令和8年度薬価改定が3月5日に告示されました。薬価改定率は医療費ベースで▲0.86%、薬剤費ベースでは▲4.02%となり、国費では▲1,052億円程度の削減となります。後発品への置換え期間が5年に短縮された長期収載品、356成分812品目が後発品価格への引き下げ対象となりました。
💡この記事のポイント
☑「市場拡大再算定」「市場拡大再算定の特例(持続可能性特例価格調整)」における類似品の適用が廃止
☑「長期収載品」の薬価引き下げルールがG1品目に一本化、置換え期間は5年へ短縮
☑オーソライズド・ジェネリック(AG)、バイオAGの新規収載時薬価は先発品と同額で算定
1.市場拡大再算定の類似品の引き下げ廃止と令和9年度改定実施を大臣折衝で合意
薬価改定の内容を概括すると、長期収載品の価格の適正化の観点から、後発品への置換え期間が原則10年から5年に短縮され、これにより59成分145品目(告示数)が前倒しで適用されます。全体としては356成分812品目が後発品価格への引き下げ対象となりました。一方、不採算品の薬価の引き上げ(または現行薬価の維持)を行った不採算品再算定(特例的対応)は、232成分704品目(告示数)に適用されます。
それでは、まず大臣折衝事項について見ていきます。改定率とともに2点の合意事項があります。
〈改定率〉
薬価等
薬 価 ▲0.86%(国費▲1,052億円程度、薬剤費ベースで▲4.02%)
材料価格 ▲0.01%(国費▲11億円程度)
合 計 ▲0.87%(国費▲1,063億円程度)
※令和8年4月施行(ただし材料価格は令和8年6月施行)
〈合意された薬価関連事項〉
① 令和8年度薬価制度改革及び令和9年度の薬価改定の実施
令和8年度薬価制度改革において、イノベーションの推進について、製薬企業の予見可能性を高める観点から、市場拡大再算定の類似品の薬価引き下げ(いわゆる共連れ)を廃止し、薬価改定以外の機会も含め、自品の販売額による市場拡大再算定の対象とすることとするほか、要件の明確化を行う。また、医薬品の安定供給の確保の観点から、最低薬価について物価動向を踏まえた対応等を行う。
さらに、診療報酬における「令和9年度における更なる調整及び令和10年度以降の経済・物価動向等への対応の検討」を踏まえ、令和9年度の薬価改定を着実に実施する。その際の対象品目の範囲や適用される各種ルールの在り方については、創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減といった要請についてバランス良く対応するとの基本的な考え方を踏まえて検討する。
② 費用対効果評価制度の更なる活用
医療保険制度の運営の中で費用対効果評価を推進する観点から、費用対効果評価制度の更なる活用のため、令和8年中に、同制度の客観的な検証も踏まえ、既存の比較対照技術と比べて追加的な有用性がなく、単に費用増加となる医薬品に係る価格調整範囲の拡大を図る。引き続き、同制度における適切な評価手法の確立や実施体制の強化を進める中で、対象品目や価格調整の範囲の拡大、診療ガイドラインへの反映を含めた医療現場での普及など、同制度の発展に向けた更なる見直しについて具体的な検討を進め、令和9年度の薬価改定の中で一定の結論を出す。
令和9年度においても薬価改定を実施することで合意されています。
また、「社会保障制度改革の推進事項」では薬剤給付の見直しとして、次の4点が示されています。
① OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し
OTC医薬品の対応する症状に適応がある処方箋医薬品以外の医療用医薬品のうち、他の被保険者の保険料負担により給付する必要性が低いと考えられるときには、患者の状況や負担能力に配慮しつつ、別途の保険外負担(特別の料金)を創設する方針が示された。令和9年3月に実施が予定されている。
まずは77成分(約1,100品目)を対象医薬品とし、薬剤費の4分の1に特別の料金を設定する。
② 食品類似薬の保険給付の見直し
栄養保持を目的とした医薬品のうち、代替可能な食品が存在する医薬品について、経口による通常の食事から栄養補給可能な患者に対する使用は保険給付外とする。術後の患者、経管により栄養補給を行っている患者などは引き続き保険給付の対象。
