2025年12月10日

FX2クラウドユーザー事例 「有限会社ケンコーフーズ 様」 経理業務のデジタル化を推進する沖縄発黒糖・豆菓子メーカー

FX2クラウドユーザー事例 「有限会社ケンコーフーズ 様」 経理業務のデジタル化を推進する沖縄発黒糖・豆菓子メーカー

左から大城香織専務、大城健太郎社長、大城健功会長、西村眞一税理士、西村直人税理士、名嘉真和己税理士

「琉球ショコラ」や「黒糖くるみ」などのヒット商品、ロングセラーで知られるケンコーフーズ。会計システムのクラウド化で経理業務の効率化を進めつつ、デジタルインボイスによる請求書発行にも取り組んでいる。大城健太郎社長と香織専務、葵税理士法人の西村直人税理士らに取材した。

──自社の沿革について教えてください。

大城健功会長 当社は本土復帰後間もない1982年に沖縄県豊見城市で創業し、「沖縄特別措置法」に基づくIQ(輸入割当)制度指定業者として、落花生やアーモンド、ヘーゼルナッツなどの豆類を中心とした製菓原料の輸入販売を行っていました。その後、輸入した豆類を活用して豆菓子の製造を始め、徐々に製造業へとシフト。現在では、豆菓子や黒糖菓子、珍味などの製造・販売が主力事業となっています。2004年には糸満市西崎町の工業団地に新工場を建設、本社を移転しました。沖縄の素材を生かした商品づくりを通じて、地域に根ざした事業を続けています。

──商品ラインアップや看板商品について教えてください。

大城健太郎社長 現在は約20種類の商品を展開しており、看板商品は「琉球ショコラ」と豆菓子シリーズです。琉球ショコラは黒糖を使ったチョコレート菓子で、最大の特徴は気温40度でも溶けない独自技術により、夏場でも常温での流通が可能なこと。黒糖とカカオをしっかり融合させた本格的なチョコレート菓子で、他社製品との差別化を実現しています。また、昔からの定番商品である「黒糖ピーナッツ」「黒糖くるみ」などの豆菓子も人気で、県外でも広く認知されています。

夏場でも常温流通可能な「琉球ショコラ」(左)、黒糖菓子や豆菓子など約20 種類を製造販売(右)

夏場でも常温流通可能な「琉球ショコラ」(左)、黒糖菓子や豆菓子など約20 種類を製造販売(右)

──主な販売先について教えてください。

大城社長 現在売り上げの約半分は県外の企業です。沖縄県内の問屋を通して県外に出荷しているほか、全国展開する大手の問屋との直接取引もあります。また大手スーパーマーケットでも当社の商品を販売しています。これらのスーパーは、安売りをしない比較的価格の高い店舗が中心で、ブランド価値を維持しながら販路を広げていく戦略をとっています。

──卸売りも手掛けているとお聞きしました。

大城社長 沖縄県内のスーパーに、当社製品だけでなく、県外メーカーの商品を仕入れて販売しています。スーパーから「こういう商品がほしい」という要望が寄せられるようになり、当社がバイヤーとして商品を選定し、仕入れた商品をリパックして県内に流通させる仕組みを構築したのです。県外の仕入れ先に当社の商品を販売してもらうなど、相互に商品を扱うウィンウィンの関係を築いており、これが当社の強みの一つになっています。

大城健太郎社長

大城健太郎社長

1.システムのクラウド化で打ち合わせ時間を確保する

──葵税理士法人と顧問契約をしたのは13年前だとか。

大城会長 ある集まりで同級生の西村会長と久しぶりにお会いし、いろいろと税務の指導をいただいたのがきっかけです。法的に正しいアドバイスを受けたことで、結果的にかなりの利益改善が実現しました。適切な税務指導やアドバイスをしていただけると感じたので、西村会長に顧問をお願いすることにしました。月次決算や事業承継のサポート、当社への提案活動がしっかりしており、「変えてよかった」と心から思っています。

──23年に『FX2』から『FX2クラウド』に移行したとお聞きしています。経緯について教えてください。

名嘉真和己税理士(巡回監査担当) 月次巡回監査では、イレギュラーな取引があった場合などはその確認作業などで想定以上の時間がとられてしまい、監査後の打ち合わせの時間が短くなってしまうという悩みがありました。クラウド化すれば、事務所のパソコンから証憑などを確認できるので、監査の事前準備やイレギュラー対応が容易になり、打ち合わせの時間をより有効に使うことができます。また、社内の特定のパソコンだけでなく、社長自身のパソコンからリアルタイムで会計情報を確認できるようになるので、経営判断に生かせる点も大きなメリットです。こうした理由から、クラウド化を提案しました。

