2025年04月28日

令和7年4月スタート! 改正育児・介護休業法のポイント

令和7年4月スタート! 改正育児・介護休業法のポイント

💡この記事のポイント
 ☑社員の「仕事と育児の両立」支援が求められる!
 ☑令和7年10月からさらに対応が必要!
 ☑社員の「仕事と介護の両立」も支援する

1.育児・介護休業法の目的

 令和7年(2025年)4月、改正育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)が施行されました。もともと同法は、育児や家族の介護を行っている社員等に対し、事業主がその支援措置を整備することにより、社員等が退職せずに済むようにすること、あるいはそれらの理由で退職した社員等の再就職を目的としています。
 経営者にとって、さまざまな支援措置を整備することは負担に感じるかもしれません。しかし、法令順守の視点はもちろん、働き手不足が深刻化するなか、社員の離職防止あるいは新入社員の採用のためには、育児・介護を支援する職場づくりは不可欠です。
 育児休業に関する改正(令和7年4月1日・10月1日施行)と、介護休業に関する改正(4月1日施行)を解説します。

2.令和7年4月から「育休」のココが変わった!

育休のイメージ図

(1) 「看護」以外の理由でも休暇取得OKに

 従来、小学校就学前の子どもがいる社員の「子の看護休暇」が認められていました。看護に該当するのは、子どもの病気やケガ、予防接種といったものでした。令和7年4月から、これらの理由だけでなく、子どもの入学式等の行事、あるいは感染症にともなう学級閉鎖でも休暇を認める必要が生じています。それにともない、名称も「子の看護等休暇」となっています。
 また、対象となる子どもの範囲も、従来は小学校就学前でしたが、改正後は「小学校3年生修了」までに延長されました。
 ・名称:改正前「子の看護休暇」→改正後「子の看護等休暇」
 ・対象となる子の範囲:改正前「小学校就学の始期に達するまで」
  →改正後「小学校3年生修了までに延長
 ・取得事由:改正前「病気・けが、予防接種・健康診断」
  →改正後「感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式、卒園式を追加
 ・労使協定の締結により除外できる労働者:
  改正前(1)引き続き雇用された期間が6か月未満
     (2)週の所定労働日数が2日以下
  →改正後:(1)を撤廃し(2)のみに
 なお、上記の変更について、就業規則の改定も必要となります。

(2) 小学校就学前まで「残業なし」OKに

 従来は、3歳未満の子どもがいる社員が希望した場合、所定外労働(会社が定める労働時間を超える労働、いわゆる残業)なしで働くことを認める必要がありました。
 4月1日からは、「3歳未満」の要件が「小学校就学前」に変更されました。小学校就学前の子どもがいる社員についても、その社員が希望すれば残業なしの働き方を認めることになります。
 この点についても、就業規則の改定が必要です。

(3) 「テレワーク導入」が努力義務に

 本改正では、令和7年4月1日から、3歳未満の子どもがいる社員で、育児短時間勤務制度を利用していない(=フルタイム)社員について、テレワークを選択できるような措置を講じることが、企業の努力義務となりました。業種・職種等によっては、すぐにはテレワークが難しいという会社もあるので、努力義務にとどめられています。
 また、育児短時間勤務が困難な場合の代替措置として、下記が定められていました。本改正により、4月1日からこれらの代替措置に「テレワーク」が加えられました。
 ・フレックスタイム制度
 ・始業または終業の繰り上げまたは繰り下げる制度(時差出勤)
 ・事業所内保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
 ・テレワーク(新規追加)

子守をしながらテレワークをしている父親

(4) 育児休業の取得状況の公表義務

 従来、常時雇用する従業員数が1,000人超の企業に対して、「育児休業の取得状況の公表が義務づけられていました。本改正により、令和7年4月1日からその対象が「従業員数300人超の企業」に拡大されました。
 また、あわせて改正された「次世代育成支援対策推進法」により、従業員数100人超の企業は、育児休業の取得状況等に係る状況把握・数値目標の設定が義務づけられました。ただし、従業員100人以下の企業は努力義務とされています。
 こうした法改正により、自社が新たに制度の対象となっていないか確認し、もし対象になっている場合はきちんと対応しましょう。

3.令和7年10月までに対応が必要です!

