2026年01月20日

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収益性分析~もうける力はありますか?~

収益性分析~もうける力はありますか?~

💡この記事のポイント
 ☑企業の「もうける力」を判断するのが「収益性分析」
 ☑総合的な収益性は「総資本経常利益率」で判断する
 ☑「総資本経常利益率」は、総資本回転率と売上高経常利益率に分解することができる
 ☑「総資本回転率」は、投下された資本が売上として何回回収されたかを示す比率
 ☑「売上高経常利益率」は、売上高に占める経常利益の割合
 ☑収益性を高めるには、総資本回転率と売上高経常利益率を高める必要がある
 ☑「総資本回転率」の向上には、貸借対照表の見直しによる「資産効率の改善」が必要
 ☑「売上高経常利益率」の向上には、損益計算書の見直しによる「収益構造の改善」が必要

1.はじめに

 昨今の厳しい経営環境の中で、企業が安定的に存続し、さらに成長していくためには、「自社がどれだけ利益を生み出しているのか」「その利益構造は健全で持続的なのか」を正しく把握することが欠かせません。そのための基本となるのが収益性分析です。
 「売上は伸びているのに利益が残らない」「忙しいのに資金が増えていかない」といった悩みは、多くの中小企業経営者に共通するものです。しかし、その原因は売上総利益率(粗利率)や限界利益率、固定費などの数字から読み解くことができます。数字は「会計の専門家だけが扱うもの」ではありません。経営者にも「数字を経営に生かす姿勢」が必要です。
 本記事では、収益性分析の考え方と実務への活用法をわかりやすく解説します。より強い会社づくりに役立てていただければ幸いです。

2.収益性はどう判断する?

(1) どちらのほうが、もうかっている?

 企業がどれだけ効率よく利益を生み出しているか――すなわち「もうける力」を判断するのが「収益性分析」です。
 収益性分析について詳しく学ぶ前に、まずは次のクイズに挑戦してみましょう。

クイズ:どちらのほうが、もうかっているの?

収益性分析のクイズの画像

 この質問をすると、A社とB社の支持は半々に分かれます。
 A社派(A社のほうが、もうかっていると回答する人)の考え方は次のとおりです。

利益率重視のA社派の考え方を示した画像

 上の場合の利益率は「売上高経常利益率」(経常利益÷売上高)のことで、B社は1.5%であるのに対して、A社は3%と上回っています。
 つまり、A社のほうが「利益率」が高い=A社のほうが、もうかっているという考え方です。

 一方、B社派(B社のほうが、もうかっていると回答する人)の考え方は次のとおりです。

利回り重視のB社派の考え方を示した画像

 上の表は、投資家としての考え方を示しています。よく不動産投資を判断する際に「この物件の利回りは年何%」という話題になりますが、その考え方と同じです。B社の社長に1,000万円出資したら年150万円(15%)稼ぐのに対し、A社は60万円(6%)です。
 つまり、B社のほうが「利回り」が良い=だからB社の収益性のほうが高い、という考え方です。この指標(経常利益÷総資本)を「総資本経常利益率」といいます。

 結論として、「A社とB社、どちらの収益性が高いでしょうか?」というクイズの正解はB社になります。総合的な収益性は「総資本経常利益率」で判断するからです。すなわち、このクイズでは総資本経常利益率の高いB社のほうが「総合的には収益性が高い」と判断するのです。一方、A社派が重視していた「売上高経常利益率」は、「総資本経常利益率」を構成する指標の一部です。
 続いて「総資本経常利益率」について、より詳しく確認していきましょう。

(2) 収益性は「回転率」と「利益率」の2つの側面に分けられる

 企業全体としての総合力を判断するためには、より広い視点が必要になります。その中心となる指標が「総資本経常利益率」です。
 総資本経常利益率とは「会社が保有するすべての資産を使って、どれだけの経常利益を稼いでいるか」を示す指標です。この指標が高いほど「持っている資産をうまく活用し、効率的に利益を生み出している会社」と評価できます。逆に低い場合は、「売上に比べて資産が多すぎる」「利益率が低い」「在庫や売掛金が滞留している」など、何らかの改善ポイントが潜んでいるといえます。
 中小企業の経営者こそ「総資本経常利益率」を意識することが重要です。なぜなら、限られた資金や設備をいかに有効に使えるかが、会社の安定性と成長性を大きく左右するからです。総資本経常利益率を定期的に確認し、改善の方向性をつかむことで、より強い企業体質を築くことができます。
 「総資本経常利益率」は、次の式のように、総資本回転率と売上高経常利益率に分解することができ、この2つの側面から収益性の高さ・低さを原因追究できます。

