令和7年4月から新公益法人制度がスタートしています。主要な改正事項であった「財務規律の柔軟化・明確化」は、一般社団・財団法人が公益法人に移行するための公益認定基準にも大きな影響を及ぼしています。認定申請の流れとどのような申請書類が必要か見ていきます。
💡この記事のポイント
☑新しい公益法人制度の改正内容をしっかり把握する
☑認定法第5条の公益認定基準と同法第6条の欠格事由は公益認定の申請と密接に関係している
☑申請書作成までに定款変更が必要となり、機関決定も必要なことを理解して準備を進める
☑申請書における財務に係る書類では「中期的収支均衡」「公益目的事業比率」「使途不特定財産」と、改正された事項が中心となるので、よく理解しておく
☑公益認定後においても書類等の作成・提出が必要なことを忘れずに、きちんと行う
閉じる開く
- 1.新しい公益法人制度のポイント
- 2.公益認定の基準
-
3.申請から認定までの流れ
- (1) 公益認定申請の流れ
- (2) 申請書作成までに定款変更が必要
- 4.申請書の構成
- 5.開示書類の作成・提出
1.新しい公益法人制度のポイント
新たに公益社団法人・財団法人になるための公益認定の基準や申請にかかる書類については、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(以下、「認定法」)が令和6年に改正されたことに伴い、大きく変わりました。そのため、まずは新しい公益法人制度のポイントから見ていきます。
令和7年4月施行の新しい公益法人制度がスタートしていますが、改正に至った経緯には次のことがありました。「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(令和4年6月7日閣議決定)及び「経済財政運営と改革の基本方針2022」(令和4年6月7日閣議決定)に基づき、民間による社会的課題解決に向けた公益的活動を一層活性化し「新しい資本主義」の実現に資する観点から、公益認定の基準をはじめ現行の公益法人制度の在り方を見直した公益法人制度改革が必要との議論が行われました。
その結果として改正された主な内容を見てみると、財務規律においては、これまでの費用を超える収入を得てはならないという収支相償原則を見直し、財源の有効活用という趣旨が明確になるよう収支均衡(収入を費用に充てる)を規定し、より柔軟な資金計画を可能としました。行政手続の簡素化・合理化においては、公益法人の柔軟・迅速な事業展開を促進する観点から、法人の事務負担を軽減し、迅速な事業展開を可能とするため、変更認定申請が必要な多くの事項を届出事項とするなど、事前の一律チェックから事後の重点的なチェックへ指導・監督のあり方も転換しました。また、「公益目的事業財産」を法令上明確化することで、区分経理が前提となりますが、算定のための煩雑な事務作業をなくしました。その一方で、不祥事等の防止という観点や自律的ガバナンスの充実ということから、外部理事・監事の設置などとともに情報開示を強化する等、一層の透明性を求めています。
改正のポイントを見ていきましょう。
①財務規律の柔軟化・明確化(より自由な資金活用)
・財務規律:中期的収支均衡。黒字は5年間で解消(過去の赤字と通算可)。公益目的事業全体で収支均衡判定。
(改正前:収支相償。黒字は2年間で解消(過去の赤字と通算不可)。各公益目的事業単位でも判定)
・積立資金:公益目的事業について、特定費用準備資金と資産取得資金を統合し公益充実資金に。複数目的のための1つの資金として管理。
(改正前:特定費用準備資金と資産取得資金が存在。目的ごとに資金を管理)
・財産保有制限:使途不特定財産規制。上限を過去5年間の事業費平均額に見直し。別枠で「予備財産」の保有が可能に。
(改正前:遊休財産規制。使途の定まっていない財産保有は、当該事業年度の事業費が上限)
②行政手続の簡素化・合理化(より柔軟な事業展開)
・欠格事由:自発的な申請による認定取消の場合を、公益認定を受けることができない場合から除外。
(改正前:認定取消を受けた場合、その法人は5年間公益認定を受けることができない)
・事業変更:収益事業等の変更を届出化、公益目的事業の変更のうち「軽微な変更」の範囲を拡大し、届出化。
(改正前:事業を変更する場合、申請書記載事項の変更と伴うものは変更認定申請が必要)
③自律的ガバナンスの充実、透明性向上(さらなる信頼確保)
・各理事・各監事:改正前の「特別利害関係にある者が、理事、監事それぞれで3分の1を超えないこと」の規制に加え、外部理事・監事を最低1名設置。
・理事・監事の関係:改正前は特に定めがなかった理事・監事間の関係について、特別利害関係がないことを設ける。
・会計監査人の設置:負債50億円以上または収益・費用・損失が100億円以上の場合に設置。
・提出書類の開示:財産目録等(範囲を拡大)について、行政庁で公表。
・区分経理:原則すべての法人で区分経理。
・開示情報の拡充:2千万円を超える役員報酬についてその額・理由を追加。また、海外送金・リスク軽減策の有無を、開示情報に追加。
2.公益認定の基準
