2026年02月24日

  • Xでシェア
  • facebookでシェア

この取引は「雑収入」か「営業外収益」か? ~適切な会計処理で決算書を自社の経営に活かそう~

この取引は「雑収入」か「営業外収益」か? ~適切な会計処理で決算書を自社の経営に活かそう~

損益計算書に記載される各項目の意味を正しく理解することは重要です。特に「雑収入」と「営業外収益」は、どちらも営業活動以外の収益に関連する項目ですが、その違いを明確に理解していなければ、企業の収益構造や経営状況を誤って評価するリスクがあります。しっかりと確認しましょう。

💡この記事のポイント
 ☑「雑収入」「営業外収益」の基本となる考え方を押さえる
 ☑「雑収入」で処理するのが適切かどうか、その他の留意点を把握する
 ☑間違った会計処理は自社の業績把握に影響することを理解する
 ☑雑収入は本業の売上ではないため、本業の真の収益力把握につながることを理解する
 ☑簿記会計(商業帳簿)の本質的な目的の1つは、経営者への自己報告による健全経営の遂行することであることを認識する

1.「雑収入」と「営業外収益」の概要

 企業の財務諸表を分析する際、損益計算書に記載される各項目の意味を正しく理解することは極めて重要です。特に「雑収入」と「営業外収益」は、どちらも営業活動以外の収益に関連する項目ですが、その性質や役割には明確な違いがあります。これらを混同すると、企業の収益構造や経営状況を誤って評価するリスクがあります。
 「営業外収益」は、会社の通常の事業とは関連しない収益(営業活動以外から得られる収益全般)です。損益計算書においては「営業利益」の次に表示されます。その営業外収益のうち、特定の勘定科目に分類されない比較的少額な収益が「雑収入」となります。
 営業外収益には雑収入のほかに、財務活動より生ずる金融収益たる「受取利息」や「受取配当金」、「有価証券利息」、「仕入割引」が主な項目で、さらに投資不動産、その他の投資より生ずる経常的な投資収益が含まれます。
 それでは、まず「営業外収益」「雑収入」の内容、計上するタイミング、税務上の注意点等、基本となる考え方を再確認しておきましょう。

2.「営業外収益」の基本となる考え方

 前述したように、営業活動による商品の売買、サービスの提供等による収益以外の収益が営業外収益です。つまり、本業とは関連しない取引等から生ずる収益で、財務活動としての「受取利息」「受取配当金」、経常的な投資収益たる「(投資)不動産賃貸料」は、区別することが一般的です。本業と本業以外の収益を区別することで、本業でいくら稼いだかが簡単にわかるようになります。
 会計処理での留意すべきポイントとしては、手取りの預金利息や有価証券利息などの受取利息や、受取配当金はあらかじめ所得税等が控除されています。正しく計上するととともに、利息等の計算書を保存しておきましょう。
 また、「為替差益」や「仕入割引」等、企業の業種や商慣行、金額の重要性判断により別の勘定科目で処理することが望ましい場合もあります。為替差益を処理する場合(外貨建金銭債権債務にかかる為替差益)の注意点は、為替差損と相殺後の金銭を表示することです。
 同様に、有価証券の売却益についても(売買目的有価証券の運用損益)は、運用益と運用損を相殺して純額を表示します。
 これらの営業外収益は、前述したように企業の財務活動や投資活用から生じる収益を示し、「経常利益の算定」に直接影響します。

3.「雑収入」の基本となる考え方

「雑収入」の基本となる考え方

 営業外収益のうち、受取利息、受取配当金、投資用不動産賃貸料、為替差益等に当てはまらないものや、金額が少額なものは「雑収入」として計上します。たとえば、作業くず、貯蔵品、原材料の処分等、少額で、厳密に原価と対応させるほどの重要性のない収益を処理する勘定科目です。特徴として、雑収入は企業の本業とは関係しないため、営業利益には関係しませんが、経常利益や当期純利益に影響を与えます。