──クラウド化が経理業務の効率化にどのように貢献しましたか。

西村直人税理士 『FX2クラウド』に移行後ほどなくして同システムの販売管理機能も活用していただけるようになり、請求書の発行をデジタル(ペポル)インボイスの送信に切り替えたことが、経理業務の効率化に相当なインパクトをもたらしたと思います。日頃から当事務所からさまざまなご提案をさせていただいているのですが、常に前向きに検討していただける大城社長の姿勢は本当にありがたく思っています。

西村直人税理士

西村直人税理士

──それまで販売管理はどのようにされていたのですか。

大城社長 以前は他社の販売管理システムを使っていましたが、契約更新で1,000万円以上の高額な費用が必要になることが分かり、見直しを検討しました。旧システムは高機能でしたが、当社では十分に使いこなせておらず、費用対効果に疑問がありました。そのことを名嘉真先生に相談したところ、『FX2クラウド』に販売管理機能が搭載されていることを教えていただきました。導入コストを抑えつつ会計システムとの連携で入力作業やミスの削減につながること、デジタルインボイスの送受信に対応している点などに魅力を感じ、切り替えを決断しました。

2.デジタルインボイス導入で請求書発行業務は1日で完了

──以前からデジタルインボイスには関心があったそうですね。

大城香織専務 ここ数年、取引先から届く請求書が徐々にデジタル化されてきたほか、「ペポルに対応できますか」などの問い合わせも出始めていたことから、当社でもいつかは導入したいという思いを持っていました。さらに、請求書を印刷する紙の価格や切手の値上がりなどコスト面の負担が重くなってきたことも決断の後押しになりました。

──切り替えはどのように進めましたか。

大城専務 2~3カ月をかけて準備をしました。従来の紙の請求書に案内文を同封し、メールアドレスと法人番号の収集を進めながら徐々に移行しました。その結果、約9割の取引先がデジタルインボイスに対応してくれています。業務効率は大きく改善し、以前は月末から月初にかけて2~3日かかっていた請求書発行作業が、現在では1日で完了するようになりました。おかげで自社サイトでの通信販売やSNSでの情報発信によりリソースを割けるようになっています。

──『FX2クラウド』をどのように業績管理に活用していますか。

大城社長 ほぼ毎日自分のパソコンで《365日変動損益計算書》を確認しています。やはり一番気になるのは売上高の前年同月比較で、大きく数字が減っていた場合には必ずすぐに原因を突き止めるようにしています。過去には、例年同じ時期に販売していたあるスーパーの担当者がたまたま注文を失念しており、電話1本で注文を取り付け、失注を回避したこともあります。

──今後の展望について教えてください。

大城社長 県外の取引先との関係をさらに強化するため、一定の売上規模に達した段階で、沖縄県外に営業所を設けたいと考えています。一方県内では「ジャングリア沖縄」がオープンするなど観光需要が高まっています。人材や設備への投資を通じお土産向け商品開発にさらに力を入れ、売上高を現在の5倍、10倍と伸ばしていきたいと考えています。

コンサルタントの眼
会長・税理士 西村眞一
葵税理士法人 沖縄県那覇市長田2-26-7
https://aoi.tkcnf.com

西村直人税理士

 ケンコーフーズさまの素晴らしいところは、なんといっても大城家の結束力が強いことです。また皆さんの前向きな姿勢にもいつも感銘を受けています。事業承継のお手伝いもさせていただいていますが、大城社長は大城会長の思いをしっかりと引き継ぎ、力強く事業を進められています。《365日変動損益計算書》を常にチェックするなどTKCシステムも活用していただいており、自社の強みを把握しながら経営判断に生かしている点は、まさに「会計で会社を強くする」という私たちの理念を体現している企業といえるでしょう。私も黒糖を使った同社の商品は大好きで、その魅力がもっと広く届いてほしい、沖縄から全国へ、そして世界へと羽ばたいてほしいと願っています。これからも全力でサポートしていく所存です。

(協力・葵税理士法人/本誌・植松啓介)

会社概要
名称 有限会社ケンコーフーズ
業種 黒糖、豆菓子製造販売業
創業 1982年7月
所在地 沖縄県糸満市西崎町5-5-11
従業員数 27名(2025年10月時点)
URL https://kenko-foods.jp

掲載:『戦略経営者』2025年12月号

年商50億円を目指す企業の情報誌 戦略経営者

記事提供

戦略経営者

 『戦略経営者』は、中堅・中小企業の経営者の皆さまの戦略思考と経営マインドを鼓舞し、応援する経営情報誌です。
 「TKC全国会」に加盟する税理士・公認会計士の関与先企業の経営者を読者対象に、1986年9月に創刊されました。
 発行部数13万超(2025年9月現在)。TKC会計人が現場で行う経営助言のノウハウをベースに、独自の切り口と徹底した取材で、真に有用な情報だけを厳選して提供しています。