2026年06月19日

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親から土地を無償で借りて住宅を建てた後に相続が起こったら?

親から土地を無償で借りて住宅を建てた後に相続が起こったら?

権利金も地代も支払わずに土地を貸借することを「使用貸借」といいます。地代を全く払わない場合だけではなく、土地にかかる固定資産税・都市計画税に相当する金額以下の金額を授受する場合も「使用貸借」にあたり、親子間での土地の貸借の多くがこの使用貸借契約となっています。本記事では、有償の賃貸借契約との違いや、貸主(親)が亡くなった際の注意点を解説するほか、親子間で土地を貸借するときの税務上のポイントを紹介します。

💡この記事のポイント
 ☑有償の賃貸借契約では借主に借地権があるが、使用貸借契約では借地権は生じない。すなわち、使用貸借の借主は借地借家法の適用対象外となり、権利としては非常に弱い。
 ☑契約の終了条件に貸主の死亡を設定していない限り、貸主が死亡しても使用貸借契約が終了しない。
 ☑使用貸借していた土地の所有者が亡くなった場合、その土地の評価額は自用地価額。
 ☑使用貸借の土地は小規模宅地等の特例の適用対象外。

1.土地を無償で借りる「使用貸借」は贈与税がかからない

 親の所有している土地の上に子が家を建てて住むことはよく行われています。他人に土地を貸せば、借り手の側(土地を借りて建物を所有することになる者)に強い権利が発生しますので、貸す側が権利金や地代を受け取らずに貸すことはありません。
 しかし、親子間では権利金や地代の授受を行うことは通常ありません。他人間の取引では権利金の授受があるのに、親子間だから授受しないのは経済的な利益を与えていることになり、贈与税を課税すべきだとする考え方もあります。現に「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(国税庁、昭和48年11月1日付)という通達が出るまでは課税されていた時期もあったようです。しかし、この通達が出てからは課税しないこととされています。
 このように権利金も地代も支払わずに土地を貸借することを「使用貸借」といいます。地代を全く払わない場合だけではなく、土地にかかる固定資産税・都市計画税に相当する金額以下の金額を授受する場合も「使用貸借」にあたります。

■【参考】使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて(一部要約)

使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて
 ※個人間の貸借関係の実情を踏まえて定めたもの。

・使用貸借による土地の借受けがあった場合、土地の使用貸借に係る使用権の価額は、ゼロとして取り扱う。例えば、土地の借受者と所有者との間に当該借受けに係る土地の公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎないものはこれに該当し、当該土地の借受けについて地代の授受がないものであっても権利金その他地代に代わるべき経済的利益の授受のあるものはこれに該当しない。

・使用貸借による借地権の転借があった場合も、借地権の使用貸借に係る使用権の価額は、ゼロとして取り扱う。

(国税庁「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」の一部を要約して作成)

2.貸主が亡くなっても、住み続けられる?

 もし、貸主である親が亡くなり、子が使用貸借で借りていた土地を、ほかの相続人が相続したら、使用貸借契約はどうなるのでしょうか。
 まず、使用貸借を始める際の契約の終了条件に貸主の死亡を設定していない限り、原則として貸主の死亡によって使用貸借契約が終了することはありません。
 ただし、民法第598条では、使用貸借の期間や目的を定めていなかった場合、貸主はいつでも契約の解除をすることができるとされています。そのため、新たな貸主となった相続人から突然立ち退きを迫られる可能性はゼロではありません。有償の賃貸借契約では借主に借地権がありますが、使用貸借契約では借地権は生じません。したがって、使用貸借の借主は借地借家法の適用対象外となり、権利としては非常に弱いものです。こうした立ち退きの要求は基本的に従わなければならないため、あらかじめ想定できる場合は、複数の相続人がいても土地の借主がその土地を相続できるよう、親が生きているうちに推定相続人間で話し合ったり親が遺言で相続する人間を指定したりするなどの準備をしておくことが大切です。
 なお、借りた土地の上に賃貸住宅を建てた場合も、上記のとおりの扱いとなります。

3.貸主が亡くなったときの注意点

 ここでは、親から使用貸借で借りている土地に相続が発生した場合における注意点2つを解説します。

(1) 使用貸借契約書があれば内容を確認する

 土地を借主自身が相続して使用貸借の貸主と借主が同一となった場合には使用貸借契約は終了となります。
 一方で土地を相続したのが借主以外の相続人で、貸主と借主が異なる場合は使用貸借契約の効力が継続されます。契約で定めた期間や目的があればそれらも継続されるため、改めて確認しておいたほうがよいでしょう。もし期間や目的をあらかじめ決めていない場合は、前述したように貸主はいつでも契約の解除が可能です。貸主となった相続人から「すぐ立ち退いてもらう必要はないよ」などと言われたとしても、予期しない突然の契約解除を伝えられてトラブルに発展することも考えられます。そうした事態にならないよう、明確な年数を挙げて話し合って、お互いが納得する内容で契約に追加しておくことをおすすめします。

(2) 使用貸借で貸している土地は自用地評価

使用貸借で貸している土地の貸主が亡くなったときの、その土地の評価額は、自用地価額となります。これは借りた土地の上に賃貸住宅を建てた場合も同様です。
 貸主が建物を建てて他に貸していた場合には、その土地を評価する際には「貸家建付地」として、その土地の自用地価額から「自用地価額に借地権割合と借家権割合と賃貸割合を乗じて計算した金額」を控除できます。しかし、親が所有する土地を子が使用貸借で借りて、子が住宅や店舗あるいは倉庫を建てて他に賃貸した場合には自用地価額となります。

4.親子間で土地を貸借するときのポイント

(1) 地代を払うとかえって課税問題が生じる?

