社会福祉法人の行う事業には、社会福祉事業、公益事業、収益事業があります。ただし、どのような事業でも自由に行えるわけではありません。社会福祉事業を実施するために設立された法人として、公益性と非営利性の両面を兼ね備える社会福祉法人固有のルールが存在します。
💡この記事のポイント
☑社会福祉事業を行うことを目的とした法人である
☑社会福祉事業に支障がない限り、公益事業、収益事業を行うことができる
☑社会通念上、公益性がある事業でも、社会福祉と無関係な公益事業は認められない
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- 1.社会福祉法人の行う事業
- 2.社会福祉事業
- 3.社会福祉事業以外の事業
- (1) 公益事業
- (2) 収益事業
- (3) 各事業の主な具体例
- (4) 地域における公益的な取組
- 4.その他の留意事項
1.社会福祉法人の行う事業
社会福祉法人の行う事業は、社会福祉法26条に規定されているように、経営する社会福祉事業に支障がない限り、公益を目的とする事業(公益事業)、またはその収益を社会福祉事業、公益事業の経営に充てることを目的とする事業(収益事業)を行うことができると規定されています。
つまり、社会福祉法人は社会福祉事業のほかに、
・公益を目的とする事業(公益事業)
・その収益を社会福祉事業もしくは公益事業の経営に充てることを目的とする事業(収益事業)
を行うことが可能です。
ただし、これらは社会福祉事業に支障がないことが大前提です。
社会福祉法26条
社会福祉法人は、その経営する社会福祉事業に支障がない限り、公益を目的とする事業(以下「公益事業」という。)又はその収益を社会福祉事業若しくは公益事業(第2条第4項第4号に掲げる事業その他の政令で定めるものに限る。第57条第2号において同じ。)の経営に充てることを目的とする事業(以下「収益事業」という。)を行うことができる。
2 公益事業又は収益事業に関する会計は、それぞれ当該社会福祉法人の行う社会福祉事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない。
公益事業・収益事業について説明する前に、まずは社会福祉法人の根幹である社会福祉事業について見ていきます。
2.社会福祉事業
社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人です(社会福祉法22条)。そのため、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うこと、自主的にその経営基盤の強化を図ること、提供する福祉サービスの質の向上および事業経営の透明性の確保を図ること(同法24条1項)が必要です。
・社会福祉事業を行うことが目的の法人
・社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的、適正に遂行
なお、社会福祉法人は、地域福祉の推進に努める使命を有していることから、社会福祉事業および公益事業を行うにあたり、日常生活または社会生活上の支援を必要としている者に対して、無料または低額な料金で福祉サービス(いわゆる地域における公益的な取組)を積極的に提供するよう努めなければなりません(同法24条2項)。
それでは、具体的に社会福祉事業について見ていきます。
社会福祉事業は、「第一種社会福祉事業」、「第二種社会福祉事業」に分類され、それぞれ社会福祉法2条において定められています。たとえ、公益性を有し、社会福祉を目的とする事業であっても、同法に定める事業でなければ、社会福祉事業に該当しません。また、社会福祉事業を行わず、公益事業や収益事業のみを行うことはできません。
・社会福祉事業は社会福祉法に定められている事業の実施
・社会福祉事業を行わず、公益事業のみを行うことはできない
社会福祉法22条
この法律において「社会福祉法人」とは、社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人をいう。
社会福祉法24条
社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。
2 社会福祉法人は、社会福祉事業及び第26条第1項に規定する公益事業を行うに当たっては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。
