「交通費が給与として課税された」「法人の損金(経費)とすることができなかった」「消費税の仕入税額控除の対象外となり、課税仕入れとすることができなかった」――このような事態にならないように、「出張旅費」について税務上の取扱いをよく理解しておきましょう。
💡この記事のポイント
☑出張旅費は、交通費、宿泊費、日当を含めた総称で、実務的には「旅費交通費」としてまとめて処理しているケースが多い。
☑日当等が非課税とされるか否かは、「通常必要であると認められるもの」など、所得税基本通達9-3をもとに判定される。
☑非課税とされる所得であれば、法人の損金に算入でき、消費税においても仕入税額控除の対象となる。
1.「出張旅費」とは
出張旅費は、業務上の出張に伴い発生する交通費、宿泊費、日当の総称です。通常、宿泊を伴い旅費規程に基づいて支給する手当(実費のほか、日当や諸雑費を含む)を処理する勘定科目として「旅費」を使用します。この「旅費」とは異なり、一般に宿泊を伴わない近距離の交通費の実費支給額を処理する勘定科目としては「交通費」を使用します。「交通費」に非課税の通勤手当を含ませる場合もありますが、これは人件費の一部として「厚生費」として処理します。
それでは出張旅費と交通費の区分がどうなっているかといえば、法令上、距離だけで機械的に区分するルールがあるわけではありません。
したがって、前述のように実務上は別の目的で使われることもありますが、会計上は「旅費交通費」としてまとめて処理するケースが多くあります。会計上で重要なことは、ルールに基づいて継続的に処理することです。実務上における留意点としては、出張旅費に交通費以外の日当や宿泊費なども含まれることから、どのような場合に日当がつくのか、社内の旅費規程を整備しておくことで、個別のケースを1つひとつ判定するなどの煩雑な事務処理の解消につながります。
2.税務上の取扱い
(1)所得税の取扱い(個人にかかる課税関係)
旅費精算をして個人に支給される出張旅費(交通費、宿泊費、日当)のうち、「通常、必要であると認められる部分」は、所得税法上は非課税として取り扱われます。
つまり、日常的に発生する業務のための移動にかかる費用として近隣の取引先への電車やバス代であっても、遠方の出張のための宿泊費や日当などが伴う場合であっても、「通常必要であると認められる部分」の旅費交通費は、従業員は給与として課税されることはありません。
それでは税法ではどのようになっているのでしょうか。
所得税法第9条第1項に、「次に掲げる所得については、所得税を課さない」として非課税所得について規定しています。そして、その第4号で旅費についての記載があります。
「給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、もしくは転任に伴う転居のための旅行をした場合または就職もしくは退職をした者もしくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの」(所得税法第9条第1項第4号)
このように「その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で」と、単に交通費の実費だけを特定しているわけではなく、交通費のほかに宿泊費や日当などその旅行に必要な支出も含まれます。
さらに、「通常必要であると認められるもの」とあり、どこまでが非課税の範囲なのかが問題になります。
これについては「所得税基本通達」を見てみましょう。所得税基本通達は、各税務署が法令を具体的にどう解釈・適用するのかをまとめた指針といえ、法的拘束力はないものの、実務上は法令と同様に重視され、税務の現場において判断基準として利用されています。
その所得税基本通達9-3に、「非課税とされる旅費の範囲」があります。
「法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路もしくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容および地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。(平23課個2-33、課法9-9、課審4-46改正)
(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他社の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。
これによると、旅行の目的の妥当性、宿泊をするかどうかを含めた旅行期間などの適切性、旅行者の職務内容、地位等からみて、支給する金額が適正なバランスが保たれた基準によって計算されたものかどうかを確認するとともに、「その計算された金額が同業種、同規模の他社に照らして相当かどうか」により判定するとしています。
このことからも適正な旅費規程を整備しておくことで、事務作業を効率化することにつながります。ちなみに旅費規程は法律で作成が強制されている「法令事項」ではありませんが、作成して全社員に適用する場合は、労働基準法上の就業規則の一部(相対的記載事項)として扱われ、労働基準監督署への届出が必要になります。
通常必要であると認められる旅費の範囲を超えて支給する場合、給与所得者に支給される旅費のうちその範囲を超えて支給する部分は給与所得となります(所得税基本通達9-4)。ちなみに、就職した者がそれに伴い転居した旅費は雑所得となり、退職した者がそれに伴い転居した旅費は退職所得となります。
