社長等の役員報酬は原則として給与所得に該当し源泉徴収・年末調整の対象となります。そのため「年末調整をしているから確定申告は不要」と思われがちですが、役員報酬が年間2,000万円を超える場合や、給与所得以外の所得がある場合など、確定申告が必要となるケースも少なくありません。知らずに申告漏れとなることを防ぐためにも社長自身が押さえておくべき確定申告の基本と注意点を確認しましょう。
💡この記事のポイント
☑年末調整の対象である給与所得者でも、一定の要件に当てはまる場合は確定申告をしなければならない。
☑社長の場合、従業員等と比べて、要件に該当する可能性が高くなりがちなので注意が必要。
☑確定申告の準備として、契約書や領収書などの必要書類を揃えておく。
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1.確定申告とは
- (1) 所得税額を計算・申告し、納付税額を確定させる手続き
- (2) 年末調整とは何が違う?
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2.確定申告が必要になる場合とは?
- (1) 給与所得者でも確定申告が必要?
- (2) 確定申告が必要になるケースを確認
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3.社長にありがちな思わぬ申告漏れに要注意!
- (1) 役員報酬が年間2,000万円を超える場合
- (2) 自社との取引の見落とし
- (3) 役員退職慰労金の扱い
- (4) 不動産所得(社宅・自社貸付を含む)
- (5) 講演料・原稿料・顧問料などの雑所得
- 4.まとめ
1.確定申告とは
(1) 所得税額を計算・申告し、納付税額を確定させる手続き
確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得と、その所得に対する所得税額を計算・税務署に申告し、納付税額(または還付税額)を確定させる手続きです。
たとえば、複数の会社から給与を受け取っている場合や、給与以外の収入がある場合、医療費控除・寄附金控除などを適用する場合、年末調整だけでは所得税額の正確な計算ができないため、確定申告によって税額を正しく調整します。
令和7年分の確定申告の期間は、令和8年2月16日(月)~3月16日(月)までとなっています。この間に、税務署に必要書類を提出する必要があります。
(2) 年末調整とは何が違う?
通常、給与所得者については、会社(給与支払者)が年末調整を行います。年末調整とは、事業主等の給与支払者が従業員(給与所得者)に代わって実施する税金の精算手続きです。給与から毎月差し引かれている所得税等の合計額が、1年間の所得に基づいて計算した本来の税額と一致しない場合に、その差額(過不足分)を還付または追加納付によって調整します。
そのため、給与所得者は確定申告をしなくても、年末調整によって1年間の所得税等の額を正しい金額に精算することができます。
■確定申告と年末調整の主な違い
| 確定申告 | 年末調整 | |
| 目的 | 1年分の所得・控除等から税額を計算し申告(納付または還付)する | 1年分の給与から源泉徴収した所得税等の合計と、本来納めるべき年税額を一致させる(過不足を精算) |
| 対象範囲 | 原則、各種所得を合算して申告(年末調整した給与も、申告するなら含めて計算) | 基本的に給与に関する所得税等の精算 |
| 時期 | 申告受付期間(例年2月16日~3月15日) | 年末(会社が年末調整を実施する時期) |
| 手続きする人 | 納税者本人 | 納税者が所属する会社 |
| 申告方法 | e-Tax、郵送(所轄税務署/業務センター)、税務署へ持参 | 従業員等は会社へ必要書類を提出し、会社が年末調整を実施 |
| 精算 | 税額算出後、納付または還付(還付申告も可能) | 過不足が生じた場合、還付または追徴により調整 |
【出典】
国税庁「 年末調整がよくわかるページ(令和7年分)|国税庁 」国税庁「 申告書の提出方法|国税庁 」
国税庁「 確定申告が必要な方|国税庁 」
国税庁「 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁 」
国税庁「 No.2662 年末調整のしかた|国税庁 」
国税庁「 【所得税及び復興特別所得税の申告等】|国税庁 」
年末調整については、下記の記事も参照してください。
■関連記事:myTaxPro「年末調整とはどんな仕組み? 2025年(令和7年)分の変更点を解説」
年末調整とはどんな仕組み? 2025年(令和7年)分の変更点を解説
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2.確定申告が必要になる場合とは?
(1) 給与所得者でも確定申告が必要?