③ 長期収載品の選定療養の拡大
令和6年より先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当を選定療養の対象として特別の料金を患者に負担を求めてきたものを、後発医薬品のさらなる使用促進の観点から、2分の1に引き上げる。
④ 長期処方・リフィル処方箋の活用
長期処方・リフィル処方箋の原則化を視野に、対応する医療機関の拡大とともに、活用を阻害する要因を精査し、一層の普及のため必要な対応を図る。
2.令和8年度薬価制度改革の骨子
大臣折衝事項を含め、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日閣議決定)を踏まえた「令和8年度薬価制度改革の骨子(案)」については、12月26日の中医協総会(会長:小塩隆士・一橋大学経済研究所特任教授)で承認されました。
骨子の主な内容は次のとおりです。
〈具体的内容〉
1.国民負担の軽減と創薬イノベーションを両立する薬価上の適切な評価
(1) 薬価算定方法
・補正加算額を控除した比較薬の薬価で1日薬価合わせを行い、比較薬に補正加算が適用されている場合であっても、新薬の補正加算を適用可能とする(類似薬効比較方式における算定方法の基準改正)
・革新的新薬の評価方法、原価計算方式における開示度の取り扱いについては、引き続き検討 等
(2) 新薬の薬価収載時・薬価改定時における評価
・成人及び小児の同時開発促進の観点から、市場性加算(Ⅰ)と小児加算の併加算を可能とする
・国内の診療ガイドラインにおいて標準的治療法になったと評価できる場合の薬価改定時の加算を新設 等
(3) 新薬創出・適応外薬解消等促進加算
・新薬創出・適応外薬解消等促進加算の名称について「革新的新薬薬価維持制度」に変更
・制度の透明性を高める観点から、制度対象品目の要件を見直し
・制度における累積額の控除により最低薬価未満の額に改定される品目が生じることを防ぐため、累積額の控除のルールを適用してから、下支えのルールを適用 等
(4) 市場拡大再算定
・類似品への市場拡大再算定(いわゆる共連れ)の廃止
・希少疾病、小児の効能等追加のみの場合について、再算定の対象とはしない運用の明確化
・市場拡大再算定の特例の名称を「持続可能性特例価格調整」に変更 等
(5) イノベーションの推進に向けた長期収載品の薬価の更なる適正化
・長期収載品に依存するビジネスモデルからの脱却推進の観点から、後発品上市後5年を経過した長期収載品(バイオ先行品を含む)について、後発品置換率によらず段階的に薬価を引き下げ 等
(6) オーソライズド・ジェネリック(AG)・バイオAGの取扱い
・AG、バイオAGの収載時薬価は先発品と同額に算定
・先発品と同額に算定されたAG、バイオAGについては、薬価改定時に先発品と価格帯を集約
2.後発品を中心とした医薬品の安定供給の確保のための対応
(1) 後発品の価格帯集約
・注射薬、バイオシミラー、安定供給に係る企業指標の上位評価企業の品目について、価格帯集約を廃止 等
(2) 薬価の下支え制度の充実
・外用塗布剤の最低薬価の設定、最低薬価の引き上げ
・不採算品再算定について、全類似薬が該当しない場合であっても、該当する類似薬のシェアの合計が5割以上の場合は適用 等
3.その他の課題
(1) 高額な医薬品に対する対応
・市場規模が年間1,500億円を超える品目に対するこれまでの対応を規定
・薬価調査における販売額が大きく、保険診療外での使用が一定数見込まれる品目については、NDBで販売額を把握し、持続可能性特例価格調整を適用 等
(2) 医薬品流通に関する課題
・調整幅の在り方については、引き続き検討
(3) 販売包装単位の適正化
・関係団体における対応状況を注視し、薬価上の対応の必要性を検討
(4) イノベーションの適切な評価
・米国の最恵国待遇(MFN)価格政策に関し、ドラッグ・ロスの解消の観点等から、機動的な対応ができるよう、引き続き検討
4.診療報酬改定がない年の薬価改定
・「大臣折衝事項」(令和7年12月24日厚生労働省)に基づき、令和9年度薬価改定は着実に実施