〈雑収入で処理するものの例示〉
 ・社宅家賃収入
 ・貯蔵品等の処分
 ・生命保険金等の配当金
 ・自動販売機の等の手数料
 ・受贈益
 ・雇用調整助成金等法令に基づき交付を受ける給付金等  など
 そのほかに、会社行事に招待した取引先等からの祝儀なども雑収入で処理します。法人の資産を役員等が個人的に利用等している場合(賃貸借契約書を締結している)の利用料等は雑収入での処理か、あるいは受取賃貸料等の営業外収益で処理します。

参考:個人事業者の雑収入
 個人事業者は、事業活動に伴う収入や経費をもとに「事業所得」を計算します。本業以外の収入で、本業に付随するものは事業所得の「雑収入」として計上します。一方、本業と関係のない収入は、内容に応じて「雑所得」や「一時所得」など、事業所得とは別の所得区分で確定申告します。

4.雑収入以外の営業外収益にはどのような科目があるか

(1) 受取利息

 預金利息(普通預金、定期預金、通知預金等の受取利息)、貸付金利子、有価証券利息(公社債の利子、合同運用信託の収益の分配金)等を処理します。なお、手取りの預金利息(納税準備預金を除く)及び有価証券利息は、あらかじめ所得税等が控除されているものであることに留意します。

(2) 為替差益

為替差益

 為替差益については、差益と差損を相殺した純額表示が原則です。
 外貨建金銭債権債務等を当科目で処理する場合は、為替差損と相殺後の金額を表示することが望ましい。

参考:外貨建取引等の会計処理
 ・外貨建取引(外国通貨建で受け払いされる取引)は、当該取引発生時の為替相場による円換算額で計上します。
 ・外貨建金銭債権債務については、取得時の為替相場または決算時の為替相場による円換算額で計上します。

 外貨建取引とは、決済が円以外の外国通貨で行われる取引をいいます。
 たとえば、ドル建で輸出を行った場合、ドル建の売上金額に、取引を行ったときの為替相場を乗じて円換算し、売上高と売掛金を計上します。
 この場合の取引発生時のドル為替相場は、取引が発生した日の為替相場のほか、前月の平均為替相場等直近の一定期間の為替相場や、前月末日の為替相場等直近の一定の日の為替相場を利用することが考えられます。
 また、上記のドル建の売上取引に関する売掛金が、期末時点でも残っている場合は、貸借対照表に記載する金額は、取引を行ったときのドル為替相場による円換算額か、決算日の為替相場による円換算額かのいずれかで計上します。
 なお、決算日の為替相場のほか、決算日の前後一週間の平均為替相場を利用することも考えられます。
 為替予約を行っている場合には、外貨建取引および外貨建金銭債権債務について、決済時における確定の円換算額で計上することができます。
 決算日の相場によった場合には、取引を行ったときのドル為替相場による円換算額との間に差額が生じますが、これは為替差損益として損益処理します。

(3) 受取配当金

 株式、出資金に対する受取配当金を処理します。配当金は所得税が控除された額を受け取ることになります。ほかに投資信託収益分配金、みなし配当金を処理します。
 生命保険等の配当金は雑収入で処理します。

5.会計処理をする際の留意点

(1) 雑収入の計上のタイミング

 計上のタイミングは、雑収入の内容によりますので、留意してください。

① 保険の配当金

 保険の配当金が支払われたり積み立てられたりする場合、配当金通知書に基づいてその事業年度に雑収入として計上します。最近は、メールや専用Webページ、アプリなどから、通知書等をダウンロードする方式(電子交付)も増えていますので、きちんと確認して、計上漏れに注意しましょう。