(1) 第一種社会福祉事業
利用者への影響が大きく、事業の継続性・安定性の確保が特に求められる事業が該当します。主として入所施設サービスとなります。経営主体は原則、国、地方公共団体または社会福祉法人です。その他の者が第一種社会福祉事業を経営しようとするときは、都道府県知事等の許可を得る必要があります。
〈第一種社会福祉事業〉
① 生活保護法関係の事業(社会福祉法2条2項1号)
救護施設、更生施設、生計困難者を無料または低額な料金で入所させて生活扶助を行う施設、生計困難者への助葬事業
② 児童福祉法関係の事業(社会福祉法2条2項2号)
乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設を経営する事業
③ 老人福祉法関係の事業(社会福祉法2条2項3号)
養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)
④ 障害者総合支援法関係の事業(社会福祉法2条2項4号)
障害者支援施設の経営
⑤ 女性支援新法関係の事業(社会福祉法2条2項6号)
女性自立支援施設の経営
⑥ その他の事業(社会福祉法2条2項7号)
授産施設の経営、生計困難者への無利子または低利資金の貸付け
なお、共同募金(社会福祉法112条)は第一種社会福祉事業とされます(社会福祉法113条)。
(2) 第二種社会福祉事業
社会福祉の増進に貢献するものであって、第一種社会福祉事業と異なり利用者への影響が比較的小さいため、規制が緩やかな事業です。そのため、経営主体の制限は原則なく、都道府県知事への届出によって開始することができます。ただし、保育所や介護保険事業、障害者福祉サービス事業等の一部の事業において、都道府県知事または市長の認可・指定を必要とするものもあります。
〈第二種社会福祉事業〉
① 生計困難者に対する支援・相談事業(社会福祉法2条3項1号)
生計困難者への衣食その他の生活必需品等の提供、生活相談に応ずる事業
② 生活困窮者自立支援法関係の事業(社会福祉法2条3項1号の2)
認定生活困窮者就労訓練事業
③ 児童福祉法関係の事業(社会福祉法2条3項2号)
障害児通所事業、児童自立生活援助事業、助産施設、保育所、児童厚生施設、児童家庭支援センターの事業等
④ 認定こども園法関係の事業(社会福祉法2条3項2号の2)
幼保連携型認定こども園
⑤ 養子縁組あっせん法関係の事業(社会福祉法2条3項2号の3)
養子縁組あっせん事業
⑥ 母子父子寡婦福祉法関係の事業(社会福祉法2条3項3号)
母子家庭・父子家庭・寡婦の日常生活支援事業等
⑦ 老人福祉法関係の事業(社会福祉法2条3項4号)
⑧ 障害者総合支援法関係の事業(社会福祉法2条3項4号の2)
⑨ 身体障害者福祉法関係の事業(社会福祉法2条3項5号)
⑩ 知的障害者福祉法関係の事業(社会福祉法2条3項6号)
⑪ 生計困難者の簡易住宅貸付け、宿泊所等の利用(社会福祉法2条3項8号)
⑫ 生計困難者の無料、低額な料金で診療を行う事業(社会福祉法2条3項9号)
⑬ 生計困難者の無料、低額な料金で介護老人保健施設、介護医療院を利用させる事業(社会福祉法2条3項10号)
⑭ 隣保事業(社会福祉法2条3項11号)
⑮ 福祉サービス利用事業(社会福祉法2条3項12号)
⑯ 連絡助成事業(社会福祉法2条3項13号)
なお、社会福祉法2条4項において、上記の第一種社会福祉事業に掲げる事業、第二種社会福祉事業のうち上記①~⑫の事業については、常時保護を受ける者の規模が規定に満たない場合などには、社会福祉事業から除外されることが規定されています。
3.社会福祉事業以外の事業
公益事業または収益事業を行う場合には原則として定款への記載が必要です。ただし、公益事業のうち、規模が小さく社会福祉事業と一体的に行われる事業や、社会福祉事業の用に供する施設の機能を活用して行う事業についてはこの限りではありません。また、収益事業の結果として収益が生じた場合でも、社会通念上事業と認められないようなときは、定款への記載は不要とされています。
なお、「社会福祉法人審査基準」において、社会福祉法人が行う事業についての取り組み姿勢について、次のように言及しています。