・対象品目の範囲や適用される各種ルールの在り方については、創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減といった要請にバランス良く対応するとの基本的な考え方を踏まえて検討
令和8年度薬価改定については、3月5日に官報で告示されました。令和7年度薬価調査の結果に基づき薬価基準を全面改定しています。また、「薬価算定の基準について」は2月13日中医協の了解に基づき、市場実勢価格加重平均値調整幅方式により算定しています。施行は令和8年4月1日となります。
〈参考〉
「市場実勢価格加重平均値調整幅方式」
薬価=
〔当該既収載品の保険医療機関等における薬価算定単位あたりの平均的購入価格(税抜き市場実勢価格の加重平均値)〕×〔1+消費税率(0.10)〕+調整幅
※調整幅:医薬品流通の安定のための調整幅とし、改定前薬価の2%に相当する額
「薬価とは」
薬価とは、保険医療機関および保険薬局における医薬品の支給に要する額として、医療保険から支払われるものであり、保険医療機関および保険薬局が医薬品を購入する際に支払うべき消費税および地方消費税に相当する額を含めているものであること(令和8年3月5日保医発0305第10号・厚生労働省保険局医療課長通知「使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について」より)
3.薬価改定の概要
(1) 薬価基準の収載医薬品
まず、薬価基準の収載医薬品(告示数)は、内用薬が6,964品目、注射薬が3,424品目、外用薬が1,856品目、歯科用薬剤が28品目の計1万2,272品目となっています。
| 内用薬 | 注射薬 | 外用薬 | 歯科用薬剤 | 合計 | |
| 告示数 | 6,964 | 3,424 | 1,856 | 28 | 12,272 |
| (参考)品目数 | 10,151 | 3,452 | 2,158 | 28 | 15,789 |
(2) 市場拡大再算定等
当初の予想を大きく上回って市場規模が拡大した医薬品に適用される「市場拡大再算定」は、13成分31品目(告示数)を対象に薬価引き下げが行われます。なかには40%を超える大幅な薬価引き下げとなる医薬品もあります。なお、イノベーションの評価と国民皆保険の維持を両立するための対応という趣旨を明確化するため、「市場拡大再算定の特例」の名称については、「持続可能性特例価格調整」に変更されました。
大臣折衝で決定されたとおり、市場拡大再算定または持続可能性特例価格調整の類似品の適用(共連れ)が廃止され、対象品目の薬理作用類似薬については、効能追加等の有無にかかわらず、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)により使用量を把握し、薬価改定以外の機会も含めて、市場拡大再算定または持続可能性特例価格調整が実施されます。
(3) 不採算品再算定
薬価の下支えルールとして、不採算を理由に薬価の引き上げ・維持を行う「不採算品再算定」は、保険医療上の必要性が高い品目を対象に、製造販売の原価が著しく上昇した品目で、232成分704品目(告示数)に適用されています。
従来、不採算品再算定の要件にあった「当該既収載品と組成、剤形区分および規格が同一である類似薬がある場合には、すべての類似薬について該当する場合に限る」については削除されました。
なお、厚生労働省においては、この不採算品再算定の医薬品および最低薬価引き上げ対象品目(585成分3,186品目)について、薬価改定前の、必要量を上回る買い込み等を控えるよう業界団体に事務連絡(令和8年3月5日事務連絡)を発出しています。
(4) 最低薬価
令和8年度改定では、次の変更が行われました。
・外用塗布剤について、規格単位に応じて最低薬価を設定
・点眼・点鼻・点耳液について、点眼剤の最低薬価を適用
最低薬価については、令和7年度薬価調査の結果から、令和6年度薬価調査における最低薬価品目の平均乖離率を超えたものは対象外とし、それ以外について3.5%の引き上げが実施されました。対象となるのは585成分3,186品目。
改定前に最低薬価だった品目は435成分2,185品目(うち薬価引き上げ品目は432成分2,157品目)。