② 助成金や給付金等

 たとえば、国や地方自治体等から交付される助成金や給付金等は、一般に「申請」→「支給決定」→「支給」の流れで給付等が行われます。収益計上する際の原則は、支給決定日で計上することです。通知書等に支給決定日が明記されている場合は、その日付で収益計上し、あるいは「支給決定通知書等が到着した日」を含む事業年度に収益計上します。
 申請しただけでは未だ受給が確定していませんので会計処理は不要です。事業年度をまたぐような場合(支給決定通知書を受け取った事業年度までに入金がない)は、支給決定通知書を受け取った事業年度に「未収入金」として資産計上します。入金時は、すでに決定通知を受けて会計処理が済んでいるため、「未収入金」を取り崩す処理が必要となります。

(2) その他の留意点

① 消費税の課税・非課税

 雑収入の中には消費税の課税売上に含まれないものもあるので、税金の計算をするときは注意が必要です。
 消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行った「資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」です。ただし、課税対象になじまないものや社会政策的配慮か消費税を課税しない取引(非課税取引)があります。また、そもそも消費税の課税対象とならない不課税取引があります。
 たとえば、非課税取引としては社宅家賃収入、地代収入等があり、不課税取引としては保険金の受領等があります。補助金や助成金等は、税務上の扱いが異なる場合があり、適切な判断が求められます。

② ポイント利用時の処理

 量販店等が発行する法人名義のポイントカードや法人名義のクレジットカードを使用し、貯まったポイントを利用して物品を購入することがあります。この処理については、国税庁の「タックスアンサーNo.6480 事業者が商品購入時にポイント使用した場合の消費税の仕入税額控除の考え方」が、ポイント利用における会計処理の考え方の参考になります。

参考:タックスアンサーNo.6480
 事業者が商品購入時にポイント使用した場合の消費税の仕入税額控除の考え方

 事業者が商品を購入した際、その取引(課税仕入れ)について仕入税額控除を行うこととなりますが、商品購入時にポイントを使用した場合、消費税の「課税仕入れに係る支払対価の額」は、

① ポイント使用が「商品本体価額の値引き」である場合には、商品対価の合計額からポイント使用相当分の金額を差し引いた金額(値引後の金額)
② ポイント使用が「支払うべき価額の値引き」である場合には、商品対価の合計額(全額)

となります。

 なお、商品購入時に発行されるレシートには、ポイント使用の態様に応じて「課税仕入れに係る支払対価の額」が表示されていると考えられますので、商品を購入した事業者においては、レシートの表記から「課税仕入れに係る支払対価の額」を判断して差し支えありません。

 上記タックスアンサーから、レシートの記載が「ポイント値引き」となっている場合は、そのポイント使用は「値引き」に該当し、レシートの記載が合計金額のあとに「ポイント支払」となっていれば支払いに充てたものとなり、「雑収入」として処理することになります。

③ 収入の計上漏れ

 税務調査において重要ポイントして挙げられるのが「計上すべき収入に漏れはないか」です。少額とはいえ、計上漏れのないようにしっかり計上しましょう。とくに定期的に計上する収益とは違いますので、会計処理のルールや仕組みで漏れのないようにしましょう。

④ 雑収入での処理は適切か

 雑収入は本業とは関係のない、重要性の低い臨時的・副次的に発生する収益を処理するための科目です。本来は他の勘定科目を使用すべき収益を、安易に雑収入にすることのないようにしましょう。

6.企業の業績を正確に把握する上で重要

企業の業績イメージ

 さて、これまで「営業外収益」「雑収入」に関して、会計的な側面から正しい処理の必要性について見てきましたが、正しい処理によってつくられた決算書の目的は企業の業績を正確に把握するためであり、自社の経営に役立てるためにあります。坂本孝司氏(TKC全国会会長)は、『会計で会社と強くする(第3版)』において、簿記会計(商業帳簿)の本質的な目的を、
 ① 自社を守るための証拠資料(証拠力の定立)=商業帳簿の信頼性
 ② 経営者への自己報告による健全経営の遂行=商業帳簿の倒産防止機能
と、「外部者への報告のためにある」のではないことを、強く訴えています。
 本稿においても、営業外収益は「経常利益の算定」に直接影響すること、雑収入は営業利益には関係しないが、経常利益や当期純利益に影響を与えることを先述しています。それではどのように影響しているのか、見ていきましょう(後掲の「参考:5つの利益」と併せてご覧ください)。