年末調整の対象となる給与所得者でも、一定の要件を満たすと確定申告が必要になります。個人事業者の場合は、その収入は給与所得ではなく「事業所得」となるため、原則として確定申告が必要です。
①社長(株式会社の代表取締役等)、従業員等
→原則として年末調整を行うが、一定の要件を満たす場合に確定申告が必要
②個人事業者
→事業所得なので、原則として確定申告が必要
確定申告が必要となる要件は、社長でも従業員でも変わりありませんが、本記事では特に社長にとって関連の深いケースについて解説します。
(2) 確定申告が必要になるケースを確認
確定申告が必要になるケースを見ていきましょう。
■「確定申告が必要なケース」と「必要な資料」
①給与以外の所得や一時所得がある場合
株式の配当や原稿料のような給与以外の所得が合計で20万円を超える場合、確定申告を行うために、その金額がわかるような書類が必要になります。なお、20万円を超えていなくても、住民税の申告が必要となる場合がありますので注意してください。また、保険の満期返戻金等のような一時所得の合計が50万円を超える場合も、同様に確定申告が必要となります。
○必要な資料
□報酬・料金・賞金・契約金等の支払調書
□配当支払調書
□保険の満期返戻金・解約金等の計算書
□懸賞当せん金・公営競技(競馬・競輪等)の払戻金の詳細がわかるメモ等
②寄附を行った場合
ふるさと納税のほか、社会福祉法人やNPO法人、政党等へ寄附を行った場合に、寄附金控除または政党等寄附金等特別控除を受けることができます。
ふるさと納税にはワンストップ特例があり、原則として確定申告は不要ですが、その他の寄附については基本的に確定申告が必要となります。
なお、確定申告を行った場合、ふるさと納税ワンストップ特例の申請は無効になります。ワンストップ特例の申請をした分も含めて、寄附金控除を計算しましょう。
○必要な資料
□寄附金の受領証または寄附金控除を受けるための証明書等
③高額の医療費またはスイッチOTC医薬品等の購入費を支払った場合
入院などで医療費が10万円を超えた場合には、医療費控除を受けることができます。保険適用外診療(いわゆる自由診療)で高額の医療費を支払った場合でも、医療費控除の適用対象となることがあるため、よく確認しましょう。
また、世帯全体でスイッチOTC医薬品(医療用から市販薬に転用された医薬品)等を税込12,000円以上購入した場合には、健康の保持増進および疾病の予防に関する一定の取り組み(健康診断や予防接種等)を行っていることを条件に、セルフメディケーション税制の適用を受けることができます。
ただし、医療費控除とセルフメディケーション税制は選択適用です。両方に該当する場合は、領収書等をもとに控除額を計算し、どちらの適用を受けるかを選びましょう。
○必要な資料
□保険金の受給額がわかる明細書等
□医療費通知・医療費控除を受けるための領収書等
□セルフメディケーション税制の対象となる医薬品の領収書等※
□健康診断の結果通知や予防接種の接種済証または領収書等
※対象品目の詳細は厚生労働省Webサイト「セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について」をご確認ください。
④災害等の被害を受けた場合
災害や火災、盗難等によって住宅や家財等に損害を受けた場合には、雑損控除を受けることができます。
災害の場合には、雑損控除との選択適用となりますが、災害減免法による所得税の軽減免除を受けられる場合もあります。どちらのほうが有利かは、所得金額や損害金額等によって異なります。昨年受けた損害が控除の対象になるかを確認したうえで試算してみましょう。
○必要な資料
□災害や事故の証明書(り災証明書の写しなど)
□被害を受けた財産の取得価額や取得年月日がわかる書類
□保険金の受給額がわかる明細書等
□災害等に関連してやむを得ない支出をした金額についての領収書等
⑤不動産や株式等の譲渡所得があった場合
不動産や株式の売買等で、課税対象となる譲渡所得があった場合には、確定申告が必要です。詳しくは国税庁タックスアンサーNo.3105「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」をご確認ください。
○必要な資料
□譲渡した資産の内容(所得に要した費用など)や譲渡価額がわかるもの
⑥貸付金の利子や不動産の賃貸料等を受け取っている場合
自社から貸付金の利子や不動産の賃貸料等を受け取っている場合も確定申告が必要です。それぞれの収入金額を確認しましょう。
○必要な資料
□利子や賃貸料等による収入金額がわかる明細書等
申告する際には原則、以下の書類等が必要になります。申告会場に行く際は下記を忘れないよう注意しましょう。
□確定申告書
□筆記用具
□本人確認書類(マイナンバーカード等)
□銀行口座がわかる書類
□申告時に添付または提示が必要となる証明書等
なお、ここに挙げたもののほかにも、証明書や明細書等が必要となる場合があります。詳細は国税庁Webサイト「確定申告書等の様式・手引き等」の最新年度をご確認ください。
3.社長にありがちな思わぬ申告漏れに要注意!
