2026年03月24日

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「医療・介護等支援パッケージ」を有効に活用しよう

「医療・介護等支援パッケージ」を有効に活用しよう

医療機関等において、物価高騰・賃金上昇の影響から経営がひっ迫する状況となっているなか、高市早苗首相は「『強い経済』を実現する総合経済対策」を打ち出し、報酬改定を待たずに、前倒しで「医療・介護等支援パッケージ」の緊急措置を図ることにしました。具体的な内容と、今後の施策動向について見ていきます。

💡この記事のポイント
 ☑「医療・介護等支援パッケージ」は報酬改定の効果を前倒しするものなので、積極的に活用することが求められている
 ☑介護・障害福祉は期中の報酬改定を令和8年度に実施する
 ☑賃上げ・物価上昇に対する支援が中心であるが、併せて生産性向上による人材確保の支援であることを理解する
 ☑支援を受けるための要件等について、事前に国・都道府県等に確認しておく
 ☑将来の運営・経営について見据えることも必要

1.報酬改定を待たず「医療・介護等支援パッケージ」で緊急支援

 「「強い経済」を実現する総合経済対策」は、迅速に物価高対策を行うことを第一としつつ、危機管理投資・成長投資の戦略分野への頭出しとなる予算措置となります。そのため診療報酬改定を待たずに、また臨時といえる介護報酬改定等が施行されるまでの、緊急措置として医療・介護事業者等を支援するものとなります。総合経済対策の裏付けとなる令和7年度補正予算も成立(令和7年12月16日)しました。政策の柱となる「医療・介護等支援パッケージ」は、厚生労働省の補正予算(2兆3,252億円)のうち最も予算額の大きい1兆3,649億円を充てることになりました。

■令和7年度補正予算「医療・介護等支援パッケージ」の内訳 1兆3,649億円
(医療分野)1兆368億円
○医療機関・薬局における賃上げ・物価上昇に対する支援5,341億円
○施設整備の促進に対する支援462億円
○福祉医療機構による優遇融資等の実施804億円
○生産性向上に対する支援200億円
○病床数の適正化に対する支援3,490億円
○出生数・患者数の減少等を踏まえた産科・小児科への支援72億円
(介護等分野)3,281億円
○介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善に対する支援1,920億円
○介護事業所・施設のサービス継続に対する支援510億円
○介護テクノロジー導入・協働化・経営改善等に対する支援220億円
○訪問介護・ケアマネジメントの提供体制確保に対する支援71億円
○障害福祉分野における賃上げ・テクノロジー導入等に対する支援453億円
○福祉医療機構による優遇融資の実施、社会福祉法人の連携・協働の推進106億円
○医療・介護分野等へのマッチング支援の強化のためのハローワークの体制整備0.5億円

2.医療分野のパッケージの内容

(1) 医療分野の賃上げ・物価上昇に対する支援

 「医療機関・薬局における賃上げ・物価上昇に対する支援」については5,341億円を投入します。経済状況の変化等に対応するため、診療に必要な経費にかかる物価上昇への的確な対応や、物価を上回る賃上げの実現に向けた支援となります。都道府県を通じて交付申請した医療機関等に対して国が所要額を交付決定し、都道府県が医療機関や保険薬局に支給します(病院の場合は直接、国に申請をします)。

① 賃上げ支援に関する給付

 ・病院 1床あたり8.4万円(救急に対応する病院への加算あり)
 ・有床診療所(医科・歯科) 1床あたり7.2万円
 ・無床診療所(医科・歯科) 1施設あたり15.0万円
 ・訪問看護ステーション 1施設あたり22.8万円
 ただし、注意が必要なのは、令和8年2月1日時点でベースアップ評価料を届出済みの施設のみが対象となる方向性が示されていることです。届出が未了の施設で当該補助の申請意向がある施設においては、令和8年1月30日までにベースアップ評価料の届出をしてください。

