「法定相続情報証明制度」は、法務局へ戸除籍謄本や相続関係一覧図などを提出することで、戸除籍謄本等の代わりとなる認証文付き一覧図の写しを無料で交付してもらえる制度です。これを用いることで、被相続人の預金払い戻しや不動産登記などの相続手続きに必要な書類の枚数を減らすことができ、手間を大幅に軽減できます。利用手順は「必要書類の収集」→「一覧図の作成」→「登記所への申出」の3ステップです。税理士などを代理人に立てて手続きを依頼することも可能です。
💡この記事のポイント
☑本制度を利用しない場合、銀行での預金払い戻しや税務署への相続税申告、法務局での相続登記など、複数の相続手続きを行う都度、「戸除籍謄本等の重く分厚い束」を提出する必要がある。
☑本制度を利用すると、戸除籍謄本等の代わりとなる認証文付き一覧図の写しを、必要部数だけ無料で交付してもらえるため、複数の機関への提出を並行して進めることが可能。
閉じる 開く
- 1.法定相続情報証明制度とは?
- 2.制度を利用する4つのメリット
- (1) 相続手続きの手間を大幅に減らすことができる
- (2) 手数料は「完全無料」
- (3) 登記手続きでの原本添付が省略可能に
- (4) 認証文付き一覧図の写しの再交付が5年間可能
- 3.制度を利用する具体的な3つのステップ
- (1) 必要書類の収集
- (2) 法定相続情報一覧図の作成
- (3) 申出書の記入・登記所へ申出
- 4.よくある質問(Q&A)
- 5.まとめ
1.法定相続情報証明制度とは?
法定相続情報証明制度とは、相続手続きの負担を軽減するため、法務省が創設し、平成29年5月29日から運用を開始している制度です。相続人が登記所(法務局)に対し、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸除籍謄本等や、相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すると、登記官がその内容を確認し、認証文を付した「法定相続情報一覧図の写し」の交付を無料で行います。
(1) 制度を利用せずに進める相続手続きのイメージ
制度を利用しない場合、相続が発生した際に行う、銀行での預金払い戻しや税務署への相続税申告、法務局での相続登記などの相続手続きには、役所で取得した戸除籍謄本等の提出が求められます。被相続人が出生してから死亡するまでに本籍地を変更していれば過去の戸籍を含めて提出が必要であるほか、相続人の戸籍謄本等や住所証明書類などと合わせて書類の束を持ち運ぶことになります。このとき、下の図のように、提出した戸除籍謄本等は多くの場合、返却され、別の手続きで繰り返し用いることが可能です。ただし、手続きによってはすぐに返却されないこともあり、返却されるまで待つか、戸除籍謄本等を複数セット用意する必要があります。
■制度を利用しない場合の相続手続きのイメージ
(法務省民事局資料「法定相続情報証明制度について」を基に作成)
(2) 制度を利用して進める相続手続きのイメージ
法定相続情報証明制度を利用する場合は、各種相続手続きを行う前に、下の図のように、法定相続情報一覧図と戸除籍謄本等を登記所に提出します。ここで発行される「認証文付き一覧図の写し」という証明書1枚が戸除籍謄本等の代わりとして機能するため、戸籍謄本一式を各機関へ持ち回る手間が不要になります。また、必要な枚数分の交付を申請することができるため、複数の手続きの提出書類を準備しやすいという利点もあります。
■制度を利用する場合の相続手続きのイメージ
(法務省民事局資料「法定相続情報証明制度について」を基に作成)
2.制度を利用する4つのメリット
この制度を利用することによる具体的なメリットは、主に以下の4点に整理できます。
法定相続情報証明制度を利用する4つメリット
(1) 相続手続きの手間を大幅に減らすことができる
(2) 手数料は「完全無料」
(3) 登記手続きでの原本添付が省略可能に
(4) 5年間の保管期間内なら再交付が可能
(1) 相続手続きの手間を大幅に減らすことができる
相続手続きは、不動産の登記名義変更、銀行口座の解約・払戻、生命保険金の請求、相続税の申告、年金手続きなど多岐にわたりますが、この制度を利用することで、戸籍謄本一式を各機関へ持ち回る手間が不要になります。また、提出された機関側にとっては、確認する項目がまとまっていることで確認に要する時間が短縮でき、制度を利用しない場合よりも少ない待ち時間が見込めるでしょう。
(2) 手数料は「完全無料」
本制度による法定相続情報一覧図の保管や、認証文付き一覧図の写しの交付には、手数料が一切かかりません。相続手続きに必要な範囲であれば、複数通の交付を求めてもすべて無料です。ただし、市区町村役場で戸除籍謄本等を最初に取得する際の手数料や、郵送申出を行う場合の郵送料は自己負担となります。
(3) 登記手続きでの原本添付が省略可能に