 本改正では、事業者に対し、社員の仕事と育児の両立を支援するためのさまざまな措置の導入を求めています。しかし、特に人員や資金に余裕がない中小企業にとって、こうした措置を整備するためには十分な準備期間が必要です。
 そのため、本改正は段階的に施行されることになっています。令和7年10月1日までに対応が必要な、育児休業関連の3つの改正ポイントについて解説します。

(1) 妊娠・出産の報告を受けたらどうする?

 従来から、社員または社員の配偶者が妊娠していることの報告を受けたら、育児休業制度について社員に説明し、利用するかどうかの意向を確認することになっています。
 令和7年10月からは、育児休業制度の説明に加え、始業・終業の時刻や就業場所等、次の内容についても社員の意向を聴取することが義務化されます。さらに、社員の子どもが3歳になる前にも、同じような意向の聴取が必要となります。
 1.始業および終業の時刻
 2.就業の場所
 3.以下の育児両立支援制度等と、制度を利用できる期間
  ・育児休業
  ・子の看護等休暇
  ・所定外労働の制限の制度
  ・深夜業の制限の制度
  ・育児短時間勤務制度(代替措置を含む) 等
 4.その他、職業生活と家庭生活との両立の支障となる事情の改善に資する就業に関する条件

 なお、会社は自社の状況に応じて、これらの社員の意向に配慮しなければなりません。また意向確認の方法は、面談や書面の交付等により行う必要があります。
 ※上記のほか、子に障害がある場合等で社員が希望するときは、短時間勤務制度や子の看護等休暇等の利用可能期間を延長すること、社員がひとり親家庭の場合、社員が希望すれば子の看護等休暇等の付与日数に配慮することが望ましいとされています。

(2) 仕事と育児の両立を支援する措置を最低2つ導入

 現行の制度では、子どもが3歳になると終わってしまう措置がいくつかあります。そこで、子どもが3歳から小学校就学前の期間も社員が引き続き柔軟な働き方ができるように、会社は令和7年10月1日の施行までに、下記の5つの措置から2つ以上を導入することが義務づけられました。
 ①始業時刻等の変更
 ②テレワーク等(10日以上/月)
 ③保育施設の設置運営等
 ④就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
 ⑤短時間勤務制度
 このうち①~④はフルタイムでの柔軟な働き方を希望する社員に対応したもの、⑤は時短勤務を希望する社員に対応したものです。また、②と④は、原則時間単位で取得可能とする必要があります。そして社員は、会社が導入した2つ以上の措置のうち、1つを選択して利用することになります。
 ③保育施設の設置運営等は、スペース確保や運営費が必要であるため、中小企業にとってハードルが高いと思われます。その一方、⑤育児短時間勤務制度は、現行の制度でも3歳未満の子どもがいる社員がいるならすでに導入しており、その対象年齢を拡大するだけなので、比較的導入しやすいといえるでしょう。
 なお、会社は導入を決めた2つ以上の措置について、その旨を就業規則に明記しなければなりません。

(3) 「テレワーク導入」が努力義務に

 (2)で導入する両立支援措置の対象は、社員の子供が3歳から小学校就学前までとなっています。社員がそのことを知らない可能性もあるので、会社は仕事と育児の両立を可能にする制度を選択・整備したら、対象となる社員の子どもが3歳になるまでの適切な時期に、それらの制度について社員に個別に伝え、どの制度(上記①~⑤のうち選択した制度)を選択するのか意向を確認することが義務づけられました。
 なお、こうした個別周知・意向確認の方法は、面談や書面の交付等により行う必要があります。

4.「介護休業」のココが変わった!

母親の介護をしている娘

(1) 入社間もない社員に対する介護休暇の付与が義務に

 育休と同様、介護についても、仕事と両立するための支援措置が定められています。その1つが介護休暇です。従来の制度では、要介護状態にある家族がいる社員の介護休暇(通算93日まで)について、労使協定を締結することにより「引き続き雇用された期間が6か月未満」「週の所定労働日数2日以下」の社員を除外することができました。
 しかし、今回の改正では「雇用期間6か月未満」の要件が廃止されました。つまり、入社直後の社員でも、必ず介護休暇の求めに応じる必要があります。
 この点も就業規則の改定が必要となります。

(2) 介護休業に関する制度を社員に周知する

 家族に介護が必要であることを社員から知らされた場合、会社はその社員に対して介護休業制度について個別に以下の事項を周知し、意向を確認しなければなりません。なお、これらは社員との面談または書面交付で行わなければなりません。
 1.介護休業制度について
  介護が必要な家族1人について、通算して93日まで、3回を上限として分割して休業できる制度です。介護休業期間中は、一定の要件を満たすことで、雇用保険から休業前の賃金の67%が支給されます(介護休業給付金)。
 2.以下の介護両立支援制度について
  ・介護休暇 ・所定外労働の制限 ・時間外労働の制限 等
 3.介護休業および介護両立支援制度等の申出の申出先について
 4.介護休業給付金について

(3) 仕事と介護の両立のため4つの措置から1つを選択!

