2026年05月27日

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借入を検討中の経営者は要チェック!「モニタリング強化型特別保証制度」が創設されました

借入を検討中の経営者は要チェック!「モニタリング強化型特別保証制度」が創設されました

物価高や人手不足など、中小企業を取り巻く環境は依然として厳しく、資金繰りに苦しんでいる経営者も多いのではないでしょうか。そうした中小企業に適時・適切な資金繰り支援と経営支援を行うための新たな信用保証制度である「モニタリング強化型特別保証制度」(通称:モニ特別)の取扱いが、2026年3月から始まっています。制度の趣旨と概要を解説します。

💡この記事のポイント
 ☑中小企業は認定経営革新等支援機関と連携しモニタリング報告書を金融機関に提出
 ☑モニタリング報告書を受領した金融機関は定期的に融資先の業績をチェック
 ☑経営が悪化した場合は随時モニタリングに移行、関係者で協議を行う

1.制度創設の背景

(1) ポイントは「資金繰り支援と経営支援の一体化」

 2026年3月16日から取扱いが開始されている「モニタリング強化型特別保証制度」とは、中小企業の資金繰り支援と経営改善を一体的に行うことを目的として創設された制度です。この制度の最大の特徴は、単なる信用保証の提供にとどまらず、融資実行後も金融機関等による継続的なモニタリングと経営支援が行われる点にあります。
 従来の信用保証制度では、融資時の審査に重点が置かれ、融資後のフォローは限定的でした。その結果、金融機関あるいは信用保証協会は、融資先の業績が悪化してもそのことに気づかず、結果として適時の対応が難しくなるというケースが生じることも少なくありませんでした。
 また、新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの中小企業が借入を増加させた結果、返済開始後の資金繰りや収益力の回復に想定以上に時間がかかるといった課題が顕在化してきました。
 こうした状況を受け、単に資金繰りに苦しんでいる中小企業の借入をしやすくするのではなく、資金繰り支援と経営改善支援を同時に行うことが重要であるとの考えのもとに創設されたのが、この「モニタリング強化型特別保証制度」です。

(2) キーワードは「モニタリング」

キーワードは「モニタリング」

 「資金繰り支援と経営改善支援の一体化」を実現させるためのキーワードが「モニタリング」です。適時適切な経営改善支援を行うためには、融資を受けた中小企業の状況を定期的に把握する必要があります。なぜなら、業績の悪化あるいは資金ショートなどの兆候がわからなければ、支援のタイミングを逃してしまうおそれがあるからです。
 そこで、融資を受けた中小企業が金融機関に対して定期的に情報提供を行い、金融機関はその情報を信用保証協会と共有します。金融機関・信用保証協会は、提供された情報に基づき融資先の業績をチェックします。これが本制度におけるモニタリングです。
 モニタリングという仕組み自体は従来からありましたが、前述のようにそれが十分に機能していないケースもみられました。そこで、モニタリングを重視する(=定期的な情報提供を前提とする)保証制度なので、「モニタリング強化型特別保証制度」(略称:モニ特別)と名付けられています。

2.保証料率と制度の概要

(1) 保証料率の事業者負担は1%未満

 モニタリング強化型特別保証制度の保証料率は、次の表の通りです。

■保証料率

区分 1 2 3 4 5 6 7 8 9
保証料率(%) 1.90 1.75 1.55 1.35 1.15 1.00 0.80 0.60 0.45
補助率(%) 0.95 0.87 0.77 0.67 0.57 0.50 0.40 0.30 0.22
事業者負担(%) 0.95 0.88 0.78 0.68 0.58 0.50 0.40 0.30 0.23

※担保割引・会計参与設置会社・その他定性要因割引は適用しない。条件変更保証料は補助対象外。
事業者選択型経営者保証非提供制度の対象となるが、上乗せ分の保証料については補助対象外。

 信用保証協会の保証料率は、企業の決算書等に基づいて9段階の区分に判定されます。経営状況が良いほど料率が低くなり、責任共有制度の有無や担保の有無にもよりますが、基準の保証料率は通常0.45%~1.90%となります。
 上記表のとおり、保証料率から一定の補助率に相当する額が国から補助されます。その結果、事業者の実質負担はすべての区分で1%未満となります。ただし、この補助は2026年3月16日から2027年3月31日までの場合です。
 また、本制度の取扱期限は2029年3月31日(保証申込受付)までとなっており、2027年4月1日以降の保証申込について、補助の有無や補助を実施する場合の補助率は未定です。

