2026年04月06日

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2026年(令和8年)度税制改正でインボイス制度はどう変わる?

2026年(令和8年)度税制改正でインボイス制度はどう変わる?

2023年(令和5年)10月1日から始まった消費税のインボイス制度。2026年(令和8年)度税制改正では、このインボイス制度に関する改正があり、小規模事業者向けの経過措置である「2割特例」と、免税事業者からの課税仕入れに係る仕入税額控除割合等が見直されることとなりました。自社にどのような影響があるのか、詳細を確認しておきましょう。

💡この記事のポイント
 ☑個人事業者に限り、経過措置である「2割特例」が「3割特例」に
 ☑免税事業者等からの課税仕入れに係る仕入税額控除割合が「80%」から「70%」に
 ☑控除できる期間が2年間延長されるが、控除可能割合は段階的に引き下げ

1.インボイス制度とは

(1) 制度の概要と改正前の経過措置

 消費税インボイス制度とは、2023年(令和5年)10月に開始された、仕入税額控除の適用要件として適格請求書(以下、インボイス)の保存を求める制度です。仕入税額控除とは、売上に係る消費税額から、仕入等に係る消費税額を控除する仕組みをいいます。原則として、仕入税額控除を受けるためには、帳簿およびインボイスの保存が必要です。
 仕入先が適格請求書発行事業者以外の者(基準期間の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者等)の場合には、原則として仕入税額控除を行うことができず、その分納付税額が増加する可能性があります。
 制度開始に伴い、急激な取引関係の変更や小規模事業者への影響を緩和するため、いくつかの経過措置が設けられました。例えば、インボイス制度開始を契機に免税事業者から課税事業者となった事業者については、納付税額を売上税額の2割とするいわゆる「2割特例」が設けられています。また、免税事業者等からの課税仕入れについては、2023年(令和5年)10月1日から2026年(令和8年)9月30日までの3年間は仕入税額相当額の80%、2026年(令和8年)10月1日から2029年(令和11年)9月30日までの3年間は50%を控除できる経過措置が設けられています。

(2) インボイス(適格請求書)に記載する内容

 前述の通り、インボイス(適格請求書)には、適用税率や税額、登録番号などの一定事項を記載することが求められます。課税事業者は、これらを保存することで、仕入税額控除ができるようになります。
 具体的な記載内容は次の通りです。

■インボイスの記載事項について

 インボイスは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
 具体的には、以下の事項が記載された書類やデータをいいます。なお、請求書に限らず、所定の事項が記載された書類であれば、領収書や納品書など書類の名称を問わず、インボイスとなります。
 ①インボイスの交付先である相手方の氏名または名称
 ②売手(自社)の氏名又は名称及び登録番号
 ③取引年月日
 ④取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
 ⑤10%・8%それぞれの対象となる対価の総額及び適用税率
 ⑥10%・8%それぞれの消費税額等
 ※下線部は、特に注意する項目です。
 ※登録番号は、インボイス発行事業者の登録後に税務署から通知される番号です。

【出典】国税庁「インボイス制度について|国税庁

■インボイスの記載事項が記載された請求書の例

請求書の例
【出典】国税庁「適格請求書の記載事項

 上記項目に抜け漏れがあるとインボイスとして扱われないため、発行する際や受け取る際は十分に注意しましょう。

(3) インボイス制度が導入された理由

 そもそも、インボイス制度が導入された背景には、2019年(令和元年)10月の消費税率10%への引上げと同時に軽減税率(8%)が導入され、複数税率が併存することになった点が挙げられます。
 複数税率の下では、取引ごとに適用税率と税額を正確に区分して把握する必要があるため、請求書等に税率ごとの税額等を明記した「適格請求書(インボイス)」の保存を仕入税額控除の要件とする制度が整備されました。これにより、複数税率が混在する取引でも、税率・税額の整理や仕入税額控除の根拠が明確になり、適正な申告・納税につながることが期待されています。

2.2026年(令和8年)度税制改正での変更点

(1) 「2割特例」から「3割特例」へ

 前述の通り、2023年(令和5年)10月1日から開始されたインボイス制度に伴い、免税事業者から課税事業者となった事業者については、一定期間、納付税額を売上に係る消費税額の2割とする、いわゆる「2割特例」が設けられています。
 令和8年度税制改正では、この2割特例の終了後、これに代わる時限的措置として、納付税額を売上税額の3割とする特例が新たに設けられました。本特例は、2027年(令和9年)および2028年(令和10年)に含まれる各課税期間に限り適用される措置となっています。
 本特例の対象となるのは、インボイス制度開始を契機に免税事業者から課税事業者となった個人事業者です。