② 物価上昇支援に関する給付

 ・病院 1床あたり11.1万円(救急に対応する病院への加算あり)
 ・有床診療所(医科・歯科) 1床あたり1.3万円
 ・無床診療所(医科・歯科) 1施設あたり17.0万円
 ※訪問看護ステーション向けの支援については、別途措置予定。
 令和6年度診療報酬改定以降の物価動向を背景とする足元の物価高騰に対応するための措置であり、特段の要件等はありません。

③ 救急に対応する病院への加算

 1床あたりの8.4万円の支援額に、救急受入件数の区分により1施設あたり救急加算額を加算します。具体的には、救急受入件数1件以上~1,000件未満では500万円、1,000件以上は1,500万円、2,000件以上は3,000万円、3,000件以上は9,000万円、5,000件以上は1.5億円、7,000件以上は2億円の補助となります。なお、3次救急病院については、5,000件未満の場合は受入件数の区分によらず、1億円の加算となります。
 また、別途、病床数適正化支援、施設整備等支援及び産科・小児科支援や、食費・光熱費等に対して「重点支援地方交付金」(地方公共団体)による支援が行われます。
 物価分については、全身麻酔手術件数または分娩取扱数(3を乗じた数)が、800件以上、2,000件以上の病院(救急受入件数3,000件未満に限る)にあっては、それぞれ1施設2,000万円、8,000万円を加算します。なお、救急に対応する病院への加算との併給はできません。

④ 保険薬局に対する支援

 1施設あたりの賃金分・物価分の支援が行われますが、1法人あたりの薬局数に応じて傾斜配分されます。
 具体的には、1~5店舗で1施設あたり賃金分14.5万円と物価分8.5万円の合計23.0万円、6~19店舗では賃金分10.5万円と物価分7.5万円の合計18万円、20店舗以上は賃金分7万円と物価分5万円の合計12万円を補助します。

(2) 施設整備の促進に対する支援

 物価高騰の影響を受けた病院等への支援として「施設整備促進支援事業」に462億円を充てます。医療提供体制施設整備交付金、医療施設等施設整備費及び地域医療介護総合確保基金(Ⅰ-1)の交付対象となる新築、増改築等を行う医療機関に対して平米数に応じた建築資材高騰分等の補助を行います。
 交付額=(市場価格-補助事業単価)×国負担分相当

(3) 福祉医療機構による優遇融資等の実施

 物価高騰の影響を受けた医療機関等が事業を継続できるよう、福祉医療機構に対して速やかな貸付の実行や適切な債権管理を行うための機構の財政基盤及び審査体制等の強化を図るための支援を行います。融資財源として財政融資資金を措置します。
 また、債務超過等により必要な新規融資が受けられなくなっている民間病院の財政状況を改善させ、民間金融機関からの融資再開につなげるための資本性劣後ローンを創設します。

(4) 医療分野における生産性向上に対する支援

生産性のイメージ

 業務効率化・職場環境改善に関する目標値を設定し、進捗管理を行う「業務効率化推進委員会(仮称)」を設置し、ICT機器等の導入等の取り組みを行う病院に対して必要経費を支援し、医療分野の生産性向上を図ります。
 総事業費:1病院あたり1億円(うち交付額上限は8,000万円)

(5) 病床数の適正化に対する支援

 「病床数適正化緊急支援基金」を創設し、医療需要の変化を踏まえた病床数の適正化を進める医療機関への支援を行います。
 交付対象・交付額:病院(一般・療養・精神)・有床診療所に1床あたり4,104千円(休床の場合は2,052千円)

