2026年08月25日

  • Xでシェア
  • facebookでシェア

令和8年度介護報酬改定―― 臨時改定で介護従事者の処遇改善を実施

令和8年度介護報酬改定―― 臨時改定で介護従事者の処遇改善を実施

 物価高騰や労働力不足により、介護事業者の経営環境は一層厳しさを増しています。こうしたなか、令和8年度介護報酬改定が実施されます。限られた人材で介護の質向上と量の拡大に取り組んでいくためには、介護従事者の処遇改善を着実に進めることが、介護事業所経営にとって重要です。

💡この記事のポイント
 ☑国は介護従事者の処遇改善が喫緊の課題として捉え、令和9年度改定を待たず臨時改定を実施
 ☑処遇改善は、令和6年度改定をベースに拡充
 ☑処遇改善と生産性向上への取り組みは継続的な実施が不可欠

1.臨時の改定実施で処遇を改善

 令和8年度介護報酬改定では、介護職員の賃金が他産業と比べて低い状況を踏まえ、介護分野の職員の処遇改善を図るとともに、近年の食材料費の上昇に対応するため基準費用額(食費)の引き上げについて、令和9年度介護報酬改定を待たずに臨時の期中改定として実施されます。
 改定率は、全体で+2.03%の引き上げとなり、その大部分(+1.95%)が処遇改善分に充てられます。食費の基準費用額については、+0.09%が充てられます。
 また、令和7年12月に取りまとめられた社会保障審議会介護保険部会の意見書を踏まえ、負担能力に応じた負担を図る観点から、介護保険施設等における居住費または滞在費に対して支給される特定入所者介護(予防)サービス費が見直され、令和8年8月より利用者の負担限度額が改定されます。
 施行時期は、処遇改善加算が令和8年6月、基準費用額(食費)が令和8年8月です。なお、基本報酬等の改定はありません。

2.介護従事者の処遇改善の内容

(1) 拡充された処遇改善加算、加算率

 介護従事者を対象に、幅広く月1.0万円(3.3%)、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員を対象に、月0.7万円(2.4%)上乗せ、定期昇給(0.2万円)を含めた合計で、最大1.9万円(6.3%)の賃上げを実現する措置です。
 令和8年度の処遇改善加算は、令和6年度改定をベースに拡充を図る設計としています。算定方法は、サービス別の基本サービス費に各種加算・減算をした1月あたりの総単位数に、加算区分およびサービス区分別の加算率を乗じた単位数を算定します。ただし、(介護予防)福祉用具貸与、特定(介護予防)福祉用具販売、(介護予防)居宅療養管理指導については、処遇改善加算の対象外となります。
 今回拡充された内容は次のとおりです(令和8年6月以降の加算率は図表1参照)。

・対象の拡大:従来の介護職員のみから介護従事者に拡大
・加算率の拡充:幅広く月1.0万円の賃上げ、月0.7万円の上乗せを実現する措置
・上乗せ区分の新設:令和8年度特例要件(生産性向上や協働化への取組)により、処遇改善加算の上乗せ区分(Ⅰロ・Ⅱロ)を設置
・対象サービスの拡大:訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援・介護予防支援等

図表1:サービス区分類型別加算率(令和8年6月以降)

サービス区分 介護職員等処遇改善加算の加算率
Ⅰイ Ⅰロ Ⅱイ Ⅱロ
訪問介護 27.0% 28.7% 24.9% 26.6% 20.7% 17.0%
夜間対応型訪問介護
定期巡回・随時対応型訪問介護
26.7% 27.8% 24.6% 25.7% 20.4% 16.7%
訪問入浴介護★ 12.2% 13.3% 11.6% 12.7% 10.1% 8.5%
通所介護 11.1% 12.0% 10.9% 11.8% 9.9% 8.3%
地域密着型通所介護 11.7% 12.7% 11.5% 12.5% 10.5% 8.9%
通所リハビリテーション★ 10.3% 11.1% 10.0% 10.8% 8.3% 7.0%
特定施設入居者生活介護★
地域密着型特定施設入居者生活介護
14.8% 15.9% 14.2% 15.3% 13.0% 10.8%
認知症対応型通所介護★ 21.6% 23.6% 20.9% 22.9% 18.5% 15.7%
小規模多機能型居宅介護★ 17.1% 18.6% 16.8% 18.3% 15.6% 12.8%
看護小規模多機能型居宅介護 16.8% 17.7% 16.5% 17.4% 15.3% 12.5%
認知症対応型共同生活介護★ 21.0% 22.8% 20.2% 22.0% 17.9% 14.9%
介護老人福祉施設
地域密着型介護老人福祉施設
短期入所生活介護★
16.3% 17.6% 15.9% 17.2% 13.6% 11.3%
介護老人保健施設
短期入所療養介護(介護老人保健施設)★
9.0% 9.7% 8.6% 9.3% 6.9% 5.9%
介護医療院
短期入所療養介護(介護医療院)★
短期入所療養介護(病院等)★
6.2% 6.6% 5.8% 6.2% 4.7% 4.0%
サービス区分 介護職員等処遇改善加算(新設)
訪問看護★ 1.8%
訪問リハビリテーション★ 1.5%
居宅介護支援・介護予防支援 2.1%
※介護報酬等処遇改善加算を除く総報酬単位数に上記の加算率(サービスごとに常勤換算の職員数に基づき設定)を乗じる。
※表中の★を付記したサービスは、介護予防においても同様の措置を講ずるもの。
厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」をもとに作成