(2) 保証限度額は2億8,000万円、認定経営革新等支援機関との連携が必須

 モニタリング強化型特別保証制度を利用できる資格要件や保証限度額等の概要は、次の表の通りです。

■制度概要

資格要件 認定経営革新等支援機関との連携により、月次で財務状況や資金繰り状況等を把握し、経営状況等の報告を行うことを誓約する中小企業者。
※当該認定経営革新等支援機関が申込金融機関である場合は、申込人の金融機関からの総借入金残高のうち申込金融機関におけるプロパー融資残高の割合が5割以上であるものに限る。
保証限度額 2億8,000万円
※企業の保証限度額となることから、複数の信用保証協会利用分を合算した保証限度額となる。
保証割合 責任共有対象(80%保証)
対象資金 事業資金(運転資金・設備資金・運転設備資金)
対象金融機関 各信用保証協会と約定を締結している金融機関
貸付形式 証書貸付または手形貸付
返済方法 一括返済または分割返済
保証期間 10年以内(据置期間は運転資金1年以内、設備資金及び運転設備資金3年以内)
ただし、一括返済の場合は1年以内
担保 必要に応じて徴求するものとする。
保証人 必要に応じて徴求する。ただし、法人代表者以外の連帯保証人は原則徴求しない。
添付書類 信用保証協会所定の申込資料のほか、「モニタリング強化型特別保証制度申込人資格要件申告書兼誓約書」を添付するものとする。
取扱期間 令和8年3月16日から令和11年3月31日までに信用保証協会が保証申込を受け付けたものとする。

 上記表のように、保証限度額は1企業あたり2億8,000万円と、中小企業を対象とした制度としては比較的大きな枠が設定されています。ただしこの限度額は、複数の信用保証協会の利用分を合算した金額となっています。
 借入の資金使途は運転資金、設備資金、またはその両方(運転設備資金)です。返済方法は一括または分割返済を選択できることとなっています。
 担保と保証人は「必要に応じて徴求する」とされていますが、法人代表者以外の連帯保証人は、原則として求められないとされています。
 ポイントは「認定経営革新等支援機関との連携により、月次で財務状況や資金繰り状況等を把握し、経営状況等の報告を行うことを誓約する中小企業者。」という資格要件です。添付書類も、信用保証協会所定の申込資料のほか、「モニタリング強化型特別保証制度申込人資格要件申告書兼誓約書」があります。
 認定経営革新等支援機関とは、2012年に施行された「中小企業経営力強化支援法」(現:中小企業等経営強化法)に基づき、中小企業を支援するために作られた支援機関のことです。具体的には、専門的な知識を持っており、一定の実務経験がある商工会、商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士などが、認定経営革新等支援機関になることができます。
 この認定経営革新等支援機関と連携し、月次で財務状況や資金繰り状況等を把握、報告を行うことを誓約することが、制度利用の要件となっていることは注意が必要です。つまり、正確で迅速な情報開示や継続的な対話に前向きであること、さらに、万一業績が悪化した場合には、金融機関等と協力して経営改善に取り組む意思があることが必要であるということです。

3.制度利用の流れ

 モニタリング強化型特別保証制度は、融資を受ける中小企業、金融機関、信用保証協会、認定経営革新等支援機関の4者で運用される仕組みです。下記のフロー図に沿って、それぞれどのような役割を果たすのかを見ていきます。

制度利用の流れ

(1) 認定経営革新等支援機関と中小企業

 この制度の利用は月次での業績管理が前提となっています。融資を受けた中小企業は、毎月業績がわかる資料を作成し、認定経営革新等支援機関はそれを毎月チェックします。そして、両者で「モニタリング報告書」を作成し、融資を受けた中小企業はその報告書を金融機関に提出します。提出期限は、決算期が4~9月の企業は12月中、10~3月の企業(個人事業主を含む)は6月中となります。
 また、認定経営革新等支援機関が、月次管理の結果融資を受けた中小企業の経営状況の変化を察知した場合、つまり業績が悪化するなどの兆候を発見した場合には、「経営状況の変化に関する報告書」を作成し、金融機関に提出することとなります。

(2) 金融機関

 融資を受けた中小企業は一定の時期に「モニタリング報告書」を、また経営状況が悪化した場合には「経営状況の変化に関する報告書」を金融機関に提出することとなります。
 「モニタリング報告書」を受領した金融機関は、この資料を基に「年次モニタリング」を行い、金融機関本部等で報告とりまとめを作成します。さらに、信用保証協会とも情報を共有するため、信用保証協会向けの報告フォーマットを作成し、決算期が4~9月の企業では1月中、10月から3月の企業(個人事業主を含む)では7月中に提出します。
 金融機関が「経営状況の変化に関する報告書」を受け取った場合は、「随時モニタリング」となります。この場合には、金融機関は信用保証協会向けの報告書を随時提出することとなります。
 なお、「モニタリング報告書」「経営状況の変化に関する報告書」ともに、各金融機関の本部等が定める方法で受領します。

(3) 信用保証協会

 金融機関から年次モニタリングに関する報告書を受領した信用保証協会は、経済産業省(経済産業局)向けの報告書を作成し提出します。
 随時モニタリングに関する資料を受領した場合は、常に融資を受けた中小企業の経営状況をチェックすることとなります。

