💡この記事のポイント
☑どんなときに相続税がかかるのかを解説
☑相続発生直後から相続税の申告までに行うべきことを時系列で紹介
☑土地・建物などの相続財産等に関する確認事項を表で一覧化
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- 1.はじめに
- 2.相続税がかかるのはどんなとき?
- 3.相続税申告までの手続き
- (1) 相続の開始後すぐに行うこと
- (2) 相続開始後3カ月以内に行うこと
- (3) 相続開始後4カ月以内に行うこと
- (4) 相続開始後10カ月以内に行うこと
- 4.相続人の確定
- 5.相続財産の分割に関する確認
- (1) 遺言書の存否はとても重要
- (2) 遺産分割には相続人全員の合意が必要
- 6.各相続財産等に関する確認
- 7.債務、葬式費用等に関する確認
- (1) 相続財産から控除できる債務とは
- 8.生前贈与財産と農地等納税猶予に関する確認
- (1) 生前贈与は贈与税の申告書や通帳で確認
- (2) 農地等の贈与税と相続税の納税猶予とは
- 9.まとめ
1.はじめに
ご家族が亡くなり相続が発生すると、相続する人はどのような手続きをいつまでに行う必要があるのかわからず、不安になってしまいます。
相続で承継される財産には、金融財産や不動産などの積極財産だけでなく、借入金や未払金などの債務である消極財産も含まれます。債務の額が積極財産を上回るなどの場合には、家庭裁判所に申述して相続放棄を行う(相続開始を知った日から3カ月以内)ことができます。相続する人は、こうした手続きについて把握しておくことが肝要です。
そこで、本記事では、相続税申告までの一連の流れを時系列で紹介し、申告にあたって確認すべき事項を各表にまとめています。
「わが家にはそれほど財産がないから、相続税の話は関係ない」とお考えの方でも、自宅や預貯金、生命保険の保険金などの合計額が思ったより高額になり、遺された方々が相続税申告を行わなければならないケースが少なくありません。この機会に相続財産(資産)の棚卸しを行い、将来の相続に備えましょう(なお、本記事内では、亡くなった人のことを「被相続人」、被相続人の財産を承継する権利のある人のことを「相続人」と表記しています)。
2.相続税がかかるのはどんなとき?
(1) どのような場合に相続税が発生するのか
相続税の申告までの流れを見る前に、まずは「どのような場合に相続税が発生するのか」を確認しておきましょう。
人が亡くなったとき、その人の財産(遺産)は相続人、または遺言で指定された人に分配されるのが一般的です。相続税は、その分配された財産にかかる税金です。
相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10カ月以内(この日が土、日、祝日等のときはその翌日)に、次の3つの場合において、相続人は相続税の申告・納付をしなければなりません。
①正味の遺産額(課税価格)が基礎控除額を超えるとき
②配偶者の相続税額軽減を受けるとき
③小規模宅地等の特例を受けるとき
例えば、5月11日に相続が開始した(被相続人が亡くなった)場合、翌年3月11日までに相続税を原則現金で一括納付しなければなりません(延納・物納を行う場合を除く)。
まずは、相続税が発生するかどうかを確認しましょう。
●次のAとBの金額を比較したときに、大きいほうは?