(2) 処遇改善加算の算定要件

 処遇改善加算Ⅰ~Ⅳは、「賃金改善」の実施に加え、次の①~⑧の要件の充足状況に応じて算定します。
 賃金改善については、処遇改善加算の算定額に相当する賃金改善を実施しなければならないとされています。基本給、手当、賞与等のうち対象とする項目を特定したうえで行い、特別な事情にかかる届出を行う場合を除き、賃金水準を引き下げることは認められません。
 なお、処遇改善加算Ⅰ~Ⅳの算定要件は、図表2を参照してください。

処遇改善加算の算定要件

①月額賃金改善要件(月給による賃金改善)
 処遇改善加算Ⅳ相当額の2分の1以上を基本給等(毎月支払われる手当を含む)の改善に充てる(処遇改善加算Ⅳ以外の加算を算定する場合も)。
②キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等)
 任用の際、職位、職責、職務内容等に応じた要件を定めていること。その際の賃金体系を定めていること。それらについて就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全職員に周知していること(従業員数10人未満のときは内規等の整備・周知)。
③キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
 介護職員の資質向上の目標と具体的な計画(計画に沿った研修機会の提供、技術指導等の実施、能力評価、または資格取得のための支援等の実施)を策定し、研修実施、機会の確保をしていること。それらについて全職員に周知していること。
④キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等)
 経験に応じて昇給する仕組み、資格等に応じて昇給する仕組み、一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みのいずれかを設け、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備・周知していること(従業員数10人未満のときは内規等の整備・周知)。
⑤キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金要件)
 経験・技能のある職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年間440万円以上であること(小規模事業所等で、合理的に説明がある場合は適用免除)。
⑥キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)
 サービス類型ごとに一定以上の介護福祉士等を配置し、サービス提供体制強化加算、特定事業所加算等の届出を行っていること。
⑦職場環境等要件(図表3参照)
職場環境等要件にかかる処遇改善の取り組みを実施すること。処遇改善加算Ⅰ・Ⅱでは、区分ごとに2以上(生産性向上は3以上、うち一部は必須項目の実施)を、処遇改善加算Ⅲ・Ⅳでは区分ごとに1以上(生産性向上は2以上)を取り組む。
また、処遇改善加算Ⅰ・Ⅱにおいては、職場環境等の改善にかかる取組内容について、ホームページへの掲載等により公表すること。
⑧令和8年度特例要件
 処遇改善加算Ⅰロ・Ⅱロの上乗せを算定するときは、生産性向上や協働化にかかる取り組みとして、次のア)~ウ)のいずれかを行っていること。
 ア) ケアプランデータ連携システム(同等の機能・セキュリティを有するシステムと認めたものを含む)を利用していること(訪問・通所サービス等)
 イ) 生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡを算定していること(施設サービス等)
 ウ) 社会福祉連携推進法人に所属していること
   ※上記ア)・イ)については、加算の申請時点では、利用または算定予定である旨を誓約することで算定可能とし、後日、実績報告をすることになります。
なお、令和8年度に処遇改善加算を算定しようとする介護サービス事業者等は、体制届出、処遇改善計画書、実績報告書について、それぞれの期日までに届出を行うことが必要となります。

図表2:介護職員等処遇改善加算の算定要件(令和8年6月以降)

算定要件 介護職員等処遇改善加算
Ⅰイ Ⅰロ Ⅱイ Ⅱロ
①月額賃金改善要件
処遇改善加算Ⅳの1/2以上の月額賃金改善
②キャリアパス要件Ⅰ
任用要件・賃金体系の整備等
③キャリアパス要件Ⅱ
研修の実施等
④キャリアパス要件Ⅲ
昇給の仕組みの整備等
⑤キャリアパス要件Ⅳ
改善後の賃金要件(440万円1人以上)
⑥キャリアパス要件Ⅴ
介護福祉士等の配置要件
⑦職場環境等要件 区分ごとに1以上の取組(生産性向上は2以上)
区分ごとに2以上の取組(生産性向上は3以上)
HP等を通じた見える化(取組内容の具体的記載)
⑧令和8年度特例要件
生産性向上や協働化に係る取組

図表3:職場環境等要件

区 分 内  容
入職促進に向けた取組 ①法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化

②事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築

③他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築(採用の実績でも可)

④職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施
資質の向上やキャリアアップに向けた支援 ⑤働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対するユニットリーダー研修、ファーストステップ研修、喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等

