2026年01月13日

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貸借対照表をブラッシュアップして企業の健全経営につなげよう!

貸借対照表をブラッシュアップして企業の健全経営につなげよう!

💡この記事のポイント
 ☑貸借対照表は「ある時点の会社の財政状態」を表す決算書類。その特徴は、「どのような資産を保有し、それをどのように調達したのか」を表していること。
 ☑貸借対照表をしっかりと確認・分析することで、会社の財政状態が健康的かどうかを判断することができる。特に、注目したい指標は自己資本比率。この指標が高い場合、返済不要な資金の割合が高いことを指しているため、長期的に見て財務面での安全性は高いといえる。
 ☑貸借対照表は企業の事業内容や業種によってその特徴が変わる。業種別の貸借対照表の特徴を理解する。

1.貸借対照表(B/S)とは何か?

 「貸借対照表(Balance Sheet:B/S)」とは、企業の財政状態を一覧で示す決算書類の1つです。同じく財務三表に分類される「損益計算書(Profit and Loss statement:P/L)」や「キャッシュ・フロー計算書(Cash Flow statement:C/F)」とは異なり、「どのような資産を保有し、それをどのように調達したのか」を表しているのが特徴です。
 貸借対照表は一般的に以下のような構造で示されます。

貸借対照表

 「借方」と「貸方」の合計額は必ず一致します。これが「バランスシート」(Balance Sheet)と呼ばれるゆえんでもあります。

(1) 「借方」(資産)は資金がどのように使われたのかを表す

 借方には会社が保有する資産が記載されます。資産はさらに次の2つに分類されます。

①流動資産

 主に1年以内に現金化される資産となります。「現金預金」「売掛金」「棚卸資産」「短期貸付金」などがあります。

②固定資産

 主に1年以上保有する資産のことです。「建物・機械装置等の減価償却資産」「土地」「長期貸付金」「投資その他の資産」などがあります。

 このように見ていくと、「資産」では、「企業が調達した資金を何に使ったか」を表しています。

(2) 「貸方」(負債・純資産)は資金をどこから調達したのかを表す

 貸方は、端的にいうと「資金をどう集めたのか」を示す部分で、次のように構成されています。

①流動負債

 主に1年以内に返済・支払期限が到来する負債のことで、「買掛金」「短期借入金」「未払金」などがあります。

②固定負債

 主に返済まで1年以上かかる負債のことで、「長期借入金」「リース債務」などがあります。

③「純資産」(自己資本)

 返済不要の自己資本のことです。「資本金」「利益剰余金」などがあります。

 このように見ていくと、貸借対照表は「資金の使途」と「資金の調達源泉」の両面から財政状態を明確に示しているということになります。

2.業種ごとの貸借対照表の特徴

業種ごとの貸借対照表の特徴

 ここまでは貸借対照表の概要についてご説明させていただきました。ここで押さえてほしいのは、企業の事業内容や業種によって、貸借対照表の特徴は大きく変わるということです。本項では、業種別に見ると貸借対照表はどのような特徴があるのかを整理していきます。

(1) 製造業

製造業の貸借対照表

 ・資産:流動資産である製品、仕掛品、原材料などの棚卸資産の割合が高くなる傾向にあります。固定資産の割合も設備投資が多いため高くなる傾向にあります。
 ・負債:設備投資のための借入金や、運転資金のための短期借入金が多い傾向にあります。

(2) 建設業

建設業の貸借対照表

 ・資産:固定資産である建設仮勘定(※1)や流動資産である仮払金(※2)の割合が高い傾向にあります。
 ・負債:借入金や未払金が多い傾向にあります。

※1 建設仮勘定…企業が建物などの有形固定資産を自社で建設したり、外部に発注して建設したりする場合に、その完成・引渡し前に支払った金額や発生した費用を一時的に計上する勘定科目のこと。
※2 仮払金…用途が未確定ななか、一時的に支払われる金銭のこと。

(3) 小売業

小売業の貸借対照表

 ・資産:現金や売掛金、棚卸資産(商品)が多い傾向にあります。
 ・負債:買掛金や短期借入金が多い傾向にあります。

(4) サービス業

サービス業の貸借対照表

 ・資産:現金や売掛金の割合が高く、固定資産の割合は低い傾向にあります。
 ・負債:借入金は比較的少ない傾向にあります。

(5) 不動産業

不動産業の貸借対照表

 ・資産:不動産(土地、建物)の割合が非常に高い傾向にあります。
 ・負債:不動産取得のための借入金が多い傾向にあります。

3.“健康”な貸借対照表の見分け方と主要財務指標

“健康”な貸借対照表の見分け方と主要財務指標

(1) 健康な財務状態とは?