A:正味の遺産額(課税価格)
B:基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
→Aが大きい場合、相続税がかかります。Bが大きい場合、相続税はかかりません。
なお、正味の遺産額の計算式は次のとおりです。
■正味の遺産額の計算式

※1 死亡退職金、死亡保険金など。
※2 葬式・葬送の費用、埋葬・火葬に要した費用、その他通常の葬式等に伴う費用で相当と認められるもの(ただし、墓碑・墓地の購入費用、香典返礼費用などは含まれない)。
※3 借入金・事業上の買掛金(相続開始時に現存するもの)、未払いの入院・治療費、納付の確定している所得税・住民税・固定資産税など。
※4 令和8年12月31日までに相続が発生した場合は相続開始前3年以内に贈与を受けた財産、令和9年1月1日~令和12年12月31日までに相続が発生した場合は令和6年1月1日から相続開始までの期間に贈与を受けた財産、令和13年1月1日以後に相続が発生した場合は相続開始前7年以内に贈与を受けた財産が、対象となります。
3.相続税申告までの手続き
相続税の申告までの一般的なスケジュールは次のようになります。期限内に漏れのないよう、ご自身に該当する箇所を確認しましょう。
(1) 相続の開始後すぐに行うこと
①死亡届の提出:7日以内
②葬儀:葬式費用の領収書の整理・保管
③四十九日の法要
④遺言書の有無の確認→家庭裁判所の検認・開封
⑤遺産・債務・生前贈与の概要と相続税の概算額の把握
⑥遺産分割協議の準備:未成年者の特別代理人の選定準備(家庭裁判所へ)
(2) 相続開始後3カ月以内に行うこと
①相続の放棄または限定承認:家庭裁判所へ申述
②相続人が誰であるかの確認
③法定相続情報一覧図の作成:法務局(登記所)に提出して認証文付きの写しを入手
(3) 相続開始後4カ月以内に行うこと
①百か日の法要
②被相続人に係る所得税の申告・納付(準確定申告)
③被相続人に係る消費税・地方消費税の申告・納付
(4) 相続開始後10カ月以内に行うこと
①根抵当の設定された物件の登記:6カ月以内
②遺産の調査、評価・鑑定
③遺産分割協議書の作成
④各相続人が取得する財産の把握
⑤未分割財産の把握
⑥特定の公益法人への寄附等
⑦特例農地等の納税猶予の手続き:農業委員会への証明申請等
⑧相続税の申告書の作成
⑨納税資金の検討
⑩相続税の申告・納付(延納・物納の申請):被相続人の住所地の税務署に申告
続いて、相続税の申告にあたって相続人が確認するべき事項を順に解説します。
4.相続人の確定
相続人を確定するために、被相続人、相続人についての確認をしましょう。
(1) まずは戸籍収集と法定相続情報一覧図の作成からスタート
相続手続きには、相続人を特定するために被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要不可欠です。また、不動産の相続登記などには(遺言書が残されていない場合)、被相続人の戸籍(除籍)謄本および相続人全員の戸籍謄本の提出が求められるため、まずは、被相続人の出生から死亡までの戸籍や相続人全員の戸籍を収集することから始めるとよいでしょう。
戸籍謄本が収集できたら、被相続人と相続人の関係を一覧にした「法定相続情報一覧図」を作成しましょう。これを、戸籍謄本の束とあわせて登記所に提出すると、登記官によって、その一覧図に認証文を付した写しが無料で交付されます。
この「認証文付きの法定相続情報一覧図の写し」は、被相続人の戸籍(除籍)謄本および相続人全員の戸籍謄本に代わる書類として用いることができ、戸籍謄本の束を何度も手続きに用いる必要がなくなるため大変便利です。作成を、税理士や弁護士、行政書士などの専門家に依頼することも可能です。
なお、法定相続情報一覧図の様式や記載例は、法務局のウェブサイトに掲載されています。
■被相続人に関する確認事項
確認事項 | 確認する書類 |
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被相続人について |
被相続人の戸籍(除籍)謄本(出生から相続開始まで)の写し(相続開始後10日以後に作成されたもの)
→本籍地の市区町村役所(場)で交付 |
被相続人の住民票の除票(本籍と現住所が異なる場合)
→住所地の市区長村役所(場)で交付 |
|
確定申告はしていますか? | 被相続人の所得税確定申告書(控) |
財産債務調書および国外財産調書 | |
今回の相続開始以前に相続により財産を取得していますか? | 前回の相続税の申告書 |
■相続人に関する確認事項
確認事項 | 確認する書類 |
---|---|
被相続人について |
各相続人の戸籍謄本の写し(相続開始後10日以後に作成されたもの)
→本籍地の市区町村役所(場)で交付 |
法定相続情報一覧図の写し
→住所地等の登記所で交付 |
|
各相続人の住民票(本籍地の記載があるもの)
→住所地の市区町村役所(場)で交付 |
|
遺言書(認知に関する記載) | |
各相続人の①マイナンバーカードの写し、②通知カード(記載に変更が無いもの)の写し、③マイナンバーが記載された住民票の写しのいずれか | |