総資本経常利益率の算式の画像

 続いて、総資本経常利益率を構成する「総資本回転率」と「売上高経常利益率」について確認していきましょう。

(3) 総資本回転率とは

「総資本回転率」は、投下された資本が売上として何回回収されたかを示す比率です。言い換えると、企業が保有する資産を使って1年間に何回分の売上を生み出したのかを示す「資産効率」のものさしです。この数値が高ければ高いほど、限られた資産を効果的に活用して事業を展開していると評価できます。例えば、同じ売上高であっても、保有資産が少なければ総資本回転率は高くなり、ムダの少ない経営が行われていることを意味します。
 一方で総資本回転率が低い場合、企業の資産が効率的に使われていない可能性があります。たとえば、過大な設備投資による「遊休資産(使用されていない資産)」がないか、販売につながらない「滞留在庫」が増えていないか、回収できていない売掛金が積み上がっていないかといった、資産のムダや滞留が疑われます。こうした原因を探るためには、「有形固定資産回転率」「棚卸資産回転率」「売上債権回転率」など、総資本を構成する個別の回転率をさらに細かく分析し、どの資産に問題があるのかを見極める必要があります。
 総資本回転率は、経営者が自社の資産の使い方を見直し、投資・在庫・売掛金などのバランスを最適化するための重要な指標です。改善が進めば、資産効率が高まり、総資本経常利益率の向上にも直結します。

(4) 売上高経常利益率とは

「売上高経常利益率」は、売上高に占める経常利益の割合であり、この値が高いほど事業活動が効率的であると判断されます。単に売上が増えているだけでは健全とはいえず、売上に見合った利益が残っているかどうかを判断するための指標です。
 一方、この比率が低い場合は、どこかに利益を圧迫している要因が存在します。その原因を探るためには、より詳細な指標に分解して分析する必要があります。利益率の分析を深めるうえで欠かせない指標のひとつが「限界利益」です。限界利益とは、売上から変動費(仕入や外注費、材料費など、売上に比例して増減する費用)を差し引いた金額のことで、企業の収益構造を理解するうえで非常に重要です。たとえば、粗利率が高く見えても変動費の中に外注加工費や材料ロスなどが潜んでいると、実際には利益が積み上がらない場合があります。そのため、売上高経常利益率の改善を図る際には、「粗利だけでなく限界利益を見る」ことが本質的な分析につながります。

3.収益性を高めるための基本的な方策

 前述のように、総資本経常利益率は、総資本回転率と売上高経常利益率の2つの側面から成り立っていますから、収益性を高めるためには、その両方を向上させる方策が必要となります。具体的な方策を確認していきましょう。

(1) 総資本回転率の向上で、資産を「眠らせない」経営へ

 総資本回転率を高めることは、総資本を圧縮して、資産の一つひとつを「働く資産」に変えていく取り組みです。貸借対照表の定期的な見直しと、遊休資産・不良在庫・滞留債権などの整理を進めることで、会社の資産効率は確実に改善します。

①貸借対照表の見直しで「眠っている資産」を洗い出す
  総資本回転率を改善する第一歩は、貸借対照表の確認と見直しです。資産科目に長期間動きのないものがないか、貸借対照表に載っている「帳簿上の資産」と「実際の資産(実態)」が乖離していないかを確認するだけでも、改善のヒントが見えてきます。貸借対照表を「過去の記録」ではなく「経営改善のツール」として見直すことが重要です。

②遊休資産の整理(使われていない設備・土地の見直し)
  使われていない機械設備、稼働していない車両、将来使う予定のない土地などのいわゆる「遊休資産」は利益を生まないまま総資本を押し上げ、回転率を低下させます。売却・賃貸・廃棄を検討し、資産のスリム化を進めることが効果的です。遊休資産の整理は、資金の捻出にもつながるため資金繰り改善にも寄与します。

③不良在庫の処分で棚卸資産を適正化する
  不良在庫や過剰在庫が積み上がると、総資本が増える一方で売上につながらず、回転率を大きく悪化させます。
  ・低回転在庫の特定
  ・セール、処分、仕入方針の見直し
  ・適正在庫水準の設定
など、棚卸資産の適正化は総資本回転率向上に直結します。

④仮払金・貸付金などの整理・回収状況のチェック
  仮払金や立替金、役員・関連会社への貸付金などは、放置されやすい科目です。しかし、これらは売上を生まない滞留資産であり、総資本を押し上げる要因となります。
  ・未精算仮払金の精算
  ・返済が滞る貸付金の回収方針の明確化
  ・不要な貸付金の発生防止のためのルールづくり
といった整理が必要です。

 これらの取り組みは、収益性向上と資金繰り改善にも大きな効果をもたらすため、強い財務体質の構築に欠かせないステップといえるでしょう。

ステップを進めていく様子のイメージ画像

(2) 売上高経常利益率の向上で、収益性を高める経営基盤を築く

 前述したように、売上高経常利益率は「売上に対してどれだけ経常利益を生み出せているか」を示す指標です。企業の収益構造を端的に示すため、改善すれば資金繰りの安定にも直結します。では、この指標を高めるために何をすべきでしょうか。ポイントは「損益計算書(および変動損益計算書)の見直し」を起点に、「限界利益率の向上(変動費率の低下)」と「固定費削減」を組み合わせて収益構造を改善することです。

