賃貸住宅のオーナー間で「改正住宅セーフティネット法」への対応が話題になっているようです。改正のポイントについて教えて下さい。(不動産賃貸業)
2019年から施行されている住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)は、今後の日本の高齢化社会を見据えて、「誰もが安心して賃貸住宅に居住できる社会の実現」を目指しています。しかし首長の認可手続きが必要であること、バリアフリー住宅でなければならないこと、25平方メートル以上であることなどの諸条件を満たす必要があるなど利用のハードルがかなり高く、民間の賃貸住宅にはなかなか普及していないのが現状です。
一方で、「相続人がいない」「お一人様」などの理由により、高齢者が住宅を借りにくい状況は改善していません。こうした背景を受け、国土交通省と厚生労働省が中心となって「改正住宅セーフティネット法」が制定され、25年10月1日より施行されることになりました。
「居住サポート住宅」を創設
法改正では下記の4つが大きなテーマとなっています。

①「終身建物賃貸借契約」の利用促進
終身建物賃貸借契約は、賃借人が死亡することによって賃貸借契約が終了する(賃借権が相続されない)契約です。これにより、賃借人の居住の安定が図られるとともに、契約終了後の手続きも円滑に進められます。今回の法改正では、これまで住宅ごとにしなければならなかった認可の申請を事業者(大家)が行えるようになります。対象の住宅は届出で済むようになるので、認可手続きが大幅に簡素化されることになります。
②居住支援法人等による残置物処理の推進
賃借人が死亡した後の室内の残置物を処理するため、これまで推定相続人が受任者となって残置物処理業務を行えることになっていました。しかし昨今では無償でこれらの業務を行う想定相続人がいないケースが増えています。そこで今回の法改正で、推定相続人を受任者とすることが困難な場合、居住支援法人、管理業者等の第三者が残置物処理業務を行えるようになりました。
③国土交通大臣認定の家賃債務保証業者の登録制度創設
登録家賃債務保証業者から、一定の要件を満たす者を国土交通大臣が認定する制度が創設されます。認定基準は「居住サポート住宅に入居する要配慮者の家賃債務保証を原則断らない」「要配慮者の家賃債務保証の契約条件として、緊急連絡先を親族などの個人に限定していない」などです。
④「居住サポート住宅」創設による大家の不安軽減
居住支援法人や福祉サービスと大家が連携し、入居者の生活を支援する「居住サポート住宅」が創設されます。ICT機器による安否確認や訪問による見守りを行い、要配慮者の生活や心身の状況が不安定になったときに、福祉サービスにつなぐ役割が期待されています。
掲載:『戦略経営者』2025年10月号

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