次に、社長が見落としがちな確定申告における落とし穴をご紹介します。社長ならではの思わぬ申告漏れポイントを確認し、確定申告時に抜け漏れがないように注意しておきましょう。
(1) 役員報酬が年間2,000万円を超える場合
給与所得が自社からの役員報酬だけでも、その金額が2,000万円を超えると確定申告が必要になります。
(2) 自社との取引の見落とし
社長の場合、自分の会社とのお金のやり取りが原因で、思わぬ所得が発生することがあります。例えば、社宅に住んでいて社長本人が払う家賃が基準額より低いと、その差額が「役員への給与(経済的利益)」として扱われることがあります。社宅や貸付がある人は契約書や入金・返済の記録を早めに整理しておくと安心です。
(3) 役員退職慰労金の扱い
役員退職慰労金は給与所得ではなく「退職所得」として扱われ、退職所得控除などの仕組みがある一方で、勤続年数など条件によって税額が異なります。役員退職慰労金が出る年は、役員退職慰労金の支給決議書や明細、源泉徴収票、勤続年数がわかる資料を早めに入手しておきましょう。
(4) 不動産所得(社宅・自社貸付を含む)
社長は、自宅や駐車場などを個人名義で持ち、それを会社に貸しているケースがあります。この場合、会社から受け取る家賃は「不動産所得」として確定申告が必要です。「家賃は会社の経費にしているから自分は申告しなくてよい」と思い込みやすい点が落とし穴です。
契約書がなく金額が曖昧だと、税務上の説明が難しくなることもあります。受け取った家賃からは、固定資産税、修繕費、火災保険料、減価償却費などを必要経費にできる一方、私的な支出は経費になりません。社宅として会社が借り上げている場合でも、物件の名義や家賃の流れによっては申告が必要になるため、通帳の入金、賃貸契約、領収書をまとめて確認しておきましょう。
(5) 講演料・原稿料・顧問料などの雑所得
社長は本業の役員報酬とは別に、講演料、セミナー等の講師謝金、記事の原稿料、別会社の顧問料などを受け取ることがあります。これらは給与とは扱いが異なり、多くは「雑所得」等として確定申告が必要です。源泉徴収されている場合でも、申告しないと税額計算が正しく行われず、申告漏れとみなされることがあります。
「振込で受け取っただけ」「会社の売上ではない」など感覚的に見落としやすい点が注意です。通帳の入金履歴等を見て、入金元と金額を整理しましょう。交通費や資料代など、収入を得るために直接かかった費用は差し引ける場合があります。まずは年間の入金一覧を作るだけでも抜け漏れ防止になります。
確定申告が必要であるにもかかわらず行っていないと、税務署に「申告義務があるのに申告していない」と判断され、本税に加えて「無申告加算税」がかかる場合があります。また、申告が遅れると、無申告加算税に加えて納付までの日数に応じた「延滞税」も発生する可能性があります。
調査通知前の自主申告であれば税負担が軽くなるため、気づいた時点で速やかに手続きしましょう。もし確定申告を忘れていても、その事実がわかり次第早めに申告することが大切です。
4.まとめ
社長は、まず「給与以外の所得があるか」「年末調整で反映できない控除はないか」等を整理し、確定申告が必要かどうかを確認しましょう。
特に、社宅・会社からの貸付、役員退職慰労金などの会社との取引や、不動産収入、講演料・原稿料・顧問料等は見落としが発生しやすいため、契約書や明細関係書類を早めに揃えておくと安心です。
また、社長は会社と個人のお金が行き来しやすく、立替や精算が多い点にも注意が必要です。社長個人と会社の支払い等が混ざると、確定申告時における書類集めや金額の整理に手間取る原因となり得ますので、普段から整理しておくようにしましょう。判断に迷うケースが出てきた場合は、税理士などの専門家に早めに相談し疑問を解決しておくことが重要です。
【参考資料】
・「事務所通信」2026年1月号
・「事務所通信デジタル版」2026年1月号 注目ニュース
・「事務所通信デジタル版」2025年2月号 注目ニュース
・国税庁「No.1199 基礎控除|国税庁」
・国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁」
・国税庁「No.1500 雑所得|国税庁」
・国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁」
・国税庁「No.1901 同族会社の役員で確定申告の必要な人|国税庁」
・国税庁「No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除|国税庁」
・国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁」
・国税庁「No.2662 年末調整のしかた|国税庁」
・国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法|国税庁」
・国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁」
・国税庁「No.9205 延滞税について|国税庁」
・国税庁「申告と納税|国税庁」
・国税庁「【確定申告書等作成コーナー】-確定申告とは」
・国税庁「役員給与に関するQ&A」
・国税庁「確定申告書等の様式・手引き等」
・国税庁「年末調整がよくわかるページ(令和7年分)|国税庁」
・国税庁「申告書の提出方法|国税庁」
・国税庁「確定申告が必要な方|国税庁」
・国税庁「【所得税及び復興特別所得税の申告等】|国税庁」
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