(6) 産科・小児科医療機関等に対する支援

 出生数が減少するなかでも、地域で子どもを安心して産み育てることができるよう産科・小児科医療機関等に対し支援します。
 ・分娩取扱施設支援事業:分娩数が減少している分娩取扱施設に対し、一定規模の分娩取扱を継続するための費用を支援
  補助単価:1施設あたり580万円~1,740万円
 ・地域連携周産期支援事業(分娩取扱施設):分娩取扱施設が少なく、当面集約化が困難な地域に所在する施設に対して、分娩取扱を継続するための費用を支援
  補助単価:1施設あたり最大1,124万6,000円
 ・地域連携周産期支援事業(産科施設):妊婦健診等の産前・産後の診療を行い、近隣の分娩取扱施設との連携体制を構築している施設に対して、必要な施設整備、設備整備にかかる費用を支援
  補助単価:1施設あたり723万9,000円(施設整備)、463万円(設備整備)
 ・小児医療施設支援事業:休日夜間の入院を要する小児救急患者を受け入れるなど、地域に不可欠な小児医療の拠点となる機能を持つ病院に対して、体制整備にかかる費用を支援
  補助単価:小児科部門の病床1床あたり21万400円~105万2,000円

3.介護等分野のパッケージの内容

介護のイメージ

(1) 4つの支援事業を中心とした介護分野支援

 総合経済対策にもあるように、令和8年度に期中の介護報酬改定を実施し、他職種と遜色のない処遇改善に向け必要な対応を行うとしています。「医療・介護等支援パッケージ」では、報酬改定を待たずに、人材流出を防ぐための緊急的措置として、賃上げ・職場環境改善の支援や物価上昇に対する支援等を行います。

① 介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業

 介護従事者に対して幅広く月1万円、協働化に取り組む事業者の介護職員に対する上乗せ0.5万円、職場環境改善の支援(人件費に充てた場合、介護職員への0.4万円の賃上げ相当)。
 補助金額はサービスごとに交付率を設定し、各事業所の総報酬にその交付率を乗じた額となります。期間は令和7年12月~令和8年5月の賃上げ相当額を支給します。
 なお、補助を受けるには、処遇改善加算、生産性向上加算の取得事業者や、職場環境改善を計画し実施する事業者などの要件があります。詳細をご確認ください。

② 介護事業所・施設のサービス継続支援事業

 ・介護事業所・施設が必要な介護サービスを円滑に提供できるよう、介護事業所・施設のサービス類型・規模等を踏まえ、訪問系サービスの移動に伴い必要となる経費、介護事業所・施設の備蓄物資やポータブル発電機などの災害発生時に必要な設備備品などの購入費用等に対する補助となります。
  補助上限額は、介護事業所は20万円/事業所、特養などの施設系事業所は定員1人あたり6千円となります。訪問介護や通所介護事業所は20万円/事業所で、規模・提供形態に応じて上限額が30万円、40万円、50万円(通所は最大40万円)と区分されます。
 ・介護保険施設等については、上記のほか食料品等の購入費等に対する補助もあります。補助上限額は、定員1人あたり1.8万円です。
 ・また、施設の大規模修繕等に対する支援が実施されます。広域型施設において「第1次国土強靭化実施中期計画」に基づく取り組みと一体的に行う大規模修繕等や、小規模な高齢者施設の改修・大規模修繕等に必要となる経費等に対する支援となります。

③ 介護テクノロジー導入・協働化・経営改善等支援事業

 介護現場の生産性向上のための介護記録ソフト等の介護テクノロジーの導入・定着や、経営の協働化・大規模化等を通じた職場環境改善に取り組む介護サービス事業者に対する支援となります。

④ 訪問介護・ケアマネジメントの提供体制確保支援事業

 都道府県・市町村が事業所の規模・形態や地域の実情に応じた最適な支援策を柔軟に実施できるよう、訪問介護等サービス提供体制の確保に向けた総合対策を行います。
 経験年数の短いヘルパーへの同行支援、採用活動の支援などの人材確保体制構築支援、ヘルパー等の常勤化促進支援、協働化・大規模化の取り組み支援などの経営改善支援事業のほか、地域の体制づくり支援事業を新たに行います。
 地域の体制づくり支援事業は、以下の3点の取り組みにかかる必要な経費となります。
 ・訪問介護におけるタスクシェア・タスクシフトの推進支援
 ・通所介護事業所等の多機能化(訪問機能の追加)の推進支援
 ・訪問介護事業所のサテライト設置の推進支援

