2025年11月04日

蛍光灯の輸出入禁止が中小企業へ与える影響

蛍光灯の輸出入禁止が中小企業へ与える影響
【回答者】株式会社TKC サプライ事業部 部長 角能一徹

蛍光灯の輸出入が禁止されるそうですが、その詳細と中小企業にどのような影響があるか教えてください。(ソフトウエア開発業)

 すべての一般照明用蛍光ランプ(蛍光灯)の製造・輸出入が、2027年末にかけて段階的に禁止されます。この「すべて」とは、一般的な直管形のほか、電球形や環形(住宅のシーリングライトなど)も含めたすべての蛍光灯です。つまり、現在オフィスや店舗で蛍光灯を利用している場合、LED照明などへの交換が必要になるということです。

 なぜ禁止されるのでしょうか。理由は、蛍光灯に水銀が含まれているためです。水銀は環境や人体に悪影響を及ぼす可能性があり、そのリスクを低減するため、13年に「水銀に関する水俣条約」が採択されました。この条約に基づき、水銀を使用した製品の製造・輸出入に規制が設けられ、23年の見直しで蛍光灯も対象となりました。種類ごとに期限が異なり、電球形は26年末、直管形や環形は27年末までに製造・輸出入が禁止されます。

 では、28年以降はどうなるのでしょうか。既に使用している蛍光灯や在庫品の販売は可能です。しかし、蛍光灯の寿命は6,000〜1万時間(1日8時間使用で約2〜4年)とされており、数年以内には使えなくなることが予測されます。また、在庫もいずれ枯渇するため、早めの対応が必要です。

入手困難・価格高騰の可能性も

 中小企業にとっては、以下のような影響が考えられます。第1に、交換用蛍光灯の入手が困難になり、価格が高騰する可能性があります。第2に、照明器具の交換コストが発生します。電球形や環形は器具の買い替えで対応できますが、直管形は工事が必要です。1カ所あたり数千円から1万円超の費用に加え、出張費なども発生します。第3に、賃貸オフィスの場合、オーナーとの調整が不可欠です。原状回復義務との関係で、自費負担かオーナー負担かを確認し、工事日程を調整する必要があります。さらに、期限が近づくほど工事依頼が集中し、施工業者の確保が難しくなるほか、費用も上昇する可能性があります。

 取るべき対応としては、まず社内の照明器具を点検し、蛍光灯が残っていないか確認してください。そのうえで、LED化の計画を早めに立てることが重要です。互換性や安全性を確認し、必要に応じて専門業者に相談しましょう。工事を行う際は、既存器具にLEDランプを差し替える場合でも、配線工事が必要なケースがあります。誤った工事は火災や感電のリスクを伴うため、必ず資格を持つ電気工事士に依頼してください。器具の取扱説明書を確認し、互換性のない製品を使用しないことも重要です。

 蛍光灯の輸出入禁止は環境保護のための国際的な取り組みですが、中小企業にとってはコストや業務への影響が大きい課題です。先延ばしにせず、早めの対応を進めることが、リスク回避と長期的な省エネ効果につながります。

掲載:『戦略経営者』2025年11月号

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