 介護が必要な家族を持つ社員が、問題なく仕事と介護を両立できるように、会社は令和7年4月1日から、下記の4つから1つを選び実施することが義務づけられています。
 1.介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
 2.介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
 3.自社の社員の介護休業取得・介護両立支援制度等利用の事例の収集・提供
 4.自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
 なお、育児休業と同様、介護休業についても、社員が仕事と介護を両立するためのテレワーク導入が努力義務となっています。

(4) 社員が40歳になったら両立支援制度の説明を!

 従来、社員が仕事と介護の両立支援制度の存在を知らず、利用できないということもありました。今回の改正で、令和7年4月1日から、社員が介護に直面する前の早い段階で、会社は介護休業制度等に関する以下の事項について、社員に情報提供することが義務づけられました。
 社員への情報提供に漏れがないよう、社員の年齢を一覧できる資料を作成するなど、しっかり準備をしておきましょう。
 1.情報提供期間
  ① 労働者が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度(1年間)
  ② 労働者が40歳に達した日の翌日(誕生日)から1年間のいずれか
  ※民法上、歳をとる日(年齢到達日)は誕生日の前日。
 2.情報提供事項
  ① 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
  ② 介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部等)
  ③ 介護休業給付金に関すること
 3.情報提供の方法
  ① 面談 ② 書面交付 ③ FAX ④ 電子メール等 のいずれか
  ※①の面談はオンライン面談も可能。

(5) 介護休業に関連する制度について

介護、仕事、育児に関する悩みのイメージ図

①介護休業…労働者は、申し出ることにより、要介護状態にある対象家族1人につき通産93日まで、3回を上限として、介護休業を分割して取得することができます。
②介護休暇…要介護状態にある対象家族が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日まで、1日単位または半日単位で取得できます。
③所定労働時間の短縮等の措置…事業主は、❶短時間勤務制度(短日勤務、隔日勤務なども含む)、❷フレックスタイム制度、❸時差出勤制度、❹介護サービスの費用助成のいずれかの措置について、介護休業とは別に、要介護状態にある対象家族1人につき利用開始から3年間で2回以上の利用が可能な措置を講じなければなりません。
④所定外労働の制限…1回の請求につき1月以上1年以内の期間で、所定外労働の制限を請求することができます。請求できる回数に制限はなく、介護終了までの必要なときに利用することが可能です。
⑤時間外労働の制限…1回の請求につき1月以上1年以内の期間で、1か月に24時間、1年に150時間を超える時間外労働の制限を請求することができます。請求できる回数に制限はなく、介護終了までの必要なときに利用することが可能です。
⑥深夜業の制限…1回の請求につき1月以上6月以内の期間で、深夜業(午後10時から午前5時までの労働)の制限を請求することができます。請求できる回数に制限はなく、介護終了までの必要なときに利用することができます。
⑦転勤に関する配慮…事業主は、就業場所の変更を伴う配置の変更を行おうとする場合、その就業場所の変更によって介護が困難になる労働者がいるときは、その労働者の介護の状況に配慮しなければなりません。
⑧不利益取扱いの禁止…事業主は、介護休業などの制度の申出や取得を理由として解雇などの不利益取扱いをしてはなりません。
⑨介護休業等に関するハラスメント防止措置…事業主は、介護休業などの制度の申出や利用に関する言動により、労働者の就業環境が害されることがないよう、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。
⑩介護休業給付金…雇用保険の被保険者が要介護状態にある家族を介護するために介護休業を取得した場合、一定の要件を満たせば、介護休業開始時賃金月額の67%が支給されます。

参考資料

・『事務所通信』改正育児・介護休業法特集
・『企業のための仕事と介護の両立支援ガイド ~従業員の介護離職を防ぐために~』(厚生労働省)

株式会社TKC出版

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