左端が富澤経理担当。渡邉顧問税理士の右に寺山晃央税理士、磯﨑秀貴監査担当
「独自の技術力で最高のサービスと最高の喜びを提供する」をモットーに、九州を中心に建築工事業を営むRTS。枝光亨樹(こうき)社長は、増加傾向にある人件費等の動向に気を配りつつ、最新業績をもとにした経営判断の精度を高め、一層の成長を志向している。
1.駆け込み寺的存在として幅広い施工ニーズに対応
──総合建設業を謳われています。
枝光社長 建築部門、プラント部門、電気部門、住宅部門の4部門体制をとっています。主力の建築部門では、大手ゼネコンから受注した鉄骨類の設計、製造、据え付けを中心に、内装、塗装工事を含め幅広く手がけています。
プラント部門については北九州という土地柄、近隣に工場が多く、製鉄所や化学工場でのいわゆる鍛冶仕事をおもに担当しています。売り上げ構成は、建築部門50%、プラント部門30%、電気部門20%という状況です。

枝光亨樹社長
──日ごろ取り組んでいる営業活動を教えてください。
枝光 前職時代に培った経験をもとに営業を行うことも多いですね。RTSを立ち上げる前、福岡県内の建設会社で工事の施工管理を担当し、さまざまな業界の担当者と仕事をする機会がありました。「○○の現場で□□さんと一緒に仕事した経験があります」というような会話をきっかけに「うちはこんな技術を持っています」などとつなげる営業トークをもとに、新規取引先を開拓しています。また、大手ゼネコン出身の取締役の営業活動を通して受注にいたるケースもあります。
──売りは何でしょう?
枝光 「RTSなら困ったときに助けてもらえる」と思われているところでしょうか。取引先から相談された案件は、基本的に断らないようにしています。それと社内の雰囲気ですね。同業他社のトップの方は、リーダーシップの強い印象がありますが、うちはどちらかというとフラットな組織で、和気あいあいと働けるのも売りだと思います。
──創業されて2年になります。
枝光 18歳で建設会社に就職したときから、いつか独立したいと考えていました。2年前に、当社の取締役が当時籍を置いていた会社が倒産する瀬戸際にあり、取引先が困っているとの話を聞き、独立の意思を打ち明けたところ意気投合。前職で身につけた技術を現場で応用してみたいという思いもあり、RTSを創業することになりました。
──いまも現場によく赴かれているとか。
枝光 事故防止対策の確認を兼ね、ほぼ毎日足を運んでいます。従業員とコミュニケーションを図る機会となっているのはもちろん、新たな工事案件の受注につながる場合も少なくありません。例えば、建築工事後に配電盤の設置や塗装を提案するなど、取引先の担当者に日ごろから声がけするようにしています。従業員に対しても、相談されたら断らないよう常々伝えています。
──なかには長期におよぶ現場もあるのでは?
枝光 1日で作業が終わる現場もあれば、創業来手がけている現場もあるなど、工期はまちまちです。現在は北九州市内等、11カ所で作業を行っています。
2.タイムリーな仕訳をもとに外注加工費、人件費を注視
──創業後間もなく渡邉成記税理士と顧問契約を結ばれたとお聞きしました。
枝光 きっかけは知人からの紹介です。渡邉先生と初めて会ったとき「売り上げ5,000万円を達成できたらいいほうだから、つぶれないようにがんばれ」と励まされ、逆に、先生から言われた以上の年商を目指そうと、気持ちが奮い立ったのを覚えています。経営の大変さを今日まで教えてもらい、とても感謝しています。あわせて『FX2クラウド』を紹介され、従来利用していた会計ソフトから移行しました。システムの操作に慣れるにつれ、使い勝手の良さを実感しています。
──具体的には?
枝光 最も変わったのは、《365日変動損益計算書》で最新業績を詳細に把握できるところです。売上高と限界利益など、勘定科目ごとに目標値との差異がひと目でわかるし、原因追究に役立てています。それから経理担当者が入力する際に「証憑保存機能」や「仕訳辞書機能」を活用して、効率化を図ることができました。
──仕訳入力の負担が減ったと。
富澤経理担当 日々の経理業務で仕訳入力する機会がほとんどなくなりました。仕訳ルールの学習機能が備わっている「銀行信販データ受信機能」も活用しているので、入力ミスを防げ、おかげで残業もありません。操作方法で疑問点があるときは、監査担当の磯﨑さんに質問したり、ヘルプデスクサービスの「TKCシステムまいサポート」に問い合わせたりして解決できるのも助かっています。
──システム移行はスムーズに行えましたか。
磯﨑監査担当 富澤さんが簿記の知識をお持ちで、会計ソフトの操作に慣れていたので早期に軌道に乗せることができました。毎月第3週に巡回監査のため訪問し、監査終了後に、税理士の寺山とともに経営会議に参加するという流れが定着しています。
──特に注目している勘定科目や業績指標を教えてください。
枝光 費用科目のうち高いウエートを占める、外注加工費の推移を注視しています。加えて、近年上昇傾向にある人件費も労働分配率の目安である65%を念頭に置きながら確認しています。うちは少数精鋭で回している分、同規模の同業他社と比べて給与額は比較的いいほう。ただ、受注見込みが計画を上回りそうなときは、人材採用の必要性など、渡邉会計事務所の皆さんに親身に相談に乗ってもらっています。