①損益計算書と変動損益計算書の見直しで「利益が出ない理由」を特定する
  まず行うべきは、通常の損益計算書と、費用を変動費・固定費に区分した変動損益計算書の構造を丁寧に見直し、利益を圧迫している要因を明確にすることです。

  【通常の損益計算書で確認するポイント】
  ・売上総利益率(粗利率)は低下していないか
  ・販売費および一般管理費の水準や比率は適正か
  ・営業利益がどの段階で圧迫されているか

  【変動損益計算書で確認するポイント】
  ・売上に対する変動費の比率は適正か
  ・固定費の水準が利益を圧迫していないか
  ・新規取引先や新商品が限界利益(粗利)や利益にきちんと貢献しているか
  損益計算書に加えて、変動損益計算書などの管理会計の視点も取り入れることで、利益改善のポイントを見つけましょう。

②限界利益率の向上(変動費率の低下)で利益体質を強くする
  売上高経常利益率の改善には、限界利益率の向上が欠かせません。限界利益率が上がれば、同じ売上でも利益として残る金額が増えるため、経常利益率の改善に直結します。限界利益率を高めるポイントは次のとおりです。
  ・仕入価格の見直し・交渉
  ・外注加工費の適正化
  ・作業効率の改善による材料ロスの削減
  ・利益率の低い商品の見直し(値上げ・廃止)
  変動費率の低下は「ムリなく利益を上げるための最も効果的な手段」のひとつといえるでしょう。

③固定費削減で利益を確実に残す体質をつくる
  限界利益が十分に確保できても、固定費が膨らめば利益は残りません。固定費の見直しは企業の収益改善に大きな効果を持ちます。固定費削減のために、以下のようなポイントを見直しましょう。
  ・人件費:生産性向上、配置の最適化
  ・賃借料:使われていないスペースや設備の縮小
  ・通信費やリース料:契約内容の見直し
  ・保険料:重複契約の整理
  ・交際費や広告費:費用対効果の検証
  なお、固定費削減の際には、短期的な削減だけに偏らない(「削ること」だけを目的にしない)ように注意しましょう。現場の意見を聞き、作業効率やサービス品質の低下など支障が出ないように調整を図り、継続的な見直しで「適正な固定費水準」を保つことが必要です。

(3) 収益性向上を実現するための仕組みづくり

 収益性の向上を着実に進めるためには、単発の分析にとどまらず、日々の経営管理に指標を組み込む仕組みづくりが欠かせません。たとえば、月次決算を翌月10日以内(できれば翌月1週間以内)に作成するだけでも、経営判断のスピードは大きく向上します。また、総資本回転率・粗利率・変動費率など主要指標を毎月モニタリングし、前年や計画値と比較することで、改善すべきポイントが自然と浮かび上がってきます。
 さらに、部門別の採算管理を導入すると、部門ごとの利益貢献度が明確になり、限られた経営資源をどこに重点配分すべきか判断しやすくなります。
 経営者だけで指標管理を行うのではなく、現場の責任者も含めて指標を共有し、組織全体で収益改善に取り組む体制を整えることが重要です。数字の見方でわからない部分があれば、税理士に相談しましょう。税理士の伴走支援を受けながら定期的にPDCAを回すことで、収益性の改善と向上を図ることができます。

4.まとめ

 財務指標は、企業の業績や財務状況を数字で客観的に把握するための指標です。数字そのものに正解・不正解があるわけではなく、そこから何を読み取り、どのような行動につなげるかが、経営の質を大きく左右します。本記事で紹介した収益性分析も例外ではありません。総資本回転率や売上高経常利益率を確認することで、普段の業務だけでは見えにくい、経営のクセや改善のヒントが浮かび上がってきます。
 経営は日々の意思決定の積み重ねです。小さな判断の違いが、数カ月後・数年後の財務状態に表れます。「数字を見ること」は、未来の選択肢を広げるための確かな道具です。分析を習慣にすることで、資産の使い方、費用のかけ方、売上のつくり方など、会社全体の動きがよりクリアに見えるようになります。
 また、収益性の改善は大きな投資を必要としません。部門別の採算確認、在庫や資産の棚卸し、利益率の見直しなど、今日から始められる取り組みが多くあります。大切なのは、一度だけ分析して終わりにするのではなく、継続して見直すことです。継続こそが、企業体質を強くし、安定した成長につながるでしょう。

参考文献

・『わかる財務分析 できる経営助言 第3版』(TKC出版)

株式会社TKC出版

記事提供

株式会社TKC出版

 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
 税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。

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