〇インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者となった個人事業者
〇基準期間(※)の課税売上高が1,000万円以下
※個人事業者:2年前

【出典】「事務所通信」2026年3月号

(2) 「80%控除」から「70%控除」へ

仕入税額控除

 インボイス制度では、原則として適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、仕入税額控除を行うことができません。ただし、制度開始に伴う急激な影響を緩和するため、一定期間の経過措置として、支払対価に含まれる消費税相当額の一定割合を仕入税額として控除できる仕組みが設けられています。
 前述の通り、現行制度における控除割合は次の通りです。

 ・2023年(令和5年)10月1日~2026年(令和8年)9月30日:80%
 ・2026年(令和8年)10月1日~2029年(令和11年)9月30日:50%

 2026年(令和8年)度税制改正では、2026年10月以降の控除割合について、80%から直ちに50%へ引き下げるのではなく、70%→50%→30%と段階的に見直す方針が示されています。具体的には、

 ・2026年(令和8年)10月1日~2028年(令和10年)9月30日:70%
 ・2028年(令和10年)10月1日~2030年(令和12年)9月30日:50%
 ・2030年(令和12年)10月1日~2031年(令和13年)9月30日:30%

とされています。
 また、一の(=特定の1社・1人の)未登録先ごとの年間仕入額が1億円を超える場合、その超過部分は経過措置の対象外とする見直しも盛り込まれています。
 なお、本経過措置の適用を受けるためには、帳簿および取引内容を記載した請求書等を保存し、経過措置対象取引であることを区分管理する必要があります。

3.自社への影響をチェック

(1) あなたの会社はどの立場?

 インボイス制度は、仕入税額控除の適用要件として適格請求書(インボイス)の保存を求める制度です。そのため、自社が取引において「売り手」か「買い手」かによって影響の受け方が異なります。
 売り手(請求書を発行する側)の場合、取引先からインボイスの発行を求められることがあり、登録していない場合には価格交渉や取引条件の見直しが行われるケースもあります。
 買い手(請求書を受け取る側)の場合は、原則として帳簿およびインボイスの保存がなければ仕入税額控除ができません。取引先から適切な書類を受領できているか、社内で保存体制が整っているかを確認することが重要です。

(2) 取引先に未登録(免税)がどれくらいいる?

 取引先のなかに適格請求書発行事業者でない事業者がどれくらいいるかを把握しておくことも重要です。
 未登録事業者との取引については、経過措置により一定割合の控除が認められていますが、控除できる割合は段階的に引き下げられる予定です。未登録先との取引が多いほど、仕入税額控除の制限による消費税負担の増加につながる可能性があります。
 まずは、取引金額の大きい順や継続支払先順に棚卸しを行うことが有効です。

(3) 影響が大きいのはどっち?

インボイス制度の改正

 今回のインボイス制度の改正について、それぞれの影響は次の通りです。

・「3割特例」は、インボイス制度開始を契機に免税事業者から課税事業者となった個人事業者の納税負担の急増を緩和するための時限措置です。3割特例は個人事業者の納税額を軽減するための特例であり、買手側企業が仕入税額控除などで直接的な影響を受けることはありません。ただし、外注先の個人事業者の納税負担の変化に伴い、取引条件に関する交渉姿勢などが変動する可能性がある点には留意が必要です。
 また、個人事業主が簡易課税制度を適用して申告する場合、卸売業では90%、小売業では80%のみなし仕入率が適用されるため、2026年(令和8年)度税制改正の内容を踏まえると、これらの業種では簡易課税制度を適用するほうが消費税の納付税額が少なくなる可能性があることに留意しましょう。なお、2026年(令和8年)分まで「2割特例」により申告を行った個人事業者が翌年分から簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、2027年(令和9年)中に「消費税簡易課税制度選択届出書(2027年(令和9年)分からの簡易課税制度の適用を受ける旨を記載したもの)」を提出すれば、2027年(令和9年)分から、簡易課税制度の適用を受けることができます。
・「70%控除」は、免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の控除割合の見直しです。本則課税を適用している企業では、インボイス未登録の事業者(免税事業者等)からの課税仕入については、控除可能額が経過措置により段階的に縮小するため、これらの仕入割合が高いほど、消費税負担が増加する可能性があります。