(2)法人税・消費税の取扱い(会社側の課税関係)
出張旅費の会社側の税務としては、適正な旅費規程に基づいて支給される通常必要と認められる部分は、日当、宿泊費、交通費は損金(経費)となり、消費税においても仕入税額控除が可能となります。
①法人税の取扱い
役員や従業員に支給する出張旅費は、業務遂行上、通常必要と認められる出張等で、実費相当額など通常必要と認められる部分は、会社(法人)の損金(経費)として扱われます。
法人税法では第22条の「各事業年度の所得の金額の計算の通則」において、その第3項で損金の額に算入すべき金額として、「当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額」、「当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用の額」は損金の額に算入できます。この損金の額に算入する金額に出張旅費が含まれることになります。
交通費や宿泊費、日当等の出張にかかる費用を損金(経費)とするためには、何のために交通機関を利用したのか、何のための出張なのか等、業務に必要な出張等であることが必要です。そのため精算する際は、行き先、目的、支払先等や出張命令など、明確にすることが大事になります。ちなみに、得意先を接待した際、得意先のため支払ったタクシー代は接待交際費となります。
出張に伴う宿泊費や日当においても、出張目的が必要な業務遂行のためであることに変わりはありません。業務遂行上必要だからといって、通常必要と認められる金額を超える高額なホテルへの宿泊などは認められず、また過大な日当も認められません。所得税が非課税とされる「その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品」(所得税基本通達9-3)であることが必要です。
②消費税の取扱い
国内の出張または転勤のために、役員または従業員に対して支給する出張旅費、宿泊費、日当については、その金額のうち必要と認められる部分の金額は、仕入税額控除の対象となり課税仕入れになります。しかし、課税仕入れとなるのは、その旅行について通常必要であると認められる部分に限られ、その範囲を超える部分は、仕入税額控除の対象外となります(消費税法基本通達11-6-4)。また、所得税においても、その範囲を超える部分は従業員等に対する給与等となり、課税されることとなります。
このとき、従業員等は適格請求書発行事業者ではないので、適格請求書の交付を受けることはできませんが、一定の事項を記載した帳簿のみの保存による仕入税額控除が認められます。また、帳簿には、通常必要な記載事項(消費税法第30条第8項)に加え、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる仕入れである旨(「出張旅費」「宿泊費」など)を記載する必要があります。
なお、従業員等に支給する通勤手当(通勤定期等の現物による支給を含む)のうち通勤のために通常必要とする範囲内のものは、所得税法上非課税とされる金額を超えている場合であっても、所得税の課税の有無にかかわらずその全額が課税仕入れになります。出張旅費の取扱いと異なることに留意してください。
また、海外への出張または転勤のために支給した出張旅費、宿泊費、日当については、消費税の仕入税額控除が国内において行う課税仕入れのため、原則として課税仕入れになりません。海外出張に伴い国内における出発前、帰国後の宿泊費、交通費を別途支給している場合には、その部分は課税仕入れになります。
(参考)
海外渡航費の取扱いについて(法令解釈通達)
(平成12年10月11日 課法2-15、課所4-24、査調4-29)
(海外渡航費にかかる損金算入額または必要経費算入額)
1.海外渡航費にかかる損金算入額または必要経費算入額の算定に当たっては、次に掲げる事項を具体的に説明する書類その他参考となる資料に基づき、その法人または個人の海外視察等の動機、参加者の役職、業務関連性等を十分検討する。
(1) 団体旅行の主催者、その名称、旅行目的、旅行日程、参加費用の額等その旅行の内容(主催者作成パンフレット、旅行日程表、検収報告書等)
(2) 参加者の氏名、役職、住所(参加者名簿等)
(損金算入額または必要経費算入額の計算の方法)
2.同業者団体等が行う視察等のための団体による海外渡航については、課税上弊害のない限り、その旅行に通常要する費用(その旅行費用の総額のうちその旅行に通常必要であると認められる費用をいう。以下同じ)の額に、旅行日程の区分による業務従事割合を基礎とした損金または必要経費算入の割合(以下、「損金等算入割合」という)を乗じて計算した金額を旅費として損金の額または必要経費の額に算入する。
ただし、次に掲げる場合には、それぞれ次による。
(1) その団体旅行にかかる損金等算入割合が90%以上となる場合
→その旅行に通常要する費用の額の全額を旅費として損金の額または必要経費の額に算入する。
(2) その団体旅行にかかる損金等算入割合が10%以下となる場合
→その旅行に通常要する費用の額の全額を損金の額または必要経費の額に算入しない。
(注) 海外渡航の参加者である使用人に対する給与と認められる費用は、給与として損金の額または必要経費の額に算入する。