 親子間といえどもきちんと地代は払いたいという律儀な方もいますが、地代を払うと「使用貸借」ではなく、「賃貸借」となります。賃貸借の場合は「通常の地代」しか払わないと借地権の贈与があったとして贈与税の課税が行われます。
 「通常の地代」とはその地域の世間相場の地代をいいますが、これにかえて「相当の地代」の授受をすると借地権の認定課税は行わないこととされています。「相当の地代」とは、その土地の自用地価額の過去3年間の平均値に6 %を乗じて計算した金額とされています。
 このように親子間で土地の貸し借りをする際に地代の授受をして税務上の問題が出るよりは、支払うにしても土地にかかる固定資産税・都市計画税以下にして「使用貸借」にとどめておくほうがよいのではないでしょうか。
 「使用貸借」にとどめておいたほうがよいもう一つの理由は、「相当の地代」は非常に高くなるため、生計が一である場合を除いて父の不動産所得が増えることになる点です。所得税が余分にかかる上に、毎月資金が蓄積されていくので相続税の課税対象となる財産が増えてしまいます。このような点からも「相当の地代」の授受は得策ではないと考えられます。

(2) 「借地権の使用貸借に関する確認書」の提出

 使用貸借している土地に建物等を建築した場合には、土地の借受けが使用貸借に該当するものであることについて借主である子が税務署に申し出る必要があります。「借地権の使用貸借に関する確認書」に、土地の所在地や地積、貸主の名前、借主の名前等を記入し、建物等を建てたが土地には何らの権利も有さないということに合意します。これを提出しない場合は土地の贈与があったものとみなされ、贈与税が課税される場合がありますので、速やかに提出するようにしましょう。

■借地権の使用貸借に関する確認書

借地権の使用貸借であることの確認書
(出所:国税庁「借地権の使用貸借であることの確認書」様式)

(3) 固定資産税・都市計画税相当分が経費として計上可能

 子が親から無償で借りた土地にアパートなどの貸付用不動産を建てて不動産所得を得ている場合、固定資産税・都市計画税に相当する額を親に支払っているとその額を不動産所得の計算上、必要経費とすることができます。
 必要経費にできないケースは、貸主である親が固定資産税や都市計画税を経費計上しようとする場合です。不動産の貸付けによる収支は不動産所得に該当しますが、使用貸借に関わる収支はそれに含まれません。不動産賃貸業を営んでいたとしても、一部の物件を使用貸借で貸し始めた場合にはその物件に係る固定資産税・都市計画税に相当する額は必要経費として計上できなくなります。
 実際に税金を払っているのは親ですが、子の必要経費として計上可能であることにご注意ください。

(4) 相続税の評価減対策にはならないことに留意

 使用貸借の場合、相続税の評価減対策となりません。親の所有する土地は子の建物の敷地となりますが、子が借地権の贈与を受けたことにはなっておらず、税務上は子に借地権がないものとされ、相続が開始した時の評価額は自用地として評価されます。土地が自用地となる上、建物も土地所有者が所有していないため、建物建築による評価引き下げ効果もありません。

母所有の土地に子所有の建物を建築した使用貸借の事例

(5) 相続税の評価減対策としたい場合には生前に財産の組み換えを

 親の土地に子がアパート等を建築して活用しているケースでは、親が生前に子所有のアパート等を時価で買い取っておくことで、自用地評価よりも節税となる貸家建付地として評価されるようになります。なお、デメリットとして、アパート等の家賃収入が親の財産として蓄積されることになります。基礎控除額内の贈与で子に渡すか、アパートの修繕費として活用するなどの工夫によってデメリットを小さくすることは可能です。

(6) 小規模宅地等の特例の節税効果を上げたい場合も生前に財産の組み換えを

 小規模宅地等の特例の適用については、個人が相続・遺贈により取得した宅地等で、相当の対価を得て継続的に不動産の貸付けの用に供されているなど一定の要件を満たす宅地等であれば、貸付規模の大小に関わりなく、「貸付事業用宅地等」として200㎡ までの部分について、その評価額を50%減額することができます。
 使用貸借で貸している土地は、基本的に小規模宅地等の特例の対象とはなりません。ただし、使用貸借のままではなくこの貸付事業用宅地等に該当するように、使用貸借から賃貸借に契約方式を変えて契約し直すという方法があります。相続が発生した際の土地の評価額は、自用地評価額の80%評価(貸宅地としての評価)となり、さらに小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等に該当することになり、相続税の大幅な節税となります。
 なお、使用貸借から賃貸借に変更するということは、無償で借りていた状態から、相当の地代を支払う契約になることとなります。借主である子の負担が増加するため、相続税の節税効果など全体のバランスを考慮して対策の実行を検討するようにしましょう。

5.おわりに

 本記事では、使用貸借について、有償の賃貸借契約との違いや、貸主(親)が亡くなった際の注意点を解説するほか、親子間で土地を貸借するときの税務上のポイントを紹介しました。たいていの場合、親子間で使用貸借を始める際には契約内容を細かく設定することはないと考えられます。そのため、相続が起こるまで契約終了時期を意識しないことも多いでしょう。借主でない相続人に土地がわたってから慌ててしまう、ということがないよう、親子間であっても土地の使用の終了時期を話し合っておくことが重要です。
 不安要素等がある場合には、税理士や弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

参考文献

・『財産承継ニュース』vol.10、16、45(TKC出版)

株式会社TKC出版

記事提供

株式会社TKC出版

 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
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