2025年07月10日

FX2クラウドユーザー事例 「有限会社エム・アンド・ワイオートジャパン 様」 目標値を社内外で共有し限界利益重視へシフト

FX2クラウドユーザー事例 「有限会社エム・アンド・ワイオートジャパン 様」 目標値を社内外で共有し限界利益重視へシフト

“車を持たない車屋”を掲げ、新車、中古車を販売しているエム・アンド・ワイオートジャパン。在庫を持たない経営スタイルながら、顧客の要望に誠実に向き合う姿勢が高い評価を得ている。一昨年には黒字に転換。限界利益を重視する経営にかじを切った桃井智子社長を中心に話を聞いた。

1.潜在ニーズを引き出しベストな1台を提案

──展示車が見当たりません。

桃井社長 勤務先の同僚たちの助けを借りて、専務の山崎英人とゼロから事業を立ち上げました。創業してしばらくは一般的な中古車店と同様に、展示車を並べて販売していました。でもかぎられた展示車の中から、お客さまが希望のクルマに出合うのは至難の業。100点満点はあり得ず、妥協して選ばれている印象がありました。その結果、値引き販売が当たり前になり、お客さまが上でスタッフが下といういびつな関係に陥っていました。
 加えて、展示車の洗車や整備といった維持コストも多額にのぼっていました。こうしたビジネスモデルでは、キャッシュの潤沢な大手販売店にかなわないと考え、「車のお探し専門店」グループ加盟店として再スタートしたのです。

桃井智子社長

桃井智子社長

──どう変わりましたか。

桃井 全国131カ所の正規中古車オークション会場から、お客さまが希望されているクルマを探すことができるし、展示車にかかるコストがなくなり、適正価格で販売できるようにもなりました。もちろん、オークションで仕入れたクルマは試乗できますが、9割超の方が購入にいたっています。

桑村税理士 エム・アンド・ワイオートジャパンさまの接客面で特筆されるのは、ヒアリング力が優れているところ。スタッフの方は、顧客の生活スタイルや家族構成、潜在的なニーズなどをしっかり把握して提案されています。

──オリジナルの整備手帳があるそうですね。

桃井 マイカーに対してわが子のように愛着を持ってほしいと考え、「マイカ 人と車の母子手帳」と名付けました。母子手帳を実際に製作している会社で印刷しており、クルマの整備記録や故障時の対処法、豆知識を記載しています。整備部門は「車の診療所」をモットーに、クルマの健康状態を診察し、お客さまと当店双方が納得のもと、必要な整備のみを実施しています。過剰な整備やキャンペーンは一切行いません。何か売り込まれるのではと警戒して来店するのがおっくうになると、クルマが長持ちしませんから。ご要望いただければ、整備箇所を撮影した写真をLINEで送信しています。
 クルマというツールを通して、豊かで幸せな人生を歩んでもらいたいというのが私たちの思いです。

店内のモニターで整備作業を確認できる

店内のモニターで整備作業を確認できる

──そうした姿勢が高い口コミ評価の源泉になっていると。

桃井 お客さまのカーライフに寄りそい、ベストな1台をコーディネートしてきた結果ではないでしょうか。これからの時代は口コミが大切になると、社員にずっと訴えてきました。お客さまには、うちの良い点、悪い点をそのままアップしてほしいと伝えています。

──「こども部」という部署を設けられています。

桃井 子どもがいるスタッフもいることから、子連れ出勤を認めており、職場体験の一環として、小学生の子どもたちが放課後、お茶出しや後片付けなどを自発的に手伝ってくれています。仕事が終わった後、スタッフは子どもと帰宅するんです。お客さまから声をかけられたり、お菓子をいただいたりしてかわいがられています。

スタッフの子どもたちと。2列目中央左は中村優希営業部アンバサダー、3列目右端は山中俊史整備士

スタッフの子どもたちと。2列目中央左は中村優希営業部アンバサダー、3列目右端は山中俊史整備士

2.車販と車検の部門組で業績を“大づかみ”

──2020年に桑村税理士と顧問契約を結ばれたと聞きました。

桃井 以前の顧問税理士先生も当社を毎月訪問され、継続的なサポートを受けてきました。ただ、事務所が遠方にあり、コロナ禍で徐々に疎遠になってしまったんです。当時は監査時に伝票等の資料を渡して、翌月に業績がわかるという状態で、数字面は会計事務所に任せきり。家計を把握できなければ生活を維持できないように、本来自社の数字がわからなければ、会社は経営できません。事業承継を含め、私たちの未来について相談できる税理士の方に顧問をお願いしたいと思い、真っ先に頭に浮かんだのが桑村先生でした。先生が講師の研修会に参加したり、事務所のSNSを拝見したりして、税理士法人アカウンティスさんのことは知っていました。