ビルの外壁補修や、自社工場での鉄骨類の製作(右)、据え付けなど業域の広さが特徴
3.最新業績と打ち手を月例の経営会議で共有
──経営会議で話し合われる内容は?
枝光 設備投資や人材採用、金融機関からの資金調達等、将来の計画を議論することが多いですね。まず《365日変動損益計算書》をもとに、直近の業績と次月以降の受注見込みを確認。期首に経営計画を立てているので、業績の進捗を目標値と比較し、下回っていれば打ち手を話し合います。目標値だけでなく、同業他社の数値と対比できるのも便利です。前職で予算管理を担当していたこともあって、経営数値を見るのがもともと好きなのかもしれません。
寺山税理士 枝光社長ご自身、業績分析に熱心で、出張先でもパソコンで業績を確認されるほどです。新たな領域への進出等急ピッチで成長されているため、若干ブレーキをかけている面もあります。
──社内外に業績を定期的に報告されているそうですね。
枝光 設立記念日である8月10日に全従業員を集めて、前期の売上高と経常利益を説明するほか、給与の予定額も伝えています。さらに、取引金融機関2行にも「TKCモニタリング情報サービス」を用いて、決算書データを送信しています。
──創業1期目に黒字を達成されたと聞きました。黒字経営に向け心がけている点は?
枝光 一番気をつけているのは、仕事を切れ目なく獲得しつづけることです。外注スタッフに作業を依頼する現場も多く、従業員や外注スタッフをつなぎとめておく上でも、売り上げを右肩上がりで伸ばすのを現在は優先しています。
渡邉顧問税理士 枝光社長は、困っている人の役に立ちたいという思いから事業の拡大を図られています。寺山、磯﨑ともども計数管理面からRTSさまの発展を今後も支援できれば本望です。

渡邉成記顧問税理士
──構想をお聞かせください。
枝光 地元の取引先はある程度確保できているため、次の目標として商圏の拡大を目指しています。これまで仙台市や鹿嶋市などの現場に携わってきた経験を生かし、首都圏や関西圏に手を広げていきたいです。また、計画をブラッシュアップする必要がありますが、不動産事業への進出も検討しています。
(取材協力・渡邉成記税理士事務所/本誌・小林淳一)
名称 | RTS株式会社 |
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業種 | 建築工事業 |
設立 | 2023年8月 |
所在地 | 福岡県北九州市小倉北区浅野3-8-1AIMビル814号 |
売上高 | 4億円 |
従業員数 | 12名 |
URL | https://www.rts-corp.co.jp |
顧問税理士 |
渡邉成記税理士事務所
顧問税理士 渡邉成記 福岡県北九州市八幡東区中央2-24-5 芳賀ビル2F(別館201号室) URL: https://watanabe115.tkcnf.com |
掲載:『戦略経営者』2025年10月号

記事提供
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