4.中小企業が実務で気をつけたいポイント

 中小企業が実務で気をつけたいポイントは、主に次の3点です。

(1) 仕入先がインボイス登録事業者かどうかを把握する

 インボイス制度では、仕入税額控除の適用要件として、帳簿および適格請求書(インボイス)等の保存が必要とされています。そのため、まずは仕入先・外注先・協力会社について「適格請求書発行事業者かどうか」「登録番号が有効か」を整理しておきましょう。登録番号は請求書に記載されますが、国税庁の公表サイトで有効性を確認することも可能です。
 また、保存体制の整備も重要です。紙で受け取る請求書と、PDFやシステム経由で受け取る請求書(電磁的記録)が混在すると、保存漏れが起きやすくなります。「受領→内容確認→保存」の流れを社内ルールとして明確にしておくと安心です。

(2) 受領した請求書の「記載漏れ」と「税率区分」をチェック!

受領した請求書

 インボイス発行事業者からの請求書であっても、記載事項に不備があると、そのままでは仕入税額控除の要件を満たさない可能性があります。
 例えば、「登録番号があるか」「取引年月日や取引内容が分かるか」「税率(8%・10%)ごとの金額と消費税額が正しく記載されているか」など、控除の根拠になる部分を優先して確認するようにしましょう。不備があれば早めに修正依頼を行うことで、決算直前の混乱を防ぐことができます。

(3) 少額特例(1万円未満)のルールを決めよう

 インボイス制度への対応として気を付けたいのが、消耗品購入などの小口支出です。基準期間の課税売上高が1億円以下など一定要件を満たす事業者については、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくても一定事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が可能となる特例があります(対象期間は2023年(令和5年)10月1日~2029年(令和11年)9月30日)。
金額判定は1回の取引単位で判断されます。例えば、5,000円と7,000円の商品を同時に買って合計12,000円になった場合は、対象外になります。少額特例を使う場合は、①立替精算・小口現金の運用で「1回の購入金額」を意識する、②会計入力で「少額特例対象」とわかる区分を記録する、③帳簿要件は満たしつつ、実務上はレシート等も併せて保管する――など、会計処理上の区分管理や社内ルールを整備しておくと運用が安定します。

(4) 取引条件の見直しは慎重に!

 適格請求書発行事業者でない取引先との取引では、仕入税額控除が制限される(消費税の負担が増える可能性がある)ため、価格交渉によってその負担を軽減しようとするケースがあります。
 しかし、インボイスを理由とする一方的な値引き要請等は、公正取引委員会が問題視する場合もあります。取引条件の見直しを行う際は、十分な協議と書面化を徹底し、それでも「不利な条件を一方的に提示された」といった場合には、必要に応じて専門家へ相談することが望ましいでしょう。

5.まとめ

 2026年(令和8年)度税制改正により、インボイス制度に関する負担軽減措置は段階的な見直しが行われます。
 いわゆる「2割特例」は終了し、一定の個人事業者については時限的に「3割特例」が設けられる一方、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の控除割合は、70%、50%、30%と段階的に引き下げられる予定です。これにより、未登録事業者との取引が多い企業や、外注先に個人事業者が多い企業では、納税額や取引条件への影響が生じる可能性があります。
 重要なのは、自社が「売り手」「買い手」のどちらの立場で影響を受けやすいのかを整理し、取引先の登録状況の把握や保存体制の整備、少額特例の活用などを通じて、早めに実務対応を進めておくことです。制度は段階的に変わりますが、基本は正確な記帳・保存です。
 今回の税制改正では、インボイス制度の変更の他にも、少額減価償却資産の特例の拡充や、いわゆる「年収の壁」に関わる改正などが盛り込まれています。より詳しく知りたい場合、あるいは改正が自社に与える影響が心配という場合には、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

【参考資料】

・「事務所通信」2026年3月号
・「事務所通信」令和8年度改正税法特集号
・財務省「令和8年度税制改正の大綱
・国税庁「インボイス制度について|国税庁
・国税庁「インボイス制度とは|国税庁
・国税庁「適格請求書の記載事項
・国税庁「少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)の概要|国税庁
・中小企業庁「インボイス制度後の免税事業者との取引等に関するよくある質問 | 中小企業庁
・公正取引委員会「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A | 公正取引委員会
・政府広報オンライン「令和5年10月からインボイス制度が開始! 事業者間でやり取りされる「消費税」が記載された請求書等の制度です | 政府広報オンライン
・新宿間税会「2割特例について:小規模事業者の消費税負担軽減制度 - 新宿間税会

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 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
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