──その後『FX2クラウド』を導入されたわけですね。

桃井 桑村先生と税務顧問契約を結んでまもなく、自社で仕訳入力するようになりました。店長である山崎美奈子が経理を一手に担っていますが、入社前は介護福祉士だったので、経理の“け”の字もわからない状態でした。そこから先生に仕訳辞書機能を用いた入力方法を丁寧に指導してもらい、今ではさまざまな機能を使いこなすまでになっています。

山崎 「銀行信販データ受信機能」や「証憑保存機能」を活用して、仕訳を効率的に入力しています。操作方法等で疑問点があるときは「TKCチャット(※)」でアカウンティスさんに質問できるので安心です。

桑村 『FX2クラウド』には、新車販売、中古車販売、車検、自動車保険といった9つの部門を登録して、業績を部門ごとに把握されています。さらに、車販と車検整備という2つの部門組を設定。部門に細分化しつつ、部門組で集計できる点が重宝しています。

桑村真美税理士

桑村真美税理士

──注目されている経営指標は?

桃井 《365日変動損益計算書》で最も注目しているのは、限界利益の額と率です。当初は売上高を重視していましたが、桑村先生から「お店のサービス水準は高いから、自信を持ってクルマの販売価格や整備費用等、適正な価格を設定しましょう」とアドバイスいただいて。それからですね、限界利益にこだわるようになったのは。月次の全体研修では、業績の目標値に対する進捗を公開しています。限界利益を念頭においた地道な活動を積み重ねた結果、一昨年の決算で黒字へ転換できました。

※TKCチャット…TKC会員事務所とメッセージをやり取りできるチャットアプリ

3.目標を週単位に落とし込みスタッフの意識を変革

──黒字転換の要因は?

桃井 大きかったのは、値付けを改めたこと。それから、経営計画を立て、車販および車検の年間目標台数を月単位、週単位に落とし込んだことで、各スタッフが数字を自発的に追うようになりました。また、クルマ1台ごとの原価管理表を作成して商談に臨むなど、原価意識が浸透しつつあります。

──経営計画は社外にも公表されているとか。

桃井 毎年11月に取引先の板金工場や金融機関、ディーラー店の方などを招待して、経営計画発表会を開催しています。スタッフ全員が登壇して、各部門における1年間の取り組みと経営計画を発表。スタッフの子どもたちも放課後に駆けつけて、出席者にあいさつします。取引先さまと信頼関係を築く上で、目標を共有する場はとても大切であると実感しています。

桑村 参加者数は回を追うごとに増えており、前回は30名ほどの方が出席されていました。金融機関に対しては「TKCモニタリング情報サービス」により、月次試算表データを送信するなど、経営の見える化に力を入れられています。

桃井 例年、春先の繁忙期は仕入れるクルマの台数が増えるため、資金繰りに注意する必要があります。仕訳を日々入力し、巡回監査後に業績を振りかえる機会をコンスタントに設けることで、金融機関に融資を早めに相談できるようになり、将来の見通しがつきやすくなりました。

──方向性を教えてください。

桃井 私たちはお客さまとスタッフ、地域社会を幸せにする媒体でありたいと考えています。お客さまのニーズを的確につかみ、クルマというツールで充実した人生を送ってもらいたい。その理想像に向かって、物心共に風通し良く豊かに、利益を生む筋肉質な会社を目指していきます。

(取材協力・税理士法人アカウンティス/本誌・小林淳一)

会社概要
名称 有限会社エム・アンド・ワイオートジャパン
業種 自動車販売、整備業
創業 1998年11月
所在地 兵庫県加東市鳥居198-3
売上高 3億2,000万円
従業員数 5名
URL https://www.myauto.jp
顧問税理士 税理士法人アカウンティス
顧問税理士 桑村浩弥 桑村真美
(加東事務所)兵庫県加東市山国2004番地373
URL: https://accountice.jp

掲載:『戦略経営者』2025年7月号

年商50億円を目指す企業の情報誌 戦略経営者

記事提供

戦略経営者

 『戦略経営者』は、中堅・中小企業の経営者の皆さまの戦略思考と経営マインドを鼓舞し、応援する経営情報誌です。
 「TKC全国会」に加盟する税理士・公認会計士の関与先企業の経営者を読者対象に、1986年9月に創刊されました。
 発行部数は14万部を超え(2024年3月現在)、TKC会計人が現場で行う経営助言のノウハウをベースに、独自の切り口と徹底した取材で、真に有用な情報だけを厳選して提供しています。