「社会福祉法人は、社会福祉法第4条の趣旨を踏まえ、地域福祉の推進に努める使命を有していること、また、法第4条第2項の趣旨を踏まえ、地域におけるさまざまなニーズにきめ細かく柔軟に対応するとともに、既存の制度による支援や市場でのサービス供給では対応できない事業の実施などを社会福祉事業の支障のない範囲において積極的に取り組んでいくことが求められるものであること」
(1) 公益事業
公益を目的とする事業であって、社会福祉事業以外の事業が公益事業となります。具体的には、社会福祉法人審査基準で次のような事業が例示されています(社会福祉事業であるものを除く)。
・必要な者に対し、相談、情報提供・助言、行政や福祉・保健・医療サービス事業者等との連絡調整を行う等の事業
・必要な者に対し、入浴、排せつ、食事、外出時の移動、コミュニケーション、スポーツ・文化的活動、就労、住環境の調整等(以下「入浴等」という)を支援する事業
・入浴等の支援が必要な者、独力では住居の確保が困難な者等に対し、住居を提供または確保する事業
・日常生活を営むのに支障がある状態の軽減または悪化の防止に関する事業
・入所施設からの退院・退所を支援する事業
・子育て支援に関する事業
・福祉用具その他の用具または機器および住環境に関する情報の収集・整理・提供に関する事業
・ボランティアの育成に関する事業
・社会福祉の増進に資する人材の育成・確保に関する事業(社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・保育士・コミュニケーション支援者等の養成事業等)
・社会福祉に関する調査研究等
社会福祉法人審査基準では、さらに次の留意事項を掲げています。
① 当該事業を行うことにより、当該法人の行う社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれのないものであること。
② 当該事業は、当該法人の行う社会福祉事業に対し従たる地位にあることが必要であること。
③ 社会通念上は公益性が認められるものであっても社会福祉と全く関係のないものを行うことは認められないこと。
④ 公益事業において剰余金を生じたときは、当該法人が行う社会福祉事業または公益事業に充てること。
公益事業に該当するものとして、次の事業などもあります。
・事業規模要件を満たさないために社会福祉事業に含まれない社会福祉法2条2項各号および同条3項1号~9号に掲げる事業
・介護保険法8条1項に規定する居宅サービス事業、同条14項に規定する地域密着型サービス事業、同条24項に規定する居宅介護支援事業、同法8条の2に規定する介護予防サービス事業、介護予防支援事業(いずれも社会福祉事業に該当するものを除く)
一方、地方公共団体等の設置した社会福祉施設の経営を委託された場合、当該施設の指定管理者となった場合、その施設を経営する事業は、原則として公益事業ではなく、社会福祉事業となります。
(2) 収益事業
収益事業の種類については、特別の制限はありませんが、社会福祉法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるものや、投機的なものは適当ではないとされています。
収益事業は、社会福祉事業、公益事業の財源に充てるため、一定の計画の下に収益を得ることを目的として反復継続して行われる行為であって、社会通念上事業として認められる程度のものであることが必要です。当然、収益事業から生じた収益は社会福祉事業、公益事業の経営に充当しなければなりません。また、収益事業は、社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれのないものでなければなりません。
そのほかに、収益事業は、社会福祉法人が行う社会福祉事業に対し従たる地位にあることが必要であり、社会福祉事業を超える規模の収益事業を行うことは認められません。
なお、母子父子寡婦福祉法14条に基づく資金の貸付けを受けて行う、同法施行令6条1項各号に掲げる事業における収益については、社会福祉事業、公益事業の経営に充当しなくてもよいこととされています。
社会福祉法人審査要領では、事業の種類として、社会福祉法人が所有する不動産を活用して行う貸ビル、駐車場の経営、公共的施設内の売店の経営など、安定して収益が見込める事業が適当とされています。
また、次のような場合は、「社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれ」があるとして、収益事業として適当ではないとしています。