① 企業の真の収益力把握に役立つ

 営業外収益、雑収入は、本業の売上とは区別して計上されるため、企業の真の収益力を分析する上で重要な意味を持ちます。

② 本業の業績を明確化する

 雑収入を本業の売上と区別することで、経営者は主軸事業がどれだけ利益を生み出しているかを正確に把握できます。

③ 経営判断の精度向上のために適切な科目を使用

 経営分析において 営業利益が黒字であるものの、営業利益以上に経常利益が大きい場合、原因として「売上」計上すべきものを「雑収入」で処理しているなどが考えられます。このように雑収入に頼りすぎているような場合、本業の不振が見逃されるリスクがあります。また、雑収入は「少額であり、他のいずれの勘定科目にもあてはまらない重要性の低いもの」ですから、もし雑収入が多額になる場合は、新たな事業として独立させたり、別の勘定科目を検討したりするなど、会計上の見直しが必要になります。
 適切な勘定科目設定により、経費の流れや収益バランスを把握しやすくなり、適切な経営判断につながります。

参考:「5つの利益」
 利益は、「収益-費用=利益」の算式で求められ、経営成績を判断する指標となりますが、収益と費用をその性質によっていくつかに区分し、次の5つの利益として求められます。

①売上総利益(粗利):売上高-売上原価=売上総利益
 売上高から売上原価(仕入費用など)を引いたもので、商品・製品、サービスの直接的な儲けを表します。いわゆる粗利益といわれ、企業の基本的な収益力を示します。

②営業利益:売上総利益-販売費及び一般管理費=営業利益
 売上総利益から販売費および一般管理費(人件費、家賃など)を引いたもので、本業の儲け(事業活動全体の収益力)を表し、企業の本来の営業活動から生じた利益を示します。

③経常利益:営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益
 営業利益に、本業以外の収益(営業外収益)を加え、費用(営業外費用)を引いたもので、企業が日常的に継続して稼ぐ力(本業+副業的な収益)を表し、企業の通常の事業活動(経常的な活動)から生じた利益を示します。
(営業外収益:受取利息・受取配当金・雑収入等、営業外費用:支払利息・雑支出等)

④税引前当期純利益: 経常利益+特別利益-特別損失=税引前当期純利益
 経常利益に、一時的な特別利益を加え、特別損失を引いたもので、税金(法人税など)を払う前の利益です。
(特別利益:投資有価証券売却益等、特別損失:固定資産売却損等)

⑤当期純利益: 税引前当期純利益-法人税等=当期純利益
 税引前当期純利益から法人税・住民税などを差し引いた、最終的に会社に残る税引後の利益(最終的な儲け)です。

 これらの利益を段階的に見ることで、企業の経営改善点を見つけやすくなります。
 上記③の経常利益に関連する財務分析の指標に、企業の稼ぐ力を診断する「売上高経常利益率利益」(経常利益÷売上高×100%)があります。
 これは、会社の経営活動で稼いだ利益(経常利益)が全体の売上高に対してどのくらいあるかを見る指標です。利益率が高いほど利益を稼ぐ力が大きいと判断できます。

 雑収入は企業の主要な収益源ではないものの、適切な会計処理をすることで、経営の財政状態の把握にとって大事な要素といえます。正しい会計処理を心がけましょう。

参考文献

・TKC全国会 中央研修所編『TKC会計処理マニュアル』
・「事務所通信」(2024年8月号)TKC出版
・坂本孝司『会計で会社を強くする』TKC出版

株式会社TKC出版

記事提供

株式会社TKC出版

 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
 税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。

  • Xでシェア
  • facebookでシェア
税理士事務所を探す