利用者識別番号の通知書等(相続税の電子申告を行う場合) | |
被相続人の兄弟姉妹がいますか?(被相続人の子や親がいない場合) |
被相続人の父および母の戸籍謄本(父母の出生から死亡まで)
→被相続人の父母の本籍地の市区町村役所(場)で交付 |
未成年者がいますか? |
特別代理人選任の審判の証明書
→家庭裁判所で交付 |
成年被後見人がいますか? | 成年後見登記事項証明書 |
障害者がいますか? | 身体障害者手帳等 |
相続放棄をした人はいますか? |
家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書
→家庭裁判所で交付 |
相続欠格者はいますか? | 相続欠格事由の存否 |
被廃除者はいますか? |
家庭裁判所の審判・調停または遺言書(廃除に関する記載)
→家庭裁判所で交付 |
5.相続財産の分割に関する確認
相続財産の分割について、遺言書等の確認・準備をしましょう。
(1) 遺言書の存否はとても重要
遺言書の有無は、相続財産の分割方法に大きく影響するので、必ずその存在の有無を確認しましょう。公証役場の「遺言検索システム」で公正証書遺言・秘密証書遺言の検索を、法務局で自筆証書遺言が保管されていないか確認を行うようにしましょう。
なお、複数の遺言書が発見された場合、先の遺言と後の遺言の内容が抵触するときには、抵触する部分について後の遺言が優先されます。
また、公正証書遺言または法務局で保管されている自筆証書遺言を除く遺言書を保管している人、発見した人は、遅滞なく、これを被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に提出してその検認を申し立てる必要があります。

(2) 遺産分割には相続人全員の合意が必要
遺言書がない場合は、共同相続人の間で遺産分割協議を行います。遺産分割が確定したら、その後トラブルが生じないように遺産分割協議書を作成します。書式や形式に決まりはなく、筆記でもパソコンでもかまいません。ただし、分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しません。したがって、遺産分割協議書には全員が自署し、実印を押印することが基本です。
■相続財産の分割に関する確認事項
確認事項 | 確認する書類 |
---|---|
遺言書がありますか? |
法務局保管の遺言書情報証明書、遺言公正証書、家裁検認済の遺言書のいずれか
→法務局、公証役場等で交付 |
死因贈与※1がありますか? | 贈与契約書 |
遺産分割協議書が作成されていますか? | 遺産分割協議書 |
相続人全員の印鑑証明書
→住所地の市区町村役所(場) |
※1 死因贈与とは「私が死んだら〇〇をあなたに贈与します」と生前に決めておく贈与のことです。遺贈と違い、口頭でも成立しますが、実務上は後々トラブルになりやすく、立証のためにも贈与契約書の作成が実質的に必須となっています。
6.各相続財産等に関する確認
相続財産の確定のため被相続人が所有していた財産について確認しましょう。
(1) 銀行・証券会社の取引記録のチェックから
被相続人の相続財産を把握するには、銀行の預金通帳や証券会社の年間取引報告書などからわかるお金の動きを確認しましょう。毎年・毎月引き落とされているものは何か、入金があればどこから行われているかを調べることにより、借入金、家賃収入のある不動産の存在などを発見することができます。また、名義変更や解約が必要なものの把握にも役立ちます。
その他、財布の中のカード、郵便物、手帳、壁掛けカレンダーへのメモ、パソコンや携帯電話のデータ等も、相続財産を把握するための手掛かりとなります。
■預金通帳による相続財産把握のためのチェックポイントの例
・生命保険料や損害保険料の引き落としの有無
・配当金の振込みの有無と振込元
・相続開始後の入出金
・借入金の返済の有無
・所得税・固定資産税・個人事業税等の引き落とし
・不動産の賃料・敷金の入金
(2) 預金通帳がないときは金融機関に請求を
預金通帳がないときや、残っていても必要な期間の預金通帳が不足するときには、各金融機関所定の「取引明細証明依頼書」を記入し依頼しましょう。
相続発生時点の残高証明書の入手にも同じ書類が必要となるため、残高証明依頼と同時に進めてもよいでしょう。
■土地・建物等に関する確認事項
確認事項 | 確認する書類 |
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土地・建物等について |
名寄帳または納税通知書の課税明細書
→所在地の市区町村役所(場)で交付 |
固定資産税評価証明書
→所在地の市区町村役所(場)で交付 |
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登記事項証明書
→法務局で交付 |
|
公図または測量図
→法務局で交付 |
|
賃貸借している土地・家屋等がありますか? | 土地・家屋の賃貸借契約書 |
小作に付されている旨の証明書
→農業委員会で交付 |