みなし最低薬価品目は84成分302品目(うち薬価引き上げ品目は62成分255品目)。
また、基礎的医薬品、不採算品再算定に該当しない既収載品について、令和8年薬価改定前の価格が、最低薬価を下回るものは、最低薬価に改定されました。
(5) 長期収載品
長期収載品の薬価引き下げルールがG1品目に一本化されました。後発品への置換え期間については原則、後発品収載後10年とされてきましたが、今回の薬価改定で5年に短縮され、後発品収載後5年を経過した長期収載品の薬価は、令和8年度改定から、後発品置換え率によらずG1ルールで見直され、後発品価格の加重平均値を基準に段階的に引き下げられます。
また、バイオシミラーが収載されているバイオ先行品も対象に含まれています。長期収載品の後発品価格への引き下げ(G1)の対象356成分812品目(告示数)のうち、バイオ医薬品は12成分41品目(告示数)。令和2年度以降の改定で後発品置換え率80%を超え、今回の改定でG1前倒しの対象となったものは、7成分11品目(告示数)でした。
(6) 後発医薬品
後発品の価格帯集約が見直されました。注射薬とバイオシミラーにかかる品目については、同一規格・剤形内の品目数が少なくなっていることから、最高価格の30%を下回る薬価のみ価格帯を集約し、それ以外は価格帯集約の対象から除外されました。
また、企業指標の評価結果を活用した価格帯集約の特例では、対象企業、対象品目、適用条件のいずれも満たす品目は、注射薬・バイオシミラーに該当しない品目であっても、価格帯集約の対象から除外しています。
〈① 後発医薬品の価格帯〉(②を除く)
| 価格帯数 | 成分規格数 |
| 1 | 756 |
| 2 | 371 |
| 3 | 470 |
| 4 | 0 |
〈② 後発企業区分Aのための価格帯集約が行われない品目数〉
| 合 計 | |
| 成分規格数 | 32(うち後発収載5年以内 30、うち重要供給確保医薬品 5) |
| 告示数 | 52(うち後発収載5年以内 50、うち重要供給確保医薬品 5) |
| (参考)品目数 | 52(うち後発収載5年以内 50、うち重要供給確保医薬品 5) |
〈③ 後発企業区分数〉
・A区分:38社
・B区分:64社
・C区分:83社
オーソライズド・ジェネリック(AG)、バイオAGの取扱いは、収載時薬価は先発品薬価と同額に算定されます。薬価改定時も先発品と薬価を加重平均し、価格帯を集約する扱いとなります。
(7) 新薬の評価
類似薬効比較方式で、新薬にも補正加算を適用できるようになりました。比較薬が補正加算を受けている場合でも、補正加算率を控除した比較薬の薬価で1日薬価合わせを行い、新薬側に補正加算適用が可能になります。
また、市場性加算Ⅰと小児加算の併算定を可能(小児のみが希少疾病用医薬品の指定範囲とされた場合を除く)にし、規格間調整のみの薬価算定でも、要件を満たせば市場性加算Ⅰ、先駆加算、迅速導入加算の要件を適用します。市販後に国内の標準的治療法となった既収載品には、薬価改定時に新加算を適用します。
新薬創出・適応外薬解消等促進加算については、名称を「革新的新薬薬価維持制度」に改め、品目要件等を見直しました。
参考資料
・厚生労働省資料「大臣折衝事項」(令和7年12月24日)
・令和8年1月16日中医協総会資料・令和7年12月26日中医協了解「令和8年度薬価制度改革の骨子(案)」
・厚生労働省資料「令和8年度薬価制度改革の骨子の主な内容」(令和8年3月5日)
・厚生労働省保険局医療課長通知「使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について」(令和8年3月5日保医発0305第10号)
・令和8年3月5日事務連絡「令和8年度薬価改定において不採算品再算定を適用された医薬品及び最低薬価品目の適正な流通について」(厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課)
・厚生労働省保険局長通知「薬価算定の基準について」(令和8年2月13日保発0213第3号)
・厚生労働省「令和8年度薬価基準改定の概要」(令和8年3月5日)
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