する賃上げ率となりました。連合が企業規模間の賃金格差の是正を掲げ、中小企業への積極的な賃上げを呼びかけたことが一定の成果をもたらしたとみられます。
こうした結果を受けて、今年度も所定内給与の伸びは、3%前後で推移する見通しです。賞与額は「所定内給与の○カ月分」というように決定されるケースが多いため、所定内給与の増加は賞与の増額要因となります。
第二は、良好な企業収益です。2025年には、好調なAI(人工知能)関連需要や円安・原油安がトランプ関税による下押し圧力を相殺し、企業収益は想定外に堅調となりました。業種別にみると、多くの業種で増益となったほか、トランプ関税の影響が特に大きく、減益となった輸送機械産業でも賞与額の大幅な下振れは回避される見込みです。春闘における自動車総連(自動車業界の産別組合)のボーナス妥結状況をみると、安定した財務基盤などを支えに、賞与額は横ばい圏を維持しています。
中東情勢で下振れも
中小企業に限ってみても、これら二つの要因は共通しており、賞与の増額が見込まれます。昨夏の1人当たりの平均賞与支給額は28万4,000円だったことを踏まえると、今年の支給額は30万円弱が目安となるでしょう。
ただし、中小企業においては、中東情勢の緊迫化を受けて、賞与支給に対する慎重姿勢が強まるおそれがあります。中小企業は、大企業と比べた経営余力の乏しさや労働組合組織率の低さを背景に、賞与支給直前の経営環境が賞与額に反映されやすいためです。これは、前年の企業収益を元に組合との交渉を経て賞与額を決定するケースの多い大企業とは対照的です。
3月に始まった米国とイスラエルによるイランへの攻撃を契機に、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖や、周辺の中東諸国のエネルギー関連施設への攻撃が相次いでいます。これを受けて、原油価格(WTI先物取引価格)は、一時119ドル/バレルまで上昇し、その後も対立が激化する前の2月の水準(60ドル台/バレル)を大きく上回って推移しています。
企業にとって、原油高は仕入れ価格の上昇や収益の圧迫につながるほか、ナフサをはじめとする石油関連製品の供給不足も懸念されるだけに、中東情勢を巡る先行き不透明感が企業の経営判断を難しくしています。価格上昇や供給不足の影響を受けやすい素材系の業種を中心に、企業が収益環境に対する慎重な見方を強めれば、賞与額は下振れする可能性があります。
掲載:『戦略経営者』2026年6月号
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