|
山林がありますか? |
森林施業図等
→森林組合で交付 |
農用地がありますか? |
農業振興地域農用地証明書
→所在地の市区町村役所(場)で交付 |
生産緑地がありますか? |
納税猶予の特例適用農地等該当証明書
→所在地の市区町村役所(場)で交付 |
土地の賃借に関し、法人税法、相続税法等に基づく通達の規定等による届出書類を税務署または国税局に提出していますか? | 借地権の使用貸借に関する確認書 |
借地権者の地位に変更がない旨の申出書 | |
土地の無償返還に関する届出書 | |
相当の地代の改訂方法に関する届出書 | |
建築中の家屋・構築物がありますか? | 請負契約書、領収証等 |
日本国外に所在する不動産がありますか? | 不動産売買契約書等 |
■有価証券に関する確認事項
確認事項 | 確認する書類 |
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有価証券について(名義は異なるが、被相続人に帰属するものを含む) | 割引債、貸付信託、国債等またはその取引残高報告書、出資証券 |
上場されていない株式がありますか? | 決算書、法人税確定申告書(直前事業年度分) |
出資がありますか? | 決算書、法人税確定申告書(直前事業年度分) |
増資等による株式の増加分や単元未満株式がありますか? | 株式等の取引残高報告書 |
配当金支払通知書(保有株数の記載)、株主総会通知等 | |
日本国外の有価証券がありますか? | 証券または取引明細書など |
■現金・預貯金等に関する確認事項
確認事項 | 確認する書類 |
---|---|
現金・預貯金について(名義は異なるが、被相続人に帰属するものを含む) | 預貯金残高証明書、預貯金通帳、定期預金証書、解約計算書等 |
金銭信託がありますか? | 金銭信託の残高証明書 |
日本国外の預貯金がありますか? | 預貯金通帳等 |
■生命保険金等および退職手当金等に関する確認事項
確認事項 | 確認する書類 |
---|---|
生命保険金(死亡保険金)について | 死亡保険金の支払調書 |
被相続人が保険料を負担した生命保険契約等がありますか? | 保険証書の写し、支払保険料計算書、確定申告書 |
退職手当金等について | 退職手当金等受給者別支払調書 |
退職手当金支払計算書 | |
功労金、弔慰金、花輪代、葬祭料等で退職手当金等に該当するものがありますか? | 退職金の支払通知書、取締役会議事録等 |
■立木、事業(農業)用財産および家庭用財産に関する確認事項
確認事項 | 確認する書類 |
---|---|
立木がありますか? |
森林簿、保安林台帳等
→森林組合等で交付 |
事業(農業)用財産がありますか? | 総勘定元帳、決算書、減価償却内訳明細書、償却資産申告書 |
家庭用財産について特に高額なものがありますか? | 現物を確認できるもの |
その他の財産についても、例えば役員報酬・給与・賞与の未収分があるかどうか、未収地代(家賃)があるかどうか、ゴルフ会員権やレジャークラブ会員権等があるかどうか、電話加入権があるかどうか等の確認が必要です。
7.債務、葬式費用等に関する確認■
相続財産から控除する債務の明細を確認しましょう。
(1) 相続財産から控除できる債務とは
相続財産から控除すべき債務は確実と認められるものに限られます。契約書や請求書などを伴った借入金等のほか、被相続人に係る所得税、住民税、固定資産税、自動車重量税、消費税、死亡後に相続人が支払った医療費、預り保証金(敷金)等は、実務上よく控除対象となります。
なお、香典返し、墓石や墓地の借入れ、初七日や法事のためにかかった費用は、相続財産から差し引く葬式費用には含まれないため、ご注意ください。
■債務・葬式費用に関する確認事項
確認事項 | 確認する書類 |
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借入金がありますか? | 借入金の残高証明書 |
金銭消費貸借契約書請求書等 | |
未納公租公課がありますか? | 納付書、納税通知書、所得税の準確定申告書・消費税の確定申告書 |
資産の取得に係る未払金・ローン等がありますか? | 資産購入契約書等 |
預り保証金(敷金)等がありますか? | 賃貸借契約書等 |
その他未払金等がありますか? | 売買契約書、請求書等 |
医療費の領収証等 | |
葬式費用がありますか? | 葬式費用の明細書、領収証、葬儀の諸経費控帳、支払メモ等 |
8.生前贈与財産と農地等納税猶予に関する確認
相続財産へ加算される贈与、農地等納税猶予の適用状況等を確認しましょう。
(1) 生前贈与は贈与税の申告書や通帳で確認
相続または遺贈により被相続人から財産を取得した人が、相続開始前3年※1以内(死亡の日からさかのぼって3年※1前の日から死亡の日までの間)に被相続人から贈与を受けた財産があるときには、その人の相続税の課税価格に、贈与を受けた財産の贈与時の価額を加算しなければなりません。また、相続時精算課税の規定の適用を受けて贈与された財産については、その財産の価額を相続財産に加算しなければなりません。