一般社団法人または一般財団法人が公益社団法人・公益財団法人として認定を受けるためには、「認定法」が定める公益認定の基準を充足する必要があります。
この公益認定の基準は、認定法第5条に21項目が列挙されることとなりましたが、この基準をすべて満たしたとしても、同法第6条に規定する欠格事由に該当する場合は公益認定を受けられません。
(1) 認定法第5条に定める「公益認定基準」
認定法の第5条第1号~同条第21号まで、公益認定の基準が規定されています。以下に各号の要旨をまとめます。
第1号…法人の設立目的・活動の中心が公益目的事業であること。
第2号…公益目的事業を継続的・安定的に実施するため、経理的基礎および技術的能力を有するものであること。
第3号…社員、評議員、理事、監事、使用人その他の法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであること。
第4号…営利事業者または特定個人・団体に対し寄附その他の特別の利益を与える行為を行わない。ただし、当該公益法人が行う公益目的事業のために、公益法人に対し行う寄附等はこの限りでない。
第5号…投機的な取引、高利の融資その他の公益法人の社会的信用の維持にふさわしくない事業、公序良俗を害するおそれのある事業を行わない。
第6号…公益目的事業について、中期的収支均衡が図られることが見込まれること。
第7号…収益事業を行う場合、公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれがないものであること。
第8号…公益目的事業比率が100分の50以上となると見込まれること。
第9号…使途不特定財産額が規定する上限額を超えないと見込まれるものであること。
第10号…各理事について、当該理事および当該理事と特別利害関係にある理事の合計数が、理事総数の3分の1を超えないものであること。監事についても同様。
第11号…他の同一団体の理事または使用人その他これに準ずる者である理事の合計数が、理事の総数の3分の1を超えないものであること。監事についても同様。
第12号…各理事について、監事と特別利害関係を有しないものであること。
第13号…会計監査人を設置していること。ただし、当該法人が負債50億円以上または収益・費用・損失が100億円以上の基準に達しない場合は、この限りでない。
第14号…理事・監事・評議員に対する報酬等が、不当に高額にならないような支給の基準を定めていること。
第15号…理事のうち1人以上が、当該法人またはその子法人の業務執行理事または使用人でなく、かつ、その就任の前10年間、これらであったことがない者を定めることとし、理事のうち1人以上を外部理事にしなければなりません。
第16号…監事のうち1人以上が、その就任前10年間当該法人またはその子法人の理事 または使用人であったことがない者として、外部監事の就任を求めています。
第17号…一般社団法人にあっては、①社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付していないこと、②社員の議決権に関して、不当な定款の定めでないこと、③理事会を設置していること。
第18号…他の団体の意思決定に関与することができる株式その他の財産を保有していないこと。
第19号…公益目的事業を行うために不可欠な財産があるときは、その旨並びにその維持および処分について、必要な事項を定款で定めているものであること。
第20号…公益認定の取消しまたは合併により法人が消滅する場合、公益目的取得財産残額があるとき、帰属先について、他の公益法人等、国または地方公共団体に贈与する旨を定款に定めていること。
第21号…清算する場合の残余財産を類似の事業を目的とする他の公益法人等、国または地方公共団体に帰属させる旨を定款に定めていること。
(2) 公益認定を受けられない「欠格事由」とは
公益認定を受けることができない欠格事由についても確認しておきましょう。
(欠格事由)
認定法第6条
前条(第5条第1号~第21号までの公益認定基準)の規定にかかわらず、次(第1号~第6号)のいずれかに該当する一般社団法人又は一般財団法人は、公益認定を受けられない。
第1号は、理事・監事・評議員の資格要件に関するものとなります。次のイ~ニのいずれかに該当する者があるとき、公益認定を受けることができません。
イ 公益認定を取り消された場合、その取消しの原因となった事実があった日以前1年以内に当該公益法人の業務を行う理事であった者でその取消しの日から5年を経過しないもの
ロ 認定法、一般社団・財団法人法、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に違反したことにより、もしくは刑法等の罪を犯したことにより、または国税・地方税の法律中の偽りその他不正の行為により、税を免れ、納付せず、もしくはこれらの還付を受け、罰金刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ハ 拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ニ 暴力団員である者又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