・社会福祉施設の付近において、騒音、ばい煙等を著しく発生させるようなおそれのある場合
・社会福祉事業と収益事業とが、同一設備を使用して行われる場合
なお、法人税法上、収益事業とされる事業(法人税法2条13号)であっても、たとえば福祉用具貸与などは、定款上は公益事業となります。また収益事業の範囲に含まれない事業であっても、定款上は収益事業として扱う場合もありますので、留意してください。
(3) 各事業の主な具体例
第一種社会福祉事業、第二種社会福祉事業、公益事業、収益事業について、主な事業の具体例は次のようになります。
| 事 業 | 概 要 | 主な事業の具体例 |
|---|---|---|
| 社会福祉事業 | 第一種社会福祉事業 (社会福祉法2条、22条) |
養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、ケアハウス、児童養護施設、障害者支援施設など |
| 第二種社会福祉事業 (社会福祉法2条、22条) |
デイサービス、ショートステイ、障害福祉サービス事業、グループホーム、保育所、一時預かり事業、地域子育て支援拠点事業、放課後児童健全育成事業、幼保連携型認定こども園など | |
| 公益事業 | 社会福祉事業以外で公益を目的とするもの (社会福祉法26条) |
社会福祉事業であっても定員等により公益事業とされるもの、相談支援、居宅介護支援事業、地域包括支援センターなど |
| 収益事業 | 社会福祉事業または公益事業の財源に充てるため、継続して行い、法人の社会的信用を傷つけないもの (社会福祉法26条) |
法人の所有する不動産の賃貸、駐車場の経営、公共施設における売店経営など |
(4) 地域における公益的な取組
地域における公益的な取組のうち、公益事業に該当するものを「地域公益事業」といいます。社会福祉充実残額(貸借対照表の資産の部に計上した額から負債の部に計上した額を控除して得た額が事業継続に必要な財産額を上回る財産額)を保有する社会福祉法人は、社会福祉充実計画を策定し、社会福祉事業または地域公益事業等の実施に再投下することが求められます。
この地域公益事業については、国民の税や保険料を原資とする介護報酬や措置費、委託費等により、事業を運営している社会福祉法人の公益的性格を踏まえ、「日常生活または社会生活上の支援を必要とする事業区域の住民に対し、無料または低額な料金で、その需要に応じた福祉サービスを提供するもの」とされています。
4.その他の留意事項
社会福祉法人は、社会福祉事業という公益性の高い事業を安定的・継続的に経営していく責務を負っています。とくに財務面において確固とした経営基盤を有していることが必要であることから、「社会福祉事業を行うに必要な資産を備えなければならない」(社会福祉法25条)と規定されています。そして、法人の資産は、基本財産、その他財産、公益事業用財産、収益事業用財産に区分しなければなりません。
また、公益事業または収益事業に関する会計は、資産なども含めて社会福祉事業に関する会計から区分し、それぞれの事業区分で拠点を設けて区分経理する必要があります。
定款においては、必要的記載事項として、①公益事業を行う場合には、その種類、②収益事業を行う場合には、その種類、と定款記載事項となっています。しかし、前述したように、公益事業のうち、規模が小さく社会福祉事業と一体的に行われる事業などは必ずしも定款の変更を要しないものとされています。事業形態や実施実態により定款上の分類が異なるため、事業内容を精査したうえで適切に定款を整備する必要があります。
【参考資料】
・平成12年12月1日厚生省社会・援護局長等通知「社会福祉法人の認可について」別紙1「社会福祉法人審査基準」(最終改正:令和2年12月25日)
・平成12年12月1日厚生省社会・援護局福祉基盤課長等通知「社会福祉法人の認可について」別紙「社会福祉法人審査要領」(最終改正:令和2年3月31日)
・永田智彦・田中正明『改訂第三版 社会福祉法人の会計実務』(TKC出版)
・TKC全国会社会福祉法人経営研究会監修・谷野芳枝著 テキスト『会計人のための はじめての社会福祉法人(第3版)』
記事提供
株式会社TKC出版
1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
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