2025年08月01日

月次決算はなぜ必要か【CASE2】「株式会社サンユーさいたま 様」 テクノロジーの進化に対応し業務の“DX化”にまい進

月次決算はなぜ必要か【CASE2】「株式会社サンユーさいたま 様」 テクノロジーの進化に対応し業務の“DX化”にまい進

右は平林久美子さん

トラックやバンなどの商用車をメインに、自動車関連のトータルサービスを展開するサンユーさいたま。平林弘行社長は、自動車業界のテクノロジーの進化に対応すべく、業務のDX化に取り組んでいる。税務顧問の鈴木健司税理士とともに話を聞いた。

──創業は?

平林 当社はもともと父(先代)を含めた3名の共同経営者が1987年に設立した会社ですが、事業承継をしやすいように2006年に分社化をして、父がサンユーさいたまの代表に就任したという経緯があります。共同経営者だった方はその後「トラック市」を立ち上げ、当社もその加盟店となっています。

1.トラックなど商用車に特化

──業容が特徴的だとお聞きしました。

平林 車販、車検・一般整備、板金修理、損害保険代理店など、ベースは一般的な“クルマ屋”ですが、ターゲットユーザーが、法人や個人事業主というのが特徴でしょうか。

平林弘行社長

平林弘行社長

──というのは?

平林 トラックやバンなど、商用車に特化しているのです。珍しいところでは、パッカー車のレンタルにも注力しています。

──なぜでしょうか。

平林 このあたり(埼玉県東部)は、ディーラーさんや乗用車の中古車展示場が多いエリアで激戦区なので、先代を含めた経営陣が競合を避けるために徐々に商用車に業容をシフトさせていったようです。

──そこが強みになったと。

平林 業容的に差別化されているため、比較的順調に成長することができたと思います。トラックやバンなどは、創業期のバブル時代には飛ぶように売れました。

──商用車と乗用車ではメカニックの技術の違いはあるのでしょうか。

平林 当然ですが、トラックの場合は重整備となります。大きさやタイヤの数も違うし、エンジンはディーゼルが圧倒的に多い。ディーゼルの場合、ガソリン車にない装備がついていて規制も厳しく、その意味では難しい部分はあります。

──クリアすべき課題はありますか。

平林 クルマ業界は100年に一度の変革期だと言われています。テクノロジーの進展による次世代型の自動車に対応していく柔軟性が必要となります。たとえば昨年10月にスタートしたOBD車検※1 もそう。OBD車検対象車は年々増えてきますので、専用のスキャンツールを揃えるとともに、それらを扱えるメカニックも必要です。

※1 OBD車検…2024年10月以降の車検から始まった車の電子制御システムが安全に動いているかを確認する検査。

「トラック市」越谷店

「トラック市」越谷店

2.非効率な業務プロセスを見直す

──自動車はテクノロジーの塊ですから、そこへの対応は重要ですね。

平林 はい。OBD車検も含め、組織全体のDX化を進めていかなければならないと考えており、TKCシステムを導入したのもその一環だととらえています。

──というのは?

平林 当社では、納品書や請求書など紙ベースの証憑書類が多く、とにかくアナログ的な業務に忙殺されていました。入金処理にしても『ブロードリーフ』(自動車整備業向けパッケージシステム)で売り上げや経費の処理を行った上で、あらためて会計ソフトにデータを打ち込むなど、煩雑で非効率な業務プロセスになっていました。なんとか、こうした業務のスリム化ができないかと経理のメンバーや外部の専門家も交えて話し合った結果、ある結論に達しました。

──その結論とは?

平林 とにかく業務を標準化していこうと……。そのためにまず、顧問税理士の先生がご高齢であることから、異業種の勉強会でご紹介いただいた鈴木健司先生へと税務顧問を変更しました。若い先生の指導のもとで経理業務のDX化を進めるためです。と同時に、TKC会員になってくれないかと鈴木先生に頼みました。

──なぜですか。

平林 私はロータスクラブ(全日本ロータス同友会)※2 に加盟しているのですが、その会報誌にロータス会員だとTKCシステムの利用料に割引があると書いてあったんです(笑)。それと、なによりも『FX4クラウド』であれば『ブロードリーフ』とのシステム連携ができるというところに魅力を感じました。

──鈴木先生は、平林社長からの声がけを機にTKC全国会に加入され、初めて『FX4クラウド』を扱われたわけですね。

鈴木 TKCの存在はもともと知っていたし、まったく抵抗はありませんでした。『FX4クラウド』については、他システムとの連携はもちろん部門別管理、経営計画など網羅的な管理会計が可能になっており、機能的に高度だという印象です。そうした高度なソフトにもかかわらず、サンユーさいたまの経理担当の方々はほんの数カ月で入力まわりやインターネットバンキングへの連動機能を使いこなすようになられました。すごいと思います。