 貸借対照表をしっかりと確認・分析することで、企業の財政状態が健康かどうかを判断することができます。

 例えば、現金預金が潤沢であり、不良債権や不良在庫、不要な機械設備などが少なく、自己資本(純資産)が大きい場合は、健康的な財政状態といえます。この状態を維持し続けている企業は、黒字経営を継続しつつ、日常の売掛金や在庫の管理が徹底しており、不要な資産の処分損(資産を廃棄したとき等に帳簿価額より少なくしか売れなかった損失のこと)を利益でカバーする(利益を減らして損失分を補う)ことができているといえるでしょう。


健康な貸借対照表

 流動資産と自己資本のバランスがいいと、短期的な支払能力が高い状態でありつつ、長期的な安定性も維持された健康的な貸借対照表といえます。


 一方で、赤字が続いていたり、過度な節税などによって利益を出さないようにしている企業においては、不良債権や不良在庫、不要な機械設備などの資産を処分できておらず、新たな借入れすらも難しい状態に陥っているといえます。また、自己資本(純資産)が少なく、会社の自己資本比率(会社の総資産のうち返済義務のない純資産の割合)が低い場合は、返済不要な自己資本の割合も低くなってしまっているため、健全な財務状態とはいえません。このような場合、まずは利益をもとに不良債権などを整理する方針を立て、実行に移していく経営姿勢が求められます。

不健全な貸借対照表

 流動負債が大きく自己資本が小さいと、短期の支払義務が多くあり、かつ返済不要の資金が少ないため、財務の安定性が低い状態であることから、バランスが悪い財務状態です。

(2) 主な財務分析指標

 貸借対照表の数字を分析することで、財務面から経営の安全性等を確認することができます。本節では主な分析指標をご紹介します。

①流動比率(短期的な安全性)

流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

 流動比率は、1年以内に「現金として入ってくる流動資産」が「現金として出ていく流動負債」に対して、どの程度の割合かを表す比率のことです。
 流動比率が高いほど、短期的な支払能力に余力があることを示しているため、短期的な安全性が高い状態であるといえます。目安として120%が安全圏、100%を下回ると支払能力に懸念を抱く必要があります。


②自己資本比率(長期的な安全性)

自己資本比率(%) = 純資産 ÷ (負債+純資産) × 100

 自己資本比率が高い場合、返済不要な資金の割合が高いことを示しています。つまり、長期的に見て財務面での安全性は高いといえます。業種や会社規模等によって安全性の高い自己資本比率の目安は異なりますが、一般的には、安定圏として見られることの多い30%を超えると経営が安全であるといえます。一方、20%を下回ると危険水域と判断されています。


③固定比率(固定資産と自己資本のバランス)

固定比率(%) = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100

 固定比率が低いほど、固定資産の購入時に返済不要な自己資本が使われている割合が高いことを表しているため、財務面での安全性が高いといえます。100%以下が理想的、100%を超えると安全性が低いと判断されます。


④借入金依存度

借入金依存度(%) = 有利子負債 ÷ 総資本 × 100

 企業の借入金が総資本に対してどれだけの割合を占めているかを示す指標のことです。借入金依存度が高いと、企業の負債が増加し、返済リスクや資金繰りの安定性に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。なお、ここでいう有利子負債とは、短期借入金や長期借入金、社債などの、利息を支払う義務のある負債のことで、企業が資金調達のために借り入れた返済義務があるものを指します。50~60%までが許容範囲といわれており、60%を超えると要注意とされています。


⑤固定長期適合率

固定長期適合率(%) = 固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債) × 100

 固定長期適合率とは、固定資産が長期の資本である自己資本と固定負債でどの程度賄われているかを表した割合のことです。前述した固定比率と同じように、固定長期適合率が低いほど、財務面での安全性は高いとされています。一般的に、固定資産は長期的に使用されるケースが多いため、短期資金ではなく、長期資金で賄うことが望ましく、この固定長期適合率は、企業の長期的な安定性を測る指標として活用されます。100%未満であれば健全な状態といえ、100%を超えると要注意とされています。

4.重要7科目で貸借対照表をブラッシュアップ!