続く第2号は、過去の公益法人の認定取消しにかかる規定で、「公益認定を取り消され、その取消しの日から5年を経過しないもの」は公益認定を受けられません。
第3号・第4号は、法人の運営における内容の法令等に違反となり、「定款や事業計画書の内容の法令等違反」「事業の実施にあたり行政機関の許認可等を受けられない」こと、第5号は、「国税、地方税の滞納、滞納処分の日から3年を経過しないもの」、第6号は「暴力団員等がその事業活動を支配するもの」と、公序良俗に反する法人は公益認定を受けられません。
3.申請から認定までの流れ
(1) 公益認定申請の流れ
公益目的事業を行う一般社団・財団法人が公益認定を希望する場合、行政庁の認定を受けることができます。
申請から認定までの手続の流れは、次のようになります。
内閣府資料「申請の手引き 公益認定編」
(2) 申請書作成までに定款変更が必要
公益認定の申請書には、定款の添付が必要となります。この定款は、認定法に適合させるための機関等の変更のほか、公益認定基準に適合させるための変更を行う必要があります。
法人においては、定款変更のため、社員総会または評議員会の特別決議による機関決定をしておく必要があります。
4.申請書の構成
申請書は次のような構成となっています。
① 申請書(かがみ文書)
② 別紙1:法人の基本情報について
③ 別紙2:法人の事業について
④ 法人の財務に関する公益認定の基準に係る書類について
⑤ その他の添付書類
「④ 法人の財務に関する公益認定の基準に係る書類について」は、特に大きく変更されたところになり、「中期的収支均衡の計算」(別表A)、「公益目的事業比率の計算」(別表B)、「使途不特定財産額の計算」(別表C)についてのそれぞれの個票を作成することになり、次の書類で構成されています。
・別紙A(1):中期的収支均衡の計算(50%の繰入れ)
・別紙A(2):中期的収支均衡の計算(50%超の繰入れ)
・別紙A(5):公益充実資金の明細
・別紙B(1):公益目的事業比率の算定総括表
・別紙B(2):土地の使用に係る費用額の算定
・別紙B(3):融資に係る費用額の算定*
・別紙B(4):無償の役務の提供等に係る費用額の算定*
・別紙B(5):公益目的事業比率算定に係る計算表*
・別紙C(1):使途不特定財産額の保有制限の判定
・別紙C(2):控除対象財産(使途不拘束資産)の明細
・別紙C(3):資産取得資金
・別紙C(4):特定費用準備資金
・別紙C(5):公益目的事業継続予備財産
・別添1-1:法人の組織について(公益社団法人用)
・別添1-2:法人の組織について(公益財団法人用)
・別添2:株式等の保有状況
・別添3:経理的基礎の説明
・別添4:役員等名簿
・別添5:確認書
「*」は様式の変更がなかった書類
また、別添書類やその他の添付書類についても、認定基準に関係した書類であり、また点数も多いのでチェックリストなどを活用するのがよいと思われます。
令和6年の改正認定法による「中期的収支均衡」においては、将来の公益目的事業の発展・拡充を積極的に肯定する観点から、公益目的事業を充実させるため将来において必要となる資金を「公益充実資金」として積み立てたものについては、中期的収支均衡の判定上費用とみなすこととしています。なお、一定の使途の具体性等の記載が必要です。
申請先の行政庁については、①2以上の都道府県の区域内に事務所を設置する法人と、②2以上の都道府県の区域内において公益目的事業を実施することを定款で定める法人については、内閣総理大臣。③上記の①②以外の法人は、その事務所が所在する都道府県知事となります。
5.開示書類の作成・提出
公益認定を受けた法人は、遅滞なく、事業計画書や収支予算書等の書類を作成し、事務所に備置き、閲覧等に供するとともに、行政庁に提出します。情報開示については、毎事業年度の開始前に、事業計画書等の書類を作成し、事業年度末日までの間、主たる事務所及び従たる事務所に備え置かなければなりません。また、毎事業年度の経過後3月以内に、財産目録等の書類等を作成し、5年間その主たる事務所に、写しを3年間その従たる事務所に備え置かなければなりません。なお、財産目録は行政庁に提出する必要があります。
そのほかに認定後に作成する書類等として、一般社団・財団法人が事業年度の開始の日以外の日に公益認定を受けた際の計算書類等があります。公益認定の前後で計算書類等の作成期間を区分して、①一般社団・財団法人として最終年度と、②公益法人としての初年度の計算書類等を作成しなければなりません。
【参考文献】
・内閣府「申請の手引き 公益認定編」(一般法人が公益認定を申請する場合)
・内閣府「新公益法人制度 説明資料」(令和7年5月15日版)
・TKC全国会公益法人経営研究会編「Q&A公益社団・財団法人の組織運営」(令和7年4月施行 新公益法人制度対応版)
・脇坂誠也・石川広紀『これはよくわかる! 社団・財団・NPO法人の運営・会計・税務』TKC出版
記事提供
株式会社TKC出版 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。