令和6年4月より、法務局での不動産登記申請において、さらに便利な仕組みが導入されています。一覧図の写しの右肩部分には、管理用の「法定相続情報番号」という唯一の番号が印字されます。登記申請を行う際は、登記申請書の添付情報欄にこの「法定相続情報番号」を記載するだけで、一覧図の写し(証明書原本)の添付すらも省略することが可能となっています。
(4) 認証文付き一覧図の写しの再交付が5年間可能
作成した「法定相続情報一覧図」は、登記所において5年間保管されます。相続手続きを進めていく途中で「一覧図の写しがもう1通必要になった」という場合でも、この5年間の保管期間内であれば、無料で再交付を受けることが可能です。ただし、再交付の申出ができるのは当初に保管申出をした「申出人」本人に限られ、他の相続人が請求する場合は委任状が必要となります。
3.制度を利用する具体的な3つのステップ
手続きは、大きく分けて以下の「3つのステップ」で進めます。
(1) 必要書類の収集
まずは、登記所に提出するための必要書類を収集します。なお、①~⑤の原本は、一覧図の写しを交付する際に返却されます。
■必要となる書類およびその取得先
| 書類名 | 取得先 | |
| ① |
被相続人の戸除籍謄本 出生から亡くなるまでの連続したすべての謄本・除籍謄本が必要です。役所の窓口で「出生から死亡まで連続したもの」と伝えて請求します。 |
被相続人の本籍地の市区町村役場 |
| ② |
被相続人の住民票の除票 最後の住所を確認するためのものです(戸籍の附票で代用可)。 |
被相続人の最後の住所地の市区町村役場 |
| ③ |
相続人全員の現在の戸籍謄本または抄本 被相続人が亡くなった日以後の証明日のものが必要です。 |
各相続人の本籍地の市区町村役場 |
| ④ |
申出人の本人確認書類 手続きの代表者となる相続人(申出人)の氏名・住所を確認できる公的書類(運転免許証やマイナンバーカードのコピーに「原本と相違ない」旨を自署・記名押印したもの、または住民票の写し等) |
― |
| ⑤ |
(法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合)各相続人の住民票記載事項証明書(住民票の写し)※ 法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載するかどうかは、相続人の任意によるものです。 ※各相続人の印鑑証明書や戸籍の附票でも代用できます。 |
各相続人の住所地の市区町村役場 |
| ⑥ |
(委任による代理人が申出の手続きをする場合) ⑥-1委任状 ⑥-2(親族が代理する場合)申出人と代理人が親族関係にあることが分かる戸籍謄本(①または③の書類で親族関係がわかる場合は、必要ありません。) ⑥-3(資格者代理人が代理する場合)資格者代理人団体所定の身分証明書の写し等 |
⑥-2について、市区町村役場 |
(2) 法定相続情報一覧図の作成
収集した戸籍情報に基づき、A4サイズの白い紙に「法定相続情報一覧図」を作成します。パソコン(Excel等)での作成はもちろん、判読できれば手書きでも構いません。法務局のウェブサイトには、さまざまな家族構成(「配偶者と子2人」「子のみ」「代襲相続が生じている場合」など)に応じた記入様式と詳細な記載例が多数掲載されており、これらを利用するとスムーズに作成できます。
自分で作成する時間がない場合は、資格者代理人(弁護士、司法書士、税理士、行政書士など)に手続きを依頼することも可能です。
以下の例のような内容を、A4サイズの紙の下部の約5cmの範囲をあけて、記載します。
■法定相続情報一覧図(記載例)
(3) 申出書の記入・登記所へ申出
「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」に必要事項を記入し、書類と一覧図を添えて、以下の地を管轄するいずれかの登記所(法務局)へ提出します。
以下の地を管轄するいずれかの登記所(法務局)へ提出
① 被相続人の本籍地
② 被相続人の最後の住所地
③ 申出人の住所地
④ 被相続人名義の不動産の所在地
直接窓口に持参するほか、郵送による申出や、郵送による写しの交付も可能です(郵送希望時は返信用封筒と郵便切手を同封)。
登記官が提出書類の内容を確認し、不備がなければ「認証文付き法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。認証文付き一覧図の写しは、偽造防止加工された専用紙に、以下のような法定相続情報番号や認証文等が印字されて交付されます。複数枚交付してもらうことも可能です。
□法定相続情報と一緒に印字される認証文等のイメージ
(法務省民事局資料「法定相続情報証明制度について」を基に作成)
4.よくある質問(Q&A)
Q1. 相続人以外の者が申出をすることはできますか?