ブラッシュアップ

 企業の将来を見据え、貸借対照表をブラッシュアップする際、特に重要な科目があります。ここではそれを確認しましょう。

(1) 7つのチェックポイント

 ①不良債権
 売掛金のなかに長期滞留債権がある場合、取引先側の問題のケースもありますが、自社の商品やサービスに欠陥があり、それが回収できない原因となっていることも考えられます。この場合は、すぐに対応して取引先の信頼回復・獲得につなげましょう。取引先側の事情で債権が滞留している場合は、分割払い等の提案や督促を行い、早期の回収に努めることが重要です。

 ②不良在庫
 動きの悪い在庫(製品・商品・材料)がある場合、在庫一掃セールなどで資金化したり、廃棄処分を含めた整理を検討したりすることが大切です。

 ③貸付金・仮払金等
 貸付金・仮払金等が数期にわたって計上されていた場合は、会社の大切な資金が外部に流出してしまっていることを示しています。計画性を持って、これらの金額を減らしていく必要があります。

 ④投資等
 会社の本来の事業と関連のない投資等が含まれている場合で、それらの資産が帳簿価額以上で売却できれば特段問題はありません。しかし、売却損が見込まれたり、資産価値がなかったりする場合には、早い段階での整理を検討することが重要です。

 ⑤借入金
 借入金の月々の返済原資は、「当期利益+減価償却費」です。この金額が1年間に返済する元本の金額と見合っているかどうかをしっかり確認しておきましょう。

 ⑥隠れ債務の有無
 1)退職金の引当
 従業員の退職金は十分に準備できているでしょうか。退職金規程の有無にかかわらず過去の支給実績がある場合、または、特にM&A(合併や買収)による譲渡を考える場合は、「退職給付引当が必要」と判断されることがあります。

 2)潜在的な未払金
 潜在的な未払金の有無を確認しておきましょう。適正な労務管理に基づいた残業手当を含めた給与がきちんと支給されているかどうか、税金や社会保険料の未納がないかどうか、リース債務の有無などを再確認しておくことが必要です。

 3)連帯保証
 取引先や個人の借入に対して会社が債務保証をしていないでしょうか。債務保証は、保証先の債務が完済されるまで継続することになるので厳に慎まなければなりません。注意しましょう。

 ⑦自己資本
 自己資本比率は、一般的に安全圏と見られることの多い30%超えを目指しましょう。利益の積み重ねが自己資本の充実につながります。

【出典】『事務所通信』2024年8月号を基に作成

(2) 貸借対照表をブラッシュアップすべき理由

 経営者が引退を考える場合、次のいずれかの選択肢を取ることになります。
①事業承継を行う
②M&Aで会社を譲渡する
③廃業する
 しかし、貸借対照表が乱れていると次のような問題が発生する可能性があります。
①次世代に事業承継する場合:借入金の多さに、後継者(候補)が承継をためらってしまうかもしれない。
②M&Aの場合:買収を希望する会社が現れない、もしくは譲渡金額が引き下げられてしまうかもしれない。
③廃業する場合:借入金やリース債務を完済していないと、廃業まで時間がかかることになるかもしれない。

 いざというときに上記のような問題が起きないよう、早いうちから財務状態を健全化、いわゆる貸借対照表を磨き上げて、将来の選択肢を確保しておく必要があります。経営における将来の選択肢を数多く確保するためにも、今のうちから貸借対照表の「ブラッシュアップ」が必要です。自社の財務状態に課題がある場合は、早急に課題解決に着手しましょう。

5.まとめ

 これまで解説したように、貸借対照表は経営者の顔とも呼ばれる、重要な決算書類の1つです。貸借対照表を正しく読み解くことができれば会社の健康状態がわかり、より健全な経営を目指す際の指標として活用することができます。
 貸借対照表におけるそれぞれの科目の特性をきちんと理解したうえで、今後の会社としての選択肢を増やしていくことを意識した経営を目指していきましょう。そのうえで、貸借対照表で確認した財務状態をブラッシュアップできれば、将来的に明るい経営につなげることができます。


【参考資料】

・『事務所通信』2024年8月号『「会社の将来のために! 貸借対照表の「磨き上げ」を』
・『事務所通信』2019年12月号「貸借対照表の現状を確認し、健康体を目指そう!」
・『事務所通信』2017年1月号「貸借対照表の変遷」
・『事務所通信』2013年10月号「貸借対照表(バランスシート)で会社の健康状態がわかる」
・厚生労働省「貸借対照表原則|厚生労働省
・中小企業基盤整備機構「貸借対照表の見方と活用について教えてください。 | ビジネスQ&A | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

株式会社TKC出版

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 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
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