令和8年度税制改正大綱が決定し、主な項目として、物価高への対応とした所得金額が2,350万円以下での基礎控除額等の引き上げ、インボイス制度における2割特例等の経過措置の見直し、優良な電子帳簿の使用等を要件とした青色申告特別控除の控除額引き上げの実施が明らかとなりました。また、賃上げ促進税制は今後、中小企業向けに特化するとし、中小企業向けの現行制度は令和8年まで継続、令和9年も新たな措置による支援が検討されています。
💡この記事のポイント
☑賃上げ促進税制は、大企業向けは適用期限を待たずに終了。中堅企業は要件のハードルを上げつつ適用期限で終了。中小企業のみ現行制度が継続される。
☑免税事業者等からの課税仕入れに関する税額控除の経過措置は、小規模な免税事業者等への影響を鑑み、段階的に縮減を行う。
☑所得税について基礎控除額・給与所得控除額の引き上げが決定。令和8年・9年のみの時限措置による基礎控除額引き上げも行われる。
☑青色申告控除は優良な電子帳簿の使用等で控除額が引き上げとなる。
※本記事は、令和7年12月19日に発表された「令和8年度税制改正大綱」(自由民主党・日本維新の会)、令和7年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」に基づいてまとめています。今後、国会の審議状況等によって改正内容が一部変更されることがありますのでご注意ください。
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- 1.【法人税】賃上げ促進税制は中小企業向けに特化へ
- 2.【法人税】少額減価償却資産の損金算入の特例は要件見直し
- 3.【消費税】インボイス制度の各種経過措置が見直し・延長
- 4.【所得税】基礎控除額・給与所得控除額等が引き上げ
- (1) 基礎控除の見直し
- (2) 令和8年・9年に限り基礎控除の特例でさらに控除額引き上げ
- (3) 給与所得控除の最低保障額の見直し
- (4) 合計所得金額要件等の判定金額の引き上げ
- (5) ひとり親控除の控除額の引き上げ
- 5.【所得税】青色申告特別控除は優良な電子帳簿等で控除額引き上げ
- 6.【所得税】防衛特別所得税を新設、令和9年1月より課税
- (1) 防衛特別所得税(仮称)の創設
- (2) 復興特別所得税の改正
- 7.【相続税・贈与税】特例事業承継税制は計画提出期限が延長
1.【法人税】賃上げ促進税制は中小企業向けに特化へ
賃上げ促進税制(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)は、業績の改善が見られない中での賃上げ、いわゆる「防衛的賃上げ」を実施する中小企業に特化するとして、以下の見直しが行われます。
- ① 大企業向けの措置は、適用期限を待たずに令和8年3月31日(この日までの間に開始する事業年度)をもって廃止。
- ② 中堅企業向けの措置は、令和8年度(令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度)においてはより高い賃上げを促すためとして要件のハードルを上げつつ継続、適用期限の令和9年3月31日をもって廃止。
- ③ 中小企業向けの措置は、人材獲得競争の中で「防衛的賃上げ」に取り組む企業にも配慮し令和8年度は現行制度を維持。適用期限の令和9年3月31日に適用状況を踏まえ必要な見直しの検討を予定。
- ④ 教育訓練費を増加させた場合の上乗せ措置は、廃止。
なお、令和8年度、令和9年度における変更点の詳細は下の表のとおりです。
2.【法人税】少額減価償却資産の損金算入の特例は要件見直し
中小企業者等が少額減価償却資産を取得した場合に、取得価額(本体価格および設置費用等の取得のための諸経費)の全額を損金算入可能とする特例については、制度創設以降に主要な対象資産の価格が上昇していることなどを踏まえ、取得価額の基準を引き上げる見直し等が行われます。
以下のとおりの見直し及び延長となります。
- ① 対象となる減価償却資産の取得価額を40万円未満(現行:30万円未満)に引き上げる。
- ② 対象となる法人から常時使用する従業員の数が400人を超える法人(現行:500人を超える法人)を除外する。なお、出資金等が1億円超の組合等は引き続き300人超のものを除外する。
- ③ 適用期限を3年(令和11年3月31日の取得・事業供用分まで)延長する。
3.【消費税】インボイス制度の各種経過措置が見直し・延長
(1) 新たに適格請求書発行事業者となった小規模事業者の税額控除の経過措置
免税事業者から適格請求書発行事業者となった小規模事業者が納付税額を売上げに係る消費税額の2割とすることができる「2割特例」について、個人事業者に限り、2割特例終了後の令和9年10年に限り、納税額を売上げに係る消費税額の3割とすることができる経過措置「3割特例」が設けられます。詳細は以下のとおりです。