A1. 申出ができるのは、被相続人の相続人(その相続人の地位を相続により承継した者を含む)に限られます。ただし、代理人に手続きを委任することは可能です。委任できる代理人は、法定代理人のほか、「民法上の親族」または「特定の資格者代理人(税理士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士)」に限定されています。
Q2. 法定相続情報一覧図には相続人の「住所」を載せたほうがよいのでしょうか?
A2. 住所の記載は任意ですが、載せておくことを強く推奨します。記載しておけば、その後の相続登記申請や遺言書情報証明書の交付請求において、各相続人の住民票の写しの提出を省略できるためです。なお、住所を記載する場合は、確認資料として相続人の住民票の写し等の添付が必要になるためご注意ください(3.(1)の表内⑤参照)。
Q3. 続柄は「長男」「長女」でなく「子」と書いてもよいでしょうか?
A3. 子は「子」、配偶者は「配偶者」と記載しても差し支えありません。しかし、「子」とだけ簡略化して記載した場合、相続税の申告手続きにおいて戸籍代替書類として利用できない場合があります。そのため、税務手続き等も見据える場合は、戸籍に記載される正確な続柄(「長男」「長女」など)を記載することが重要です。
Q4. 相続放棄があった場合はどのように書けばよいでしょうか?
A4. 相続放棄した人がいる場合でも、放棄者も民法上の相続人に変わりはないため、一覧図にはその氏名、生年月日、続柄を通常通り記載します。放棄の事実は反映されないため、相続手続き時に、別途「相続放棄申述受理証明書」を提出します。なお、子全員が相続放棄して親などの直系尊属が相続人になった場合、(法定相続情報一覧図には直系尊属の情報を載せられないため)相続手続きに活用することができませんのでご注意ください。
Q5. 廃除や欠格があった場合はどのように書けばよいでしょうか?
A5. 推定相続人の廃除があった場合、廃除によって相続権を失った人は、原則として一覧図には記載しません。相続欠格がある場合は、欠格によって相続権を失っていても一覧図に記載します。どちらも代襲相続人が記載できず、実際の相続人と異なる情報となることから、相続手続きに活用することができません。従来どおりの方法で戸除籍謄本等の提出を行い、相続手続きを進めてください。
Q6. 被相続人や相続人が海外国籍(日本国籍がない)の場合でも利用できますか?
A6. 被相続人や相続人が日本国籍を有しておらず、市区町村から戸除籍謄本等を添付することができない場合には、残念ながら本制度を利用することはできません。日本国籍を有していることが利用の前提となります。
5.まとめ
法定相続情報証明制度は、最初こそ戸籍の収集や図の作成に多少の手間がかかりますが、一度作成してしまえば、複数の相続手続きをスムーズかつスピーディーに進めることが可能となります。複数の不動産や銀行口座、各種保険などの相続手続きがある場合は、時間と手間の節約、そして手数料負担を抑えるために、ぜひ最優先での利用を検討してみてください。
参考文献
・『相続がおきたら行う手続きガイド』(TKC出版)
・『Q&A相続税のきほん』(TKC出版)
・法務局パンフレット「法定相続情報証明制度の手続の流れ」
・法務省民事局資料「法定相続情報証明制度について」
・法務局ウェブサイト内ページ「法定相続情報証明制度について」「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」
記事提供
株式会社TKC出版
1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。