そのため、被相続人からの贈与について、相続開始前3年※1以内に贈与税の申告があったか、相続時精算課税の規定の適用を受けていたか、申告をしていなくても被相続人から相続人に対し贈与があったかなどの確認が必要となります。手元にある贈与契約書、贈与税の申告書控え、通帳を確認するほか、税務署に対し贈与税の申告内容の開示請求を行うことで、贈与財産の計上漏れを防ぐことができます。
なお、特定の相続人に対する生前贈与の有無は、遺産分割や遺留分侵害額請求では特別受益に該当するなど、遺産分割等にも影響を与えます。
※1 令和8年12月31日までに相続が発生した場合。令和9年1月1日~令和12年12月31日までに相続が発生した場合は令和6年1月1日から相続開始までの期間に贈与を受けた財産が、令和13年1月1日以後に相続が発生した場合は相続開始前7年以内に贈与を受けた財産が、対象となります。
(2) 農地等の贈与税と相続税の納税猶予とは
農業後継者の育成等を税制面から支援するために設けられている制度です。
贈与税の納税猶予制度とは、農業を営んでいる者が、その農業に使用している農地等を将来相続人となる見込みの後継者に贈与した場合、後継者に課税される贈与税の納税が猶予され、贈与者もしくは受贈者(後継者)のいずれかが死亡したときは納税が免除される制度です。
また、相続税の納税猶予制度とは、相続または遺贈により農地等を取得し、引き続き農業に使用する者について、その農地等に関する相続税額の一部の納税が猶予され、その相続人が死亡した場合等は納税が免除される制度です。
ただし、農地等の所在地によって適用が受けられないものもあるため、注意が必要です。

■生前贈与財産に関する確認事項
確認事項 | 確認する書類 |
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過去3年※1以内に被相続人から暦年課税の贈与を受けていませんか?(基礎控除額未満の贈与も含まれます。) | 贈与契約書、贈与税の申告書控え(相続開始前3年※2分) |
相続開始前3年※2間の預貯金通帳および有価証券等の取引明細書(家族分を含む。) | |
配偶者が相続開始の年に被相続人から居住用不動産またはその取得のための金銭の贈与を受けていますか? |
居住用不動産の登記事項証明書
→登記所で交付 |
配偶者の戸籍の附票の写し(相続開始後10日以後に作成されたもの)
→本籍地の市区町村役所(場)で交付 |
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被相続人から相続時精算課税の適用を受ける贈与を受けていますか? | 贈与契約書、贈与税の申告書控え(相続時精算課税選択届出の年以後) |
贈与税の申告内容の開示書
→被相続人の死亡時の住所地の所轄税務署で交付 |
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被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始後に作成されたもの)
→本籍地の市区町村役所(場)で交付 |
※1 令和8年12月31日までに相続が発生した場合。令和9年1月1日~令和12年12月31日までに相続が発生した場合は令和6年1月1日から相続開始までの期間に贈与を受けた財産が、令和13年1月1日以後に相続が発生した場合は相続開始前7年以内に贈与を受けた財産が、対象となります。
※2 令和8年12月31日までに相続が発生した場合。令和9年1月1日以後に相続が発生した場合は上記の※1を参照の上、対象期間を含む年分のものをご準備・ご確認ください。
■農地等納税猶予に関する確認事項
確認事項 | 確認する書類 |
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相続税の納税猶予の適用を受けますか? | 農業委員会の適格者証明書等 |
特定市の区域内の農地等がありますか? |
納税猶予の特例適用農地等該当証明書
→所在地の市区町村役所(場)で交付 |
贈与税の納税猶予の特例の適用を受けていませんか? | 贈与税の免除届出書 |
贈与税の申告書控え |
9.まとめ
以上が相続税の申告の流れと、申告にあたって確認すべき事項です。
相続税の申告には10カ月以内という期限があり、相続人は一定の期間内に相続財産を把握して資料等を準備しなければなりません。
そして、相続財産は現預金だけでなく、土地・建物、有価証券、農用地や生命保険金(死亡保険金)など多岐にわたります。本記事で紹介した確認事項の各表をチェックしましょう。
本記事が、相続手続きや相続税申告の参考になれば幸いです。
■参考文献
・『Q&A相続税のきほん―申告までの10カ月でしなければならないこと―』(監修:TKC全国会 資産対策研究会、TKC出版)
・『相続がおきたら行う手続きガイド』(監修:TKC全国会 システム委員会、TKC出版)

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