(4) 「4者協議」の実施

「4者協議」の実施

 融資を受けた中小企業の業績が悪化するなどした場合には、認定経営革新等支援機関、融資を受けた中小企業、金融機関、信用保証協会の4者で、今後の支援方針の協議を行うこととなります(4者協議)。

4.「月次管理」と「経営状況の変化」

(1) 月次管理とは

 モニタリング強化型特別保証制度のカギとなるのが、月次管理です。月次管理とは、融資を受けた中小企業の事業年度を基準として、貸付実行日の属する事業年度から5事業年度(以下「モニタリング期間」という)において、融資を受けた中小企業と認定経営革新等支援機関が連携し、月次で財務状況や資金繰り状況等を把握することです。具体的には、次のように定められています。

 ・貸付実行日の属する月(貸付実行日の翌月に実施)から、当該月が属する事業年度を起点として、5事業年度目の決算月(5事業年度目の決算月の翌月に実施)までが対象となる。
 ・原則として、月次管理の対象となる月の翌月末までに実施する。(例えば、2026年5月に本制度を実行した場合、初回の月次管理は2026年5月の実績を2026年6月末までに実施する。)
 ・モニタリング期間内に完済した場合、月次管理は完済日の前々月の実績分(完済日の前月に実施)までとする。
 ・把握すべき項目については月次管理表の内容を満たすよう留意する。

 認定経営革新等支援機関が月次管理を行うことで、金融機関と信用保証協会は、業績が順調な場合には年に1度のモニタリング報告書をチェックするだけなので、モニタリングの手間が非常に少なくなります。さらに、融資を受けた中小企業の業績が悪化した場合も、認定経営革新等支援機関はすぐにその兆候に気づき、打ち手を検討することができます。

(2) 「経営状況の変化」とは

「経営状況の変化」とは

 前述の通り、モニタリング期間において、融資を受けた中小企業の経営状況が変化した場合には、その中小企業と認定経営革新等支援機関が連携し「経営状況の変化に関する報告書」を作成し、中小企業者が金融機関及び信用保証協会に対して報告を行うことになっています。問題は、具体的にどんな状態が「経営状況の変化」といえるのかということです。
 報告が必要な基準として、次の要件が示されています。
 ① 今後6か月以内に資金不足が懸念されるとき
 ② 上記①に該当しないが、経営状況の変化に関する報告を行うことが必要であると判断したとき。例えば「主要取引先の経営状況の悪化や取引条件の変更により、収益性が大幅に低下している」、「社内人材の退職により、営業力や技術力等に課題が生じる可能性がある」などの財務情報、非財務情報等により経営状況の変化が確認できる場合を想定している。

 融資を受けた中小企業が上記の要件に当てはまった場合、「経営状況の変化に関する報告書」と直近の決算書を、速やかに金融機関に提出します。信用保証協会は、金融機関を通じて報告されることとなります。また、上記①に該当する場合、本報告書とあわせて、資金繰りの見込みを明らかにする書類(資金繰り表等)を提出する必要があります。
 さらに、前述のとおり報告後は原則として、融資を受けた中小企業、認定経営革新等支援機関、金融機関及び信用保証協会による対話を通じて、経営支援や金融支援の必要性を検討し、事業者支援の方針について4者で認識を共有することとなります。対話方法については、必ずしも関係者が一堂に会する必要はなく、電話やオンライン会議等でも差し支えありません。

5.制度の活用に向けて

 このように、モニタリング強化型特別保証制度は、融資を受けた中小企業の経営状況を継続的に把握し、問題の早期発見と改善策の実行を促すことで、その中小企業の持続的な成長を支援することを目的としています。つまり、中小企業にとって資金調達の手段であると同時に、経営改善を実現するための枠組みとしての性格を持っているのです。
 この制度を活用することで、中小企業は専門的な知識を持っている認定経営革新等支援機関から継続的な助言を受けることができ、経営課題の早期発見と対応が可能となります。さらに、定期的な情報提供を通じて、金融機関や信用保証協会との信頼関係の強化にもつながります。その結果、将来的な資金調達の円滑化にもつながります。
 一方で、月次資料の作成や定期的な報告といった実務的な負担が増加する点や、金融機関等に情報が伝わることにより、経営の自由度が制約されるのではないかと懸念を抱く経営者がいるかもしれません。しかし前述の通り、月次資料は経営悪化時に限らず経営者による経営判断の材料になります。また、経営を見える化し透明性を高めることは、経営改善の機会を得られるということです。つまり、中長期的には企業価値の向上につながることが期待できるのです。

参考文献

・「モニタリング強化型特別保証制度のモニタリングについて」(令和8年3月2日 中小企業庁金融課)

株式会社TKC出版

記事提供

株式会社TKC出版

 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
 税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。

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