──いつごろのことでしょう。

鈴木健司税理士

鈴木健司税理士

平林 2023年の暮れに新システム導入を決定しました。翌24年1月から従来のソフトと並行して試験的に運用し、本格的なスタートは同年9月(期首)からです。

※2 全日本ロータス同友会(ロータスクラブ)…自動車整備業者の組織として1975年1月に設立。自動車整備業界の近代化、社会的地位の向上、さらには法定需要体質からの脱却など、新しい業界づくりの理想を掲げてスタートし、1社ではできないことも全国の同友(約1,600社)が結束することで成長してきた。

3.「クラウド」の優位性を実感

──現在の状況は?

平林 まだ決算を迎えていませんが、鈴木先生のサポートを受けながら経理のメンバーも日々成長していき、以前に比べて生産性と正確性が向上しています。従来も、ある程度のレベルで月次決算を行っていましたが、締めが近づくと数字が合わず、数カ月前の処理までさかのぼって修正するなど大変な作業になることも珍しくありませんでした。

平林久美子さん(経理担当) 最初は機能を覚えるのに大変でしたが、慣れればすごく便利だと実感しています。入力の重複(業務システムと会計システム)がなくなったことはもちろんですが、とくに、銀行信販データ受信機能には重宝しています。銀行で通帳記帳してからそのデータを打ち込むのではなく、取引データを自動受信し仕訳を簡単に生成できますからね。従来は残高が合わずに月初から調べなおすこともありましたが、いまではそれもなくなりました。

鈴木 みなさん徐々に慣れてきて、現状、翌月の15日にはデータ入力がおわり、20日くらいには月次を締めることができるようになっています。

平林 大きいのは、「クラウド」だということです。たとえば、当社の経理スタッフと鈴木先生が同じ画面を共有しながら会話することもできますし、経営者としてなにより助かっているのは、どこにいても自分のパソコンでリアルタイムに業績が確認できるようになったことです。以前は、知りたいデータがあっても経理に出力してもらう必要がありましたから。

──部門別管理は?

鈴木 大きくは整備・サービス、板金、車販・営業の3部門で管理していて、さらにその下の階層に定期点検、レンタル、一般車検などがぶら下がっている形です。トータルでは10部門くらいに分けています。

平林 部門別管理はTKCシステムを導入した際の目的のひとつでした。部門別に単年度の売上高予算、限界利益、損益分岐点を設定し、経営計画に落とし込んだ上で、各部門の責任者にその目標を見据えながら業務を行ってもらいたかったというのがあります。

鈴木 その効果があってなのか、実際、今年度は平林社長の想定する売り上げと利益を順調にクリアされてきていると思います。

平林 ただ、板金部門の利益率が思いのほか悪かったですね。ざっくりは分かっていたのですが、明確な数字として目の前に提示されるとやはり違います。さっそく、責任者を呼んで現状を伝え、より生産性を上げ単価を見直すよう指示しました。

──今後はいかがでしょう。

平林 鈴木先生に来ていただくようになってから、組織が目に見えて変わってきたと思います。入力まわりの効率化はもちろん、資金繰りなどの経営面の相談にもレスポンスよく応じていただいています。後は、私が『FX4クラウド』をより自在に使えるようになること。そして、部門別管理の精度を高め、各部門の運営に反映させていきます。

外観写真

(取材協力・鈴木健司税理士事務所/本誌・髙根文隆)

会社概要
名称 株式会社サンユーさいたま
業種 自動車販売・整備業
設立 2006年9月
所在地 埼玉県さいたま市緑区美園6-5-8
売上高 11億円
従業員数 27名
URL https://www.ss-auto.jp
顧問税理士 鈴木健司税理士事務所
所長 鈴木健司
群馬県高崎市西横手町391-29
URL: https://r.goope.jp/taxcounsellor/

掲載:『戦略経営者』2025年8月号

年商50億円を目指す企業の情報誌 戦略経営者

記事提供

戦略経営者

 『戦略経営者』は、中堅・中小企業の経営者の皆さまの戦略思考と経営マインドを鼓舞し、応援する経営情報誌です。
 「TKC全国会」に加盟する税理士・公認会計士の関与先企業の経営者を読者対象に、1986年9月に創刊されました。
 発行部数は14万部を超え(2024年3月現在)、TKC会計人が現場で行う経営助言のノウハウをベースに、独自の切り口と徹底した取材で、真に有用な情報だけを厳選して提供しています。