ただし、個人の事業専従者に対して支給した給与とされるものの必要経費算入については、所得税法第57条第1項または第3項の規定の適用がある。
(3) その海外渡航が業務遂行上直接必要であると認められる場合(業務従事割合が50%以上の場合に限る)
→その旅行に通常要する費用の額を「往復の交通費の額(業務を遂行する場所までのものに限る。以下同じ)」と「その他の費用の額」とに区分し、「その他の費用の額」に損金等算入割合を乗じて計算した金額と「往復の交通費の額」との合計額を旅費として損金の額または必要経費の額に算入する。
(4) 参加者のうち別行動をとった者等個別事情のある者がいる場合
→当該者については、個別の事情を斟酌して業務従事割合の算定を行う。
(損金等算入割合)
3.上記2に定める「損金等算入割合」は、業務従事割合を10%単位で区分したものとするが、その区分に当たり業務従事割合の10%未満の端数については四捨五入する。
(業務従事割合)
4.上記2に定める「業務従事割合」は、旅行日程を「視察等(業務に従事したと認められる日数)」、「観光(観光を行ったと認められる日数)」、「旅行日」および「その他」に区分し、次の算式により計算した割合とする。
(算式)
「視察等の業務に従事したと認められる日数」÷
〔「視察等の業務に従事したと認められる日数」+「観光を行ったと認められる日数」〕
(日数の区分)
5.業務従事割合の計算の基礎となる日数の区分は、おおむね次による。
(1) 日数区分の単位
日数の区分は、昼間の通常の業務時間(おおむね8時間)を1.0日としてその行動状況に応じ、おおむね0.25日を単位に算出する。ただし、夜間において業務に従事している場合には、これにかかる日数を「視察等の業務に従事したと認められる日数」に加算する。
(2) 視察等の日数
視察等の日数は、次に掲げるような視察等でその参加法人または個人の業種業態、事業内容、事業計画等からみてその法人または個人の業務上必要と認められるものにかかる日数とする。
イ 工場、店舗等の視察、見学または訪問
ロ 展示会、見本市等への参加または見学
ハ 市場、流通機構等の調査研究等
ニ 国際会議への出席
ホ 海外セミナーへの参加
へ 同業者団体または関係官庁等の訪問、懇談
(3) 観光の日数
観光の日数には、次に掲げるようなものにかかる日数が含まれる。
イ 自由行動時間での私的な外出
ロ 観光に附随して行った簡易な見学、儀礼的な訪問
ハ ロータリークラブ等その他これに準ずる会議で、私的地位に基づいて出席したもの
(4) 旅行日の日数
旅行日の日数は、原則として目的地までの往復および移動に要した日数とするが、現地における移動日等でその内容からみて「視察等の日数」または「観光の日数」に含めることが相当と認められる日数(観光の日数に含めることが相当と認められる当該移動日等の日数で、土曜日または日曜日等の休日の日数に含まれるものを除く)は、それぞれの日数に含める。
(5) その他の日数
その他の日数は、次に掲げる日数とする。
イ 土曜日または日曜日等の休日の日数((4)の旅行日の日数を除く)
ただし、これらの日のうち業務に従事したと認められる日数は「視察等の日数」に含め、その旅行の日程からみて当該旅行のほとんどが観光と認められ、かつ、これらの日の前後の行動状況から一連の観光を行っていると認められるような場合には「観光の日数」に含める。
ロ 土曜日または日曜日等の休日以外の日の日数のうち「視察等」、「観光」および「旅行日」に区分されない休養、帰国準備等その他の部分の日数。
(所轄国税局長との協議)
6.税務署長は、その海外渡航費の額が多額であること、業務関連性の判断が困難であること等の事由により所轄国税局長(沖縄国税事務所長を含む。以下同じ)と協議することが適当と認められる場合には、所轄国税局長と協議の上その事案に応じた処理を行うものとする。
3.旅費規程の留意点
出張等に関係する移動の交通費や宿泊費、日当等の諸経費についての取扱いルールを定めたものが社内規程である旅費規程です。適正な旅費規程を整備することで、恣意性を排除することができ、不正防止にも役立ちます。
また、規程に基づいた出張手配をすればよいので、宿泊や交通機関等の出張計画を立てやすくなりますし、精算においても事務作業等が煩雑になるのを防ぐことができます。
しかし、すべての会社で旅費規程を作成したほうがよいわけではありません。宿泊費の上限や、支給する日当の額を決める際は、全従業員間でバランスのとれた基準を設ける必要があり、これらの基準策定の手間がかかります。また、宿泊費は、近年の円安・物価高によってホテルの宿泊費自体が高騰していますし、都市部と地方による価格差がありますので、規程の見直しなども必要となります。
新たに旅費規程を設ける場合は、自社の出張の頻度とともにメリット・デメリットをよく吟味するようにしましょう。
参考
・TKC全国会中央研修所編著『TKC会計処理マニュアル(第12版)』
・国税庁タックスアンサーNo.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」
・平成12年10月11日付課法2-15、課所4-24、査調4-29「海外渡航費の取扱い」(法令解釈通達)
記事提供
株式会社TKC出版
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