- ① 個人事業者である適格請求書発行事業者の令和9年及び令和10年に含まれる各課税期間(免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる課税期間に限る)については、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、その課税標準額に対する消費税額に7割を乗じた額とすることにより、納付税額をその課税標準額に対する消費税額の3割とすることができることとする。
- ② 適格請求書発行事業者が上記①の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記するものとする。
- ③ 上記①の適用を受けた適格請求書発行事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに、その翌課税期間について簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を納税地を所轄する税務署長に提出したときは、その翌課税期間から簡易課税制度の適用を認める。
- (注)現行の2割特例の適用を受けた個人事業者についても、令和8年10月1日以後に終了する課税期間から本措置を適用できることとする。
(2) 免税事業者等からの課税仕入れに関する税額控除の経過措置
インボイス制度開始によって、課税事業者が免税事業者等(消費者、免税事業者、適格請求書発行事業者の登録を受けていない課税事業者)からの仕入税額控除の割合を段階的に引き下げる経過措置が設けられています。
令和8年度税制改正では、小規模な国内事業者への配慮としてこの引き下げを緩やかにする見直しが行われます。控除ができる割合については、令和8年10月からは7割、令和10年10月からは5割、令和12年10月からは3割と段階的に縮減されていき、令和13年9月末をもって終了となります。
また、この経過措置を免税事業者である外国法人等からの仕入れに適用する事例の報告があることも踏まえ、濫用防止を図る観点から、一の免税事業者等からの仕入れの適用上限額が10億円から1億円に引き下げられます。
-
①
本経過措置における控除可能割合について、次に掲げる期間の区分に応じ、それぞれ次に定める割合とする。
イ 令和8年10月1日から令和10年9月30日まで70%
ロ 令和10年10月1日から令和12年9月30日まで50%
ハ 令和12年10月1日から令和13年9月30日まで30% - ② 一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの額の合計額がその年又はその事業年度で1億円(現行:10億円)を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れについて、本経過措置の適用を認めないこととする。
- (注)上記の改正は、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用する。
4.【所得税】基礎控除額・給与所得控除額等が引き上げ
年収の壁(基礎控除と給与所得控除の合計)を160万円から178万円に引き上げて、働く納税者の約8割をカバーするように手取りを増やすという方針に基づき、基礎控除と給与所得控除の見直しが行われます。なお、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みが創設され、今後も基礎控除等が適時見直されることとなります。
(1) 基礎控除の見直し
所得税の基礎控除については、所得金額が2,350万円以下での基礎控除額が4万円引き上げられます。
税制改正時における直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率を乗じて調整がなされ、令和8年度税制改正では、令和5年10月から令和7年10月までの2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率6.0%を踏まえて、合計所得金額2,350万円以下の場合の控除額が、以下のとおり現行58万円から62万円に引き上げられます。
- ① 基礎控除について、合計所得金額が2,350万円以下である個人の控除額を4万円引き上げる(個人住民税の基礎控除額は現行のまま43万円)。
-
②
上記①の見直しの結果、基礎控除の額は次のとおりとなる。
イ 合計所得金額が2,350万円以下である個人62万円
ロ 合計所得金額が2,350万円を超え2,400万円以下である個人48万円
ハ 合計所得金額が2,400万円を超え2,450万円以下である個人32万円
ニ 合計所得金額が2,450万円を超え2,500万円以下である個人16万円 - ③ 上記①の見直しに伴い、公的年金等に係る源泉徴収税額の見直し等の所要の措置を講ずる。