(2) 賃上げ・ICT等の活用・生産性向上等を支援する障害福祉分野

 介護と同様に障害福祉分野においても令和8年度に期中の報酬改定を行う一方で、「医療・介護等支援パッケージ」では、緊急的対応として賃上げの支援を行います。
 また、ロボットやICT等のテクノロジーの導入支援のほか、人材確保や生産性向上等に取り組む障害福祉サービス事業所に対して支援を実施します。

① 障害福祉分野における賃上げに対する支援

 障害福祉従事者に対して月1万円(令和7年12月~令和8年5月の賃上げ相当額を支給)となります。処遇改善加算の取得事業者等が対象となります。

② 障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業

 障害福祉現場の職員の介護業務の負担軽減、労働環境の改善、業務効率化を推進するため、ロボットやICT等のテクノロジーの導入に係る経費等の補助となります。
 支援の対象となるのは、日常生活支援における、移乗介護、移動支援、排泄支援、見守り・コミュニケーション、入浴支援、機能訓練支援、食事・栄養管理支援のいずれかの場面において利用する介護ロボットや、見守り機器の導入に必要な通信環境を整備するための経費などです。

③ 障害福祉分野における人材確保・生産性向上サポート促進事業等

 都道府県等が、事業所支援等を行うためのサポートセンターの設置等を行う場合に必要な事務費等を補助し、障害福祉サービス等事業所や市町村に対するワンストップ型の支援体制の確保を図ります。また、国が人材確保や生産性向上にかかる効果的な取り組みや手法の全国展開を進めるとしています。

(3) 福祉医療機構による優遇融資の実施、社会福祉法人の連携・協働の推進

 物価上昇の影響を受けた福祉施設等の資金繰りを的確に支援するための無利子・無担保等の優遇融資を行う(独)福祉医療機構に対して、速やかな貸付の実行や適切な債権管理を行うための機構の財政基盤、審査体制等の強化を図ります。
 また、社会福祉法人の連携・協働を推進するため先駆的な取組への支援とともに、法人間のつながりの構築、経営上の課題等の共有を進めていくことになります。

(4) 医療・介護分野等へのマッチング支援の強化のためのハローワークの体制整備

人材確保支援のイメージ

 医療・介護・保育等の人材確保対策総合推進事業として、人材確保支援の窓口となる「人材確保センター」の増設、就職支援コーディネーターの増員を行います。

4.今後の施策動向

 まず、令和7年度補正予算を早期に執行するための調整が進んでいます。
 また、補正予算に引き続き、医療分野では診療報酬改定が本体改定率+3.09%うち賃上げ分+1.70%、うち物価対応分+0.76%と、引き続き賃上げ・物価上昇への対応を主とした施策が進んでいきます。また、実際の経済・物価の動向が見通しより大きく変動した場合は、令和9年度分の対応をさらに調整するとしています。
 介護と障害福祉の分野においては、令和8年度は報酬改定の時期ではありませんが、期中の報酬改定を実施し、介護+2.03%、障害福祉+1.84%を引き上げます。介護従事者について月1.0万円、障害福祉従事者も月1.0万円等によって、介護職員、福祉・介護職員にいずれも定期昇給込みで月最大1.9万円の賃上げが可能な水準と、見込んでいます。さらに、令和9年度は両報酬の改定年となるので、医療と同様に経済・物価の動向により報酬改定の対応がなされることとなるでしょう。
 いずれにしても、当面の今後の施策動向としては、賃上げ・物価上昇に対する支援が中心となっていきますが、持続的なサービス提供ということを考えれば、人手不足への対応が重要となります。施策の面で賃上げを支援する流れのなかで、将来にわたる持続的な運営・経営ということを念頭に、しっかりと魅力ある職場にしていくことが重要になると思われます。

【参考文献】

・令和7年度厚生労働省補正予算案のポイント
・令和7年度厚生労働省補正予算案の主要施策集
・令和7年12月24日「大臣折衝事項」(厚生労働省)

株式会社TKC出版

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