⑥研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動

⑦エルダー・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入

⑧上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ・働き方等に関する定期的な相談の機会の確保
両立支援・多様な働き方の推進 ⑨子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備

⑩職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備

⑪有給休暇を取得しやすい雰囲気・意識づくりのため、具体的な取得目標を定めたうえで、取得状況を定期的に確認し、身近な上司等からの積極的な声かけを行っている

⑫有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により、業務の属人化の解消、業務配分の偏りの解消を行っている
腰痛を含む心身の健康管理 ⑬業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実

⑭短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施

⑮介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、職員に対する腰痛対策の研修、管理者に対する雇用管理改善の研修等の実施

⑯事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備
生産性向上(業務改善および働く環境改善)のための取組 ⑰厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ、外部の研修会の活用等)を行っている

⑱現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している

⑲5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・しつけの頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている

⑳業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている

㉑介護ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの)、情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末等)の導入

㉒介護ロボット(見守り支援、移乗支援、移動支援、排泄支援、入浴支援、介護業務支援等)またはインカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器(ビジネスチャットツール含む)の導入

㉓業務内容の明確化と役割分担を行い、介護職員がケアに集中できる環境を整備。特に、間接業務(食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ごみ捨て等)がある場合は、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担うなど、役割の見直しやシフトの組み換え等を行う

㉔各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施
やりがい・働きがいの醸成 ㉕ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善

㉖地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施

㉗利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供

㉘ケアの好事例や、利用者のその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供
※処遇改善加算Ⅰイ、Ⅰロ、Ⅱイ、Ⅱロを算定する場合は、表中の「生産性向上のための取組」のうち3以上の取組(うち⑰または⑱は必須)を実施。 図表2・3は、厚生労働省通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」をもとに作成

(3) 新たに対象となった訪問看護等

 訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等が処遇改善加算の新たな対象となりました。その算定要件は、「令和8年度特例要件(ケアプランデータ連携システムの利用か、社会福祉連携推進法人に所属か)」または「処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件」のいずれかを満たすこととなります。
 処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件とは、「キャリアパス要件Ⅰ」「キャリアパス要件Ⅱ」「職場環境等要件のうち2以上の取組を実施(小規模事業者は例外規定あり)」をすべて満たすこととなります。

3.食費および居住費、滞在費の負担限度額の見直し

 近年の食材料費の上昇や、令和7年度介護事業経営概況調査において、食事の提供に要する平均的な費用の額と基準費用額との差が生じている状況等を踏まえ、令和8年8月より、基準費用額(食費)を100円/日、引き上げることとなりました。また、負担限度額(食費)については、利用者負担第3段階①の利用者は30円/日、第3段階②の利用者は60円/日引き上げられ、それぞれ680円、1,420円となります。
 加えて、所得に応じた負担を図る観点から、令和8年8月より居住費または滞在費について、負担限度額(居住費または滞在費)の第3段階②の利用者は、100円/日引き上げられることとなりました。なお、室料を徴収しない場合の多床室(老健や介護医療院)においては、引き上げはありません。

臨時の改定実施で処遇を改善

4.令和9年度の介護報酬改定の方向性

 令和8年度の介護報酬改定は、「『強い経済』を実現する総合経済対策」(令和7年11月21日閣議決定)のもと、令和7年度補正予算における「医療・介護等支援パッケージ」の緊急措置に引き続き、介護分野の職員の処遇改善の手当てとして期中における臨時改定を行ったものでした。大臣折衝事項(令和7年12月24日)においては、令和9年度介護報酬改定についての言及もしていて、「介護分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保を図る必要があるとの認識のもと、介護サービス事業者の経営状況等について把握したうえで、物価や賃金の上昇等を適切に反映するための対応を実施する必要がある」としています。
 一方で、2040年を見据えたなかで行われる令和9年度介護報酬改定においては、介護保険制度の見直しによる制度改革も行われ、ほかにも賃上げ・人材確保、経営改善支援、制度の持続可能性などの課題が山積しています。抜本的な改定への対応に介護事業者は追われることが見込まれます。
 いずれにしても、処遇改善とともに生産性向上に向けた取り組みは継続的な実施が必須の事項であり、今後の介護サービス提供の持続可能性という面からも重要になっているといえるでしょう。

参考資料

・厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」
・厚生労働省通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年3月13日老発0313第6号)
・厚生労働省通知「介護保険法第五十一条の三第二項第二号に規定する居住費の負担限度額及び同法第六十一条の三第二項第二号に規定する滞在費の負担限度額の一部を改正する件について」(令和8年3月13日老介発0313第1号)
・厚生労働省「大臣折衝事項」(令和7年12月24日)
・社会保障審議会介護給付費分科会「令和9年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について」(令和8年4月27日)
・社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」(令和7年12月25日)

株式会社TKC出版

記事提供

株式会社TKC出版

 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
 税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。

  • Xでシェア
  • facebookでシェア
税理士事務所を探す