- (注1)上記の改正は、令和8年分以後の所得税について適用する。なお、給与等及び公的年金等の源泉徴収については、令和9年1月1日以後に支払うべき給与等又は公的年金等について適用する。
- (注2)上記の改正及び下記(2)の改正に伴い生ずる公的年金等につき源泉徴収された所得税の額に係る超過額について、当該公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除く)の支払者から還付等をするための措置を講ずる。
(2) 令和8年・9年に限り基礎控除の特例でさらに控除額引き上げ
物価高で厳しい状況にある中低所得者に配慮した措置として、令和8年・9年の時限付きで、基礎控除の特例が以下のとおりに適用されます。
-
①
居住者のその年分の合計所得金額が655万円(令和10年分以後の各年分にあっては、132万円)以下である場合の基礎控除の控除額の加算額を次に掲げる年分の区分に応じそれぞれ次に定める金額とする。
イ 令和8年分及び令和9年分
次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額
(イ)その居住者のその年分の合計所得金額が489万円以下である場合42万円
(ロ)その居住者のその年分の合計所得金額が489万円を超える場合5万円
ロ 令和10年分以後の各年分37万円 - ② 上記①の見直しに伴い、公的年金等に係る源泉徴収税額の見直し等の所要の措置を講ずる。
- (注)上記②の公的年金等の源泉徴収については、令和9年1月1日以後に支払うべき公的年金等について適用する。
(3) 給与所得控除の最低保障額の見直し
給与所得控除の最低保障額についても、税制改正時における直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率を乗じて調整がなされます。令和8年度税制改正では、令和5年10 月から令和7年10 月までの2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率6.0%を踏まえ、給与所得控除の最低保障額については現行65 万円が69 万円に引き上げられます。また、令和8年・9年に限り、さらに5万円が引き上げられる特例が創設されるため、令和8年・9年における給与所得控除の最低保障額は74万円となります。
- ① 給与所得控除について、65万円の最低保障額を69万円に引き上げる(個人住民税も同様)。
- ② 令和8年及び令和9年における給与所得控除の最低保障額を5万円引き上げる特例を創設する(令和9年度分及び令和10年度分の個人住民税も同様)。
- ③ 上記②の特例は、年末調整において適用できることとする。
- (注)①の改正は、令和8年分以後の所得税(令和9年度以後の個人住民税)について適用する。
(4) 合計所得金額要件等の判定金額の引き上げ
物価上昇率6%を踏まえた基礎控除の4万円引き上げに伴い、以下のとおり、合計所得金額要件等が引き上げられます。
- ① 同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件を62万円以下(現行:58万円以下)に引き上げる(個人住民税も同様)。
- ② ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の合計額の要件を62万円以下(現行:58 万円以下)に引き上げる(個人住民税も同様)。
- ③ 勤労学生の合計所得金額要件を89万円以下(現行:85万円以下)に引き上げる(個人住民税も同様)。
- ④ 家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費に算入する金額の最低保障額を69万円(現行:65万円)に引き上げる。
- (注)上記の改正は、令和8年分以後の所得税(令和9年度分以後の個人住民税)について適用する。
(5) ひとり親控除の控除額の引き上げ
ひとり親の子育てにかかる負担の状況を踏まえ、以下のとおり、ひとり親控除の所得税の控除額及び個人住民税の控除額の引き上げが行われます。
- ① 令和9年分以後の所得税のひとり親控除について、控除額を38万円(現行:35万円)に引き上げる。
- ② 令和10年度分以後の個人住民税ひとり親控除について、控除額を33万円(現行:30万円)に引き上げる。
5.【所得税】青色申告特別控除は優良な電子帳簿等で控除額引き上げ
近年における会計ソフトの普及や電子申告割合の上昇を踏まえ、記帳水準の向上等に向けて青色申告特別控除の見直しが、以下のとおり行われます。
- ① 55万円の青色申告特別控除について、電子申告(その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、その提出期限までに電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行うこと)を適用要件に加えた上、控除額を65万円に引き上げる。
-
②
65万円の青色申告特別控除について、対象者を上記①の見直し後の要件を満たす者であって、その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳につき、電子帳簿保存法に準拠した電磁的記録の保存等を行っていること(次のイ・ロのいずれかに該当)との要件を満たすものとした上、控除額を75万円に引き上げる。
イ 仕訳帳及び総勘定元帳について、優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付け及び保存等を行っている場合
ロ 請求書データ等との自動連携などの一定の条件を満たしている場合
また、今後については、複式簿記の利用や電子申告への円滑な移行を図る観点から、これらに未対応の事業者の支援に取り組むとし、記帳に不備がある事業者への対応を含め、記帳水準の更なる向上に向けた取組みを継続するとしています。
6.【所得税】防衛特別所得税を新設、令和9年1月より課税
防衛力強化に向けた財源確保策として、令和9年1月から防衛特別所得税(所得税額に対して税率1%)が創設されます。なお、現行2.1%となっている復興特別所得税の税率を1.1%に引き下げ、家計負担が増加しない形で実行されます。
(1) 防衛特別所得税(仮称)の創設
防衛力強化に向けた財源確保を目的とした付加税「防衛特別所得税(仮称)」が、以下のとおり、防衛特別法人税(下記<参考>を参照)に続いて創設されます。
- ① 防衛特別所得税額は、その年分の基準所得税額に1%の税率を乗じて計算した額とする。
- ② 防衛特別所得税の課税期間は令和9年以後の当分の間とする。
<参考>防衛特別法人税は令和8年度から申告が必要
令和7年度税制改正において創設された「防衛特別法人税」は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から課されます。下のイメージのように、所得税額控除など一定の税額控除を適用しないで計算した法人税の額から年500万円を控除した金額に4%の税率を乗じて計算した金額を、防衛特別法人税額として申告し、納付することが必要となります。
(出所:国税庁公表資料「防衛特別法人税が創設されました」(令和7年5月))
なお、所得金額が欠損等の理由により基準法人税額が0となる場合や基礎控除額(年500万円)の控除により課税標準法人税額が0となる場合であっても、防衛特別法人税確定申告書の提出が必要です。
(2) 復興特別所得税の改正
防衛特別所得税の創設に伴い、以下のとおり、復興特別所得税の税率の引き下げが行われます。また、現行の2.1%を1.1%に引き下げるにあたり、課税期間が延長され、令和29年(2047年)までとなります。
- ① 復興特別所得税の税率を1.1%(現行:2.1%)に引き下げる。
- ② 復興特別所得税の課税期間を令和29年まで(現行:令和19年まで)の間とする。
- (注)上記①の改正は、令和9年分以後の所得税等について適用する。
7.【相続税・贈与税】特例事業承継税制は計画提出期限が延長
非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度(法人版事業承継税制(特例措置))について、特例承継計画の提出期限が令和9年9月末まで延長となります。また、個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(個人版事業承継税制)についても個人事業承継計画の提出期限が令和10年9月末まで延長となります。いずれも贈与・相続の適用期限は延長されず、法人版事業承継税制は令和9年12月31日まで、個人版事業承継税制は令和10年12月31日までに行う贈与・相続が対象となりますので、株式等の贈与を計画的に行うことがいっそう求められます。
- ① 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度について、特例承継計画の提出期限を1年6カ月(令和9年9月末まで)延長。
- ② 個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度における個人事業承継計画の提出期限を2年6カ月(令和10年9月末まで)延長。
適用期限到来後のあり方については、世代交代の停滞や地域経済の成長への影響に係る懸念に加えて、本措置の適用状況や課税の公平性等の観点も踏まえて多角的な検討を行い、令和9年度税制改正において結論を得るとしています。
【参考文献】
・自由民主党・日本維新の会「令和8年度税制改正大綱」(令和7年12月19日発表)
・財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)
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